表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

Fire05.期待されたようです

 パソコンを無事車の中に積載した私は、課長に頼まれた備品予備の買い出しをした。ここ1か月は備品チェックとかの仕事をしていたからどの会社のなんのモデルかはわかっている。いつもは業者に頼んでいたが、2~3個の呼びぐらいであればそこら辺の電気屋で買ってきたほうが早いのだとか。


 最終的にタッチペンやマウス、課長の個人的な頼まれごとでスマホスタンドに印刷用カラーインクをダース買い。またしても私の大人買いにびっくりしていた店員さんだったけど、領収書の宛名で全てを理解したようだ。


「よし、買えたから帰りますか!」


 結局、ダースで買った業務用印刷カラーインクが重すぎて持てなかったから、また店員さんに手伝ってもらって車に詰め込んだら買い出し完了。何も忘れ物がないことを確認してから出発。電気屋の駐車場から一般道に出て、来た道を戻る。


 溜池山王から虎ノ門を通り、会社に戻ってきたのは15時前。渋滞していたせいでかなり時間がかかってしまったようだ。


「よし、じゃあこれを上に……む……!」


 駐車場にしっかりと止めた私は、一番でかい段ボールを持ち上げようとするが、一切合切動く気配がない。しっかりと取っ手をもって持ち上げようとしてるのにm持ち上がらない。まるで象でも持ち上げているような感覚になっていた時、あることを思い出した。


「あ、そういえばこれ持ち上がらなくて店員さんに手伝ってもらったんだった」


 誰かに手伝ってもらお……。


 〇 〇 〇


 結局のところ、パソコン等はPMC課に居たムキムキマッチョな方に手伝ってもらってなんとか設置を終わらせた。自分だけじゃ持てなかった大型モニター諸々の一番でかい段ボールと業務用カラーインク1ダースを同時に軽々持ち上げて歩いていくPMC課の人を見ると、私も筋トレした方がいいじゃないかと思ってしまう。最近ちょっとお肉ついてきた気がしなくもないし……。


 今日帰ったら早速やれることをやろうと考えながら自分の机に戻ってくると、パソコンの上に付箋が置いてある。おそらくは誰かからの伝言の書き置きなのだろう。


「なになに……? 『帰ってきたら課長デスクまで。仕事割り振ります?』」


 綺麗な字……おそらく長谷川課長のものだろう。仕事を割り振ると言っているから、なるべく早く行ったほうがいいに違いない。おそらくまた事務作業とかだろうし、定時まであと3時間あるから進められるところまでやるようにすれば明日が楽になる。そう思った私は、少し急いで課長のデスクへ。


「あら、帰ってきたのね」

「すいません……遅くなってしまって」

「別にいいのよ。ちゃんとPMC課から報告受けているし。それで、次のお仕事なんだけど……あなた、1つ案件受けてみる気はあるかしら?」

「案件ですか?」


 今まで会社全体の事務作業が主な仕事だったから、案件という言葉に違和感を感じていると、課長はとあるパンフレットを私に差し出してきた。表紙には自然豊かな田舎の風景の中を、男女が楽しそうに自転車で快走している画像。裏面には渓流が書かれている。


「そのパンフレットは、山梨県のとある町の観光協会が作ったもの。昔はそれなりのレジャースポットとして有名だったんだけど、最近は観光客が衰退しているの」

「な、なるほど?」

「言いたいことはわかるわ。うちは観光業はやってないものね。ただ、山梨の営業所がこの町にあるのよ。だから、地域の活気を上げる再建プロジェクトに参加したわけ」

「そ、そうだったんですね」


 ブラックカンパニーは様々なものを取り扱っている。アメリカではスーパーチェーンやアパレルショップもやっている。日本ではアパレルショップとか、IT系だったりとか。他にないものだと、工事や農業用の重機を製造している。しかし、観光業には進出してないから少々違和感があったのだ。


「実はプロジェクトチームから若い子の意見も聞きたいって言われててね。丁度いい人を探してたら……あなたがいたってわけ」

「はぁ……じゃあ、私は意見を出したりすればいいんですか?」

「そうね。会議に出るのもそうだけど、実際に向こうに行ってアクティビティをやって若者視点の意見も出すのよ。今はもう時代が進んで若者の価値観がまた違ってきているからね」


 聞いたところによると、このパンフレットは平成元年からずっと中身の内容が変わってないのだそう。表紙とかは撮りなおしたりしているものの、一度反響がよかったものを変えることができなかったらしい。確かに20年も時の差があれば今のニーズに対応できるわけがないか……。


「じゃあ、私は山梨の営業所に出向……?」

「いいえ、普段はここで仕事をして、会議があるときはリモートでしてもらうことになるわね。それと、1週間に1日だけ現地に行ってもらうわ。移動費とかは特急料金やタクシー代含めて経費で落ちるから安心して」

「そうですか……」


 一瞬山梨に出向になって引っ越ししないといけないかと考えたけど、その必要はないようだ。山梨だとここから2時間くらいだろうか……ちょっと遠いけど、できなくはない。それに、新しいことにチャレンジするのはいいことだと思うし、やろうかな。


「わかりました、やります」

「ありがとう。あなたは新人の中でも特に優秀だから、ここでもきっといい活躍をできるはずよ。ちなみに、あなたの同期の子がもう一人このプロジェクトに参加するそうだから、今日の歓迎会で話してみるといいわよ」

「了解しました!」


 もう一人の参加者の名前を聞いてメモしたあとは、課長が教えてくれた簡単なスケジュールをもとに来週のスケジュール表を作成。特に意識しているわけではなかったけど、もしかしたら出世街道というものに乗ったのでは? と考えると、自然と口角が上がってしまう。


 頑張らなくては。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ