表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リリーラ王国物語  作者: 麗海亜
11/15

決意

 ここは何処だろうか。真っ暗で何も見えない。明かりらしき物は何もない。例えるなら闇。ここを表すに相応しい言葉だ。

「ねぇ。いつになったら出ていいの?」

するとずっと私の隣にいる誰かが答える。

「私が良いって言うまでよ」

「そんなの……。きっとお父様とお母様、それにユーリヤだって心配しているはずよ!!」

「大丈夫よ。貴方はここでゆっくり休むのが仕事なの」

「もう十分休んだわ。これ以上休んだら、リリーラ王国の民に迷惑がかかってしまう。貴方が何を言おうが私はここから出るわ」

私がそう言って立ち上がると、態度が急変した。

「今までは優しくしてきたけど……。もうダメみたいね」

「何を言っているの?」

「貴方がここから出たいって思わなくなるくらい、心を壊してあげる」

「そんな事出来る訳…………。なに……これ……」

「ふふふ。いい?これで分かったでしょ。今の貴方は私に逆らう事なんて出来ない。だからもっと私の苦しみを理解して……」

 そして私の汚れはどんどん、本人でも分からないくらい少しずつ増えていった。


 ーリリーラ王国宮殿

 そこには眠っているルーナ・ベルナットとそれを見守るユーリヤ・エレフォードがいた。あれからルーナは目を覚さない。クロエとアメリアは敵の情報を集めている。だが、手掛かりは何一つとして見つからない。最悪の状況だ。クロエとアメリアはもしもルーナが目を覚ました時に誰もいなかったら不安になるだろう、と言う事でユーリヤに側にいるように頼んでいた。

(あれから何度叫ぼうが、ルーナ様は目を覚さない……)

 ユーリヤはあの日からルーナの側をずっと離れず見守り、時には涙を流し、早く目が覚める事をずっと待っている。

(私がルーナ様とアイコンタクトを取った時、止めていればこんな事にはならなかったのに…………)

クロエとアメリアがユーリヤは悪くない、とは言ってくれるがそれは慰めにもならず、むしろあの時こうしていれば……などと反省ばかりしてしまう。

(ルーナ様。私と初めて会った時の事を覚えてらっしゃいますか?私は貴方と出会わなければ、今でもあの暮らしをしていたでしょう。私を一人にしないでください。私は輝かしい貴方の側に居られればそれでいいのです)

 ユーリヤはルーナと出会った時の事を思い出すのであった。


 ー十年前

 リリーラ王国のとある路地裏に俺、ユーリヤはいる。いつものように路地裏でひっそりと息を潜めて暮らしている。だが、こんな暮らしはもう嫌だ。

 俺のお父さんとお母さんは小さい頃に死んでしまった。二人がいなくなってからリリーラ王国を転々と移動して暮らしている。少しだけ両親の親戚の家にいたが、居心地が悪くなったので手紙だけ残して家を出た。

 しかし、所詮は子どもだ。お金は多少持ってはいたが、全て使ってしまった。働くあてもなければ、住むところもない。だから俺はある決断をする。

(金持ちから金を盗んでしまおう!)

 本当はこんな事はやりたくはない。だがこうしなくては生きていけない。仕方のない事だ。誰にも気づかれないように盗めば……。

 そんな事を思っていると、小さい女の子。それも金持ちそうな女の子が路地裏から見えた。この子なら大丈夫だろう。初めてだから不安しかないが、やってみなければ分からない。

 決意を固めて俺はその女の子に近づいた。そしてわざとぶつかった。女の子はポケットに財布を入れているのだろう。だから、ぶつかった時に女の子のポケットから財布を抜き出した。だがぶつかったからには謝らなくては、と思い謝った。

「ぶつかってしまってごめんなさい。大丈夫でしたか?」

 女の子は近くで見るととても特徴的だった。赤髪で赤い目で……。見るもの全てを支配するような……。とても美しい人だった。

「大丈夫よ。それより貴方こそ大丈夫?」

(知らないとはいえ、俺みたいな盗人の心配をするなんて……)

「大丈夫です。心配してくださりありがとうございます。ではこれで……」

 これでこの場から立ち去れれば、無事に終わる。結構地位の高そうな貴族だし、財布にも沢山金が入ってるだろう。節約すれば一週間は持つだろう。そんな事を考えていると、突然知らない男に声をかけられた。

「そこの君。止まりなさい。今この方から取った物を返してもらおうか」

 俺は驚いたが、誤魔化せるだろうと思って悪足掻きをした。

「何の事ですか?この方から何かを取る……。そんな事をする訳ないじゃないですか」

 だがこの悪足掻きはすぐにバレる。

「あれ?私の財布!ポケットに入れておいたはずの財布がなくなっているわ!どこにいったの?あれはお父様とお母様がくれた大切な物なのに……」

 赤髪で赤い目の女の子が叫んだ。叫ばれたせいで周囲の人がこちらに目を向け、俺たちの事を見ている。

(まずい。こんなに目立ってしまってはダメだ。やっぱり盗みなんて俺にはダメなのか……)

 俺に声をかけてきた男は言った。

「今正直に言えば、許してやってもいい。お前だって分かってるからな。それにお前みたいな子どもがこんな事をしていいはずがない。正直に言うんだ……」

 この人の言う通り正直言おう。そうすれば、見逃してもらえるかもしれない。

「財布……。盗んでごめんなさい……。これ返します……」

 このやりとりを女の子は見ていた。すると突然言った。

「返してくれてありがとう!!これは私にとってとても大切な物なの。だから、返してくれたお礼を言うわ。ありがとう!!」

 理解出来ない。なぜ盗みを働いた俺にお礼なんて言うんだろう。

「お嬢様。この子はどうしますか?」

「そうね……」

 女の子は少し考えてから言った。

「私の名前はルーナ。ルーナ・ベルナット。それでこの男の人はリアム。私について来てくれている人よ。貴方の名前はなんて言うの?」

 俺はその名を聞いた瞬間、焦りを感じた。ベルナットと言えば、リリーラ王国の汚れ払いをやってくれている名家だ。そんな人の物を盗んでしまったなんて……。でもそんな人に名前を聞かれてしまったならば、答えなくては……。

「ユーリヤ・エレフォードです……」

 力のない声でそう言った。ここまで来たらいさぎよく諦めよう。そんな事を思っていると、

「素敵な名前ね。ユーリヤ……。とてもいい名前をもらったのね!」

と言われた。一瞬何を言われているのか整理がつかなかった。なぜ盗人にそこまで優しくしてくれるのか訳が分からなかった。するとリアムが言った。

「お嬢様。この男は盗人です。近づいていい人ではありません。このユーリヤと名乗る男がまた何をするか分かりません。どうか私から離れないでください」

 リアムと言う人が言う事は最もだ。普通ならそんな反応をするのだ。だが彼女だけは違った。

「リアム。そんな事を言ってはダメよ。私達に生きている理由があるように、ユーリヤにも盗みをしなくてはいけない理由があったかもしれないんだから!」

「お嬢様。そうは言いましても……」

「ちょっと待ってなさい」

 そしてルーナは俺に近づいてきて、話しかけた。

「驚かしてしまってごめんなさいね。でもリアムも悪い人じゃないから安心して」

 本当にこの子はなんなんだ。考えるだけで訳が分からなくなってきた。

「あんた達はなんなんだよ!何がしたいんだよ!!俺を捕まえたいなら早く捕まえろよ!!!」

「そんな事をしたいんじゃないわ」

「じゃあ、何がしたいんだよ!」

「私は貴方とお話がしたいわ。ダメかしら?」

「別にダメじゃないけど……」

「本当!なら良かったわ!!」

 こんな事を言われたのは初めてだからつい反射的に反応してしまった。

「お嬢様。本気ですか!?」

 リアムも混乱している。

「本気よ。だってもうユーリヤは反省してるし……。それに盗人になってしまった理由も聞きたいわ」

「そこまで言うのであれば……」

「ありがとう!リアム」

 そして俺たちはゆっくり話せる場所に移動するのであった。


 ーリリーラ王国 レストラン

 あれからすぐ近くにある高そうなレストランに俺とルーナ、リアムはいる。

(俺、こんな所で食事してもいいのかな?今お金持ってないし……)

 不安だ。貴族なんて信頼した事もない。だがルーナは言った。

「貴方お腹空いてるでしょう。いっぱい食べてね!丁度私達もご飯にするところだったから」

「本当にいいんですか?こんな俺なんかと食事をして……。それに俺お金持ってないです……。それにルーナ様と一緒に食事なんて……。身分も全然違うし……」

 俺は今、本当にお金なんて一銭も持ってない。それに貴族が俺みたいな奴と一緒に食事なんて……。

「ユーリヤ。貴方は勘違いをしているわ。ご飯を一緒に食べるのに、身分なんて関係ないのよ。それにお金の事なら心配しなくてもいいわよ。困っている人を助けるのは当然だもの。ねぇー、リアム」

「お嬢様のおっしゃる通りです。盗んだ物は返して貰っているので別に恨む理由もありません。それに今回が初めてだったのでしょう?」

 さっきまでと態度が全く違うので驚いたが、それよりも俺が盗みをしたのが初めてと知っている事にも驚いて反射的に疑問を口に出していた。

「なんで知ってるんだよ!!?」

「貴方はずっと私達の事を見ていました。慣れている人ならば、もっと手際がいいですしね」

「…………」

 返す言葉が見つからない。その通りだ。何も言い返せない。しばらく気まずい雰囲気がその場を支配したが、ルーナが話し出した。

「ユーリヤ。貴方が今までどんな人生を歩んできたのか、教えてもらってもいいかしら?」

「俺の話なんか聞いても……」

「お父様とお母様がよく言うわ。自分自身の事だけを考えるのは間違えている。困っている人の話をよく聞き、改善するのが私達貴族の役目だ、とね」

「…………」

「貴方の話を聞きたいわ。話したくないなら無理にはいいけれど……」

 何故だろうか。この子と一緒にいると、ホッとする。だから俺は今までの人生を話すことにした。家族が死んでしまったこと。親戚の家にいたが、手紙を残して出ていったこと。一人で歩き続け、このリリーラ王国にたどり着いたこと。お金がなくなってしまい、どうしようもなくなったから盗人になることにしたこと。ルーナは決して口を挟まずに、頷き、静かに俺の話を聞いてくれた。そして最後にはこう言った。

「そんな事があったのね……。よく今まで頑張ったわね。もう貴方が苦しいと感じる物はここにはないから、安心して……。家族がいないのに一人で寂しかったでしょう。もう大丈夫よ……」

 そう言われると、俺は今まで無意識に我慢していた感情が一気になくなっていく感じがした。そしていつの間にか、目から熱い涙が溢れ落ちていた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 ここから先の記憶は曖昧だがずっと欲しかった言葉を聞けたからか、泣き続けていてもルーナとリアムは俺が泣き止むまでずっと側にいてくれた。

 

 しばらくして俺が泣き止み、ルーナが宮殿に帰る時間となった頃。ルーナが言った。

「ユーリヤ。今日は楽しかったわ。ありがとう」

「こちらこそ。ありがとうございます……」

 こんなに人と別れるのが悲しいと思ったのはいつ以来だろうか。もっと一緒にいたかった。本当にこんな事を思ったのはもういなくなってしまった家族以外で思った事はないはずなのに……。

「ルーナ様。そろそろお時間です」

「そうなのね」

(もういっその事、時間が止まって仕舞えばいいのに。なんでこんな時に限って、時間が進むのが早いんだ……)

 でも行かないでと言ったとしても、もう行ってしまう。そう思っているとルーナが最後に、と言って言った。

「ユーリヤ。私はこれから貴方みたいなひとが減るように孤児院を作りたいと思っているの。だからもう少し待っててくれるかしら。丁度、お父様とも作ろうと言っていて、今はどこに建てるかを考えているから、あと少しだけ待てる?」

 その言葉を聞いて驚いたが、俺達みたいな人の為に頑張っている事が伝わった。そして答えは決まっている。

「うん!俺、貴族なんてみんな自分勝手な奴ばかりだと思ってたけど違うんだな。最初に会えた貴族がルーナ様でよかった!!さっきは大切な物を取ってごめんなさい」

「もう気にしてないからいいのよ!!私も貴方に会えて良かったわ。じゃあ、今度は孤児院が出来た時に会いましょう!!それじゃあ、またね!!」

「うん!またね、ルーナ様!!」

 そうして俺たちは別れた。


 ー数ヵ月後

 リリーラ王国にある川の近くに孤児院が建てられた。そこには路地裏で暮らしていた様々な人が住める事になっていた。寝床も用意され、食事も三食ちゃんと出る。

 そんな暮らしをしばらく続けていると、ルーナがやってきた。今日はルーナのお父さんとお母さんも一緒らしい。しばらく眺めていると、ルーナが声をかけてきた。

「ユーリヤ!久しぶりね。会うのが遅くなってしまってごめんなさいね」

 俺からしたらなんで謝るのかは理解出来なかった。こんないい暮らしが出来ているのは、ルーナやルーナの両親のおかげなのに……。でもそんな事はどうでもいい。久しぶりの再会だ。沢山話したい事がある。

「大丈夫ですよ。ルーナ様!こんなにいい暮らしは生まれて初めてかもしれない!そのくらい俺は嬉しいんだ!!」

「そう言ってもらえて良かったわ」

 久しぶりだから何を話したらいいのか分からない。だが話したいから話を振る。

「ルーナ様はお父さんとお母さんから離れていいのか?」

「大丈夫よ。さっき言っておいたから。それにお父様とお母様はしばらく施設を見て回るそうよ」

「そうか……」

 沈黙が訪れた。だが今度はルーナが話を振る。

「ユーリヤ!私ここの花壇を見てみたいわ。案内してくれる?」

「もちろん!!」

 俺はルーナを花壇まで案内した。そこには沢山の種類の花がある。

「素敵ね!」

「俺もここに来た時ビックリしたよ。すごく綺麗な花ばかりだから」

「それは良かった!」

「……。どうしてルーナ様が喜んでいるんだ?」

 自分でも何を聞いているのだろうと思ってしまったが、ルーナは笑顔で答えてくれた。

「それはね、ここにある花を選んだのは私だからよ」

「そうなのか!!!」

 驚きのあまりすごく声が出てしまった。

「ユーリヤ、驚きすぎよ。でも嬉しいわ。ここにいる人たちにここにある花は綺麗って言われて」

「だって本当だもん!」

「貴方は正直ね!でもねここにある花は綺麗だけじゃないの。ここにいる人達を応援する花でもあるのよ」

「どういうこと?」

「例えばこの花。アネモネって言うんだけど、白以外にも沢山の色があるけれど白には期待って言う花言葉があるの。あとこの花はアルストロメアリって言う花で未来への憧れって言う花言葉があるのよ。ここにいる人達を期待しているから未来への憧れを忘れないでという想いでこの花たちを選んだんだよ」

 この子はここまで俺たちのことを考えてくれていたのか。花にもメッセージを込めてくれているなんて。こんなにも俺たちみたいな人を思ってくれている人はそんなにいないはずなのに……。

「ルーナ様。ありがとう!嬉しいよ!!嬉しすぎて涙が……。あれ……、本当に涙が出てきちゃった」

「喜んでくれたみたいで良かったわ」

 こんなにも俺たちの事を思ってくれているのに、俺は何もしていない。ルーナの側にいられるならどんな困難も乗り越えられる気がする。

「ルーナ様!!ありがとう!!俺、決めた。これからルーナ様の側にいられるように頑張る!ルーナ様の護衛をしたい!!いいかな?」

 ルーナは嬉しそうな顔をする反面、少し考え込んでいる顔をしている。なんでだろう。その理由はすぐに分かった。

「ユーリヤの気持ちは嬉しいわ。だけど、護衛は危険が伴うわ。それでも護衛になりたいって言ってくれる?」

 危険が伴う。確かに怖い。下手をしたら死んでしまうかもしれない。それでも、ルーナの為ならばどうでもいい。

「大丈夫だよ、ルーナ様。俺はルーナ様に出会わなければ、今でも盗人をしていた。そんな事に比べたらなんて事ないよ。誰かを守るっていい事でしょ」

「そう。なら良かった。貴方の言葉で聞きたかった。じゃあ、私は貴方が護衛になってくれるのを待っているわね」

「うん!俺頑張る!!」

 それ以外にも沢山の話をした。そうしたらあっと言う間に時間がすぎ、ルーナとはまた別れた。


 それから私は必死に努力した。あんまり好きじゃない勉強をした。剣や弓もなれなかったけれど必死に必死に、誰に何と言われようとも必死に必死に練習した。それはすべてルーナの側にいたいから……。


 ー五年後

 五年に一度開催される武術大会に私は出場した。なぜならこの武術大会で優勝すると一つだけ本人の願い事を国がやってくれる。もう何を願うのかはあの時から決まっている。

 一回戦、 二回戦……。次々と試合に勝っていきついに、最終戦まで勝ち上がる事が出来た。

(この調子行けば勝てる!)

 そう思っていると最終決戦の相手が発表された。私はその名を見て驚いた。

「リアムさん……!」

 だがユーリヤはその名を見ても負ける気がしなかった。だって私はルーナの事を守りたくて必死に必死に努力し、ここまで強くなる事が出来たのだから……。

「リアムさん。私が貴方に絶対に勝ちます!」

 誰にも聞こえない声で呟いた。


 ー数時間後

 いよいよリアムとの戦いの時が来た。

(絶対に負けられない!何があろうと、私は絶対に、絶対に負けない!!)

「リアムさん。今日は貴方と剣を交えるのは初めてですが……。絶対に勝ちます!」

私がそう言うと、リアムは驚いた。しかしリアムも、

「ええ。勿論です。最高の試合にしましょう」

 私とリアムがそう声を掛け合うとナレーションが言った。

「それでは皆さんお待ちかね。これから最終決戦を始めます」

観客は急に静かになる。一瞬の静寂……。

 そしてナレーションは声を高らかに上げて言った。

「始めッ!!!!」

 掛け声がかかると、観客の歓声と共に勝負が始まった。


 その勝負は、両者一歩も譲らない戦いだった。白熱する戦い。誰もがこの戦いの結末を予想出来ない。皆が皆、息を止めてその戦いを見守っていた。


 ユーリヤとリアムが熱く戦っている。

「流石です。リアムさん」

「貴方こそ。立派になりましたね」

「ありがとうございます」

「お互い手加減はなしですよ」

「勿論です!」

 二人の戦いは続く。多くの人に見守られながら、その戦いは続いていく。


 ー数分後

 この戦いの決着は本当に着くのだろうか、と観客の誰もが疑問に思っていると急に盤面がひっくり返った。

 急にリアムの剣がユーリヤの剣によって弾かれた。そのすきをを狙ってユーリヤはリアムへ突進する。

「…………」

 観客は皆、ユーリヤの剣捌きに息を呑んだ。そして、しばらく沈黙が続いた後ナレーションが言った。

「この戦いの勝者は…………。

ユーリヤ・エレフォード選手!!!!」

 観客は皆、歓声と拍手を送った。


 フィールド場にはまだリアムとユーリヤの姿があった。お互い息をあげているが、しばらくすると握手をしていた。

「ユーリヤ。優勝おめでとう」

「ありがとうございます。ですが、結構ギリギリでした」

「それでも優勝したのは貴方だ。胸を張っていなさい」

「はい!」

 リアムとユーリヤが話していると、ナレーションがユーリヤにマイクを傾けていた。

「ユーリヤ選手。貴方は何を望みますか?」

 そんなの答えはもう決まっている。五年前から決めている。その為に私は今まで汗を流し続けてきたのだから。私は言った。

「ルーナ・ベルナット様の護衛をしたい。私はこの身を全てルーナ様に捧げると神にお誓い致します」

 周囲の観客達は驚いていたが、すぐにその驚きは拍手へと変わった。

「ルーナ様。どういたしますか?」

 ルーナに問いかけるナレーション。そして返事を見守る観客達。ルーナは座っている席を立ち、ユーリヤに向かって言った。

「あの時の事を覚えていてくれたのね。ありがとう!嬉しいわ。これからよろしくね、ユーリヤ」

 見守っていた者達は皆拍手した。嬉しい。今までの努力は無駄ではなかったと感じる最高の瞬間だった。

 リアムもユーリヤに近づき、言った。

「本当によく今まで頑張りました。これで私も心置きなくルーナ様の側を離れる事が出来る」

「どう言う事ですか?」

いきなり予想外の事を言われるので驚いていると、リアムはユーリヤの肩に手を乗せて言った。

「私には、素晴らしい家族が出来たのです。だからこれからは家族ともっと幸せな時間を共有する為に私はルーナ様の護衛を辞める事を決心しました。今日私がこの大会に出たのは、ルーナ様を守ってくれる人を探したかったからです」

「そうだったんですか!?」

ユーリヤの反応に頷きながら続けた。

「でも、これからルーナ様の護衛をするのが貴方なら私は何も心配する必要がありません。だから、これは私からの貴方に向ける最初で最後のお願いです。絶対に、ルーナ様を守り抜いてください」

 私はその言葉を聞いて、涙が出てきてしまった。下手をしたら今でも盗人であったかもしれない自分を、リアムは信頼してくれた。そして私を信頼してくれたからこそ、ルーナの事をお願いしてくれた。

「はい!私はどんな事があろうとも、絶対にルーナ様を守り通してみせます!!だからリアムさんも安心してください!」

 リアムは私の言葉を聞いて、安心したような顔をしていた。

「ああ。これからの私の分までルーナ様を守ってくれ」

 リアムはユーリヤに抱きつきながら、周りには聞こえないくらいの声でそう呟いたのであった。

 そして私は泣きながら片膝をつき、ルーナに向けて忠誠を誓った。

(これ程嬉しい事は私の人生で初めてかもしれない。このリリーラ王国に来て良かった!ルーナ様に出会えて良かった!!そしてずっとルーナ様の側にいる事が出来るのが、心の底から感喜の叫びをあげたいくらい本当に、本当に、嬉しい!!!)

 そしてユーリヤは自分がルーナの剣となり盾になる事を神に誓った。だが一番大切なのは、

(ルーナ様を誰にも傷つけさせない!!)

これはユーリヤがリアムと約束した事だから。また、ユーリヤの心の誓いであった。


 ユーリヤは過去を思い返し終わると眠り続ける姫に向かって呟いた。

「ルーナ様。貴方のおかげで今の私はいます。ですから早くお目覚めください。ずっとお側でお待ちしておりますから……」

 その呟きは誰にも聞こえなかったが、ルーナを見守る者達の代弁だった。


 ー遠い国

 ある一人の楽師がいた。あまり見た事のない楽器だ。周囲の人々は「なんだ?」と見ているが、その楽師はとても不思議な音色を奏でて周囲の人々の心を支配する。そして一曲弾き終わると言った。

「今宵は満月の日。私の演奏はまだまだ続きます。どうかお聴きください……」

 聞いている者達はその不思議で美しい音色に感心し、その者が奏でる演奏を聴き続けていると何故か気分が楽になっていくのであった。


こんにちは。今日で三日目なので連続投稿最終日です。いかがでしたか?楽しんで頂けたでしょうか。

連続投稿は本日で最後となりますが、これからも「リリーラ王国物語」は投稿を続けます。これからも温かく見守って頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ