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(仮)カッコウの雛  作者: たくあん
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第4話 ひとりのよる

家を出たところで行く当てはない。




この時点ではまだ頭を冷やしたら家に帰ろうと思っていた。


家に帰る以外の選択肢を知らなかった。




だからいつもなにがあっても、どんなに嫌でも仕方なくあの家に戻っていた。






自分自身もご飯を食べていないのでおなかがすいた。




今日くらいは、と思い、家の食費として預けられている財布からコンビニでお弁当を買って公園で食べた。




お金だって誠実に毎日なるべく安く、それでいておいしいものを作れるように考えていた。




お小遣いなんてもらったことはなく、本当は友だちと遊びに行ったり、何か自由に買い物がしたかったりしたけれど、ぐっとこらえていた。




頑張った代価が公園で一人コンビニ弁当かと思うと悲しくて悔しくて虚しくて無性に泣けてきた。




それでも明日からも頑張らないといけないんだよなぁ……。




高校を卒業するまで、あと1年半。




ずっとあと○年と言い聞かせて頑張ってきた。あと少しだ。






気持ちを切り替えて家に戻ろうかと思ったとき、母からLINEが入った。




「あなたの高校、テレビに出てるわよ」




落ち着きかけていた心が再び怒りにシフトチェンジしたのを感じた。






さっきまであんなに怒鳴っていたのに。




しれっと何事もなかったかのようにLINEを送ってくるその図太い神経に無性に腹が立った。




謝罪の言葉が出るはずがないのは分かってるし、期待もしていない。




でもどこにいるか尋ねるでもなく、帰ってくるように言うわけでもなく、テレビの話。




きっとテレビを見ていて、見知った高校が出てきたのが嬉しくて知らせてやろうと思ったんだろうな。






なんだか哀れだと思った。




かわいそうな人だと思った。





でも、帰りたくはなかった。




もう少し頭を冷やす時間が必要だと思った。






ひとりぼっちで家を飛び出した後の夜はいつも寂しい。


日付が変わったころから、どんどん夜に押しつぶされそうになる。


人の温もりが恋しくて、朝が待ち遠しい。




寂しくて寂しくて仕方がないけれど、人のいない公園や交差点に自由を覚える。


理由もなく道路の真ん中に立ってみたり、公園の遊具で遊んでみたり。




そこはかとない虚しさと開放感が混在するあの時間が、独りぼっちの夜が私は大好きだ。





寂しさが頂点に達していたタイミングで別居している父親から連絡があった。




とりあえず外にいるよりうちに来ないか、と。




寂しかった私はいとも簡単に釣られた。




母とうまくいかなくて家を飛び出したとき、父はたまに家に泊めてくれる。




父は父で問題があって好きではないけれど、母との拗れきった関係を理解してくれるのは父しかいない。




今晩も泊めてもらえるだろうか、優しくしてもらえるだろうか。




そんな思いで父の家へと向かった。

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