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テンセイミナゴロシ  作者: アリストキクニ
33/88

2-21 正義執行

「な……何を言っているのだ……? 男娼? この私が? 一体なぜ?」

 あまりに突然の出来事にうまく言葉を発することができない。

「ほら約束やろ。黙って従わんかい」

(……これが狙いだったのか!)

 私をただ辱めるためだけにここまで連れてきたのか!? あんな約束までして!? ニヤニヤと笑うダウターに怒りが膨れ上がる。

「まあまあ、そんな怒るなや。ここにいる金福さんはな、相手の気分を自分の思い通りに変えることができる能力を使ってオイタをぎょおさんやっとったわけや。そんでさっきブレイカーが言ってたように殺す時になんかあまりにも哀れでな、それやったらその能力で商売でもしたらどないですか? って誘ったんや」

「……その商売というのは?」

 嫌な予感しかしないが聞いてみる。とにかく今は話を引き延ばしたい。

「そら売春宿よ。金福さんはその能力をフルにお使いになってな、ぎょーさん女の子を雇ってガッポガッポ儲けたんや。そのお金でこの辺りをぜーんぶ仕切る有力者になられてな、資金の融通してもらったりしとるわけや。でも商売はずっとおんなじことやるだけじゃあかん。ここらで男の方も雇おうかと思ってな。オール、口火を切ってくれや」

「外道め!」

 あらん限りの声で叫んだ。

「能力を使って人を操作した上、商売道具にするとはなんたる卑劣か!」

 しかし私の叫びにこの外道達は何の反応も返さない。もう言われ慣れていますよといわんばかりにニヤニヤと下卑た笑いを続けている。

「何をそんなに怒っとるんや? どこの世界のどこの街にだって風俗ぐらいあるやろ? 金福さんは能力を使ってそれを更に効率よくやってるだけや。脅したり暴力ふるったりももちろんしてへんで。めちゃめちゃ優良な雇用主や」

「ふざけるな!」

 大きな剣を召喚し構える。このような奴らは生かしておけぬ!

「落ち着けって。溜まってるんやったら一回こいつの店いってみ、お前と同じぐらいかそれより下の年齢のかわいい子もいっぱいおるから」

 

 プチン


 私の中で何かが弾け、構えた大剣を一瞬にして薙ぎ払う。光を纏った大剣はゲスのデブを横一文字に真っ二つにし、そのままアンタッチャブル達の方へ向かう。

(全員死ね!)

 怒りが私の力を最大限に引き出した。もはやどんな方法をもってしてもこの腕を止める事は叶わぬ、そのままお前たちも二つに割けて死ぬがいい!


「んあ? なんだいこりゃ? 何の騒ぎだい?」


 しかし私の剣はルイナーと呼ばれる大女の腹の位置で止まっていた。いや、止められていたのだ。

「馬鹿な!」

 私のこれ以上ない渾身の一撃だぞ? いくら事前にスキルを発動してなかったとはいえ、ステータス増加系の永続スキルは常にかけ続けてある。あんな力も入れていない生身の肉体で止められるはずがない!

「うわ! 金福のおっちゃん死んでるじゃないか! 何が起きたんだい!?」

 ルイナーは腹の位置にある刀を無造作にグイと押し返すとそのまま絶命している金福の方に走り寄る。

「あーあー、やっぱ予想通りやったなあ。しゃあないけど」

「なんだい! 何が起きたんだい!?」

「いや説明したったやろ。もしかしてまた寝てたんか? まあ先に帰っとき。コネクターもすまんかったな」

「いいのよ、言ったでしょ? もう慣れたって。その代わりお店の子達はお願いね」

「おう! 俺らのせいやからな。メイカーのとこに送っとくわ」

「それじゃ行きましょうルイナー」

「うん! ママ! 帰ろう! 頭も撫でておくれ!」

 ルイナーとコネクターは導きの門を召喚し、さっさと帰ってしまった。

「馬鹿な……」

 まだ今起きたことが信じられないでいる。私の剣が通用しなかった相手など今までに存在しなかった。私は全能ではなかったのか!?


「さてまあ転生者が死んでもうたしこの世界も終わりやな。終わりついでにオールに見てもらう必要があるもん見せて帰ろか」

 放心する私を引きずるようにしてダウターとブレイカー、そしてサンズガワと共に屋敷を出る。私たちは元来た道をまっすぐに戻り、見覚えがある場所までたどり着いた。

「オールさん、覚えてる? ここ、僕たちが色んな物配った場所だよ」

「あ……?ああ……」

 あの時は夜中だったので雰囲気はまるで違うが、確かにここは見覚えがある。あの兄弟たちがいたところだ。

「もう夕方か、そんだけ時間あったらもう十分やろなあ」

 ダウターが何かを言いながらどんどんと路地の奥へ入っていく。

「ボクねー。見るの嫌なんだ。こういうの」

「俺だって嫌じゃ! でもまあしゃあない。全部含めて背負っていくって決めたやろ」

「そうだね。これが僕たちの道だ」

 また私を除け者にして何か勝手に納得しあっている。まあ今は好きにしてくれ。それよりも私はあの大女と一度きちんと話をしなければ……


「さあ、ついたで。やっぱりあかんかったみたいやけどな」

 ダウターの言葉に辺りを見回す。

「ここは……」

 あの兄弟がいたところだ。彼らは元気になっただろうか。私のあげた金貨は彼らの生活を良いものにしてくれているだろうか? あの袋小路になっている裏路地の奥の奥に彼らは痛んだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?!!!!!!?!??!?


 そこには全身が膨れ上がり、青黒く変色した二つの小さな死体が転がっていた。


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