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OVA07「其(そーの)後(あーと)・オフライン」 その2



俺達は2人して大盛り上がり。―あ、イカンイカン。みんなを置き去りにしていた。(汗)


「そーゆーことって、どーゆーことっすか?」

「…マスター、2人だけの秘密、良くない。」

「わ、悪い悪い。」

「ケインさん、デヴィルラ、何が分かったのですか?」


えーっとねぇ、ドコから話すかなぁ?


「ちょっと長くなるぞ。まず俺達のいるこの世界だが、実はこのオレンジの様に丸い球のカタチをしているんだ。」

「え!?そうなんですか!?」

「あまりに大きいので実感が湧かないだろうけどな。

そして、球のカタチをしたこの世界は、あの空にある月と同じ様に空に浮いているんだ。」

「え?えぇ!?おつきさまとおなじっすか!?」

「さらに、この世界は1日に1回転している。太陽や星が空を回っているんじゃ無い。この世界が回ってるんだ。」

「…マスターの言葉じゃ無かったら、マーシャは今頃、ワケ分からないコト言うなと殴ってる。」


俺はテーブルに置かれているデザートのフルーツ、リンゴとオレンジを太陽と地球にに見立てて説明する。

パトルもマーシャも、まだ半信半疑ってカンジだ。

―でも、


「成る程…。確かに、コレなら太陽や星の動きにも納得がいきます。」


プリスたんは早速、理解してくれたみたいだ。


「どーゆーコトっすか?」

「今までの考え通り、太陽や星がこの大地の周りを回っているのなら、全てが同じ方向に、同じ速度で動くのは不自然です。

もっとゆっくり動く星や、もっと速く動く星、西や南から昇る星があっても良いハズです。」

「…おー、本当だ。言われてみればその通り。」


良い調子だ。みんなの理解が深まってる。

ただ、俺は今1つの心配をしている。『惑星の話には持って行ってくれるなよ』と。

あの逆行の様な迷走を今の天文学初心者のメンバーに教えるのは、メチャクチャ苦労しそうだからなぁ。

ココは手短に、次の話に移ろう。


「それで、だ。太陽や星が東から登るってコトは、この大地は西から東に向かって回転してるってワケだ。」


俺は夕日を受けたオレンジに羽ペンで☓印を描き、影の部分から日の当たる方へとゆっくりと回す。

☓印が影から抜けて明るく照らされて行く。


「おー、おひさまにてらされたっす!あさみたいっす!」

「そうだパトル。これが『日の出』だ。良く分かったな!偉いぞー。」


パトルの頭をナデナデしてやると、尻尾をブンブン振って喜ぶ。教育は褒めて伸ばすのが一番だ。


「さて、今、この☓印はオレンジと一緒に回っているけど、これがデヴィルラの魔法で浮かんだら、どうなる?」


俺は☓印を指で触る。インクが指に移り、オレンジの手前に俺の☓印の付いた指。

マーシャが手を上げる


「…分かった。浮いたら、回る大地に置いてけぼりにされる。」

「正解!」

「…マスター、早くマーシャの頭もなでる。」


俺は突き出して来たマーシャの頭もナデナデする。幸せそうな顔(無表情)のマーシャ。

そこにプリスたんが、ポン!と手を叩いて加わって来る。


「分かりました!デヴィルラの魔法で浮いた物体は、大地の回転からも遮蔽されてしまったために、西側に飛んでしまう。

…正確には、物体はそこに留まっていて、大地の方が動いて行ってしまった、というワケですね!」


おぉう!!大正解ですよ、プリスたん!!わずか10分程で地動説を完全理解しちゃうなんて、

前々から賢い子だとは思っていたけれど、これはちょっと怖い位の頭の良さだ。


「……。」


ん?プリスたんが、頬をピンクのブラシに染めて、上目遣いでモジモジしてる?

…あぁ、そういうコトでしたか。

俺はプリスたんの頭もナデナデする。ニッコリ微笑むその破壊力。


そう。今、プリスたんが話したのが、デヴィルラの開発した飛行魔法の一部始終。

恐らく、デヴィルラが開発したのは『引力を遮蔽する魔法』では無く、『慣性を遮蔽する魔法』だったのだろう。

もっと砕けた言い方をするならば、『今の絶対座標にピン留めする魔法』とも言える。


デヴィルラは頭を掻きながら、反省の弁を垂れる。


「やれやれ、分かってしまえば他愛も無い。余は『引力』のコトだけで頭が一杯になっておった。

『自転』は星の動きについての事象ゆえ、ひとまず関係無かろうと頭の中から排しておったわ。迂闊…。」


いやいや、たった数日で現代物理学から現代天文学まで学び倒したんだから、もう上出来だよ!!

ハッキリ言って、俺の元いた世界の中世時代に、いきなりこんなに沢山の常識外の知識を説明されて、 

全部キッチリ理解…、と言うよりも『事実として承諾出来る』頭の柔らかい人が何人いたか?ってコトだよな。


―実際いなかったんだから、ガリレオは理不尽な裁判に遭ったワケだしなぁ…。


「コレで、余が愚考した飛行魔法の使えなさが、理論的にも明らかになったワケじゃな…。

全てが西に向かって飛んで行ってしまうのでは、思い通りに空を飛ぶコトなど夢のまた夢よ。」


デヴィルラは自虐気味に苦笑いし、肩をすくめる。

「3人だけ頭ナデナデは不公平じゃ!」とか言い出すかと思ったのだが、そんな気分でも無い様だ。

そんなショボくれた彼女を、プリスたんがフォローする。


「でも、これで問題点が明らかになったのですから、改善出来るのではないですか?」

「それがのう…。この引力という力は想像以上に大きいらしいのじゃ。コレだけを無効化するとなると…。」


難題を前にして、終わりまで語らないデヴィルラ。その気持ちを察して何も言えないプリスたん。

どーにも気まずい雰囲気が部屋に流れる。

―と、その流れを空気も読まずにぶった切って、マーシャが手を上げる。


「…はい、マスター。」

「どうした、マーシャ?」

「…ひょっとしたら、ひょっとする。…プリス、地図を出して。」

「? 良いですよ。…はい。」


プリスが出したのは、中央都市の店を探し回ってようやく見付けた『行けない島』までちゃんと描かれている地図だ。

うん、確かに魔導都市の遥か沖合に、小さな島が載っている。

マーシャはソコを指差して言う。


挿絵(By みてみん)


「…この『行けない島』、魔導都市の『西』にある。だったら、デヴィルラの飛行魔法で魔導都市から『飛んで』行けない?」

「「「「おぉ!!」」」」


マーシャちゃん、今日2回目の頭ナデナデ。




―来るのは何度目になるか、魔導都市である。

この魔導都市の西端の港から、デヴィルラの飛行魔法で更に西に向けてひとっ飛び。

『行けない島』まで空路で向かおう、という作戦である。


デヴィルラが荷馬車から袋を降ろし、マーシャに持たせてやって来た。

マーシャは袋の中から何か銀色の布を取り出し、地面に広げた。

大きさはレジャーシート位。この輝きは…ミスリルか?


「これ、みすりるっすか?」

「左様。ミスリルを糸にして編んだカーペットじゃ。」

「これに私達が乗るんですか?」

「左様も左様。魔力を通せば板の様になるので、暴れなければ落ちる心配は無かろう。」


おぉ、つまりは魔法の絨毯か!!恐ろしくアナログだけど、一番手っ取り早い方法だな。

だけど、100%ミスリルのカーペットをって…、かなりお高かったんじゃ無い?


「ツケじゃ。」

「魔族の王女様がツケで買い物しちゃってるよ!?」

「あの武器屋の豚息子に発注したのじゃが、何分なにぶん今日の日まで時間が無くてのう。

もっと華美にと思うておったが、ミスリルの銀地のままの素っ気ないモノになってしもうた。」

「いや、機能最優先で構わないから。」


俺達は、海面よりも数メートル高い場所にミスリルカーペットを広げて乗り込む。

デヴィルラの魔法でカーペットが淡く紫に光る。やがて細かく揺れたかと思うと、一気に高台から離れ、

そのままの高度を維持したまま、一瞬の凄まじい爆音と共に西に向かって飛び出した。


プリスたんが前方に風魔法でシールドを張る。これで吹き飛ばされる心配も無い。

前方に島が見えたらすぐに報告してもらうため、一番前には目の良いパトルを乗せている。


「ケインさんの言ってた通りです。凄く速いですね。」

「こんなにはやくとんでいるのに、すっごい、しずかっすね。」


音速以上で飛んでいるからな。そりゃあ速いし、外部の騒音は前方には届かない。


この世界の1日は24時間。重力も俺が違和感を感じたコトが無いので、ほぼ1Gだと断定。

つまりこの世界は、恐らく地球とほとんど変わらない大きさと自転速度なのではないかと、俺は推論付けた。

だとすれば、赤道付近での自転速度は、約1700km/h。魔導都市の緯度なら日本と同じ位で、約1400km/h。

ちなみに音速の標準値は、1225km/hだったかな?


地球の中心から15度の距離を飛ぶのに1時間。『行けない島』までの時間は、この前後なんじゃないかと思ってる。

これなら休憩も必要無いだろう。空の上でトイレとか、一番困るもんなぁ…。(汗)




そして『行けない島』北側にある、島で唯一の海岸を目標に捉える。

幸い、地図との方角のズレはほとんど無かった。この地図はかなり正確と見た。アタリだな。


さて、最後の難関だ。今の俺達はだいたい秒速390メートルという猛スピードで飛んでいる。

島の海岸に付いたらそこで魔法を解除するワケだが、もし、そのタイミングが1秒遅れたら390メートルのズレが生じる。

下手をすれば、あっと言う間に島を通り過ぎて、今までの苦労が水の泡となってしまうのだ。

何せこの魔法は『西にしか飛べない』し、速度調整も効かないワケだからな。


超音速でグングンと近付く、島の海岸線。


「デヴィルラ、お前のタイミングに掛かってるからな。頼んだぞ。」

「安心せよ、主よ。ここまでやって来て、ヘマは出来ぬわ。」


デヴィルラが手を振った瞬間、俺達はピタリとその場の空中に留まる。

あ、いや、正確には、今までが留まっていて、今がこの大地の自転に乗ったワケなのだが。

普通なら、音速以上のスピードから急停止すれば、俺達の身体は反動でえらいコトになる。

だが、この飛行魔法で慣性を遮蔽していたので、俺達には何の影響も無い。


数メートル上空から落ちる。

体育会系のパトルとマーシャはそのまま着地。俺はプリスたんの風魔法をクッションにして一緒に軟着陸。

そしてデヴィルラは無属性の波動で浮いて、ゆっくりと着地した。


「うひょー!オイラたち、ほんとーに『いけないしま』にこれたんすねー!!」

「感無量ですね。無理だと思っていた島に来れるなんて。」


見渡す浜辺は草木も無く、本当に小さい。広さで言えばプロ野球場の外周程度だろう。

こんなピンポイントに着地出来たのは、デヴィルラの魔法解除のタイミングが、ただただ絶妙だったからだ。

俺はデヴィルラの頭をこれでもかと撫でる。


「流石デヴィルラだ!!」

「あっ…主よ、もっと優しく…いや、少し乱暴なのも嫌いでは…、」


そこにお約束のプリスたんの声。


「はーい、ケインさーん。行きますよ―。」


ナデナデタイム、強制終了。




この『行けない島』はメチャクチャ小さい島だ。恐らく、外周は数百メートル程度あるか無いか。

今こうして歩いている砂浜を除けば、高い山の外輪に囲まれた荒れ地が中に広がっているだけ。

そうだなぁ、ネットで有名になった青ヶ島みたいな構造だ。アレの超ミニサイズってカンジだな。


前にも話したけど、この島には川も泉も無いし雨も滅多に降らないという、水の恵みに見放された土地だ。

この島での水の確保が出来ない以上、どうしても滞在時間は限られてしまう。

全員で持てる限りの沢山の水筒を満杯にしては来たけれど、持って2~3日ってトコじゃないかな。


サバイバルだったら1週間は持たせられる量だけど、俺達はモンスター退治に来たんだからな。

体調をベストに保つためにも、水分はケチらずキチンと摂らないと駄目だ。


「つまり、その2~3日の間に、キマイラとケルベロスを倒さないといけないワケですね…。」

「うん。まずはこの外周の山を超えて、内部に進まないと。」

「ボスー!ほらあながあるっす!」


パトルが見付けたその穴は、砂浜を遮るようにそそり立つ外周の山に、ポッカリと口を開けていた。


「ただの洞穴か…?それとも、内部に通じるトンネルか…?」

「主よ、初日なのだから余力もある。積極的に行って良いのでは無いかのう?」

「私もデヴィルラの意見に賛成です。小さい島ですし、そんなに長丁場にはならないと思います。」

「―分かった。入ってみよう。」



だいたい洞窟と言えばジメジメして湿っぽいモノなのであるが、この洞穴の中はパッサパサに乾燥している。

水の恵みが無い土地だからか。コケも生えてないし、こういう場所にお約束の蛇もサソリもコウモリも、蟻さえいない。


ほぼ一直線に進んで行くと、大きな岩で塞がれた行き止まりにぶち当たった。


「魔法で砂利を固めて作っておる。…如何にも『この先に入って欲しく無いので塞ぎました』というカンジの岩じゃな。」

「ココにキマイラとケルベロスを置きに来た魔族が、封をしたのでしょうか?」

「恐らく。」


となると、この岩の向こうがキマイラとケルベロスの住み家か。

いわゆる『ボス戦前のHP・MP、装備、アイテム、確認ポイント』だな、こりゃ。

でも正直、この洞穴は大切だ。キマイラとケルベロスと戦闘して、劣勢になって撤退したときの良い避難場所になる。


「ボス、このいわ、どけるっすか?」

「―いや、まだ早い。キマイラ達と戦ってもし劣勢になった時は、ココまで戻って体制を立て直すコトになるだろう。

それに備えて、まずはココを攻略拠点としてキャンプの設備を整えよう。」

「りょーかいっす!」

「うむ、異議は無い。」

「それが良いと思います。」

「…ハンタイのサンセイ。」


俺達は洞穴内にテントを張り、寝場所を確保。水や救護用品を並べる。

撤退するコト前提の用意みたいでカッコ悪い、とか言うなかれ。準備は常に最悪の事態を想定するモノだ。

この日はそれで1日が終えた。




次の日、いよいよモンスター退治へ。俺達は一旦洞穴を出て、島の外輪山を登るコトにした。

山…というか、崖の上からキマイラとケルベロスを攻めようという作戦だ。

何も、洞穴から繋がる穴から出て『ココがこっちの陣地入り口です』とか、予め連中に教えてやる必要は無いからな。


崖の上から、2匹のモンスターが徘徊しているのが見える。

2匹を見たマーシャが、厳しい目つき(無表情)で言う。


「…前よりも動きが良くなっている。」

「そうですね。神様から見せられた時の光景だと、もっとぎこちない動きでしたが。」

「恐らく以前見た時は、新しく作られたばかりで、連中も身体が慣れておらんかったのだろうな。

本来ならば連中を調教するハズの研究員がいるのであろうが、魔導都市の壊滅でもう誰も来ぬのだしのう。」


もしあの2匹の調整が済んでいたら、この島から飛び出して、今頃は大陸に上陸していたかも知れない。

ヤツラには翼は無いが、海底を歩いて進めば良い。モンスターは呼吸をしていない非生命体だからな。


俺達がこの島に来る方法を模索する時間があったのは、ひとえにヤツラが未成熟だった幸運のお陰だろうな。

裏を返せば、これ以上あの2匹にウォーミングアップされては困る。倒すならこの機は逃せない。


ん?地面に光るモノがチラホラ…。あれ、鉱石か?


「あの2匹の戦闘訓練相手に使われたモンスターの残骸であろうな。」


成る程、攻撃力を中心にした鍛え方をしていたみたいだな。

純度の高そうな鉄や鉛、銅や銀が見えるから、スパーリング相手は上級から最上級モンスターだったんだろう。


俺はみんなにキマイラとケルベロスについて、一応の予備知識を与えようと説明する。


「俺の元いた世界の設定通りなら、キマイラは高熱の炎を吐く。尻尾の蛇の猛毒にも注意だな。

ケルベロスはこれといった特殊な能力は無いハズだが、3つの頭の絶え間ない攻撃が厄介だろうな。」

「ふむ。で、如何にするか、主よ?」

「デヴィルラはキマイラの炎対策に絶対必要だ。猛毒対処にプリスも要る。俺もそっちに加わろう。

パトルとマーシャはコンビで攻めて、手数でケルベロスの3つの頭を封じ込めてみてくれ。」

「はい!」

「りょーかいっす!」

「あい、分かった。」

「…らじゃー。」


さぁ、戦闘開始だ!!


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