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白い少女

 

 2


 学校での第一印象。これは一番大切だ。間違えてしまえば高校生活が終わると言っても過言ではない。しかし、人見知りな俺は自己紹介を待っている時間はただの地獄でしかない。今も刻一刻と迫ってきている"それに"何か避ける案は無いのか。と必死に脳をフル回転させている。

 しかし、そんなことが起きるわけも無く。あっという間に自分の番が来た。いや、もうここまで来てしまったのなら仕方ない。間違えぬように成功させるだけだ。なるべく目立たぬように…。

 「あ、神崎結弦です!…これからよろしくお願いしましゅっ!」 

 …あぁ、終わった。周りの視線が痛い。微かに小さな笑い声がするのは気のせいだろうか。いや、気のせいであってくれ。俺は絶望感と恥ずかしさに苛まれながらも、席に着く。そんな俺を無視して、自己紹介は進んで行く。俺はショックで落ち込みボーッとしていると隣から

「白銀美来です。よろしくお願いします。」

と、透き通るような声が聞こえてきた。

 俺はとっさにそちらを見ると、そこには色が抜け落ちたような、白い印象の少女が立っていた。白銀の髪は背中にかかり、少し露出された肌は、目を奪われるほど白かった。一目すれば、誰もが目を奪われ、一目惚れしてしもう程の美貌ー俺は目を奪われるが、その中に少しだけ怖気を覚えていることに気付く。

 自分でも分からない。別に怖いわけでもない。心の奥底から、魂が嫌がっているような感覚だった。

 俺はその事に少し疑問を抱きながらも、時間は進み、あっという間に学校が終わった。

 穂乃果は用事があるようで、先に帰ってしまったため、今日の帰りは一人になった。

 俺は初めての登校日だったため、学校の中をあちこち見学した。一通り見てから教室に戻ると、俺以外の人は帰ってしまっているようで、もう誰もいなかった。

 俺も帰ろうと支度を始めたその時、教室のドアが開かれた。

 そこに現れたのは、みつ編みを後ろに垂らした少女、宮野波流だった。 

 少女は教室を見渡し、俺を見つけると、驚いた顔をする。

「まだ残っている人がいたんですね。てっきり帰ってしまったものだと。

何していたんですか?神崎くん」

 と、問うてきた。その問に俺は学校探検と答えた。その返答は見事に的を外されたようで、委員長は目を白黒させると、

「…学校探検って。子供ですか」

 と、言った。

「別にいいだろ。そんなの俺の勝手…あれ?」

 そこまで喋った所で、俺はあることに気づく。

「ー?どうしました?」

「ーお前、俺の名前覚えてたんだな…」

 その言葉に委員長は察したのか、哀れみを込めた目で見つめてきた。

「やめろよぉ、俺をそんな目で見るなぁ…」

 その反応が面白かったのか

「よろしくお願いしましゅ。神崎くん」

 と、いたずらっぽい笑みを浮かべ、俺のデリケートな所を抉ってきた。

 俺が沈黙していると、流石に申し訳ないと思ったのか

「ま、まぁ、学級委員長として当然の事をしただけです。神崎くんだけでなく、クラスメートの名前は全て頭に入っています」

 とんでもないことをサラリと言った。

「え…はぁ!?全員!?お前、天才かよ!?」 

 '天才'と言われた事が嬉しかったのか

「ええ!?て、天才だなんて…わ、私は委員長として当然の事をしただけです!」

 と、言いながら僅かに顔を紅く染めた。…チョロい。この委員長チョロすぎる。何か困ったことがあれば褒めちぎろう。

「ま、まぁ、私は委員長ですし?何か困った事があれば頼ってください」

 何気に私は委員長アピールしてきたぞ。こいつ。まぁ、せっかくこう言ってくれたんだ。頼らせてもらうとしよう。

「そうか。じゃあお言葉に甘えて頼らせてもらうぞ。委員長」

「はい。あ、でも」

「?どうした?」

「…私はそろそろ時間なので帰らないと…明日でも良いですか?」 

 あ…話に夢中になって忘れていた。もう下校時刻は過ぎているから帰らなくてはならない時間だ。

「あ…わりぃ、変な事に時間削っちまって。」

「いえ、大丈夫です。あ、あの」

「?なんだ?」

「そちらが良ければの話なんですけど…」

「何だよ。早く言えって」

 歯切れの悪い委員長に、要件を言えと急かす。


「…良ければ連絡先、交換しませんか?」

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