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OVA06「ダンジョンに一攫千金を求めるのは間違っている」その4



黄金の巨体が荒ぶる。

振るう拳が、足が、轟音と地響きと共に柱をえぐり、壁を壊し、地面に穴を空けて行く。

攻めるのを1体に絞るとは言ったが、その間も他の3体は猛然と攻撃を仕掛けて来る。


キラキラと輝くその体は、一番ダメージを稼げるハズの炎系や雷系の魔法がほとんど効かない。

加えて、ゴーレム系モンスター特有の高い防御力で、武器や打撃も通りにくい難敵だ。

メッキゴーレムとは一度戦ってるとは言え、あれだって相当に時間食ってたからなぁ。


結局、メッキゴーレムのどれか1体に絞って攻撃しているツモリでも、

常に組んで襲って来るので、いつの間にかメッキゴーレム3体を相手にしているコトに気付く。

お陰で3体にそれぞれ相応のキズが出来て、ソコだけメッキが剥げて黒鉄の地が見えている。


「期せずして、簡単に見分けが付くようになりましたね。」

「だからと言って、何がどーなるっつーワケでも無いしなぁ…。」


タフ極まるモンスター複数を相手に、流石にみんな疲れが見えてきた。

回復魔法じゃ傷と体力は癒せても、乱れる呼吸や上がる体温、血圧までは元に戻せないからな。

ソレまで無理矢理に魔法で抑えたら、身体は酸素不足とオーバーヒートを起こして倒れてしまう。


そんな最中にデヴィルラが俺に向かって言って来た。


「主よ!あの3体をほぼ確実にほふれる方法があるのだが、進言しても良いかのう?」

「そんな良い方法があるなら、ドンドン言ってくれ!!」


デヴィルラは額の汗を拭うと、


「最上級の熱線魔法を使う。今の余であれば連発出来るハズじゃ。」


と言った。

あぁ、ゾウエレファントを一発で仕留めた、あの超光熱の熱線か。

―でも、メッキゴーレムに炎系の魔法を撃っても、反射されてほとんど効かないんだろ?


「今までの戦闘でメッキが剥げた箇所があろう。ソコを狙う。」

「成る程、それなら…、」

「しかし撃つまでに時間が掛かる上、慎重に狙う必要がある。外れたら反射して、こっちが危うくなるやも知れぬ。」

「つまり、メッキゴーレムを動かなくさせてくれ、ってコトだな?」

「出来るかのう?」


俺は頭の中でシミュレーションする。

このデヴィルラの戦法が可能かどうか。可能ならみんなをどう動かせば良いか。


―答えは出た。「出来る」! ただ、かなり危ない橋を渡るコトになりそうだ。

それを思うと、俺はついついみんなの安全を先に考えてしまい、躊躇する。

だが、そこに元気一杯の声が次々に響いた。


「ケインさん、やりましょう!」

「ボスのめーれーなら、だいじょーっぶっすよ!」

「…マスター、いつでも言って。すぐに脱ぐから。」


いや、脱がんで良いから!!

みんな…、信頼してくれてありがとうな!!迷いが晴れたぜ!!

ようし!!


デヴィルラはプリスから背中の魔弓を借りると、射手の構えを取る。これで命中率を上げようというのだ。

俺は行動開始の指令を出す。


「パトル!マーシャ!右の一体に集中!何としてでも壁まで飛ばせ!!」

「りょーかいっす!!」

「…合点承知の助。」


そう返事をすると、パトルは装備をハンマーに換装する!!

そしてマーシャは服を脱ぎ捨て、全裸になった!!…結局、脱ぐんだな。


パトルの持つハンマーは、最強装備シリーズで一番の攻撃力を持つ打撃武器だ!!

マーシャは呪いの逆効果で、脱げば脱ぐほど強くなる特異体質!激しいオーラに包まれ、髪が逆立つ!!


ドン!!という轟音と共に、パトルとマーシャがメッキゴーレムに突っ込んで行く!!


「うぉおりゃあああああーーーーーっっす!!!」

「…必殺、マーシャの必殺技パート3 と、見せかけてストレートど真ん中。 」


ドゴォオオオオオオオッッッ!!!!!


息もピッタリ!!

同時に決まった2人の攻撃はものの見事にメッキゴーレムの巨体を吹き飛ばし、外周縁部の壁に激突させた!!


うん。パトルもマーシャもちゃんと『体力をセーブ』している。

本来、あの2人が全力を出せばこんなモンじゃ無い。大きなビル程もあった魔導巨人の腕さえ一発で壊せたのだから。

だが、今はそれをしてはいけない。

この後、まだ2体のメッキゴーレムと、本ボスのオウゴンゴーレムが待ち受けているからだ。

そして、デヴィルラが追撃するコトも2人は理解していて、力を合わせるコト前提の長期戦モードで戦っているのだ。


「今だ!プリス!風魔法でアイツを壁に釘付けにしてくれ!!」

「はい!!」

「パトルとマーシャはキツイだろうけど、他のヤツを引き付けてくれ!!」

「りょーかいっすよー!!」

「…今日は忙しい。」


プリス全力の風魔法が、壁にめり込んだメッキゴーレムに叩き付けられる!!

めり込んだ壁と風の魔法で、メッキゴーレムは動けない!!


「デヴィルラ!待たせたな!!」

「待っておったわ!!」


言うが早いか、デヴィルラの構えた魔弓から超熱線が矢となって発射される!

ココまでの流れを見越して…と言うよりは、俺達が必ずチャンスを作ると信じて魔力を溜めていたな。


バシュゥウウウウーーーーッ!!


超熱線の矢は、メッキゴーレムの胸のメッキが剥がれたピンポイントを針の穴を通す様な正確さで射抜く!!

みるみるうちに当たった周囲が溶解して行く!!そして、全く同じ箇所にもう一発!!


射撃で同じ場所に続け様に当てるのを何て言ったっけ…。―そう、ダブルタップだ。

魔法でコレをするには、とんでも無い集中力が要るだろうな。デヴィルラじゃなきゃ出来ないだろ。

―そして、


バッッガァアアーーーーーン!!!!


爆発と共にメッキゴーレムは光と消え、身体を構成していた鉄鉱石がドスン!と落ちてきた。

ようし!1体撃破!!

―コレをあと2回か。(汗)




ガガァアアアアーーーーーーーンン!!!


地下最深部のフロアが再び激しく揺れる!!

2体目のメッキゴーレムが、壁に突き刺さった音だ!!


そして風魔法が壁にメッキゴーレムを縫い付け、すかさず閃光の矢がその腹を貫く!!


ドッゴォオオーーーーーーーーン!!!


「これで2丁上がり!!」

「数が減って、少し楽になりましたね。」


さらに同様にして、以下同文!!


グッバァアアアーーーーーーーン!!!


「ふぅ…、これで露払いは消えたのう。」


デヴィルラが魔弓を降ろし、一息つく。

だが、やっとこれからがオウゴンゴーレムとの本番決戦だと言うのに、

ローテーションが想像以上にキツかったのだろう。パトルとマーシャが傷付き、汗びっしょりに息切れしてバテてしまっている。

しばらく2人を休ませてやらないと…。


「俺がヤツを引き付ける!プリスは2人を見てやってくれ!デヴィルラは遠距離から援護を頼む!」

「勿論じゃ!…しかし、主1人で平気なのか!?」

「ケインさん…!!」

「ちったぁ、大人を信用しろ!!」


アイツはニッコリ微笑んで 危険の中に駆けて行く♪


そんなフレーズが俺の頭の中に木霊する。

それを受けてプリスの目はキッ!と厳しくなり、言われた通り2人のケアに務める。

魔法で体力を回復させ、そして水を飲ませ、風魔法で身体を冷やす。


「ハァハァ…オイラのからだは、なにしてるっすか!はやく…はやくたちあがるっすよ!!」

「…マスター、助ける…うぅ、立てない…。」


息も荒く、床に大の字になって動けなくなっている2人は、すぐに回復し切らない自分の身体に苛立っている。

そんな2人を、デヴィルラが唇を噛み締め叱咤する。


「2人も落ち着かぬか!!主は我々が認めた男ぞ!!…心配など…要らぬ!!」


そうしてオウゴンゴーレムの足元に氷系魔法を放ち、足元を凍らせ続ける。

だが、オウゴンゴーレムは凄まじい馬力で足に張り付いた氷を砕き、また平然と歩き出す。

俺が囮になる安全距離は、何とかこうして保持されているのが現状だ。


パトルとマーシャの疲労が取れる間、俺はあちこち逃げ回りながら作戦を考えていた。

コイツが本物のオウゴンゴーレムだとしたら、当然、メッキじゃ無くて中までピカピカの金だ。

つまりその場合、デヴィルラの超熱線が反射されてしまう可能性がある。

これまで同様の戦法が使えない。 何かコイツ向きの戦い方を考え出さないと…。


そんなマルチタスクを無理にしていたせいだろうか。

俺は、メッキゴーレムが倒された後に転がってる鉄の鉱石につまづいて、足を取られてしまった!

上からはオウゴンゴーレムのフルスイング!!


「ケインさんー!!」


悲鳴にも似たプリスの叫び声!

だが!悪運が良いのか!!俺は転んだコトで、オウゴンゴーレムの拳を間一髪避けるコトが出来た!


「い、今のは心の臓が止まるかと思うたわ…。―いかん!!主よ!逃げよ!!」


デヴィルラの声にハッとして顔を上げると、オウゴンゴーレムの巨大な平手が迫って来ている!!


「うわぁーーーーーっっ!!」


俺は床の石畳と地面の土ごとオウゴンゴーレムに握られて、持ち上げられてしまった!!


「ボス!!」

「…マスター!!」


気力を振り絞って立ち上がり、オウゴンゴーレムに突っ込んで行くパトルとマーシャ!

だが、オウゴンゴーレムは空いている方の腕を振り回し、2人をなかなか寄せ付けようとしない!

俺は、何とか巨大な黄金の手から抜けだそうともがくが、


「この野郎っ!!…ぐわぁああーーっ!!」


オウゴンゴーレムは怪力で俺を握り潰そうとする!!

俺と一緒に握られた石畳は次々に砕けて、巨大な指の間から礫石となってこぼれ落ちる!

そして俺の着けている胸当てがベキベキと音を立てて歪んで行く!!


「主を放さぬかぁあーーーーっっ!!!」


デヴィルラは氷弾で俺を握っている腕を集中攻撃する!!が、効果は思わしく無く、状況は変わらない!!


「ケインさん!!」


意識が朦朧として来る。


―ところで、人って言うのは土壇場になると、自分でも『良く思いついたな』と感心するようなアイデアを出せるモノで。

俺の場合、ココがその時だったんだなぁと、今更ながらに思うのである。


「ぶ…、」


プリス達が焦燥の表情でこちらに駆け寄ろうとする。

駄目だ!今こっちに来ちゃ。 何故なら、今俺がやろうとしているコトは…!!


「ブロックゴーレム!!カムヒアぁあーーーーーーっっ!!!!!」


俺は肺に残っていた息を絞り出して、あらん限りの声で叫んだ!!


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………!!!!!!


突如、地震が起きたかの様な振動がフロアを襲う!! だが、その振動は床からでは無い!!


バゴォオオオオーーーーーン!!


フロアの天井を突き破り、巨大な立方体の岩が落ちて来る!!

そしてその直下のオウゴンゴーレム、否、正しくは『呼んだ俺』を目指して一直線に急降下して…!!


グシャァアアアアーーーーーーーーーッッ!!


的のでかいオウゴンゴーレムの頭部に直撃!!そのショックで俺を握っていた手は緩み、俺は放り出された!!


ベキベキベキベキィイイイイッッ!!!


そのままオウゴンゴーレムはブロックゴーレムの下敷きに!!!!


地面に落下した俺のトコロに、プリスが飛んで来て回復魔法を掛ける。

パトル、デヴィルラ、マーシャも、落ちてきたブロックゴーレムを驚いた顔(内1人、無表情)で横目にしつつ、

俺の元に駆け寄って来てくれる。




後はアッサリと終わりを迎えた。

ブロックゴーレムの激突で大ダメージを受け、更に上に乗っかられて動けなくなったオウゴンゴーレム。

それを倒すのはしごく容易であり、回復を終えたパトルとマーシャが満を持してフルボッコタイムに突入したのである。


「いやはや何とも。主の機転にはたまげたわ。あの様なモンスターの使い方なぞ初めて見たわ。」

「本当ですね。何と言いますか、一発逆転というのは正にこのコトですね。」

「俺もイチかバチかだったけどね。ちゃんと声が届くのか?届いてもココまで来てくれるのか?ってね。」


プリスのお陰で回復はしたけれど、着けていた胸当ては革ベルトも切れて外れてしまい、折れ曲がってもうベッコベコだ。

コレ、結構良い値段したんだけどなぁ…。こりゃあ下取りも無理だろうなぁ…。

まぁ、目の前のオウゴンゴーレムを倒せば、もっと良い装備が余裕で買えるだろうけどさ。

そんなコトを言ってるうちに、パトルとマーシャがオウゴンゴーレムにトドメを刺しに掛かる。


「いくっすよー!」

「…せーの、」


ドッッカァアアーーーーン!!!


遂にオウゴンゴーレムは光と消えた!!!


「おぉ!!やったぁあーーーーーーーーーーっ!!!」


俺とプリスとデヴィルラは意気揚々とスキップ気味に走り出す。

さぁ、後は落ちてる大量の金の鉱石を回収するだけだ!!


「ぼ、ボス…、」

「…マスター…。」


あら?パトルとマーシャが複雑な顔(うち1名、無表情)でこっち見てるよ?

何だよ、もっと喜べよー!金だぞ―!黄金だぞー!?


ん…? 何だコレ? …赤い金属と、銀白色の金属が落ちている…。

どこにも金は見当たらない。


それを見たデヴィルラが(ノ∀`)アチャーになって、すこぶる気まずそうに語り出す。


「あー、その、主よ…。非常に言いにくいのじゃが…、コレは『シンチュウゴーレム』では無かろうか…?」

「シンチュウゴーレム…!?」


シンチュウ…って…、『真鍮』か!? 銅と亜鉛の合金の!? あの五円玉の!?

色が金色だというコトで『愚者の金』と呼ばれ、安物の装飾品の『金色』として使われている金属。

時代劇で使われている小道具の大判小判も、コイツで出来ている。

で、まさかの金ピカゴーレムも、この真鍮製だったってオチ!?


「あぁああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」 

「ボスー!!しっかりするっすー!!」


俺は膝から崩れ落ちた。


「何と言いますか…、言葉が見付からないというのは正にこのコトです…ね。」

「…マスター可哀想。いい子いい子…。」


マーシャが俺の頭をナデナデしている。


「オウゴンゴーレムの正体は、このシンチュウゴーレムのコトだったのでしょうか?」

「分からぬ。こうなって来ると、魔族の軍資金というウワサ自体が、数百年掛けてひとり歩きした嘘だったのやも知れぬし、

もしかしたら、今もどこかに本当のオウゴンゴーレムがいるのやも知れぬ。」

「結局、分からず終いですか…。」

「ニアリーイコールじゃ。」


悔しかった。

黄金が手に入らないというよりも、『ハズレ』を引かされたコトが何よりも悔しかった。


「くっそぉー!!こうなりゃ意地だ!!今度『魔眼』を手に入れたら、それで絶対見付けてやる!!」

「オイラ、ボスにどこまでもついていくっす!」

「…右にうなじ。…じゃ無い、同じ。」

「何かもう、冒険者というよりも、トレジャーハンターみたいになって来ましたね。」

「こういうのも、男の矜恃きょうじというヤツなのかのう…。」



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