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OVA02「アウトブレイク コンビニー」その3

そしてコンビニの店舗が出来上がった。

大きい窓にレンガ模様も俺の世界のモノと同じ。但し、こっちではレンガ風のタイルでは無く、本当のレンガ積みの建物だ。

店のイメージカラーも迷ったが、結局、モロにオレンジと赤とグリーンの『あの』ストライプにした。

どうせ真似したトコロでこっちでは訴える者もいないし、版権とかも関係無いもんな。(笑)

店の前には鉄塔が立っており、先端には四角い看板。うん、コレがあるといかにもコンビニってカンジだよな。


商品の搬入も始まった。俺達も荷車から荷を降ろして陳列の手伝いだ。

冒険者も訪れるコトを見越して、薬草、コンパス、ランタンの油、ロープ等もラインナップ。

装備品が壊れた時でも大丈夫な様に、最低限の装備となる廉価版の剣や盾も置いた。

そうこうして棚に商品を並べていると、デヴィルラが俺に質問して来た。


「のう、主よ。これはエリクサーか?こんなに高価なモノ、そうそう売れるとも思えぬのだが?」

「1本10万エンしますよね、コレ。」


プリスも『いやー、コレは売れないでしょう』と言わんばかりの懐疑的な表情をする。


「いやいや、2人とも、コレがコンビニの戦法なんだ。確かにこんな高額商品、年に数本出るか出ないかだろう。

だがコレは『置いてある、揃えてあるコト』に意義がある。」

「そんなモノなのですか?」

「じゃあ問題だ。このエリクサーを見た客は何を考えると思う?」

「そうじゃな…『こんなモノまで置いておるのか!』かのう?」

「その通り。で、だ。後日、いつかその客が何か急に入用になった時、真っ先に思い浮かべるのは?」


俺がそこまで言うと、プリスがポンと手を叩いた。


「あ!『エリクサーまで揃えていたあの店なら、置いてあるかも知れない!』…ですね!?」

「正解!!」


それを聞いたデヴィルラも全てを理解した様だ。


「なる程!滅多に売れないであろうエリクサーを置いてあるというのは、客の印象に強く残る!

 そうするコトで次へと繋げる!痒いトコロにも手が届く品揃えそのものが店の広告なのじゃな!

 …『こんびに』侮りがたし!!」


これは実際のコンビニでもやっている。ご祝儀袋とか、コンセントの延長コードとか、

年に何回も買わないよ、ってモノまでシッカリあるんだよね。

それを見た記憶が残ってて、何か困ったら『取り敢えずあのコンビニ行ってみよう。』ってなるワケだ。

そして、その求めていた商品が結果的にあったか・無かったかは、さほど関係無い。

何故なら、コンビニは来た以上、手ブラで帰るのが惜しくなるからだ。

『ついで』に何か買って行ってくれれば成功なのだ。


―おや、向こうではパトルとマーシャが手を止めて、困った様に何か話してる。


「これでほんとにあってるんすかねー?」

「…分からない。」

「どうした?2人して。」

「あ、ボス!いいところにきてくれたっすー!」

「…マスター、この値段って安く無くない?」

「うん、平均的な定価だな。」

「これ、このさきにあったみせのほうがやすかったっすよ?」

「…お客さん、あっちに行っちゃわないか心配。」


あぁ、値段を心配していたのか。


「確かに、ココよりも安い店は他にもある。だが、コンビニは基本、価格で勝負する戦法じゃ無い。」

「やすくしなくても、いいんすか?」

「そうだ。コンビニは色々な種類のモノが売ってるだろ?これを普通の店で揃えようとしたら、どうなる?」

「…町中走り回らなくちゃ。」

「だろ?でも、ココでならその歩き回る手間と時間を費やさずに買い揃えられる。

 揃ってるのを目の前にすると、思わず面倒臭くなってココで買ってしまうって寸法だ。」

「すごいっす!あったまいいっす!!」

「それに、商品の種類が多いってコトは、見ていてついつい『ついで』に買ってしまったりもするだろ?

 さっきもプリスとデヴィルラに説明したけど、コンビニってのは、この『ついで』で買うコトを見越した戦略なんだよ。」 

「…『こんびに』…恐ろしい子!」


他には特定の商品をグンと安くして、『これで得したんだから、他に幾つか定価で買っても元取れるよね?』と錯覚させたりな。

…本当にアコギと言えばアコギだよなぁ。一般市民の間でコンビニ商法が俺のアイデアだと思われたら、

『ロリ・カイザーは知謀極まる非道の商人!』みたいなイメージが定着してしまわないか、不安になってきたぞ…。

これってどれもこれもTVでやっていた内容の受け売りだからね!俺の悪知恵じゃ無いからね!!(汗)




そして遂に、コンビニ『魔族の国・1号店』のオープン日がやって来た。

店の前の駐車場…じゃ無い、荷車を停めるスペースの一角にステージが組まれている。

ここで我がパーティーの4人娘が歌い踊るワケだが…実は、俺は彼女達のステージに関してはノータッチなのだ。

衣装の合わせの時も、歌や踊りの練習にも、4人から一切見学を許可されなかったんだよ。


『当日、見てのお楽しみじゃ!』


そう言われてシャットアウトされてたってワケ。まぁ、あの子達のコトだから信じちゃいるけど、やっぱ不安だよなぁ…。

―お、早速ギャラリーが集まってきたな。


こう言っちゃ何だけど、俺はこの世界で知名度だけはある。

神様からロリ・カイザーの二つ名を賜り、あの魔導巨人との決戦でも図らずもMVPの活躍をしてしまったのだから。

プリス達も新しい二つ名をギルドからもらって、精霊王の加護を受けた人間、獣人族の英雄、魔族の姫、レアキャラのエルフ、と

今では冒険者の間だけに留まらず、世間でも有名なロリっ子パーティとなっているのだ。

それがアイドルユニットを組んでお披露目しようって言うんだから、噂にならないハズが無かった。


ステージ前に布幕が立てられる。日本だと紅白幕が立つ雰囲気だな。


―は?…マジか!?

その布幕にデカデカとポップな書体で文字が書かれてるんだけど…。

『ロリ・カイザーぷれぜんつ♥ 噂のアイドル・幼女×幼女×幼女×幼女ようじょ・よんじょう♥』


俺がプロデュースしたコトになってるよ!?

そりゃあ、みんな俺と一緒のパーティーメンバーだし、俺も認可したからそうとも言えなくも無いかも知れない的なカンジだけどさぁ!

呆然とする俺の目の前で、風魔法魔道具スピーカーとか、光魔法魔道具(花火・スポットライト)とか、

水魔法魔道具(炭酸ガス)とかがどんどん設置されて行く。…スゲェ本格的。(汗)


ん…?何だ?あのステージ最前列を確保している集団は…?

揃いのピンクのハッピを着て、ハチマキしてる連中がいる。万が一、不審者だったらマズイからな。確認してみるか。

そう思いながら近付くと、偶然その連中の1人が振り向き、俺と目が合った。


「げ!?お前…!?」

「お!これはこれは!ロリ・カイザー殿ではござらぬか!デュフフフ!!」


あの武器屋のニート息子だ…。生きとったんかワレ!!


「お前、こんなトコで何やってんだよ?」

「こっ、こんなトコとは心外ですぞ!そっ、某共はプリスたん達の応援に馳せ参じた次第であります故。」

「そっちの揃いのハッピ着た奴等もそうか?」

「左様でござるよ。皆、某の『紳士』仲間ですぞ!デュフッ!デュフフフフッ!」


『紳士』と書いて『ロリコン』と読む!

見れば、ハッピ仲間は人間、獣人族、魔族、ドワーフと異種族関係無く揃っている。マジでロリコンは国境も種族も越えるか。

ふと俺は、ニート息子達の足元にある派手な紙袋に目が行く。

ステージにプリス達が立つコトを考えると、万が一にも不審物だと面倒なので、一応聞いてみる。


「その袋の中身は何だ?」

「おぉ!よくぞ聞いてくれたでありますぞ。」


ニート息子は、さも「待ってました!」と言うカンジで袋の中身を出して並べ始めた。


「こっ、こりぇがウチワ、こっちがタオル、こっちが魔石ですぞ。」


いつの間に用意したのか、プリス達の絵が描かれたウチワに、刺繍入りのタオル。…良くやるよ、お前ら。(汗)

ーん?この棒状の魔石って何に使うんだ?


「こりぇは、夜になると光るのでござる。こうして振ったり、ハチマキに挿したりして使うのですぞ!デュフフッ!」


あぁ、ケミカルライトみたいなモンか。

…待て。『夜になると』って言ったな?コイツラ、夜のステージまでずっとココでヲタ芸打つツモリか!?


「某共は、この日のために徹夜して用意したのでござるよ!!…おぉっと、声が大きかったでござるな。

 某としたコトが、今から感情の昂ぶりを抑え切れないとは。フォカヌポウ。」


うーん、まぁ、コイツは決して悪人というワケでは無いんだよなぁ。

今回は4人の衣装のコトも世話になってるしな。ここは多目に見てやるか。


「分かったよ。周りの迷惑にならない様にしろよ。あ、あと、踊り子さんには手を触れるな!」

「「「「YES!ロリコン! NO!タッチ!」」」」


ハッピ仲間が綺麗にハモりやがった。(汗)

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