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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【イラストあり】トラックに轢かれて異世界転生した僕ですが人間は信じられないので最強ギフト『森羅万象』を使ってソロライフを満喫します

作者: ぴん太

深夜テンションで書きました。よろしくお願いします。


 


 少年は死んだ。


 まさに一瞬、トラック一撃、ドカンとぽっくりだ。


 信号が変わるのを待っていると、幼稚園帰りと思われる女の子が車道に侵入。

 おいおい、あの子危ないぞ!?と思うと同時に僕は駆け出し、女の子を華麗に救出!

 ...できるはずもなく、いつぞやに世間を賑わせたラグビータックルを彷彿ほうふつとさせる勢いで女の子を車道外に押し出し、見事身代わりとしてトラックとディープキスをかましたのだった。

 さらば僕のファーストキス...?

 頭の中では彼に走馬灯を見せようと脳内司令部が走馬灯スイッチをオンにしたが、彼に思い出と呼べるものは一つもなく、即落ち二コマの如き速さで走馬灯終了。

 トラックに撥ねられ視界が暗転する寸前、女の子が無事であったことを確認できた少年は、女の子に駆け寄る母親の姿にも目を移しながら人生をフェードアウトしていくのだった。




 ___16歳、男性、交通事故にて死亡










***










 どうもこんにちは僕です。

 ついさっきトラックにぶっ飛ばされて100億パーセント死んだはずの僕ですが、何故か鬱蒼うっそうとした森の中?で恐らく横たわっております、はい。

 なんだよ、どこだよここ、そそるぜこれは!


 ...嘘です、めちゃくちゃ怖いです。


 というか、本当にここどこなのよ。

 視界に入る草木は何か黒々しいし、ヤバいくらい厳つい動物の鳴き声?も聞こえてくるんだけど、一番よく分からんのはこれよ、これ。


 ...この手のサイズ感よ。


 おい!小さ過ぎるだろい!

 なんだこのクリームパ〇ナちゃんや東急ハ〇ズみたいな形の手は!?


 鳴き声がそこら中から聞こえてきている中、状況が状況なだけに僕も叫ばなきゃやってられません、叫びたい気分です叫んでいいですか?ということで、さっきから動物たちの声に交じって一人大声でツッコミをしているのだが、耳に聞こえてくるのが「おぎゃー!!」とか「ぴぎゃー!!」とか「ヤァアーハッ!」とかなんだよな...


 ここで考えられる選択肢は二択...そう、僕はちい〇わのう〇ぎか世紀末出身のどちらかに...


 とか考えていると、遠くの方から複数人の足音と同時に金属の擦れる音が徐々に近づいてくる。

 左右を見たいんだけど、なんか上手に寝返りが打てないんだワ。

 こっちがもぞもぞと芋虫のように動いてるうちに、話し声が聞こえる距離まで何人かがやってきた。

 このまま僕はどうなっちゃうんだろうと考えたが、まぁこの光景は死んだときの走馬灯の代わりだろう(どんな代わりだよ!もっとマシなの見せてよ!)と思い始めると急に眠たくなってきたので瞼を閉じようとすると、これまで見たことがないほどの、例えるならアニメから出てきたようなイケメンの顔が僕の視界一面に映し出された。

 僕が言うのもなんだが、どうしてこんなところに人間イケメンが!?と思った一方で、瞼が閉じるのを止められそうにもなかった。

 そうして意識が暗転する刹那、僕が耳にしたのは「どうしてこんなところに赤ん坊が...」という僕と全く同じ感想を抱いたイケメンボイスであった。


 なんとなく分かってはいたけど、やっぱりそうなのか...




 ___どうやら僕、異世界にて赤ちゃんになってしまっているようです










***










 森での一件以降、どういうわけか僕はあの時出会ったイケメン、ジーク=ヴァン=ヴォルテガードさんに引き取られることになった。


 ジークさんは、僕が現在暮らしているライトニア王国の騎士団長にして公爵の位を授かっている、王国でも王族・宰相に次ぐとんでもない人物である。

 また、さらさらとした金色の髪を短く切り揃えた女性を魅了する甘いルックスに、これぞイケメン!と思わせるすらりとした高い身長、加えて本人の紳士な態度も相まって王国でかなりの人気者でもある。

 そんなジークさんには妻と子が一人ずつおり、そんな彼女らも王国では話題の人物である。


 妻の名はレイナ=ヴォルテガードと呼び、絹のように滑らかな美しい銀髪に、女性の思い描く理想の容姿を具現化したようなそれはもう美しい容姿で、実際に王宮から王国一の美女として選ばれたこともあり、ジークさんとは紆余曲折を経て結婚に至ったっぽい。


 そんな二人の子が、クレア=ヴォルテガードと呼び、二人の良いところを全て合わせ持ったような女の子である。

 現在10歳ながら、母によく似た美しい銀髪を靡かせ、大人びた性格や所作、気品から既に社交界の天使としてその注目を一身に浴びている。


 この世界には一人一人にギフトというものが存在し、8歳になった時に行われる『神臨しんりんの儀』の際に神様から授けられるそうなのだが、ジークさんは『剣聖』、レイナさんとクレアさんは『聖女』という、この世界においてあまりにも貴重なギフトを有している激凄ファミリーなのだ。

 ちなみに、ギフト名が『聖女』や『剣聖』というだけで、本当に教会の聖女であったり教会の剣の守護者であったりするなどということではないらしい、難しいネ。


 そして、こんなヤバすぎる家庭に養子として迎え入れられたのが、僕。

 一応『ユーリ』という名を二人が付けてくれた。

 そんな僕ことユーリであるが、容姿は普通、the普通である!

 良くも悪くもないふっつーの顔に、ちょっとぼさっとした黒い髪の少年、それが僕である。


 しかし、今日で遂に!ようやく!8歳の誕生日を迎えた僕は、これからのことに胸を高鳴らせ、一人屋敷の離れで陽気なダンスを踊るのであった!ハーハッハッハーッ!










***










 僕は人を信じていない。


 僕は愛情を知らない。


 ___元居た世界での話だ。


 僕を産んですぐ、僕の身代わりになったかのように母親が死んだ。


 僕は母親の顔も声も全部知らない。


 最初は父親が男手ひとつで生活を維持してくれていたが、小学2年生の時、父親が壊れた。

 仕事をクビになって、これまで飲んでいなかった酒を毎日浴びるほど飲むようになり、毎日毎日呪詛のように「お前が居なかったら...」と言いながら暴力を振るうようになった。

 女遊びがエスカレートし、借金の額が次々と増えていく中、小学6年の夏、父親が消えた。

 借金だけを残して。

 中学を卒業してすぐに、父親があの夏の時点で既に死んでいたことが分かった。


 父親が消えた後、そこからは無だった。


 住んでいた街は給食費と学費が中学まで無償だったため、給食だけを頼りに毎日空腹感に苛まれながら学校に通った。


 中学生活は地獄だった。


 年齢を偽って深夜に毎日バイトをしながら借金を返し、日中は同級生にさげすまれ、いじめられる日々。


 僕は友情を知らない。


 先生は見て見ぬふりをするだけだった。

 まぁ親身に関わられても警戒しかしないので、むしろ無視されていて正解だったかもしれないが。

 どうしてそこまでして中学に通っていたのか、今となっては分からない。


 中学卒業後は、雇ってくれる仕事にとりあえず手を出す生活を1年続け、そして16歳のあの日、死んだ。


 そんな僕は何の因果か、ヴォルテガード家に引き取られた。


 あの温か過ぎる家に。


 言葉を発するようになってしばらくしてから、僕は養子の件を周りに話さないようにして欲しいと願い出た。

 おかげで僕がヴォルテガード家の養子であることを知っている者はほとんどいない。


 僕は『家族』を知らない。


 そして、僕と極力関わらないで欲しいと伝え、離れを用意してもらった。


 僕には関わってもらうほどの価値なんてない。


 そうして何度も何度も避け続けて、明日、神臨の儀を迎える。

 神臨の儀を受けると、神様に一人前として認めてもらえたという証として『神臨証』という身分証のようなものが発行される。

 それがあれば、8歳でやれることは限られるものの、仕事をしたり冒険者になったりできるのだ。

 明日、それを持ってヴォルテガード家を出ると決めている。

 いつまでも迷惑をかける訳にもいかないし、何よりあそこは僕の居て良い場所じゃない。




 僕に繋がりなんて必要ない___。










***










 僕は今、神臨の儀が行われる教会に向かう馬車に乗っている。

 貴族階級出身の子どもたちは本来王都中枢にある聖堂で儀式を行うのだが、僕は養子の件を黙ってもらっていることもあり、平民の子どもが儀式を行う教会まで足を運んでいるのだ。

 ヴォルテガード家の皆さんは僕が聖堂で儀式を受けないことに反対していたが、何とか理解を示してもらい、日雇いの馬車御者にお金を払って一人で向かっている。


 そして、僕はそんな馬車の中でを歪ませているところだ。


 ___ある日、僕は考えていた。


 ...この世界って、簡単に死ぬくない?と。


 僕が転生したこの世界は、いわゆる剣と魔法の王道ファンタジー世界で、ほとんどの人間が当たり前のように魔法を駆使して生活している。

 ある時、ヴォルテガード家にある訓練場で初級火魔法のファイアーボールを目にしたのだが、その時に僕は思った、カクジツニアタッタラアツイシ、イタイシ、シンジャウネ?と。


 日本出身の僕からすれば、魔法や剣で自分が攻撃されるかもしれないなんて考えられない!


 だから僕はその日の夜、どうやったら自分が最も安全でいられるかを念頭に置きながら、自分が使いたい・使えたら良いなというギフトについて考えていた。

 色々と考え始めると、かなりの候補が浮かび上がってきて一つに絞れなかった僕は、そうだ、今思い付いたことが全部できるような、全ての物事に干渉できるようなギフトだったら良いんだ!と我ながら中々素晴らしい解決策を見つけ、それじゃあギフト名は...なんかカッコ良い方が良いよなぁ...あ、『森羅万象』とかカッコ良くないか!?とむにゃむにゃ考えながら眠りについた。


それから数日が経ち、ふと異世界モノではお決まりの『ステータス』というものはあるのかなと思い言葉を発してみると、案の定自分の前に半透明の画面ステータスが映し出され、自身の能力情報欄の下にあるギフトの欄に『森羅万象』と書かれていた。


 ...え?ドユコト?


 ちなみに、ステータスという概念はこの世界では恐らく知られていない。

 ヴォルテガード家で働く人たちにステータスについて聞いてみたが、そもそも『ステータス』という言葉を知らないようだった。

 それから僕はギフトについて色々と検証を始めた。


 そして理解した、このギフト何でもできるじゃねえか!


 もう言ったそのままの通りである、何でもできる、以上。

 攻撃が当たらないことへの対処方法であるが、僕の周りの空間を歪ませることで絶対に触れることのできない空間の断絶を作ることにした。

 イメージは最強の目隠しをした先生みたいな感じ。

 やはりこうでもしないと銃社会でもない日本で生きていた人間にこの世界で生きるのは難しいのだ!


 ...ということで僕は自分のギフトを既にステータスで知ってしまっているのである。

 当然このギフトのことは誰にも話してはいない。

 どう考えてもめちゃくちゃなギフトであるため、バレたら面倒なことになるよなぁ、でも儀式でバレちゃうしなぁと、どうやって周りに誤魔化そうかと考えていると、馬車は目的地である教会に到着した。


 教会の中にはそれなりの人数が集まっており、儀式を受ける少年・少女は大体30人くらいだろうか。

 受付で名前の記入と儀式料を渡した僕は、教会の端で周囲の様子を見ることにした。

 この世界におけるギフトの影響力はそれなりに高く、良いギフトが神様から与えられれば平民から貴族家に登用されたり騎士に推薦されたりするようで、実際にどの家の子どもも両親から期待のまなざしを向けられている。

 また、極稀にギフトがないということがあるらしく、『ギフトなし』は異教徒であると考え、迫害の対象として見る人も多いのだとか。

 まぁ既にギフトがあることが分かっている僕には関係のない話だが。


 そうこうしているうちにとうとう神臨の儀が始まった。

 司祭に名前を呼ばれた子どもが前に出て司祭の手元にある水晶に触れると、その水晶が輝きを放ち、ギフトが空中に表示される。

 水晶の輝きが強ければ強いほど貴重なギフトだそうなのだが、今のところ名前を呼ばれた10人ほどは皆一瞬ピカッと光るくらいだった。

 もっと眩く光るものだと思っていたが案外こんなものなのだろうと自分を納得させていると、20番目くらいの青い髪色をした少年が教会内全体を照らすほどの光量で水晶を輝かせてみせた。



「おぉ!これは上位ギフト!ウォルターよ、君のギフトは『氷結』だ!」



 司祭がそのように告げると、教会内がザワザワと騒がしくなり、教会の奥の方に立っていた身なりからして貴族のような男とその男のお付きのような者がウォルターと呼ばれていた少年に声を掛け、そのまま3人で移動していった。

 本当に貴族から声を掛けられることってあるんだぁと考えている最中も儀式は進んでいき、遂に僕の出番となった。



「それでは本日最後の者、ユーリよ、こちらに来て水晶に触れなさい」



 司祭に言われるがまま水晶に手を置いた瞬間、教会内がに包まれた。

 周りにあったもの全てが消え去り、ただ光も出口もないような闇の中に僕は佇んでいる。


 しかしそれは一瞬で、瞬きをすると水晶に触れる前に見ていた元の教会の風景に戻っていた。

 「い、いまのは何だったんだ...?」とまた教会内がざわつき始めたが、本当に今のは何だったんだろう?

 てか、水晶は輝くんじゃなかったっけ?と思い手元の水晶に目を向けると、水晶が粉々に砕けていた。



「なっ!?あ、ありえん、水晶が壊れるなど!それに、なんだこのギフトは...?」



 水晶は何故か砕けたものの、ギフト名は表示されていたらしくそれを見ると、ギフト名が『???』となっていた。


 あれれ?おっかしいぞぉ~?ステータスでは僕のギフト名は『森羅万象』ってちゃんと表示されているぞい?


 も、もしかして、『森羅万象』って言葉はこの世界に存在しなかったのかしら!?


 勝手にギフト名を自分で付けちゃいけなかったのん!?


 意味が分からず変な口調になっていると、周囲からは「な、なぁ、あれって...」「もしかして...」となにやら不穏な雰囲気が感じられる。


 そして、今まで黙っていた司祭が口を開き、僕のギフト名を告げた。



「ユーリ、君は『ギフトなし』だ!」



 ...へ?










***










 司祭が的外れな発言をした後、周囲から侮蔑ぶべつの視線を向けられ始めたので、僕はすぐに教会の外に出た。


 ___何年振りだろうか、あんな視線を向けられたのは。


 まぁ実際のギフト名や能力がバレる方がよっぽど面倒なことになっただろうし、周りに自分のギフトのことを説明する手間が省けた分ラッキー!とスキップしながら帰りの馬車の元に向かおうとすると、「おい!お前!」と儀式に参加していた3人の少年に呼び止められた。



「お前、『ギフトなし』の異教徒なんだろ?そんな悪い奴は俺様が直々に成敗してやるぜ!」



 ...キノコ頭で太ったガキ大将のような少年にいきなり絡まれたんですけど!?


 それにその両隣にいる小さいサル顔の少年と細長いガリメガネの少年もニヤニヤと悪そうな笑みを浮かべてこっちを見てくるし...。


 も、もしかして、これがモテ期ってやつですか!?


 どう考えても違いますよね、すいません調子に乗りました。



「俺様は『火術』っていうギフトを手に入れて、ちょうどそれを試す相手も探してたんだ。お前みたいな異教徒に何しても問題はねぇよな!ブヒヒ、喰らえ!ファイアーボール!」



 僕が考えている間にもデブは何やらワーワーと話しており、挙句の果てにいきなり魔法をぶっぱなしてきやがった。

 他の二人もファイアーボールとは違う魔法を飛ばしてきている。


 ___こういう奴らってどの世界でも変わらないんだな。


 自分より下だと分かった瞬間、まるで自分が世界で一番正しいかのように振る舞い、平気で弱者を傷付ける。

 痛みも、苦しみも、悲しみも、何も知らないお前ら人間が、僕は憎くて仕方がない___。










 俺様達の魔法が異教徒に当たり、土煙が立ち上がっているのが見えたのを確認した俺様は、悪を倒した正義の英雄にでもなった気分だった。

 異教徒のボロボロになった顔を拝みに行こうと舎弟の2人に声を掛け、足を踏み出した瞬間、息ができなくなった。







 ...は?







 頭で息ができない理由を探すも、どうしてこうなっているのか全く意味が分からない。

 左右の二人も息ができないようで、喉を抑えながら苦しそうにしている。


苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい


どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして


 そうして前の土煙が晴れると、まるでさっきの魔法が当たらなかったかのように無傷の状態で立っているアイツがいた。



「どうして息ができないんだって顔をしているね。それはね、僕が君たちの周りの空気をさせたからだよ?」



 俺様の前にいるアイツは、今何と言った?

 空気を消失させた...?

 そ、そんなことできるわけがない!

 それにアイツは『ギフトなし』の異教徒だぞ!?


 次々と否定の言葉が出てくるが、声を発することができず、更に息苦しくなってきている。



「本当はね、君たちみたいな人間とは関わりたくないし、何かあっても面倒だから今すぐ殺したいんだ。僕は若い芽は早くに摘んでおくのが吉だと思ってるタイプだしね。でも、帰りの馬車も待っているし、まだ一応あの家にお世話になっている感じだからね、今回は見逃してあげるよ」



 アイツがそう言うと、息ができるようになり、俺様達はただただひたすらに空気を求めた。

 そんな俺様達にどんどんアイツは近寄って来たので、逃げようとして足を動かしたが、何故か足が動かずに俺様は地面に倒れこんだ。

 そんな俺様の耳元に口を寄せたアイツは、俺様にこう言った。


___「次は殺す」と。


 その後、アイツは何事もなかったかのようにスキップしながらこの場を去って行った。

 俺様達はその場から動くことができず、全身から汗や涙を流しながら、ズボンを汚いもので濡らした。


怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い


 何より恐ろしかったのは、アイツの目だ。

 アイツの目は、光を一切通さないどす黒い闇のようで、その目からは何も感じられず、その中にあるのは圧倒的な無であるように感じた。

 そんな俺様達を人間とも思っていないあの目をまた思い出し、俺様はいっそう恐怖で体をガタガタと震わせるのだった___。










***










 しばらく馬車に揺られていると馬車乗り場(日本でいう駅とかバス停みたいな感じ)に到着したので、僕は御者にお金を渡し、人気のない路地裏に隠れた後、『空間転移』でいつもの離れに移動した。

 ちなみに、空間転移はその名の通り空間に干渉することで次元の割れ目〈ワープゾーン〉を作り出し、移動したい場所に移動するワザだゾ。


 説明が短すぎるって?


 そう言ってくれないでおくれよ、実際に何がどうなって移動できているのか僕もあんまり分からんのよ...


 教会は一度も行ったことがなかったため馬車で移動したが、一度訪れた場所なら転移することができるので、いつも生活している離れには転移できるということだ。


 そして離れに転移した僕は、神臨の儀が終われば本邸、つまりヴォルテガード家の皆さんが暮らしている屋敷に来るように伝えられていたので、サッと部屋の掃除を済ませた後に本邸へ向かった。




 本邸の入り口に近づくと、入り口の前でヴォルテガード家の執事長を務めているフェルマーさん(数少ない養子の件を知っている内の一人)が、「おかえりなさいませ、お坊ちゃま。中で皆様がお待ちしておりますよ」と出迎えてくれた。

 「お出迎えありがとうございますフェルマーさん。わざわざ外で待たせてしまい申し訳ありません」と手間を掛けさせたことを詫びると、フェルマーさんは困ったような笑みを浮かべたが、すぐにいつもの表情に戻り扉を開けてくれた。


 そうしてその扉を抜けると、玄関ホールに3人が立っており、僕の姿が確認できるや否やクレアさんが僕の元に駆け寄ってきた。



「ユーくん、おかえりなさい!久々にユーくんがこっちに来てくれてお姉ちゃん嬉しい!」



 クレアさんは社交界でも見せないような満面の笑みを浮かべながら僕に抱き着こうとしてきたが、僕はすぐに一歩距離を開け、膝をついて頭を下げた。



「クレアさん、ただいま戻りました。それといつも申しておりますように、僕とあなたは血の繋がらない他人なのです。僕なんかのお姉ちゃんなどと言うのはおやめください」



 僕がそう言い放つと、クレアさんは悲しそうな表情を浮かべたが、「ごめんね、ユーちゃん」とややぎこちないものの笑顔を浮かべ駆け寄る歩みを止めた。



「そう悲しいことは言うものじゃないよユーリ。今日はお疲れ様」



「おかえりなさい、ユーリちゃん。元気そうな顔を見れて私は嬉しいわ」



 そう言って笑みを浮かべながら、ジークさんとレイナさんも近くにやってきた。

 僕が「ジークさん、レイナさん、ただいま戻りました」というと、2人もフェルマーさんと同じように困った笑みを浮かべた。

 それからジークさんが「よし、それじゃあユーリも無事帰ってきたことだし、みんなで昼食を食べよう」と言うと、レイナさんも「今日はユーリちゃんと一緒に食べる昼食だから、私と一緒にクレアちゃんもお料理を手伝ってくれたの♪」と言って食堂に行く流れになっている。

 クレアさんが「お、お母さまっ!?それはユーくんには秘密って言ったのに!」と顔を赤くして抗議している様子をジークさんとレイナさんが優しく微笑んでいる姿は、あまりにも理想の家族像のようで本当に絵になる。


 ...やっぱり、ここは僕の居て良い場所じゃない。


 なので僕は「皆さん、少しお話があるので聞いて頂いてもよろしいでしょうか」と、食堂に向かおうとしている3人の背に向けて声を発した。

 そうすると、3人は歩みを止めて振り返り、ジークさんが「それなら食堂でご飯を食べながらでも良いんじゃないのかい?」と尋ねてきたので、「いえ、この場で話させて頂きたいと思っております。もちろん皆さんの迷惑にならないよう手短に済ませます」と返すと、3人はまた悲しそうな表情を浮かべたが、「うん、それじゃあユーリの話を先に聞こう」とジークさんが笑顔で言うと、レイナさんも笑みを浮かべながら「ええ、そうね」頷いた。


 ...どうしてみんな悲しそうな顔をするんだ、僕は赤の他人で、みんなの邪魔をしている存在だというのに。



「ありがとうございます。では、手短に話させて頂きます。今日の神臨の儀で無事に『神臨証』を発行して頂けました。儀式にて僕は『ギフトなし』と判断されましたが、ギフトがなくともできる仕事は多くあるため、本日限りでヴォルテガード家から独立し、ただのユーリとして生きていきたいと思っております」



 僕が早口で伝えたいことを伝えると、3人は驚いた表情を浮かべた。



「ユーリ、君は『ギフトなし』と判断されたと言ったが、本当なのかい...?」



「はい、本当のことです」



 僕はそう言い、教会でもらったギフト名が示されている半紙をジークさんに渡すと、「まさか、なんということだ...」とジークさんは再度驚いた顔をして、レイナさんは「ユーリちゃん...」と呟き、動けないでいるようだった。



「教会を出ると早速異教徒であると非難の声を受けました。このままヴォルテガード家にいれば皆さんの迷惑や障害になることは確実です。ですので、先程申し上げたように、僕のような異教徒とは縁を切って頂きたいと思っています」



 僕がそう言うと、ジークさんが「ユーリは異教徒なんかではない!」と大きな声を出した。



「いいかい、ユーリ。自分のことを異教徒なんて言うのはやめなさい。僕たちは大切な家族だ。僕たちはユーリのことを異教徒などと言って蔑むことなんて絶対しないし、させない。それに半紙によれば『水晶が破損、原因は不明』と書いてある。もしかすると教会に不備があったかもしれないじゃないか。次は私たちと一緒に聖堂でもう一度儀式を受けてみないかい?他の人は呼ばない、僕たち4人だけだよ。それに、どんなことになっても僕やレイナが必ず守ってあげるからね」



...タイセツナカゾク?


...カナラズマモル?



僕がジークさんの言った言葉の理解に頭を悩ませていると、レイナさんも「そうよ、ユーリちゃん」とジークさんに続いた。



「ユーリちゃんは私やジークさん、クレアちゃんの大切な家族よ。ユーリちゃんが私たちに迷惑が掛かるからなんていう心配をする必要はないの。親は子を守るためにいるんですもの、ユーリちゃんは私やジークさんに沢山甘えて良いのよ」



...オヤハコヲマモルモノ?


...アマエル?



 ジークさんとレイナさんの言葉を聞いて、僕は胸の奥からせりあがってくる何かを感じていた。


 ___僕は、こんなの知らない


 ___家族はこんな温かいものなんかじゃない


 ___誰も守ってくれなんかしない


 ___人間なんて、誰も信じられない


気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い


 急激に頭が痛くなり、動悸も激しくなって今にも吐いてしまいそうだが、人様の家を汚すことはできないと自分を戒め、僕は二人に向き直した。



「お二人ともありがとうございます。ですが、やはり僕が血の繋がらない部外者であることは変わりませんし、そんなお二人に迷惑を掛け続けてお世話になることは尚更できません」



 そして僕は、以前から作成していた養子縁組の契約を破棄する誓約書を取り出し、ジークさんへと渡した。



「ここには既に僕の名前を記述し、血印も押してあります。これまで僕の生活費として頂いていたお金もしっかりとヴォルテガード家に全額返すという内容も加筆しておいたので、数年以内に必ず返済させて頂きます」



 僕がそう伝えると、ジークさんが「...ユーリは本当にそれで良いのかい?」と尋ねてきたので、僕は縦に頷いた。

 ジークさんは顔を伏せ、「僕ではまだ君の抱えている苦しみに寄り添うことができないようだ。不甲斐ない父親ですまない、ユーリ」と謝罪の言葉を口にした。

 レイナさんも沈痛な面持ちをしているが、「ユーリちゃんが決めたことだもの、私は行かないで欲しいけど、否定しないわ。でも、ユーリちゃんの帰りをお母さんはいつでも待っているからね」と優しい声で言った。


 ...どうしてだろう、二人の声や顔を見ると心臓が締め付けられて、苦しくなる。


 なんで僕はこの二人に罪悪感を覚えているんだ?


 自分で一人になることを望んだはずだろう?


 この場に居続けると、自分で自分を見失いそうになるので、「では、今までご迷惑をお掛けしました」と言って外に出ようとすると、「待ってッ!!」と玄関ホール中に大きな声が響き渡った。

 声を上げたクレアさんは、僕がジークさんとレイナさんと話している間、その場で俯きながら黙り込み、表情も見えないでいたが、今は赤く泣き腫らした目で僕のことを真っ直ぐ見ている。


「私、ユーくんやお父さま、お母さまが言ったこと、全然分からない。全然分からないよ!どうしてユーくんは家から出ていくの!?どうしてユーくんがそんな辛い思いしないといけないの!?どうしてみんな一緒じゃいけないの!?私ユーくんと離れ離れになるのなんて嫌だよ!まだまだいっぱいお話したいことややりたいこと、二人で行ってみたい場所だってあるの!私、ユーくんのお姉ちゃんだから、私がユーくんを守るから、だからどこにもいかないでユーくん!!」


 そうして声を上げてまた涙を流し始めたクレアさんに、僕は何も言えずにいた。

 周囲からは大人びていると言われているクレアさんだが、涙を流している姿はやっぱり10歳の女の子なんだなとふと思った。

 クレアさんは赤の他人である僕に対してあんなに涙を流すことができるんだ、そんな優しい人は僕なんかとはやはり関わっちゃいけない。

 僕が居なければ、彼女があんなに涙を流すこともなかっただろう。

 僕はクレアさんに背を向け、扉の方に歩いて行った。

 後ろから「待ってッ!!ユーくん!!」とクレアさんが近づいてくるが、僕の歩みが止まることはなかった。

 僕が扉を開いて出ようとした時に、クレアさんが僕の手を掴もうとして腕を伸ばしたが、空間の歪みによって僕に触れることができず、彼女の手は空を切った。

 そして、扉を閉めると同時に、僕は先程の人気のない路地裏に転移した。


 僕はとうとう我慢することができず、そこに吐瀉物をぶちまけたのだった___。










***










 しばらく経って気分も落ち着いてきたので、僕は気を取り直しから認識阻害の魔法を付与したお手製のローブを取り出した。

 この異空間はドラ〇もんの四〇元ポ〇ットのような感じで、荷物を別の空間に収納することができるのだ!

 空間に干渉したらなんかできた、超便利!


 さて、転生前とも合わせて初めての何にも縛られない自由なソロライフが幕を開けたのだが、どうしようかなぁ~?

 特に目的はないのだが、このライトニア王国に居続けるのは避けたいところだ、色々と...ね?

 ライトニア王国の他にも大小様々な国々が存在しているし、とりあえずこの世界中の国々を自由に放浪するとでもしますか。

 よし!それじゃあまずはライトニア王国のお隣に存在する、ギリオン帝国に向かおう!

 そうと決まれば善は急げ、早速王国の外を目指して門へれっつらごー!




 僕が意気揚々と路地裏を出発してから少しして、入り口の門がある場所に最短で行ける路地裏道を歩いていると、前の方で見るからに盗賊だと分かる装いをした四人組が会話しているのを目にしたので、僕は身を隠した。

 男たちは「おいおい、これは大物中の大物だぜ」「コイツを売ったらいくらになるんだろうな」「渡しちまう前に少し遊んでも問題ねえだろう?」「お前は本当にガキが好きだな」と興奮冷め止まぬ様子で上機嫌にやり取りを交わしている。

 四人の内の一人が、そのターゲットであった子どもを雑に抱えているが、その子はフード付きのローブを着ており、そのローブには認識阻害の魔法が付与されているようだった。


 ...顔は分からないけど、背丈の大きさ的に僕と同い年くらいか?


それにアイツらが大物と言っていたように、認識阻害付きのローブを持っている家なんて中々ないから、よほどの大貴族の子どもか何かなんだろう。

 子どもは気絶させられているのか動く様子はなく、男たちも周囲を警戒している素振りはない。

 僕は正直言って目の前の子どもがどうなろうが知ったこっちゃないのだが、体は前世でトラックの前に飛び出したあの時のように前へ飛び出していた。










「なんだ!?このローブのヤツは!」



 盗賊の男が一人声を上げた瞬間、四人の体はバラバラに空間ごと切り裂かれた。

 彼らは何が起こったのかを理解することなく絶命した。

 一瞬、ほんの一瞬であった。



「いや~、空間を分断してしまえば一撃で殺せるくね?と思ったけど本当にできるなんて...これは『次元斬』とでも名付けるとしよう」










***










 今僕はついさっき殺した盗賊の四人組を処分した後、誘拐されていた子どもが目を覚ますのを待っているところです。

 やはり近くで見ても、認識阻害の魔法によってフードの下の顔は良く見えない。


 ...これって、顔見ても良いやつですか?(好奇心)


 気になる!

 気になりだしたら止まらないぜ!

 ちょうど今はこの子も気絶している状態、なら今顔を見てもバレることはないでしょう!

 フラグになっているって?

 まさか、そんな都合良く目を覚ますなんてことはありゃしませんよ!


 ということで、僕は認識阻害の付いたフードを上げることにした。

 フードを上げると、誘拐されていた子がピンク色の髪をした同い年くらいの女の子であることが分かった。


 ...この女の子、どこかで見たことがあるような気がするんだよなぁ?


 と思いつつ顔をまじまじと眺めていると、やはりと言ったほうが良いのだろうか、フラグ通りにタイミング良く女の子が目を覚ました。



「あ、あれ?ここは一体...私どうしてこんなところに?」



「目が覚めたか。君が盗賊に攫われて運ばれているところを偶然目にして助けに入った。怪我はないか?」



 僕も認識阻害のローブを着ているとはいえ、用心に越したことはないと思い口調を変えながら状況を説明すると、女の子はようやく状況を理解し始めた。



「そ、そうだ!私一人で抜け出して街をお散歩していたら急に後ろから捕まえられて...それで」



 女の子は男たちに囲まれた場面でも思い出して怖くなったのだろうか、急に涙を流し始めたので、僕は慌てて女の子に『ハンカチ』を渡した。



「大丈夫だ。君を誘拐しようとした男たちはもうここにはいないし、君が奴らから襲われることもないだろう(だってもう死んでるしね)」



 それを聞いた女の子はハンカチを涙で濡らしながらも少し安心したような表情になった。


しばらくして女の子が泣き止んだ後、僕が「それじゃあ君をお家に送り届けようと思うが、君はどの辺で生活しているんだ?」と尋ねると、いきなりの質問に目をぱちくりとさせながら女の子は「...王城」と呟いた。


 ...王城の付近で生活しているとなると、やはりかなりの大貴族出身っぽいな。



「それじゃあ、今から10秒だけ目を瞑ってくれ。君を送り届けよう」



 またしてもいきなりのことで少し困惑したような表情を浮かべたが、怖いことがあった後ということもあり、女の子は素直に目を瞑ってくれた。

 女の子が目を瞑ったことを確認できた僕は、この場所と以前一度だけ行ったことのある王城近くにワープを繋げ、女の子を空間転移させようと試みた。

 すると、転移をさせようとした直前に、「あ、あの!」と女の子が目を瞑りながら声を発した。

 僕が「どうした?」と声を掛けると、女の子が「あなたのお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」と聞いてきたので、些細なことでも面倒事になりそうなきっかけは回避しなければならないを教訓にしている僕はこう答えた。



「ウォルターだ」



 名を告げた直後、女の子の転移は完了した。


 ___神臨の儀で水晶光らせてた青髪少年、名前借りました、ごめんネ。




 そして、僕はこれから名前を聞かれた時にはなんて答えようかなぁと偽名を考えながら、改めて門に向けて歩みを始めたのだった___。










***










 私が目を開けると、そこは王城の前だった。

 私の姿を確認した騎士の人たちが、慌ててこちらに向かってくる。



「どうしてピリカ様がこんなところに!?」



 私の名前はピリカ=オブ=ライトニア、このライトニア王国の第二王女だ。

 最近王城の隠し通路を見つけた私は、定期的に人目を盗んでは王城を抜け出して街を冒険していた。

 しかし、一人で歩いていたところを盗賊に襲われ、誘拐された。

 そんな私を助けてくれたのが、あのローブの人物だ。

 ローブのフードを目深に被り、声も違和感のある様子で、顔も声も分からなったが、身長は私と同じくらいだったのでもしかしたら私と歳が近いのかもしれない。

 そして、名前も最後に聞くことができた。



「ウォルターさん...」



 どうしてか分からないが、私はまたあの人と出会えるような気がしている___。










プロローグ、旅立ち


読んで頂きありがとうございました。


・『ユーリ』イメージイラスト

 「容姿は普通、the普通」と言ってたくせに、顔が良すぎる!

挿絵(By みてみん) 

・『クレア=ヴォルテガード』イメージイラスト

 これは天使!こんなお姉ちゃん羨まし過ぎる!

(1枚目)

挿絵(By みてみん)

(2枚目)

挿絵(By みてみん)

・『ピリカ=オブ=ライトニア』イメージイラスト

 ピリカちゃんのイメージはthe王道ヒロインって感じです!可愛い!

(1枚目)

挿絵(By みてみん)

(2枚目)

挿絵(By みてみん)


イラストはご自由にお使いください(『イセソロ』の宣伝お願いします!)

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