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白銀美来について


 3


 家に帰ってきて、布団に寝転ぶ。

 あの後、結局俺は委員長と連絡先を交換し、足早に帰宅した。委員長によると、下心があったわけでは無く、「連絡先を交換すれば、いつでも話ができるから」、らしい。もしかしたら、なんて思ってしまった自分が自分で恥ずかしい。

 それと緊急時はメールではなく電話にしろとも言っていた。なぜならメールだと連絡が遅れて、万が一の事もあり得るからだそうだ。やはり委員長しっかりしている。

 もちろんその後は委員長を気が済むまで褒めちぎり、帰宅。

 そして今に至る。

 俺はさっそく委員長に連絡をしてみることにした。

 電話の音が部屋に響く。

「もしもし、神崎くん?」

「おう。俺だよ俺」

 少し時間が掛かりそうだと思っていたが、早く連絡が取れた。

「オレオレ詐欺?」

「ちげぇよ!神崎だって」

 開始早々、詐欺扱いしてきやがった。こいつ。委員長の性格を考えると普通に笑えない。ノリでいってしまえばガチで通報されそうだ。

「分かっています。冗談ですよ」

「…笑えない冗談はやめてくれ。ガチで」

「…え?どういうことですか?」

 どうやらただの冗談だったようだ。…けど笑えねぇ。

「いや、何でもない。こっちの話だ。気にするな」

「なんか納得がいかないんですけど…分かりました。それでは本題に入りましょう」

 本題に入ると言った途端、委員長の雰囲気が急変した。電話越しでも分かるほどに。その威圧感に圧されそうになるが、なんとか持ち答える。

「おお、そうだな」


 ーそして、本題。俺が、相談したい事。それはー


「…白銀の、事についてなんだけどさ」


 ー白銀の、事について。


「…なるほど。それは何故ですか?」

「…俺、あいつを初めて見たとき、悪寒がしたんだ」

 ーそう、悪寒。初めてあいつを見た時、悪寒がした。あの正体は一体何なのだろう。

「あいつの事が分かれば、何か分かるかもと思ったんだよ。委員長なら何か知ってそうだったから」

「そういう事なのですね…教師や親は教えてくれなさそうですから。だから私という事ですか」

「少し言い方悪いけど…まあ、そんなとこだな」 

「…まさかとは思いましたけど、いやらしい考えを持っての事では無かったのですね。一安心です」

「当たり前だろ!お前は俺の事をなんだと思ってるんだ!」

「女性の事を知りたがる発情期の男性」

「ひどい!今の所白銀の事しか聞いてないだろ!」


「…はぁ。では本題に入りましょう」


「なんだよそれ!俺がその話をしてきたみたいになってんじゃねぇか。この話を持ち出してきたのお前だろ!?…なんか納得行かねぇ…それで?教えてくれるのか?白銀の事について」 

「…相談された事には、できる限り答えるつもりです。もちろん、神崎くんの、白銀さんの事について知りたい、という事にも。なぜなら私は。ー私は、委員長ですから」 

 最後の『委員長だから』という台詞に少し違和感を覚えたが、せっかく教えてくれると言っているのだから、話を脱線させるのも野暮だろう。

「おお、助かる。ありがとう」

「いいえ、大した事ではありません。ーそれで、白銀さんの事について」

一旦和らいだ空気が、委員長の一言で重くなる。

「…おう」

「ー白銀さんとは、中学校の時から一緒でした。あの時は凄かったんですよ。勉強も出来てスポーツも出来る。後輩や先輩達からも人気があって、有名人でしたよ。ー今は違うようですが、何でもこなせる人っていうイメージでした」

「そうなのか。肌は白いし、そんなイメージ無いけどな」

「そうですよね。ー彼女が変わってしまったのは2年前。ちょうど中学2年生に進級したときです。そのときの急変ぶりには、今でも驚いています」

「なるほど。ーそれで、何であいつは変わってしまったんだ?」

 ー勉強もでき、運動もできる。おまけに皆からも人気があり有名人。ーそんな立場を持っておきながら、なぜ舞台から降りてしまったのか。ーなぜ、変わってしまったのか。


「それは私にも分かりません。ただー」

「ただ?」


 委員長の何か知っているような口振りに、俺は疑問を抱く。

「ーこれは噂ですけど、白銀さんはなにかに取り憑かれてしまったとか、なんとか」


「ーは?」


 委員長の意外な返答に驚く。怖い話などをリアルに表現した番組なら見るが、それも視聴者の手紙で届いた話だ。嘘の可能性が高い。そもそも実在するのかすら怪しい存在を持ち出してくるなんて。委員長の意外な場面が見れたのかもしれない。

「いや、これはあくまで噂です。私がそう思っているかどうかは別として」

「お前は信じるのか?存在しているのか分からないものを」

「いえ、絶対とは言いません。でも、信じる価値はあると思います。この世の不可解な現象ーすなわち、ポルターガイスト現象など、科学で証明できない物ばかりです。なので幽霊の仕業、と考えるのは妥当だと思いますよ」


「…なるほど」

 確かに、と思う。証明できないものを証明させようと足掻くより、幽霊の仕業だとまとめ一括にしてしまったほうが楽だ。まぁ、化学者などとしてそんなことプライドや立場的に許されないと思うが。

「話を戻します。信憑性は低いですが、そうだとすると納得はいきます。…というより、明日会って見たらどうでしょう」

「え?会う?明日は学校休みだし、俺はあいつの住所は知らないから会うなんて無理だぞ?」


「ー?いいえ?可能ですよ。だって彼女はかの有名な神崎神社ーその跡取り娘なのですから」


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