23.正統なる後継者
夜遅くにもたらされた報に、王は不機嫌を隠しもせず、豪奢な椅子の肘掛けに頬杖をついた。
だるそうに、ランバルドに問う。
「それで?」
「大規模な爆発は魔道具によるもののようです」
夕暮れ時に起きた、騎士団演習場の爆発事故について、ランバルドはそう王に報告した。
不可解な点も多いが、落ちていた魔道具の破片を、急ぎ解析したバルトサールが、魔力による攻撃でなければ物理的にあり得ない破損の仕方をしている、との見解を示したからだ。
ならば、|三人《オリヤン、エリアス、パトリック》の魔道具がそれぞれ爆発する際の魔力の衝撃によって、各自の魔道具が破損したと考えるのが自然だと結論づけた。
詳細な検証は後日行う予定なので、第一報として、ランバルドがマクシミリアンに伝えられたのはそれだけだった。
ランバルドの言葉を聞いたマクシミリアンは、「そうか」と頷いただけだったが、心の奥では、あの爆発は魔道具の力などでは、あり得ないと分かっていた。
魔石には籠められる魔力に限りがある。
爆発は城からも見える程だった。
あの規模の爆発を、しかも一時に何度も起こすとなれば、それは最早神の領域だ。
|同じ騎士団の見習い《オリヤン、エリアス、パトリック》に襲われたのは共に、オールストレーム公爵家の息子達だと聞いている。
その内のラーシュ・オールストレームは、妾腹の子供だ。最初に報告を受けた時、マクシミリアンは、アンディシュも人の子だったかと思ったが……。
――――キルスティ。神族に嫁いだマクシミリアンの異母妹。その母親は、オールストレーム公爵家の出身だったか。
つまりラーシュは。
――――正統なる次代の王
何度かアンナリーナとの婚約を打診した際、アンディシュが頑なに拒んでいたのはそのせいだったのか、とぎりりと唇を噛み締めた。
「……殺してやる」
しかし、如何せん義はあちらにある。
どうやってラーシュを亡き者にするか。
マクシミリアンはぎらついた眼で虚空を睨んだ。
二章完結です。
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