秋
「尚、お前やったな。今日は飲み行こう、お祝いだ。」
「ありがとうございます。でも、お祝いだなんて、たいしたことではないですよ。」
「何言ってるんだ。お前が初めてとった契約だぞ。指導係の俺が祝わなくてどうするんだ。」
「それは。。。すいません。」
「せっかくの機会だ。チームのみんなも呼んでみんなで盛大に祝おう。何か食べたいものはあるか?」
「好き嫌いはありませんが、、、ただ。。」
「なんだ?」
「「カラスウリ」が食べたいです。」
「よし、わかった。「カラスウリ」だな。そのご馳走でお前を祝ってやるからな。」
「おまえ、高野先輩のこと嫌いだろ。」
「どうして?」
「うちの部署の先輩から聞いたぞ。お前、VIP表彰の知らせの後高野先輩と飲んだんだろ」
「軽くお祝いはしてもらったけど」
「そのとき言ったんだろ?」
「なにを」
「「カラスウリ」を食べたいですって」
「それは、確かに言った。」
「大変だぞ。高野先輩「カラスウリ」なんて知らないから同期から上司まで知り合い伝ってみんなに聞いて回ってる。」
「はは、、、」
「笑ってる場合か。検索しても出てこないからお前の知り合いに聞きまわってるんだぞ。そのうち「カラスウリ」なんて食べるものじゃないことに先輩も気づく。」
「気づいたらどうなるかな。」
「俺は知らないぞ。」
「左野くんから話を聞いた。」
「「カラスウリ」についてですか?」
「そうだ。あれは食べられる代物じゃないらしいな。」
「。。。」
「どうしてそんなものが食べたいといったんだ?私への嫌がらせか?」
「。。。」
「とにかく。私にはお前のほしいものを用意できそうにはなさそうだな。」
「報奨はなしですか。」
「今回の働きに応じてそれなりに査定が更新されるだろう。」
「。。。。「カラスウリ」は食べられます。」
「、、、」
「未熟な「カラスウリ」は青臭く、味もないため全く食用には向きません。しかし、熟した果実は栄養価も高く何にも代えられない甘美な味愛があります。」
「それは別の果実ではないのか。」
「「カラスウリ」の話です。」
「ではお前が望むのはその「カラスウリ」なのか。」
「そうです。」
「わかった。約束だからな。その「カラスウリ」を用意してお前を祝ってやる。」
「左野、助けてほしい。」
「どうしたんだ。お前からくるなんて珍しいな。」
「高野先輩が行ってしまった。」
「第8次攻勢か。うまく農耕地帯の奪取を狙うとの目論見だが果たしてうまくいくかな。」
「あの地域は私たちの地元だから。」
「「カラスウリ」があると考えているのか。」
「でも、あそこには。」
「わかっている。俺がどうにかする。」
「随分と反抗が激しいな。この程度の土地を命を懸けて守る必要があるのか。。。」
「この程度で申し訳ない。それでも彼らにとってはそれなりに思いれある土地なんだ。」
「左野君はこの土地出身だったね。」
「あまり誇りにはできませんが。」
「もう一度聞きたいのだが「カラスウリ」というのはこの地にとって大切なものなのかな?」
「ありきたりな雑草ですよ。」
「では君にとってもなくなってしまっても構わないということか。」
「。。。」
「高野先輩、私の地元を壊さないでください。」
「これは命令に基づく行動で私には拒否権はないよ。」
「命令するよう依頼したのは先輩のはずです。お願いだからやめてください。」
「不毛な行為を続けるつもりはないよ。尚、なぜこうなったのかを教えてくれ。」