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OVA07「其(そーの)後(あーと)・オフライン」 その1


●本筋に絡まない内容なのでお蔵入りさせてたネタです。

●勿体無いので再構成して掲載します。

●DVDやブルーレイに特典として収録されてる未放映回みたいなモンです。(笑)

●時系列としては『1クールで終わる異世界冒険』の後になります。

●サブタイトルは、私の大好きな異世界モノの作品のパロディとしました。

※内容にはパロディ元の作品は一切関係しません。単なる言葉遊びと捉えて下さい。



魔族の王女、デヴィルラは悩んでいた。

まだ幼きその胸に、大きな悩みを抱いているのである。


これは彼女の名誉のために言明しておきたいのだが、別にその胸の薄さで悩んでいるのでは無い。

主であるロリ・カイザーも「これはコレで!」「むしろステータスだ!」と、評価してくれているのだから。


では、何をそんなに悩んでいるのかと言うと、『飛行魔法』のコトである。


キマイラとケルベロスが巣食う『行けない島』への到達手段がいまだ見付からない。

魔導都市までの道中、最初にバテてしまい『お荷物』になってしまったという汚点も含めて、

デヴィルラは、愛しい主への貢献が出来ないコトを非常に遺憾に思っているのである。


だからこそ、汚名返上・名誉挽回の一手として、何としてでも新しい実用的な『飛行魔法』を開発しようと、

宿屋で別室まで取って、こうして日々の研究に没頭している。


―している、のだが…、成果は全くと言っていい程に上がっていない。


テーブルには何冊もの本が積み上げられている。これは彼女の主から貸与されたモノだ。


魔導都市で所長の隠し部屋を見付け、そこで発見した数々の見慣れぬ本や玩具や妙な道具類。

それ等はどれも、彼女の主が元いた世界の物品だった。


「これが間違って流出したら、世の中が混乱しかねない。」


主はそう言って、その部屋にあった『主の元いた世界の物品』を全て接収した。

その言葉は正しく、現にその後に、ギルドを震撼させた『100円玉偽造事件』が起こった。

主が言った通り、偽造に使われ盗まれた『機械』もまた、『主の元いた世界の物品』であったのだから。


その接収された物品であるが、その中から、デヴィルラは「書物を貸して欲しい」と主に頼んだ。

前述の通り、悪用されればこの世界に混乱をきたす恐れもある物品である。

断られるかと覚悟もしていたが、意外にも主は気前良く二つ返事で快く了承してくれた。

きっと「異世界の本が物珍しいのだろう」位にしか思っていなかったのかも知れない。そう思った。


だが、主はこう言ってくれた。


「デヴィルラなら悪用はしないだろ?」


自分を信頼してくれたコトが嬉しかった。本を貸してくれたコトよりも、ずっと、ずっと。


だからこそ、その信頼に報いようと決意した。

何としてでも、太古から不完全のまま放置されて来た『飛行魔法』を、実用可能なレベルにまで完成させたい、と。




デヴィルラは主から貸りた『主の元いた世界の本』の数々を読み漁った。

神話から童話、物理や科学、天文学に漫画まで。

主の元いた世界の知識が、何か1つでも『飛行魔法』完成へのヒントにならないかと。


だが、成果は前述の通りである。


「余は、魔法の才能が無いのであろうか…。」


部屋の天井をボンヤリと見つめ、そんな弱気を口にする。

分かっている。この言葉は自分への慰めであると。

デヴィルラの様に無尽蔵の魔力を湛え、最上級クラスの攻撃魔法を全て使える超常者など、

この世界中探したトコロで、数人いるかいないかである。否、いないと言い切っても過言では無いだろう。

才能が無いハズが無い。


それでも、主を喜ばせられないコトへの不甲斐無さが先に立つ。

そして今日も、幼き魔族の女王は挫折しそうな心を奮い立たせ、魔法の研鑽を続けている。


「また、上手く行かなんだか…。」


彼女がため息混じりに見つめる部屋の壁には、丸めた紙が張り付きカサカサと揺れていた。




「主よ。皆も聞いて欲しい。」


みんなが揃っている部屋で、デヴィルラがおもむろに喋り出した。


「以前の話にも出て来たが、『行けない島』へ行く方法についてじゃ。」

「何か、良い案があるのかい?」


俺がそう聞いても、デヴィルラはいつもの尊大な程の元気さが無い。

彼女は俺の言葉を、どこかかわす様に話を続ける。


「余は主より貸与された書物を読み、幾つかの手蔓てづるを掴むコトが出来た。」

「『つるをつかむ』?くさむしり、してたんすか?」

「パトル、『手蔓を掴む』とは、手掛かりを得るという意味ですよ。」


流石はプリス先生。俺も知らなかったわ…。


「それ等を活かして、真に実用的な『飛行魔法』を新たに作り出せぬモノかと、今まで思案しておったのじゃ。」

「そうだったのですか…。てっきり、本を1人で静かに読み耽りたいのかとばかり思っていました…。」

「皆の前であれこれ実験しておると、何かと五月蝿くしてしまうと思うてのう。」


デヴィルラはプリスにそう言って苦笑する。


でも、このセリフは嘘だな。きっと、悩んでいる姿を他人に見られたくなかったんだろう。

この子は良い意味で、人一倍プライドが高いからなぁ。

て言うか、ここ最近ずっとそんな研究をしていたのか。気付いてあげられなかったのが残念だ…。


そこにまたプリスたんが、デヴィルラに躊躇無く聞く。


「デヴィルラのコトです。こうして私達に話すのですから、何か1つの目処が立ったのですか?」


ズケズケと聞く、と言うと聞こえが悪い。気心の知れた友人として気兼ね無く聞く、と言う方が正しいな。コレは。


「さてもご期待に沿えるかのう。まぁ、経過報告といったトコロじゃ。」


返すデヴィルラも、何も装うコト無く答える。本当に、この2人は良いコンビだと思うよ。


「余が試みたのは、『引力を魔力により遮蔽する』というコトじゃ。」

「『いんりょく』…?」

「なんすか?それー?」

「…お前は何を言ってるんだ。」


ん?パトルやマーシャは兎も角、賢さMAXのプリスたんでさえ引力を知らないのか?

つまりこの世界では、まだ万有引力が発見されていない…ワケか?


デヴィルラは、テーブルにあったフルーツ盛り合わせからオレンジを1つ取って、ベッドの横に立つ。


「このオレンジ、余が手を離せば、さて如何に?」

「おちるっす。」

「左様。それが『引力』じゃ。我々を支えているこの巨大な大地は、この世界の森羅万象を

常に『見えない力』で、下向きに引き付けておる。だから『落ちる』ワケじゃ。」


果たして、手から離れたオレンジは、ベッドにポフッと落ちる。


「でも、とりやむしは、そらをとんでるっすよ?」

「パトルとマーシャは、以前、風魔法で上空に飛んだ経験があろう?基本はあれと同じじゃ。

羽で空気のカタマリを押しのける、その反発で飛んでおるのじゃ。」

「そーだったんすか!」

「…へぇへぇへぇへぇへぇへぇ。」


うん、初心者向けの良い教え方だ。揚力まで踏み込むと、辞書に辞書が要る状態になってハナシが進まなくなるからな。

と、ここまで黙って聞いていたプリスたんが口を開いた。


「魔力でその『引力』を遮蔽すれば、物体は大地に引き付けられなくなる。…つまり、落ちなくなる、と?」

「プリスは話が早くて助かるわ。この方法ならば、空気や魔力を地面に噴き付ける従来の飛行魔法とは違い、

場所を一切選ばぬ。水の上でも、空中でも、その時に居た位置を維持出来るというワケじゃ。」


おぉ!そりゃ凄いな!!

ソレを使えば、崖から落ちたりしても途中で留まれるし、ダンジョンの落とし穴も平気ってコトだよな。


「最大の利点は、その物体自身に働くことわりをいじる故、睡眠や麻痺等の状態変化魔法と同じだというコトじゃ。

すなわち、一度掛ければ術師が解くか、外部から干渉されるまで『落ちない』状態は持続する。」

「素晴らしいですよ!デヴィルラ!!コレ、論文書いたら魔術師会に発表出来ますよ!!」


何と、もうプリスたんはデヴィルラの『新理論』を理解してしまった様だ。

思わず椅子から立ち上がり、興奮気味にその発想を讃えている。

だが、デヴィルラは途端に表情を曇らせる。


「しかしのう…。ココに来て、煮詰まってしもうたわ。」

「と、言うと?」

「まぁ、語るよりも見せた方が早かろう。」


デヴィルラは、小卓の上にあるメモ用の羽ペンを手に取った。


「見ておれ。」


彼女の手の平に置かれた羽ペンが、淡く紫に光り出す。

ゆっくりと手を降ろすデヴィルラ。羽ペンは手の平に置かれていた位置で留まって浮かんでいる。


「うぉおおお!!ういてるっすー!!」

「…はんどぱわー、です。」

「凄い!!…見事です!」


全員が大興奮だ。勿論俺も、タネも仕掛けも無い目の前の現象に驚くばかりだ。

いや、タネや仕掛けはあるのか。魔法なんだよな、コレ。

湧き上がるギャラリーをよそに、デヴィルラは苦々しい顔で俺達に向かって言う。


「問題はココからなのじゃ。」


突如、羽ペンはプルプルと震え出したかと思うと、あっと言う間に部屋の壁まですっ飛んで行った。


「えぇ!?」

「なんっすかー!?」

「デヴィルラ…これは一体…?」


羽ペンは壁にピッタリ張り付いたまま、落ちずにカタカタ小刻みに震えている。

デヴィルラはため息を1つすると、苦笑する。


「何度試してもこのザマじゃ。必ず横に飛んで行ってしまう。壁が無ければどこまで飛んで行くコトやらのう。」

「原因は判らないのか?」

「判らぬ。あるとすれば、引力を魔力で遮蔽したコトでの何らかの副作用、としか思えぬ。」


デヴィルラは手を降って魔法を解除する。紫色の光が収まった羽ペンは、コトリと床に落ちた。

うーむ、難しいモノだな…。アニメみたいに、紋章の付いた石をペンダントにすれば飛べるってワケじゃ無いんだな。

と、マーシャが質問する。


「…自分の行きたい向きに飛ばせないの?」

「それがのう、自分の部屋でも向きを変え何度も試したが、必ずコチラ側へ飛んで行くのじゃ。」


デヴィルラは自分の右側の壁を指差して、憎々しそうに答える。

ふむ、飛んで行く方向はランダムでは無く、決まっている…か。

プリスたんが落ちた羽ペンを拾い、その横の窓に目を移して言う。


「失敗は成功の元と言います。明日もありますから元気出して下さい。―ホラ、夕日があんなに綺麗です。」


窓からは夕日が山に差し掛かっていた。 うん、明日も晴れかな。


―ん!?夕日!? …西側!?…あ、待てよ!もしかして、もしかするのか、コレ!?


「どうしたのじゃ?主よ?その様な難しい顔をするのは、余だけで良いのじゃぞ?」

「―デヴィルラ、貸した本の中に天文学の本もあっただろ?それは読んだか?」

「ぬ?む、無論じゃ。貸与された本は全て読破したぞ?」

「なら、思い出せ! ―『自転』だよ!!」

「!!」


俺の言葉を受けて、しばらく考え込んでいたデヴィルラだったが、何かに気付いたらしく

みるみるうちに目が見開かれ、表情がパアッとほころんだ。


「おぉ!!そういうコトであったか!!」

「そーゆーコトだ!!」


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