OVA06「ダンジョンに一攫千金を求めるのは間違っている」その3
プリスが光魔法を通路奥に飛ばす。見ると、今まで通って来た通路が塞がっていた。
イヤな予感が走る。
慌てて横の通路を覗くと、そっちにもブロックゴーレムが来ていて、通路が塞がれている。
「―閉じ込められた!?」
「ひょっとして、コイツをこわそうとしたから、あつまってきたんすかね?」
「コイツら、互いに意思疎通してるっていうのか!?」
「…それじゃ、このまま目の前のコイツを壊そうとしたら、」
「どんどん通路が狭まって来て、ぺしゃんこ…ですか。」
「うぬぬぬ、我が魔族ながら手の込んだ陰湿な罠じゃのう!作ったヤツの顔が見たいわ!」
もう一度奥の通路を見ると、さっきよりも『壁』が近付いてる! ひぇええええ!!!
何だよ!!この地獄直行の『だるまさんがころんだ』トラップは!!
取り敢えず、目の前の1体を壊してしまえば活路が見出だせるかとも考えたが、望み薄だと分かった。
壊した先にもう1体が待ち構えていたら、そこでアウトだ。
次のを壊す間も無く、俺達は前後のブロックゴーレムに挟まれ、のしイカになって終わり。
しかし、ここまで用意周到だと、間違いなくこの先にオウゴンゴーレムが潜んでいるって確信も湧いてくる。
「と、兎に角、マーシャ!構えを解け!闘気も消すんだ!」
「…うん、マスター。」
マーシャは俺の一声で、次の瞬間にはポケーッとした通常モードに戻った。
その瞬間、迫っていた『壁』はピタリと進行を止める。
「と、止まりました…ね?」
「やはり、攻撃しようとすると反応するようじゃな…。」
「でも、みちがふさがれちゃったっすよー?」
俺達の周囲は何体ものブロックゴーレムに囲まれて、四方の通路が全て閉鎖状態になっていた。
攻撃さえしなければ現状維持…、これは間違い無いだろう。問題はコイツラを引かせる方法だ。
「ダメ元でやってみるか…。」
俺は前方のマーシャが壊そうとした『壁』に近付く。
「みんな、俺に調子を合わせてくれ。」
「え?あ、はい。」
何のコトか分からないといった表情の4人だが、一応、俺の言葉に頷いてくれた。
さてと、上手く行ったら御慰みだ。
「あー、ここも行き止まりかー。まいったなー。引き返すしかなさそーだー。」
俺は目の前の『壁』をペシペシ叩きながら、大声で言う。
「「「「は?」」」」
ポカーンとしているプリス達。 いや、気持ちは分かるけどさ!ココは繋いでくれよ!恥ずかしいだろ!
俺は4人に向かって、手を振りながら声を掛ける。
「さん、ハイ!」
「―あ、え、えぇっと、そ、そーですねー。コレは通れませんねー。」
「こ、ここ、こまったっすねー。どーすればいいんすかねー。」
「う、うむ!このダンジョンは複雑じゃのうー。お手上げじゃー。」
「…【悲報】マーシャ達、すごい迷宮で進めず無事死亡。」
さ、さあ、どーだ…!?
俺達はゆっくり振り返る。…と、
「!! いない!?…迫っていたブロックゴーレムが消えました!!」
「もう、とおくにいっちゃったみたいっすね!?」
「こ…こんな茶番で去ると言うのか!!」
「…チョロイ。」
うあーーーーーーーー!!恥ずかしかったーーーーーーーーー!!
やっぱりコイツラ、侵入者を『倒す』よりも『迷わせる』コトにプライオリティ置いてるな。
マップ中央の真っ黒不明部分は、きっとコイツラが『通せんぼ』してたせいなんだろう。
コレで、取り敢えずのブロックゴーレム攻略法が判ったぞ。
「しかし、前に進めぬコトに変わりは無いのう。」
「それなんだが…デヴィルラ、武器やアイテムを封印していたカード、あったろ?『アレ』出してくれ。」
デヴィルラと北の関所で戦った時、『ハンデ』と称して提示された20枚のカード。
その中にはレアな武器、防具、アイテムや、奴隷獣が封印されていた。
「む?あのカードか?…成る程、『アレ』を試そうと言うのじゃな?」
デヴィルラは俺が何を考えているか、一発で察してくれた様だ。
おもむろに懐から例のカードを出す。 但し、たった1枚だけ。 でもそれで良いのだ。
「主の欲するカードは、コレであろう?」
したり顔で言うデヴィルラ。
そのカードとは…、そこでプリスがポン!と手を叩く。
「解りました!それは『ゾウエレファント』のカード…、いえ、今は『従属のプレート』のカードですね!?」
「正解じゃ!」
クルリとカードを返してこちらへと見せるデヴィルラ。
そのカードには『従属のプレート』が描かれている。
『従属のプレート』とは、モンスターの首に掛けるコトで奴隷獣とし、命令を聞かせられる様にしたモノ。
そして、その奴隷獣の1体『ゾウエレファント』は、デヴィルラが仲間になった後での運搬作業に駆り出され、
中央都市に着く前にデヴィルラの手で始末されたのだ。
だが、ゾウエレファントの着けていた『従属のプレート』は、アイテムとして消えずにカードの中に残っていた。
「その従属のプレートをこのブロックゴーレムに使って、命令を聞かせようというワケですね。」
「うひょー!ボス、あったまいいっす!!」
「…やっぱりマスターはスゴイ。抱いて。」
「待て待て。褒めるのは、上手く行ってからにしてくれ。」
普通のモンスターなら、このプレートで犬猫の様に従順になるんだが、
このブロックゴーレムはモンスターとしては、ちょっと異端だからなぁ…。
上手く言うコトを聞いてくれるかな?
みんなで力を合わせて、従属のプレートをブロックゴーレムに掛ける作業を始める。
パトルがマーシャを肩に乗せて、俺と並んで鎖を持つ。
「こいつ、くびがないっすけど、どこにかけたらいいんすか?」
「だいたいで構わぬ。」
「…そんなんで、いいの?」
「適当にモンスターにくっついておれば良いのじゃ。」
「結構、アバウトなんだな…。」
「魔法はイメージ優先!みたいなトコロがありますからねぇ。」
で、『だいたいこんなモン』で、従属のプレートをブロックゴーレム表面の凸凹に掛け終える。
ところで、モンスターは従属のプレートを掛けた人の言うコトを聞くワケだが、
今回みたいにみんなでやった場合、誰の言うコトを聞くんだ?
「多分、主で大丈夫じゃろう。このパーティーのリーダーなのであるからして。」
「そういうヒエラルキーで良いのか…。」
俺は『壁』に向かい「コホン」と咳払いを1つして、ゆっくり良く聞こえるように命令する。
「あー、俺の言うコトが分かるなら、ちょっと下がってくれ。」
―沈黙するコトしばし。 さぁ、どうだ!?どうなのよ!?
ズズズズズズ……
『壁』は20センチ程、奥に下がって移動した!!
「やりました!!」
「ボス、すっごいっすー!」
ズズズズズズ……ズズズズズズ……
ゆっくり移動するブロックゴーレムの後を付いて行く俺達。
出した命令は「ダンジョン中央部まで移動」である。
コレでようやく、マップ中央部分に行けるな。
しっかし、この攻略法ってある意味チートだよなぁ…。
魔族のデヴィルラがいて、そのデヴィルラだけが持つ従属のプレートがあって、それでようやく踏破可能になるんだから。
こりゃ、普通の冒険者が手も足も出せないハズだわ…。
―と、いきなり開けた空間に出た。
どうやらココが黒塗りの『この先は君自身の目で確認してくれ!』の部分だな。
「下り階段があります!」
「やっぱりココだったな!よーし!全員、装備と持ち物チェック!これから下の階に突入する!」
ゲームと違って、ラストフロア前で「この先に強い敵の気配がする…!」とか、誰も言ってくれないからね。
事前確認は、してもし過ぎるというコトは無い。
ゴゴン…ゴゴゴン…
ん?何だ?ブロックゴーレムがユサユサと身体を揺すっている…?
俺が怪訝な顔をしていると、デヴィルラが言った。
「コレは多分、主の『全員、装備と持ち物チェック』の言葉の、『全員』に反応したのであろうな。」
「え?あ、そうか。そういうコトか。コイツ、持ち物チェックしてるつもりなのか。」
そう思って見ると、ちょっと可愛くもある様な気がしないでも無い。
俺はブロックゴーレムに向かって命令する。
「お前はココで待機な。帰りも何か世話になるコトあるかも知れないし。」
ブロックゴーレムはピタリと動きを止める。
「よ~し。…えーと、『俺達5人』は行動開始だ!」
階段はそんなに広くない。何とか大人1人が入って行ける幅だ。
パトルを先頭に、俺、プリス、デヴィルラ、マーシャの順で進む。
先頭から防御力のある順で、マーシャが最後尾なのは、敵にバックアタックを受けた時のためだ。
「どこまで降りるんだ?コレ…。」
「体感的に、2階層分くらいは下っておるのう。」
「モンスターも出ませんし、不気味ですね。」
「なんか、さきがあかるくなってきたっす。」
「お、ようやく到着か?」
そうして俺達が辿り着いたフロアは、小さめのドームスタジアムみたいな場所だった。
周囲に魔石が析出していて、それが光を放ち照明代わりになっている様だ…。
「このフロアで行き止まりか。」
「―と、いうコトは…、」
「!! 4つ、くるっす!!」
フロアの4方向から1体づつ現れたのは、金色の巨体!!
「オウゴンゴーレム!?…いや、まさかメッキゴーレム4体!?」
「ボス!1つだけあしおとが『おもい』っす!」
「つまり…この中の1体が『アタリ』ってワケか!?」
「ケインさん、多分『アタリ』はアレです!」
プリスが指差す金色のゴーレムは俺達から一番奥にいて、他の3体がガードしている陣形になっていた。
成る程ね。RPGでいうトコロの、ボスキャラの前に中ボスが複数出ているパターンか。
「主よ、如何に?」
「本当はあの奥の『アタリ』だけ倒せればそれで良いんだけど、そうさせてはくれないだろうなぁ…。」
「…全部倒すしか、無い。」
「―だな。1体づつ絞って行くぞ!」
「はい!」
「りょーかいっす!!」
「あい、分かった!」
「…らじゃー。」




