芋とアイス
5
翌日、午後4時頃に俺は目を覚ました。
「…ヤバい、流石に寝すぎた」
今日は白銀神社に行く予定なのに、このままだと日が暮れてしまう。
ーいや待てよ。別に急ぐ必要はないんじゃないか?腹が減っては戦はできぬ。とも言うし、夜の9時頃で良いか。
そして俺は、夜食を食べ、適当に時間を潰し、8時半に準備を始める。
「…よし、これぐらいで良いか。ー後は…?」
他に持っていくとものがないか、考えていていたところ、
「お兄?どっか行くの?」
と、妹だよの瑠璃が来た。
「ーおう。ちょっと用事が出来たから出かける」
ーこの事は妹には話すつもりはない。無駄な心配をかけたくないからだ。
「ーそっか。」
ーこの時、気付けなかった。瑠璃の心情に。心の奥底に秘められた、複雑な感情に。俺は、気づくことが出来なかった。
「…あ!そういえば私近所の猫にエサあげてなかったから途中であげてきて、あと、アイス買ってきて」
と言い、瑠璃は俺の返事を待たずに下階へ駆け下りてしまった。
俺が準備をし終え下階に降りると瑠璃が
「はい!これ、猫にあげといて」
と言い、半ば押し付けられるようにして渡された物は
「…何だコレ」
ー芋、だった。
「え?見て分かるでしょ?芋だよ」
「いや、なんで芋なんだよ、他にキャットフードとかあるだろ」
「しょうがないじゃん!ちょうど切れててないし、たまには贅沢させてあげたいわ」
「…それ、明日お前がやればいいじゃん」
「はあ?別に良いじゃん、ちょうど出かけるんだし。猫の可愛さに癒やされてきなよ。あと、アイスも忘れないでよ」
「ーはぁ、まぁいいけど、ーじゃあ行ってくる」
「ーうん、行ってらー」
と、瑠璃と会話を済ませると、足早に家を出た。
あたりは真っ暗で、人の気配は無い。俺は高校生のため、誰かに通報されるかもしれない。そんなことになったら面倒だし、家族にも迷惑がかかるからゴメンだ。
ーそれから、約十分後。
「ー着いた」
俺は、目的地の白銀神社の目の前に立っていた。