一章 前日(1)
1863年
ーリリーラ王国宮殿にて
「お嬢様、もう起きる時間ですよ」
「まだ、起きる時間じゃない!!だからもう一回だけ寝るね。おやすみなさい……」
「はぁ〜。一応聞きますが、今何時だと思っていますか?」
「夜中の1時くらい」
「朝の7時です」
「分かって……。今何時って言った?」
「朝の7時ですと言いました」
「う……嘘でしょーーーー!!!」
私の名前は、ルーナ・ベルナット。赤髪で赤い目を持っていて、周りにはよく『月の女神』なんて呼ばれたりする。ちなみにこの呼び名の由来は、ルーナが月の女神という意味をもつからだ。お父様とお母様いわく、人の上に立つものとして、月のように自分の国の民を見守って欲しい、という願いから、ルーナと名付けたらしい。
「いいですよ。これも私の仕事ですから。それに、今日お嬢様が起きれないと思って、コーヒーを用意しましたから」
「本当!!ありがとう!」
「いえいえ。お気になさらないでください」
私を起こしてくれたのが私の側近の、ユーリヤ・エレフォード。私のことをいつも気遣ってくれる、優しい人だ。見た目も、青い髪に緑の目を持ち、顔も整っているのでかっこいい。だから、ユーリヤを見かけると、(主にメイドから)『美男子』なんて呼ばれている。
「でも、今日寝坊してしまうなんて……。明日の初仕事で寝坊してしまったら、もっとダメだわ。ということで、ユーリヤが入れてくれたコーヒーをゆっくりいただくことにするわ!」
「はぁ〜。それはとても嬉しいことですが、コーヒーの中にはカフェインという成分が入っているので、あまり飲まれると夜きっと眠れなくなるので、控えてくださいね」
「う、そうだった」
「今日の寝坊は、百歩譲って許せますけど……。明日寝坊されたら、リリーラ王国に住んでいる民達が困ってしまうので、気をつけてくださいね」
「そうね。ごめんなさい。明日からは気をつけるわ」
そうだ。絶対に忘れてはいけない。私が明日からやる仕事は、私達一族にしかできないのだから……。こんなことを言ったら、みんなは政治やお金関係の仕事をイメージするかもしれないが……私達一族がやっている仕事は、
ー汚れ払い
それが、私達一族が代々受け継いでやっている仕事だ。もちろん、汚れとは?と思うかもしれないので、もっと簡単に言うと、人の負の感情、すなわち心に害をなすものを払う仕事だ。
昔、ストレスが溜まりすぎると、人が人ではなくなってしまい、汚れと呼ばれるものが心に害をなすので、ストレス払いではなく、汚れ払いという名前がついたらしい。ちなみに汚れは、私達一族以外に見ることはできない。(汚れは、黒いモヤのように見える)汚れを払うためには、特殊な魔力が必要なため、2日に一回となっている。1日目は汚れ払い、2日目は魔力回復(ほとんど休みみたいなもの)となっている。
こんな話はさておき、私は昨日汚れ払いの仕事の練習を夜遅くまでやっていたら、今日寝坊してしまったという訳だ。(普段は、朝6時に起きているため、1時間寝坊したことになる。)
「そういえば、クロエ様とアメリア様がお呼びになられていましたよ」
「え、嘘でしょ。何言われるのかしら?」
「明日の汚れ払いについて話されるそうですよ」
「あっ、よかった。朝寝坊したことを怒られるのかと思ったわ」
「怒られませんよ。安心してください」
「怒られないなら、安心して行くことができるわ」
クロエとアメリアというのは、私の父と母だ。私の父は、他国との貿易や国の政治などの仕事をしている。だが、少し時間があれば、私に会いに来てくれたり仕事の話をしてくれる、私思いの優しい父だ。母は基本的に朝〜夕方まで、汚れ払いの仕事をしている。だが、明日〜は私が汚れ払いの仕事を引き継ぐので、これからは父の仕事のお手伝いをするそうだ。母は、私や父、民達が困っているといつも手伝ってくれる、思いやりがあり、皆のことを平等に思ってくれる人だ。
「じゃあ、朝ご飯を食べて準備ができたら、お父様とお母様に会いにいきましょう」
「承知しました」
一章(1)のリリーラ王国物語を読んでいただき、ありがとうございます。これからも、リリーラ王国物語を見守っていただけると幸いです。これからもよろしくお願いします。




