復活と再会
リリーラ王国の今日の天気は快晴。白く輝く太陽がリリーラ王国全体を照らし、仕事日和の日だった。
そんな快晴の日に、ルーナ・ベルナットは、体力が全回復したのでいつも通り汚れ払いの仕事を復活する。
ー午前
「ルーナ様。今日は前回のような事がないように何かあったらすぐに言ってくださいね」
「分かってるわ。これからはちゃんと言ってユーリヤやお父様、お母様に心配かけないようにするわ」
「そうしてください。またルーナ様が倒れてしまったら私達の心臓が持ちません」
「えへへ……。気をつけるわね」
そんな話をしていると、ルーエン君の事をふと思い出した。あれから数日間会っていなかったのでルーエン君の様子が気になっている。
「そういえば、ユーリヤ。ルーエン君の調子はどう?あれからあんまり会えていなかったけれど……」
「ちょうど今日、ルーエン君を治療してくれている病院から連絡がありましたよ」
「本当!!何か言ってた?」
「はい。傷はまだ治っていませんが、彼はとても元気に過ごしているそうです」
「そう。傷の事は可哀想だけど、ルーエン君が元気で良かったわ」
「そうですね。あと一つ報告が……」
「どうしたの?」
「ルーエン君がルーナ様に会いたがっているそうなのです。そこで、今日の汚れ払いが終わった後病院に来てほしい、とルーエン君を見てくれている医師が言っていましたが、どうしますか?」
「分かったわ。私もちょうど会いたいと思っていたところだから、汚れ払いが終わったら会いに行きましょう」
「承知しました。ですが、あまり無理をなさらないでくださいね」
「分かってるわよ。もうこれ以上ユーリヤやお父様、お母様に心配させたら合わせる顔がないもの」
「分かっているなら良かったです。では、汚れ払いが終わったらルーエン君に会いに行きましょう」
こうして、汚れ払いを始める前の朝は終わりを告げ、汚れ払いの仕事をしていく。
ー汚れ払いの会場
『アルティアの名の下に、汝に幸福が訪れること……』
しばらくすると、また汚れ払いに人が来るので、
『エルティアルの名の下に、汝に希望の光があらんことを……』
こんな感じで仕事が続いていく。だが、今日の汚れ払いに来た人は少ないので、この前みたいに倒れる事はなさそうだ。
(まぁ、倒れてしまう事の方が珍しいのだが……)
あまり人が来ないということは、リリーラ王国に住んでいる民に汚れが溜まった人がいないと言う事だからいい事だ。しかし、それにしても……。今日は本当に汚れ払いに来る人が少ない。お父様達がその日に来た人数の平均を仕事がある日には計算してくれているけれど、平均を大幅に下回っている。
(まぁ、本当にいい事だから、気にする必要はないわよね。気のせいだわ)
今日は、本当に来る人が少なかった。その為いつもより魔力も減っていない。そのおかげで、元気にルーエン君に会いに行く事が出来た。
ー移動中
日が傾き出しあたりは薄暗くなっている頃、私とユーリヤは馬車でルーエン君がいる病院に向かっている。リリーラ王国宮殿から馬車で一時間くらいでルーエン君がいる病院につく。私達は、ゆっくりと話をしながら病院へと向かっている。
「ルーエン君大丈夫かしら。最後に見た時は沢山あざがあったから、心配だわ」
「ルーエン君を見てくれている医師曰く、綺麗にあざは消えてきているそうですよ」
「本当!!それなら良かったわ。傷やあざが残っていたら、今はそうでなくても今後トラウマの原因になってしまうかもしれないから心配してたけど……。消えてきてるなら少し安心したわ」
「そうですね」
それから私達は特に話す事はなかった。静かな道を馬車で、ルーエン君がいる病院までひたすら馬車を走らせていた。
ー病院
馬車に乗る事一時間。私達は病院に着いた。病院の周りは緑で囲まれていて、自然豊かな所だ。近くには小さな川が流れているので、病院にいる子どもはよく川で遊んでいる。私達は病院に入り受付へと向かった。
「すみません。リリーラ王国宮殿から来ました。ルーナ・ベルナットとユーリヤ・エレフォードです。この前ここに来たルーエン君の様子を見にきたんですけど……今大丈夫ですか?」
私がそう言うと、受付の人は驚いた顔をしていた。だがしばらくすると、状況を理解したらしい。
「わざわざご足労頂きありがとうございます。今ルーエン君の主治医を呼んでくるので少々お待ちください」
と言って、急いで主治医を呼びにいった。
ー待ち時間
「受付の人。だいぶ焦ってたわね……。なんか申し訳ないわ」
「確かにいきなりリリーラ王国宮殿からの人、しかもクロエ様とアメリア様の娘だと知ったら焦りますよ」
「だよね……。今度何かあった時は気をつけよう……。すごく申し訳ない」
私の父と母はリリーラ王国ではとても有名な人だ。父と母が結婚してからリリーラ王国の経済がいい方向に向かっている。父と母がいなければ、リリーラ王国は貧乏王国としてその名を広める事になっていたと言われるくらいだ。だから、受付の人の反応は当然といえば当然なのである。
「私は一応貴族の出身だけど、あんまり身分は気にしてないから縮こまらなくてもいいのに……」
「大丈夫ですよ、ルーナ様。ルーナ様の優しさは、皆分かっています」
「そうだといいな……」
そんなことをしみじみ思っていると、
「あれ?ルーナ様にユーリヤ様じゃん!」
と声が聞こえてきた。私達は反射的に声がした方を振り返ると、そこにはルーエン君がいた。その時私は、ルーエン君が元気な姿でこちらに向かってきていたので、
「久しぶりだねルーエン君!!あれからしばらく会えてなかったけど、大丈夫だった?」
「うん!ルーナ様達のおかげでこの通り。元気になったよ」
と言いながら、腕をぶんぶん振って元気アピールをしてくれた。それを見て安心した私とユーリヤは、
「良かったわ」
「良かったです」
とニ人で安堵の息をついた。
ー談話室
私とユーリヤはルーエン君と再会した。その時、ちょうどルーエン君の主治医が来てくれたので主治医とルーエン君の今後の事などを話し終わってから談話室を借りて三人で話していた。今はここに誰も来ないから、三人で静かに話すにはちょうど良い場所だった。
「ルーエン君が病院に来てからあまり会えなくてごめんね」
私はルーエン君にそう謝ると、ルーエン君は首を横に振った。
「全然大丈夫だよ、ルーナ様。逆に僕は感謝しなきゃいけないんだ。ルーナ様に出会うまで、僕は地獄のような日々を送っていた。だけど、ルーナ様がそんな僕を助けてくれた。だから、謝らないで」
そんな事を言ってもらえるなんて思ってもいなかった。振り返ってみると最初はすごく怖かった。すごく汚れの量が多くて、誰かに恐怖を共有したいくらい。こんな小さな子どもでも、こんなに汚れが溜まることがあるのかと思うと震えが止まらなかった。自分の事で精一杯だったのに……。心のどこかでいっその事、汚れ払いの部屋から逃げたいと思ってしまった私に感謝なんて……。
そう思うと涙が止まらなかった。それを見たユーリヤが、
「大丈夫ですか?気分でも悪いのですか?」
と聞いてきた。
私は、誰かを助けて感謝されたかったのかもしれない。今、私は気分がいい。人を助け、感謝されるってこんなに気分がいい事なんだ。気がついたら、涙が私の目から出ていた。思えば、汚れ払いを始めてから初めて流す涙だった。
「大丈夫よ、ユーリヤ。今すごく嬉しいの。誰かを助けられたから。そして最後には感謝される。これって普通の事の様に見えるけど、とても嬉しくて素晴らしい事なのね」
「そうですね。これもルーナ様が今まで努力してきたからこその結果ですよ。人助けに、身分なんて関係ないんです。これからもそうやってルーナ様はリリーラ王国の民達を助けていけばいいんですよ」
ユーリヤは優しく私を見守りながらそう言った。するとルーエン君も
「僕は、ルーナ様のおかげで救われた。僕だけじゃない。きっとリリーラ王国に住んでる人達皆がそうだ。だからルーナ様はもっと自信を持っていいんだ。僕を救ってくれたように、これからも困っている人を助ければ、皆はルーナ様に感謝するよ。ありがとうって」
私はもう涙が止まらなかった。ユーリヤもルーエン君も、今まで私が気づいていなかった『当たり前』を教えてくれた。私はこんなにも知らない事ばかりだったんだ。
「ありがとう。ありがとう。そんな事を言ってもらえて嬉しいよ。本当にありがとう」
私は、泣きながらずっと言い続けていた。
ー数分後
私が泣き止んでから、ルーエン君の今後について話して終わった。ルーエン君は病院を出たら、リリーラ王国にある孤児院で生活する事になると言うと、「これから楽しみがいっぱい待ってる」と言ってウキウキしていた。
(これからルーエン君が幸せに暮らせますように……)
私は、心の中でそう思った
ー帰宅
私とユーリヤは21時に病院を出た。最後にルーエン君が涙を堪えながら見送ってくれた。帰り馬車の中で私達は話していた。
「思っていたよりも元気そうで良かったわ」
「そうですね。これから、ルーエン君の人生が幸せになるといいですね」
「うん!私達は遠くからでも見守っていましょう」
「もちろんです。ルーエン君があの時以上に苦しい思いをしないように、しっかりと見守っていましょう」
「ユーリヤがいれば心強いわ。一緒に見守りましょ」
私達は、それからは病院でルーエン君と話していた事を振り返っていた。暗い夜の中、淡い光が灯っている馬車だけは、夜を明るく照らしていた。
ーリリーラ王国宮殿執務室
そこではクロエとアメリアが深刻な表情で話し合いをしていた。
「これはどういう事だ。こんな事今までなかったぞ」
「ええ。これは明日の朝早くにルーナとユーリヤを呼んでこの事を話すべきだわ」
「そうだな、アメリア。ユーリヤに伝言を頼んでもいいか?」
「もちろんよ。すぐに伝えてくるわ」
アメリアはそう言って、執務室を出た。クロエは一人、執務室で仕事を進めていた。
ーリリーラ王国から離れた国
机とベッドしか置かれていない質素な部屋に、予言師がいた。寝ていたのだろうか。ベッドに横になっていた。けれどいきなり予言師は起き上がった。そして驚いたような顔で言った。
「リリーラ王国で汚れ払いをしているベルナット家は、いずれ大きな選択を迫られるときがくるだろう」
薄暗い部屋で、予言師の声だけが響いていた。
この時はまだ誰も知らない。これから先、ベルナット家にとって捨てられない物が天秤にかけられるかもしれないという事を…………。
リリーラ王国物語を読んでくれた読者の皆様、ありがとうございます。今回はルーエン君にスポットを当てた感動回にしたつもりです。これからは、リリーラ王国に迫っている危機を書いていきたいと思っています。これからもリリーラ王国物語を見守ってくださると幸いです。




