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バレンタインチョコに薬を盛られてしまったがここからどうしよう?

掲載日:2023/02/14

 今日はバレンタインデー。男子が過剰な期待を持って学校に登校する日である。なぜそこまでバレンタインデーに全てをかけられるのかわからないが、いろいろ人に言えない目当てがあるのだろうな。


 学校に登校して下駄箱を開けると、一通の手紙が入っていた。


 ……なんだと。俺は今日も含め、いつもほぼ一番乗りで学校に来ているはずだが。まさか俺より早く学校に来るとは。やるな。


 あ、昨日のうちに入れた可能性もあるのか。まぁいい。とりあえず教室に戻って内容と宛先を見てみる事にしよう。


 俺には学校1モテる男子の親友がいる。その人に渡して欲しいと書いてある可能性がある。


 というか、実際一度あった。


 靴を履き替えて、そして俺達2年生の教室がある3階へ向かう。俺は2年5組だから、一番奥になる。地味に毎朝ここを歩くのがめんどくさい。


 教室にはいるといつも通り俺以外誰もいない。俺は自分の席である窓側の一番後ろの席に着く。


 もう席替えはしないで欲しい。


 さて、手紙に目を通しておくか。宛先が俺じゃない人ならば、俺がその人に渡しておこう。宛先は……。手紙の封には書かれていないな。


 さては手紙の一番最初にしか書いていないタイプだな。もし宛先が違ったら申し訳ない。少し開けさせていただこう。


『拝啓 珠洲島 明菜さま。本日放課後、お渡ししたいものがございますので、学校に近くにある書店までお越しいただけますでしょうか』


 間違いなく、宛先は俺であった。で、誰からだ? 名前書いてないし……。


 で、お近くの書店? 七海書店か? 個人営業の。よくわからん。


 しかし、もし本気でこの手紙を書いてくれたのなら行かないのは可哀そうだ。一応放課後、七海書店を訪ねてみるか。


◆◆◆


 浮足だつ男子諸君をしり目に俺は学校を出た。学校に来るのが一番早いからには一番早く帰る権利もあるだろう。


 ということで早々に学校をでて、書店へ向かう。軽く積もった雪をみるに、俺の先に学校をでた人が数人いるようだった。最近は俺が一番早かったのだが。


 バレンタインの雰囲気が嫌いな人がいたのだろうか。そんなことをいったら俺もその1人にあたるかもしれないのかもしれないが。


 数分歩いて、目的の七海書店に到着する。こじんまりとしているが、学生が欲しい本が置いてあると学校では人気の書店である。


 ドアを開けて中に入ると、カウンターの中にうちの学校の制服を来た女子がいた。その人は誰が見ても美少女というほどかわいらしい見た目をしていた。少し小さな体格と、綺麗に整えられた肩ほどまでの髪が印象的だ。そして、制服のクラス証には1‐4と書かれている。


「珠洲島先輩、お待ちしていました!」


 カウンターからこちらに来たこの女子生徒は俺の方へ近づいてくる。美少女に近寄られた俺は気が負けているからか、一歩後ろに下がる。


「先輩!? なんで避けるんですか!?」


 その美少女はそう言って俺に詰め寄ろうとしてくる。この子と俺、初対面のはずなんだけど。


「ちょっと待って。初対面だよね?」


「いいえ?」


 え? 予想外の答えが返ってきた俺は困惑する。こんな美少女の知り合いはいないはずだ。


「失礼だけど、どこかで会った?」


 その質問に不満げな顔をしたその美少女はその尖らせた口を開く。


「七海 いちごですけど。中学で部活同じだったじゃないですか」


 そういえばこの声には聞き覚えが……。中学の頃の俺は文化系のパソコン部に所属していた。その時に七海っていう失礼だけどぱっとしない後輩がいたな……。


「なるほど、高校デビューか……」


「あ、思い出しました?」


 確かにあの頃はよく話しかけてもらっていた。


「ああ、ずいぶん変わったな」


 話し方も変わっているから、1年半以上会っていなければわかるはずがない。


「そうですよね~。いや、やっと先輩に話しかける準備ができたので」


 準備? 一体何を準備していたのだろうか。


「そういえば、渡したいものってなんだ?」


 どうやらあの手紙は本気で書いたもののようだし、何か渡すものがあるのだろう。


「先輩、察しが悪いですね……。はい、チョコです」


 美少女からチョコレートをわたされるという垂涎ものの状況だ。2度と機会はないだろうし、ありがたくいただくことにしよう。


「ありがとう」


「せっかくだから、今食べちゃってくださいよ~。手作りなんで感想聞きたいです」


 七海がそんなことを言う。確かに自分が作ったものの他人からの感想は気になるものだ。遠慮なくいただかせてもらおうか。


 箱を開けるとチョコレート特有の甘い香りが漂う。まるで高級チョコの箱を開けたときのよう。


「匂いだけですでにうまくできてるってわかるぞ」


「あはは、ありがとうございます。ささ、食べちゃってくださいよ」


 やたらと食べる事を進めてくる。そんなに感想が聞きたいか。匂いの時点でうまいことは確定だろうし、期待して一口サイズのチョコレートを口に入れる。


「うん、めっちゃうまいわ」


「全部食べちゃってください、ゴミはうちで捨てるので」


 あ、そういえば七海って、ここの書店の人か? 苗字が同じだし、多分そうなんじゃないだろうか。


 そんなことを考えながら残りのチョコを食べてしまう。どれも味が違ったが、甘味やイチゴチョコの酸味がある素晴らしいものばかりだった。


「ありがとう、美味しかったよ。チョコで店開けるんじゃないか?」


 そう褒めてゴミを処理してもらうために渡すと、急に七海が下を向いて笑い始めた。


「ふふふ、引っかかりましたね……。1年半計画を練ったおかげですかね……」


 引っかかっただとか、計画だとか、一体何を言っているんだ?


「七海? どうしたんだ?」


 そう質問すると、下を向いていた七海が顔を上げる。その顔には悪役っぽい笑みが浮かべられている。……毒でも盛られたか?


「どうです? 私の事が愛おしく思えてくる頃じゃないですか?」


 その美少女っぷりは損なわれないが、凶悪な悪役顔で竹島がそんなことを言う。


「どういうことだ?」


「まだ効果が出てませんか……先ほど先輩が食べたチョコにはですね、大量の惚れ薬が入っているんですよ」


 え、薬盛られたの俺。そんな感じは一切ないのだが……。まだ効果が出ていないということなのだろうか。


「どうしてそんなことを?」


 俺がそう問うと、七海は素直に答えてくれる。


「どうしてって先輩が好きで好きで仕方ないからに決まってるじゃないですか。中学に入って初めて部活で話してもらったときからずっと好きなんですよ先輩のことが。先輩を私のものにしたいんです。だから先輩に好かれやすいように見た目も良くして、ずっとずっと失敗しないように計画を立てて頑張って薬を入手して。苦労したんですよ本当。だから私のものになってください」


 ハイライトを失った瞳をした七海にまくしたてられる。まるでアニメを見ているような気分で冷静であった俺はこう答える。


「別にいいぞ」


「効果が出るまでじっくりまってから私のものに……っていいんですか?」


 まだ効果が出てないのに了承した俺に今度は七海が驚く。


「ああ、昔から積極的な七海が気になっていたからな」


 まさかここまで押しが強いとは思っていなかったが。まぁ積極的に話しかけてくれる姿は魅力的に映ったものだ。たとえ見た目がぱっとしなくても。


 こうなってくると最初にわからなかったのが申し訳ないな。いつも思い出していた七海の姿とは全く異なっていたものだから。


「じゃ、じゃあお付き合いとか、してくれます?」


「七海が望むならいいぞ。まぁ俺からお願いしたい所ではあるけどな」


 そういうと七海が感極まったかのように抱き着いてくる。


「じゃあ是非、お願いします! これで先輩は私のもの。ふふっ」


「そうだな」


 そう言って抱きしめ返すと、少し体が火照ってきた。……ちょっと待てよ。どんな薬入れたのか確認しよう。


「お、おい七海」


「なんですか先輩。付き合うことになったんですし、名前で呼んでくださいよ~」


 聞きたいことがあるが、甘えた声でそう言ってくるいちごに返事をする。


「わかったよいちご。それで、なんて名前の薬を入れたんだ?」


 大変嫌な予感がするのは俺だけだろうか。いや、きっとこの状況を誰かが見ていたら皆嫌な予感がしているに違いない。


「えーと、エクスなんちゃらです」


 んーそれあれじゃん。R18のやつ。


「どれだけ入れたんだ……?」


 冷や汗を流しながらそう聞くと、花が咲いたような笑顔でいちごが言う。


「たくさん入れました! 先輩、私の部屋に行きましょうか!」


 まさか、最初からこのつもりで?


「絶対、先輩を逃がさないためですよ……」

 ハッピーバレンタイン!

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