危機
ーリリーラ王国宮殿
今日の天気は曇りで、仕事をするには気が重くなるような感じがした。
(でも昨日は休みでゆっくり休めたから、頑張ろ……)
そんなことを思っていると、ユーリヤが話しかけて来た。
「ルーナ様、ボーッとしてるようですけど大丈夫ですか?」
私は少し驚いたが、
「大丈夫よ!!」と答えた。
今日は、天気のせいか元気が出ない。体調が悪い訳ではない。
(この前みたいにお父様とお母様、ユーリヤに心配かけないようにしなきゃ)
「そういえば、クロエ様とアメリア様が急遽執務室にくるように言っていましたよ」
「えっ!そうなの?お父様とお母様が急遽私を呼び出すなんて珍しいわね」
「何年もルーナ様のお側におりますが、言われてみればこんな事初めてですね」
「余程の事があったのかしら。とりあえず、すぐに執務室に向かいましょう」
「承知しました」
こうして私達は執務室へと向かった。
ーリリーラ王国宮殿執務室
執務室へ行くと、お父様とお母様が真剣に話していた。私達が執務室に入っていた事も、声をかけなくては気づがないくらいだった。ユーリヤがお父様達の異変に気付いたのだろうか。そっと、声をかけた。
「クロエ様、アメリア様。顔色がよろしくないようですが、大丈夫ですか?」
すると、驚いた様にこちらに顔を向けて言った。
「心配をかけてすまないな。大丈夫だよ」
「ごめんね、ユーリヤ。心配かけて」
「いえ、全然大丈夫ですよ」
お父様とお母様は『大丈夫』とは言っているが、とてもそんなふうには見えなかった。いきなり私達を呼び出したくらいだ。何かあったのだろう。
「お父様、お母様。今日はいきなりの呼び出しでしたがどうしましたか?」
私がお父様達に尋ねると、「いい?よく聞いてね」とお母様が言った。それに続く様にしてお父様が口を開いた。
「ルーナ。最近汚れ払いをやっていて、汚れ払いにくる人数が少ないと感じているか?」
それは私にとっては唐突な質問だった。
「はい、感じています。ですが、汚れ払いの人数が少ないのはいい事ですよね?」
「ああ、そうだ。本来ならそう考える」
「ルーナ。貴方の言っている事は正しいことよ。普通だったらそう思う」
お父様の言葉に付け足す様にしてお母様が言ったが、なぜか私が言った、『汚れ払いの人数が少ないのはいいことですよね』という私の言葉を否定しない。考えは正しいと認めてくれる。なぜだろう。そう疑問に思っていると、お母様が言った。
「いい?落ち着いて聞いてね。今、このリリーラ王国には私達のように汚れ払いをする人を悪く思う人がいる。理由はまだ分からないけど。だから、彼らは私達を汚れ払いを出来なくするために、リリーラ王国中から汚れを集めているの」
私はその言葉を聞いて驚いたが、お母様は話を続けた。
「最近汚れ払いに来る人が少ないのはこれが理由よ」
最後までお母様の言う事を聞いていたが、ふと、疑問になる事があった。
「お母様、2つ疑問に思う事があるんですけど……」
「いいわよ」
「1つ。汚れをどうやって集めているのか。2つ。汚れを集めても、私達は汚れを払う事が出来ます。集めても払われてしまうだけなので、汚れ払いを出来なくさせる事は不可能に近いと思うんですけど……」
「そうね。ルーナ、貴方の言っていることは最もよ。でもね、汚れ払いをさせなくするのは難しいかもしれないけど、汚れを集めるのは私達が思っているよりも思っているよりも簡単なのよ」
私は、その言葉を聞いて驚いた。ユーリヤも驚いた顔をしていた。私は咄嗟にお母様に聞いた。
「どうやって集めているんですか?」
するとお母様が言った。
「汚れを集めていると言ったけど、少し違うかもしれない。正確に言うと、汚れが溜まった人を集めていると言った方がいいかしら」
「そんな……。でも、そんな事したって……」
「ルーナ。貴方の言いたい事はよく分かるわ。私達も何が目的なのかは調査中だから、まだ詳しい事は分からない。だから、目的が分かるまでルーナは汚れ払いは気をつけてやるのよ」
私はその言葉を聞いて少し目を見開いた。お母様の事だから、しばらくは汚れ払いはしないように、って言うと思ってたのに……。
今度はお父様が私の様子を見て察したのか、付け加えるように言った。
「汚れ払いをやらなくなったら、関係のないリリーラ王国の民の汚れが溜まっていく一方だろ。それはなんとしても阻止したいからな」
「お父様、お母様……」
「それにルーナに言っても聞かなそうだしな。その代わり無理はダメだぞ」
「はいっ!!お父様」
「ユーリヤ。ルーナの事はよろしく頼む」
「大変だと思うけど、よろしくね」
お父様とお母様がユーリヤにそう言った。
するとルーリヤは礼をしながら、
「承知しました。ルーナ様はこの身に変えてもお守りいたします」
と言った。
汚れ払いの開始時間も近かったので、お父様とお母様からの話は終わった。執務室を出て汚れ払いの会場に向かった。
ー汚れ払いの会場
『エルティアルの名の下に、汝に希望の光があらんことを……』
私はそう唱える。すると汚れは消えていく。今日は、汚れ払いに来る人が少ない。今日も、と言った方が正しいだろうか。やっぱり、さっきお父様とお母様から聞いた話は本当なんだ、と思いながら、たまに汚れ払いに来た人の汚れを払っていく。
「本当に来る人、少ないわね」
「そうですね。でも大丈夫ですよ、ルーナ様。クロエ様とアメリア様ならきっと犯人をすぐ捕まえてくれます。そしたら汚れ払いに来る人も増えますよ」
「そうだといいわ」
それから、私達は少しゆっくりしていた。
ー午後
あれからあまり人は来なかった。もうすぐ汚れ払い終了の時間。少し早いが、私とユーリヤは片付けをしていた。もうこんな時間に来る人はいないだろうと思ったから。するといきなり、コンコンとドアがノックされた。私はユーリヤに、ドアを開けるように言った。
ドアが開けられて、姿を見せたのは20代くらいの女性だった。一般人なら普通に見える。本当に普通の女性。私から見ても、普通より少し汚れが多いくらいの女性に見える。でもなんだろうか……。上手くいい表せないけれど、今まで払ってきた汚れと違う気がする。
気にしていても仕方ないので、汚れ払いをする事にした。汚れが多いので早く払ってあげなくては……。
「こんばんは。私はルーナ・ベルナットと申します。貴方の名前を聞いてもよろしいですか?」
「エリーと申します」
優しい声で、名前を言った。
「素敵な名前ですね」
「ありがとうございます。ルーナ様にそう言われると、自信が持てますわ」
こんな会話をしているが、汚れ払いの終了時間に近いので私は急いで汚れを払おうとした。
(さっきまでの違和感は気のせいだよね……でも前みたいな事があったら申し訳ないからユーリヤには一応アイコンタクトで言っておこう)
前に私が倒れて以来、ユーリヤは何かあったらすぐにアイコンタクトで教えるよう私に言っていた。本人の目の前で会話するのは少し気が引けるからだ。
ユーリヤにアイコンタクトをする為に、ずっと見つめる。ユーリヤは私がずっと見つめているのに気がついたので、私達だけが分かるアイコンタクトをした。
(ユーリヤ。この人の汚れの量は少し多い。今日は魔力は沢山残っているから心配ないけれど、今までと少し違う気がするから何かあったらよろしくね)
(承知しました。無理はしないでくださいね)
アイコンタクトを使うのは初めてだが、上手く伝わったみたいだ。
「これから汚れ払いを始めますね」
「ありがとうございます。こんな私に汚れ払いをしてくださって……」
「そんな気にしないでください。これは私の仕事ですので」
「そう言ってもらえると安心します」
「では気を取り直して汚れ払いを始めますね」
女性は私がそう言うと、少し申し訳なさそうな顔をしていたが私は汚れ払いを始めた。
『アルティアの名の下に、汝に幸福が訪れることを……』
私がそう唱えると、女性の汚れがどんどん消えていく。
(今回も上手くいったわね)
そんな事を思っていた。その時。今まで払った汚れとは違う感覚が私の体に現れた。
苦しい。助けて。もう嫌なの……。誰か私を解放して!お願いだから。でも、誰も私の苦しみを理解してくれない。なんでだろう……。そうだ。分かってくれないなら、私が味わった苦しみを誰かに与えればいいんだ!
急にそんな女性の声が聞こえた。
(なにこれ……)
私の体に伝わってくる。この女性が今まで味わってきた苦しみが……。こんな事ありえない。こんな事例お母様からも聞いたことない。すると、
「怖い?苦しい?嫌になってくるでしょ?私が耐えてきた苦しみが分かる?」
と声が聞こえてきた。
「えっ?」
「私の苦しみから目を背けちゃダメだよ。ちゃんと味わって。私の苦しみを……」
「なにこれ!なんなのよ!」
私は恐怖で自分の目と耳を塞ぎながら、叫んだ。すると、女性は驚いた顔で私を見て言った。
「大丈夫ですか?」
その言葉を聞くと私は一つの仮説が思いついた。
(この人、もしかして無意識で私にこんな感情を共有しようとしているの……)
大丈夫じゃないが無意識でやっているとしたら、責める事は出来ない。ユーリヤも心配した顔でこちらに向かってこようとしたので私はそれを止めた。そして女性に、
「叫んでしまって申し訳ありません。私も少し疲れていたみたいです。もう大丈夫ですよ。貴方にあった汚れはなくなったみたいですね。これからも何かあったら来てください!何度だって私は貴方の汚れを払いますから……」
と笑顔で言った。
「…………。ありがとうございます。ルーナ様にそう言ってもらえると、なんだか胸があったかくなります。ではこれからも汚れが溜まったらよろしくお願いします。」
と一礼してその場を去った。
バタン、とドアが閉まった。その瞬間私はホッとすると同時に椅子に座っていられなくて、床に横になった。ユーリヤは驚いたのか、すぐに私のところに来て、
「ルーナ様、大丈夫ですか?しっかりしてください!」
と言った。
「大丈夫じゃないかも……。いつもと違う。魔力は足りてたはずなのになんで……」
気になった私はゆっくりと目を開けて確認してみる。
「なに……これ…………」
「ルーナ様?」
「なによ……これ」
「大丈夫ですか?」
ユーリヤは心配して私の体に手を伸ばした。だが、私はその手を叩いて必死になって言った。
「ユーリヤ!ダメよ!私に触っちゃダメ!何が起こるか分からないから!いい?よく聞いて!今私の体にはなぜか分からないけど、汚れがあるの!汚れ払いをする人は汚れが貯まる事はないはずなのに!!こんな事あり得ないのに……」
私がそう言うとユーリヤは、驚いていた。だが冷静に対応した。
「ルーナ様、少々お待ちください。クロエ様とアメリア様を呼んできます」
「ありがとう」
私は短くそう言って意識がだんだんとなくなって行った。それを見たユーリヤは汚れ払いの部屋を出ようとしたその時。
バンっ!とドアがいきなり開いた。そのには、2人組の男がいた。1人は黒い帽子を被り、ロングコートを着た男。もう1人は落ち着いた顔立ちの男だった。そして、フードを被っている男が、
「ヒッヒッヒー。流石のルーナ様も、あいつの汚れには耐えられなかったみたいだな」
「そうだな。ルーナ様が倒れている事が確認出来たから帰るぞ」
「宮殿の奴らに捕まったら面倒だしな」
そして2人組の男はその場を立ち去ろうとしていた。だが、ユーリヤが激しい口調で言った。
「お前達は何者だ!ルーナ様をこんな風にしたのはお前らが原因なのか?!こんな事をして……一体何が目的だ」
するとフードを被った男が
「なんだよ。質問が多いなー。でも名前を名乗らないで帰るのも面白くないか……。じゃあ、改めまして……。俺の名はウィス、でこっちの奴がジーク」
「お前達は何をしにきたんだ!」
「何って……さっきも言っただろ。そこに倒れているルーナ様の様子を見にきたのさ」
それを聞くとユーリヤはさっきの優しかった雰囲気がなくなり、殺気が凄くなった。いつも私に微笑んでくれるユーリヤではなくなった。
「そんな汚ならしい声で、ルーナ様の名前を言うんじゃない!お前達はここから絶対に逃がさない!ここで捕まえてやる!!」
そう言ってユーリヤは剣を抜いた。するとジークが、
「ほら言っただろ。早く行かないと面倒だと……」
とため息をつき、ウィスは、
「ヒッヒッヒ。いいじゃねいか。面白い。その勝負受けて立つ」
と言って、ジークはため息混じりに銃をとり、ウィスはジークとは反対に、元気よく剣を抜きユーリヤ達の闘いが始まるのであった。
こんにちは。突然ですが、今日は私がこの『リリーラ王国物語』を投稿して一年になります。その為、今日から3日間1話ずつ投稿していきます。温かく見守って頂けると幸いです。




