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Fire.07 山の麓の悩み事 1

 田中さんに変な因縁をつけられてから3日後。あれからも数回ほど絡まれそうになったが、そこは気づいた瞬間に近くに居た人に話しかけるなどして華麗にスルーというやつをしていた。これ以上自分の印象が悪くなるのが嫌なのか、その時はすぐに引き下がってくれていたから助かった。


 そして今日。私はいつもより家を早く出て新宿駅にやってきた。朝8時になって混雑が本領発揮された駅構内では立ち止まることができないと判断した私は、バスタ新宿がある方の出口のわかりやすいところで立ち止まりスマホを開く。


「大門さんは……まだ来てないんだ」


 チャットアプリを開いてみると、連絡の相手はもうちょっとで中野に着くという。この大門さんという人は私の同期……そして今回の山梨観光事業で本社から派遣されるもう一人の担当の人だ。新入社員歓迎会の時に課長から紹介されて連絡先を交換しておいたから、こういう時の待ち合わせには便利だ。


『ごめんねー、あまりに混んでたから1本見送ったの~』

『大丈夫ですよー。そうだ、待っている間に発券しておきますね』

『助かる!!』


 初対面は緊張したが、大門さんがかなりフレンドリーなおかげで今ではかなり打ち解けて、友達感覚で話すことができる。年齢も同じ22で大卒だし、女子力高いし。正直気軽に友達感覚で話せる人は会社の中には少なかったので大いに助かっている。


 だってPMC課の大空課長を見ると小学生への対応みたいな風になってしまうし、カリンさんにはなんか敬語になっちゃうし。うちのとこの課長個性的だし。だからあんま気軽に放せる人少ないの!! 決してコミュ障とかじゃない!


「と、とりあえず特急券の発券だけしちゃお」


 もう少しで新宿に着くという大門さんからの通知を見た私は、流れる人込みを逆流して駅の中に入ってからみどりのの窓口へ。窓口の人に言って手配していた特急券とかを受け取って外に出ると、そこには息を切らした大門さんの姿が。


「おはよー……ごめん、遅くなって」

「いえいえ、全然。発券は済ませたので早速行きましょうか。あと14分で発車しちゃいますし」

「だね~。そだ、どっちが窓側座る? じゃんけんしよ」

「あはは……じゃあ窓側はお譲りしますよ」

「そう? じゃあお言葉に甘えて!」


 天真爛漫というか、かなり明るい性格の大門さん。スーツでもオシャレに着こなせるファッションセンスの持ち主で、茶色い長い髪とピンクの髪留めがトレードマークのいい人だけど……実はこの人、PMC課の所属だ。あのムキムキマッチョな方々と実力は既に互角で、何件か要人護衛とかもしているそうだ。


「まあ、本当のこというとあたしは殺し屋なんだけどね~」

「それ普通に人前で言っていいんです!?」

「うん、別にー。この会社の面接でも家が殺し屋って言ったら入れてもらえたし。世の中多様性だから~」


 いやいやいやいや、多様性だけであんま済まされる話じゃないと思うんだけど……。というか、そもそも論で殺し屋とかこの現代日本に存在したんだ。え、じゃあ私も狙われたら殺されるってこと? マジ?


「いやいや、そんな見境なく殺すわけじゃなくて。重要犯罪から逃れた犯人とか、そういう外道たちを暗殺しているのがあたしたち殺し屋。義賊みたいなもんだね」

「そ、そうなんですか……」

「そうだねー。わかりやすい例を言うと、数年前に色々ボロが出て国会議員辞めさせられた政治家いて、その後行方不明ってニュースあったじゃん? アレやったのうちのお父さん」


 マジですか……数年前の国会議員汚職事件と言えば私も覚えている。というかなんなら大学1年生の時のレポートのネタにした。確かあの事件は、息子の女性への暴行行為や政治家自身の不倫等が公になってしまい、国会議員の座を奪われたというもの。その後の消息はすぐに不明になっていたが、まさか殺し屋に殺されていたとは……。ということは、大門さんのお父さんって、実はすごい人?


「うん。殺し屋業界の中ではかなりトップな方! だからあたしもここで経験積んだら稼業つぐんだ~」

「そ、そうなんだ……」


 あまりにもすごい話が飛び出してきてドン引きしているうちに辿り着いたホームは中央線特急専用のところ。右のホームに止まっていた”かいじ”という特急列車に乗り込んで自分たちの席に座れば、丁度電車が発車した。コンビニとかで朝ごはんとか買ってたから乗車するのがギリギリだったようだ。


「えーっと、これでどこまで行くんだっけ。時間あるんだったら少し寝たいかも……」

「終点までですから、寝過ごしとかないので大丈夫ですよ~。それに私も起こしますから」

「ありがとー。明乃ちゃんやさしー!」


 正直私も眠いには眠いけど、少し乗り物酔いしやすいから電車の中とかだとあまり眠れない。文字を見るのもあんまりできないので通路側の席から流れる景色を見ることに。電車が速度を上げるごとに都会のビルの景色が後ろに流れていく。


 高尾を過ぎてから山越えに入った電車は、途中色々な駅に止まりながら快走を続けると10時過ぎに甲府に到着。ここからはバス移動になるようだ。


 快眠を続けていた大門さんを起こし、今度は高速バスへ乗車。またしても眠りについた大門さんをいつでも起こせる準備をして進むこと40分。高速バス停で降りた私たちを待っていたのは……


 大きな山の麓にそびえたつ、とてものどかな街だった——

家に帰るのが遅すぎて22時30更新が精いっぱい……今後もこの時間めどに更新するんでオナシャス!

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