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テンセイミナゴロシ  作者: アリストキクニ
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1-6 沈まずのマモリ③

 数日後、王国より癒しの雫受け取りのための騎士団が派遣されました。その先頭には大樹で助けたあの騎士団長がいらっしゃいました。

 彼は馬を降り改めて私に深々と礼をし、後ろに並ぶ騎士団員に『彼が王国の命の恩人である』と大声で伝えると、団員達も一糸乱れぬ敬礼を行いました。私は命の恩人は私ではなく隣の友であると言いました。彼が全てを売り払って用意してくれた物があの薬であることを伝えると、騎士団長と団員達は再度友に向かって敬礼をしてくれました。

 騎士団長は私と友に王国まで同行してほしいと言いました。何しろ今回の功績はあまりにも大きなものであったので、報酬を国王が直々に手渡してくださるというのです。村は再度沸きに沸きました。

 私は皆に王国で買ってきてほしいものを聞いて回りました。何しろ金属を使ったような農具や工具は非常に高価で、修理を頼むにしても稀に村を訪れる鍛冶屋に頼むような有様であったので、この機会にまとめて買っておきたかったのです。他にも村では中々手に入らないような苗や食べ物など、購入リストは膨れに膨れました。紙や筆記具も同じく高級品であったので、私と友で必死で覚えたものです。


 王国に着くと私たちは英雄のような扱いを受けました。小瓶一本だけでもその価値が計り知れないほど貴重な癒しの雫を、大きな壺一杯に運んできたのですからそれも当然かもしれません。王が私達にお会いくださるまでの数日間は城下の街を見て回り、暇を見つけては騎士団長が顔を店に来ては楽しくたくさんの話をしました。

 ついに王に会う日になりました。失礼がないように服屋で上等な一式を揃え、私たちが謁見の間で臣下の礼を取っていると、ほどなくして柔和そうでありながら引き締まった体つきの男性が現れました。大臣かそれとも御付きの方かと考えていると、脇に構えていた騎士団長が王のお越しを高らかに告げました。

 私は驚きました。友も王の顔自体は知らなかったようで、目の前の男性が王であることにひどく驚いた様子をしています。なぜなら彼の身に付けている服は非常に質素なもので、私の想像する『王族の装い』とかけ離れていたからです。

 彼はそんな私たちに優しく微笑み、深々と頭を下げて感謝の言葉を述べました。

 そして、この国は小国で現在他の国からの宣戦で滅亡の危機にあること、華美な宝飾などは戦争の準備や私達への報酬の為手放したこと、これからの戦で国民には辛い思いをさせることを申し訳なく思っているなどの事を話しました。

 私の勝手な想像から遥か遠くかけ離れた王の慈愛ある言葉に、たまたまこの世界に転がり込んできただけである転生者の私ですら胸に熱いものがこみ上げたぐらいでしたので、生まれたころからこの国の国民であった彼は隣で大粒の涙をボロボロと零していました。騎士団長も目と鼻を真っ赤にしながらなんとか泣くのを堪えているようでした。王は暗い話になってしまったことを謝り、たくさんの立派な箱に詰められた金貨を下賜くださいました。

 しかし先ほどの話を聞いてこれを受け取れる者がいるでしょうか。私たちは村の皆の生活必需品を買えるだけの金貨だけを受け取り、残りは戦の準備に使ってほしいと告げました。

 王は私たちの返事に大変驚いたようでしたが、ただの冒険者の我々に深々と頭を下げました。


 購入リストに書かれた分とはかけ離れた量の戦利品を村に持ち帰りましたが、その理由を聞いて怒る人は誰もいませんでした。それどころか彼らもまた皆涙を流し、王国の為に戦うことを強く決意したのです。

 私も王国や友やこの村人たちのために何かできることはないかと考えました。そしてギルドの受付嬢に全てのクエストを見せてほしいと頼みました。

 子の一件で名実ともに一流の冒険者となった私に、彼女は大量のクエストが書かれた紙を持ってきてくれました。私はその中のひときわ目立つ上等な紙に書かれた最大難易度のクエストに狙いを定めて目を通していきました。お目当てのクエストはほどなくして見つかりました


『世界の至宝を集めし古代龍一族との対話』


 王国にはどうやら領土の中の険しい山脈に古代龍が存在しており、それらはは気まぐれに人々を殺したり、王国に魔法の武具やアイテムの献上を要求しているようでした。これが王国が弱小国である主な原因だったのです。

 私は友に再度別れを告げました。彼は今度は黙って強くうなずき、私を見送ってくれました。

 龍の巣までは簡単でした。古代龍は自分たちの力を誇示するかのように大きな城を建てており、人間からの貢物を受け取るために道まで引いていたのです。場所こそは高い山と深い谷が連なる危険な場所でしたが、たどり着くのにさほどの時間はかかりませんでした。

 私は正面から城に入っていきましたが門番や警備のような者は全く見当たりませんでした。それも当然かもしれません、例え人間が侵入して暴れたとして龍族である彼らになんの脅威があるでしょうか、息を吐くだけで侵入者は焼け死ぬでしょう。

 私は真っすぐに城の中を進んでいきました。途中数匹の巨大な龍と出会いましたが、彼らは侵入者であるはずの私を完全に無視し、まるでいない者のように扱いました。

 城はかなり巨大なものでしたが、真っすぐに進むだけでほどなくして王の間と思われる場所に着きました。そこには全身を金色の鱗に覆われた、先ほどすれちがったどの龍よりもはるかに大きな龍が寝ていました。

 彼の後ろにはまさに山のような金銀財宝と、いくつかの卵が見えました。私は探す手間が省けたことに感謝しながら、玉座でいまだに寝たままの黄金龍の目の前に立ちました。

 私が彼の鼻先に触れることができるほどの距離に来た時、彼は片目を開けると口から灼熱のブレスを吐き出しました。

 馬鹿な侵入者が焼け死んだことに満足したのか彼が目を閉じようとしたとき、私は彼の鼻をペシンと叩いてやりました。

 一体何が起きたのかがわからなかったのでしょう、一瞬の間がありましたがすぐに彼は全身の鱗を逆立てて立ち上がり、巨大な怒りの咆哮を一つ放ちました。

 ただの人間であれば聞いただけで命を落としてしまいそうな咆哮をものともせず、私は龍に話しかけました。これからはこの国に迷惑をかけるな、そうすればお前たちが生きていくことを許してやる、と。

 龍は私にあらん限りの攻撃を行いました。しかしその全てが私にとって無意味でした。私はゆっくりと彼の後ろの卵に近づきました。彼はブレスや魔法を放つのをやめ、なんとか私を卵から引き離そうとします。しかし私を無理やりに押したり引いたりすれば、それは立派な攻撃です。そして私はそういった全ての行為から守られているのです。自分の背丈の何倍もある巨大な卵に寄りかかりながら彼にもう一度問いました。無事に種を繋いでいくか、ここで滅びるか。

 もちろん私にはこの卵を割ってやるぐらいが精いっぱいで、金に輝く古代龍を倒す方法などはありませんでしたが、彼がそれに気づくことはありませんでした。何しろ自分の攻撃が何一つ通じない相手です、攻撃がからっきしだと考えるような者はいないでしょう。

 龍も動物の一種なのでしょうか、彼は力関係に非常に素直であるようでした。隷属の証でしょう、頭を低く下げて私にこすりつけてきたのでそれを軽く撫でてやりました。


 たった一匹でも国が亡ぶほどの力を持った古代龍が隊列を組んで王国に飛んできた時、王と騎士団長以下全ての人が人間の滅亡を予想したそうです。しかし龍達は人間のあらん限りの迎撃に対して一切反撃することなく、王城の上空をグルグルと旋回し、先頭の巨大な金に輝く一匹だけが城下の広場へと降りました。その背に私がいた時の感情はいかばかりのものだったのでしょうか、避難していた全ての人間も呼び戻され、また大きな宴が開かれました。


 私たちは龍の城に築かれていた財宝の中から古の武具を取り出して装備し、龍の背に乗って世界全ての国を陥としていきました。

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