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OVA06「ダンジョンに一攫千金を求めるのは間違っている」その2



「え?それって、今ココで俺達が最初に見付けたってコト?」

「そうですよ。新しくダンジョンが発見されると、発見者が自分の名前とその日付を

入口の周りの石に刻むコトになっているんです。でもホラ、ここの石はどれも綺麗なままです。」


あぁ、そう言えば、今まで訪れたダンジョンには入り口に色々文字が彫られてたっけ。

あれって、そういう意味だったのか。


「とうとう新たなダンジョンまで探してしもうたか。主とおるとほんに退屈せんのう!」

「いやいや、見付けたのはデヴィルラじゃないか。」

「何をのたもう。妻…いや、奴隷の功績は、これ即ち主の功績じゃろう。」

「デヴィルラ?今、何か言い直しましたよね?」

「気にするで無い、禿げるぞ。」

「禿げません!!」


本当に良いコンビだ。(苦笑)


「―で、主よ。これから如何にする?」

「なかにはいるっすか?」

「うーん…どーすっかなぁー…。」


一応、まだ食料も水も残ってる。みんなの体調も問題無い。…が、


「―よし、ココは一旦戻ろう。」

「入らないんですか?」

「うん。まずはこのダンジョン発見をギルドに報告する。」

「そんなことしたら、ほかのぼーけんしゃがいーっぱいきちゃうっすよ!?」

「パトルの言う通りじゃ。先を越されたら今までの苦労が水の泡じゃぞ?」


ぶーぶーと口々に不満を漏らす幼女達。


「みんな聞いてくれ。このダンジョンはまだ内部の地図も情報も無い。当たり前だよな、今見付けたんだから。

つまり、ココで俺達がこのダンジョンに挑む時、最初にしなくちゃいけないのが内部地図の作成だ。

全ての通路を虱潰しにして、トラップを調べ、出て来るモンスターも倒さなきゃいけない。

―それって、ぶっちゃけ面倒だろ?」

「まぁ、そうですね。」

「この5人だけで行うにはいささかキツかろうし、時間も掛かるじゃろうな。何度もココに来るハメになろう。」

「だろう?そこで、だ。そのお役目を他の冒険者達に丸投げしようと思う。」

「どーゆーことっすか?」

「この新ダンジョンをギルドで公表すれば、オウゴンゴーレム目当てに沢山の冒険者が来るだろ?

大人数で掛かれば内部地図もあっという間に出来上がる。ソコを見計らって、俺達が行こうって寸法だ。」

「主よ…。余は今、主にもう何度目か分からぬ感心をしておる。姑息ではあるが、実に合理的な策じゃ。

今の言葉を魔王である父上が聞けば、間違い無く感嘆の笑みを浮かべたであろうぞ。」


デヴィルラが実に良い『悪い笑顔』を作り、俺にしなだれ掛かる。


「…きたない。流石マスター、きたない。」

「マーシャは反対か?」

「…そんなコト無い。褒めてる。心の底から。」

「でも、オウゴンゴーレムをたおされちゃうんじゃないっすか?」

「まぁ、その危険性は無くも無い。しいて言えば、その危険性が地図作成の手間を省く代償ってトコだろうな。

でも、上位ランカーでさえダミーのメッキゴーレムを倒せなかっただろ?

そう考えると、オウゴンゴーレムも奴に匹敵するか、それ以上のパワーを持ってるハズだ。」

「つまり、そう簡単にダンジョンクリアは出来ないと、ケインさんは睨んでいるワケですね。」

「あぁ。それに、ここで俺達がダンジョンに挑んじゃったりしたら、

『発見もクリアも独り占めかよ!』って、他の冒険者達からやっかまれそうだしな。」

「それは…ありますねぇ…。」




そうして俺達は中央都市へと戻り、ギルドへ新ダンジョンの発見を報告した。

そこで初めて知ったのだが、ダンジョンを新たに発見した時も若干だが賞金が出るらしい。

思わぬお小遣いになったな。




それから約一ヶ月。オウゴンゴーレムが出るという噂で新ダンジョンは大盛況。

近くに簡単なキャンプ村まで出来て、買い物や宿泊まで出来る様にまでなっていた。

そうそう、コレを待っていたんだよ。中央都市とココとを数日掛けて何度も往復するなんてゴメンだからな。


しかし予想通りというか、案の定というか、ダンジョンクリアは誰もしていない。

甘い考えで一攫千金を求めた低レベルの冒険者は、ことごとく返り討ちに遭い撤退。

高レベルのランカーでさえメッキゴーレムと互角の戦いがやっとで、そこで疲弊して戻るといった有り様。


何か、冒険者達の間では『あの発見者のロリ・カイザーですら二の足を踏んだ難攻不落のダンジョン』とか

褒められてるのか、サゲられてるのか、微妙な言われ方をしている。(汗)


「内部の地図作成も、かなり進んでいる様ですね。」

「それなのじゃがのう…。何種類か出ている内部地図に、それぞれ違う箇所が見受けられるのが不可解でな…。」


ギルドからダンジョンマップは販売されているが、キャンプ村でも冒険者が独自のマップを作って売っている。

現地だと新しい情報が入り次第、すぐに刷新出来る強みがあるからな。

恐らく、そこんトコが各マップの差異になっているのだろう。

ここはキャンプ村での最新マップを使うべきかな。

それでも微妙な差異はあるので、俺達はその中でも信頼の高そうな内部マップを何種類か買って、

いよいよ新ダンジョンに挑むコトにした。




新ダンジョンの地下1階を進む俺達。この階はどのマップを見比べても差異は無い。

まぁ、冒険者達が一番頻繁に出入りしてる場所だからな。情報も多く、摺り合わせがちゃんと出来ているんだろう。

これといって、めぼしい宝箱も強いモンスターも出て来ない。やはり本番はもっと階下か。


そして地下2階を突き進み、地下3階へ。

ここで異変が起きた。


「通路が地図と異なっていますね…。」

「じゃあ、別の地図で、」

「―駄目です。どの地図とも合いません。…と言うか、これは何ですかね?」


マップ担当のプリスたんが困惑の表情。俺は横から地図を覗き込む。

ん?このマップ、不完全だな。

この地下3階分のマップには中央部に黒で塗り潰された不明箇所があって、ソコに何か書かれている。

―えーと、何々…?


『この先は君自身の目で確認してくれ!』


ナメてんのか、オイ!!

どの世界でも攻略マップってのはそういう流儀なのか!?

少なくとも、他には下り階段が記されていないコトから、ここに描かれた『この先は~』部に階段があるのか。

それともこの階で終わりなのか。


「ここいらから情報が錯綜しとるのかのう?」

「修正箇所を書き込みながら進むしかありませんね。」

「そうだな。―パトル、お前の出番だ、頼んだぞ。」

「りょーかいっす!」


獣人族のパトルは、獣の本能とでも言うべき抜群の方向感覚を持っている。

ダンジョン内でも方向を見失わず、モンスターやトラップの気配にも敏感だ。

ゲームで言えば、戦士でありながら盗賊系のスキルも有してるってワケだ。

パトルがいれば、ダンジョンで迷うコトもまず無いと言って良い。




…と、絶賛したばかりだったんだが…、


「ん?ココ、さっきも通らなかったか?」

「えー?そんなことないっすよー?」

「いや、ホラ、壁にさっき見た印が刻まれてる。」


どこかの冒険者がチェックのために彫ったのだろう。『3』という番号が壁にハッキリと。


「これは…確かに先程通った時に見ましたね。彫ってある場所も筆跡も同じです。」

「あれぇー?おっかしいっすねー?」

「ドンマイ。―プリス、地図を修正しといてくれ。」

「分かりました。」


時にはこんなコトもあるさ。誰だって完璧じゃあ無い。

そうして気を取り直し、またしばらく進むと、


「…行き止まり。」

「地図と違ってるな。ここも修正頼む。分岐点まで引き返そう。」


そして来た通路を引き返して進んでいると、


「…また行き止まり。」

「ここも地図と違ってますね。」

「そんなー!ここはさっきむこうからみたとき、つうろになってたっすよー!?」

「パトル、本当か?」

「ぜーったいオイラのほうがただしいっす!ばんごはんかけてもいいっすよ!!」


あの『三度の飯よりも食うコトが大好き』という大食漢のパトルが、晩飯を賭けるとまで言っている!?

これは相当の自信があると見た。


「じゃあ、一体どういうコトだ?」

「このだんじょんのほうがおかしいっす!ぜーったいなにかあるっす!!」


こうまでムキになるパトルは見たコトが無い。

パトルの言う通りなら、このダンジョンに何かトラップがあるのか?

―そう考えてると、


「ボス!これ!!これみてほしーっす!!」


パトルが行き止まりの床を指して、俺を呼ぶ。 何だ何だ?

見ると、土で出来た床には足跡が。

―うん? コレ、他の冒険者達が通った跡か?


「いきどまりのかべにむかって、あしあとがきえてるっす!!」

「本当ですね。これでは、まるでこの壁をすり抜けて行ったみたいです。」

「んな馬鹿な。」

「…幻覚の魔法かも。このダンジョンを見付けた時みたいに。」


すると、ここまで沈黙を通してきたデヴィルラが前に出て来た。


「主よ、少し調べさせてくれぬか?」


デヴィルラはそのまま行き止まりの壁まで歩き、壁をさすり、あちこちを見て何かが判ったのか、

小さく頷くと、おもむろに振り向き俺に言った。


「パトルは間違っておらぬ。冒険者達は確かにここを通ったのじゃ。」

「え?それって?」

「―この壁は、モンスターじゃ。」

「何ぃいいいいーーー!????」


この行き止まりの壁がモンスター!?


「余も実物は初めて見たが『ブロックゴーレム』というヤツじゃ。」

「ブロックゴーレム?」

「モンスターの中でも特異な、防衛・潜伏型のモノでのう。

普通のモンスターは、魔族以外の者を見れば攻撃をする様に作られておるが、

こやつは他種族が近付こうが触れようが、全く反応せんのじゃ。」

「つまり…ダンジョンの中で、」

「左様。自らダンジョンの壁に擬態して、通路を変えて侵入者を惑わすのが役目じゃ。

攻撃性が無い故に、恐らく魔族でなければコイツの微小な魔力には気付けまいて。

余も父上の書物を読み漁っておらねば、判らんかったやも知れぬ。パトルを責めるのは酷なハナシじゃ。」


うぬぬぬぬ、そんなイヤらしいモンスターもいたのか!!

出回っていたマップがどれもコレも違っていたのは、コイツのせいだったんだな!

ここまで来た冒険者達も、コイツに迷いに迷わされ、体力と食料、アイテムを切らして撤退していったワケか。

で、不確かなマップだけ増えて行き、後発の冒険者は余計に迷うコトになる。エグイなぁ…。


「デヴィルラ、コイツの排除ってどうすれば良いんだ?」

「特異と言っても、こやつもモンスターじゃからな。こちらから攻撃すれば普通に戦闘に持ち込めようが…。」

「こんな地下でこんな大物と戦ったら、ダンジョンの方が先に壊れそうですね…。」


思わず苦笑いするプリスたん。それは言えてるわ。


見ると、マーシャが行き止まりの壁、ブロックゴーレムに耳を当ててコンコンと軽く叩いている。

そして俺の方を向くと、確信を得た顔(無表情)でこう言った。


「…これなら全力で殴れば壊せると思う。」

「え!?たった一発でゴーレムを!?」

「…できらぁっ!」


マーシャちゃん、拳を握りしめたアピール。本当にやれるのか?


「…大丈夫。コイツ、動かないから。」

「成る程。それならば、十分に力を溜めて万全の体制から拳を繰り出せる、というワケじゃな。」


マーシャは壁の前に立ち、深く静かに息を吸い丹田に気を溜める。

右足を後ろに引いて腰を落とす。ザリっと土を噛む音がする。 

いつもボーっとしてる彼女の目が、この時ばかりは獲物を狩る虎の様に厳しく、鋭くなる。

そして、いよいよ右腕を大きく後ろに引き―、


「あー!!ちょっとまつっすー!!」


ずででぇええーーーん!!


パトルの突然の待ったコールで、マーシャは見事にズッコケた。お前は昭和か!!


「ど、どうしたんですか、パトル!?」

「…むぅ、なかなか良いタイミングのツッコミだった…。」


ズッコケたマーシャをプリスが起こしながら言う。

パトルは俺達が来た通路の奥を指差して言った。


「むこうから、ちがうぶろっくごーれむがきてるっす!」

「何!?」


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