OVA06「ダンジョンに一攫千金を求めるのは間違っている」その1
●本筋に絡まない内容なのでお蔵入りさせてたネタです。
●勿体無いので再構成して掲載します。
●DVDやブルーレイに特典として収録されてる未放映回みたいなモンです。(笑)
●時系列としては『1クールで終わる異世界冒険』の後になります。
●サブタイトルは、私の大好きな異世界モノの作品のパロディとしました。
※内容にはパロディ元の作品は一切関係しません。単なる言葉遊びと捉えて下さい。
「パトル!右側に周れ!!」
「りょーかいっすー!!」
「…痛い」
「マーシャ、大丈夫ですか?今、回復魔法かけますから。」
「こやつめ、まだ倒れぬか。」
俺達は今、1体の最上級モンスターと戦っている。
強力な攻撃力と防御力を備え、もう小一時間は攻撃してるってのに、いまだ底が見えない体力。
そして全身金色に輝く身体。 コイツの名は―、
話は3日前に遡る。
「皆さん!冒険者ギルドにオウゴンゴーレムの情報が入って来ました!!」
「マジか!?」
血相を変えて宿屋の部屋に飛び込んで来たプリス。
『オウゴンゴーレム』
今から数百年前の魔導大戦時、魔族が自分達の軍資金を守るために金塊から生み出したモンスター。
軍資金をただ保管しているだけでは盗られる可能性がある。かと言って警備を常に置いておくワケにもいかない。
だって、常に警備が付いていたら『そこに何か重要なモノがありますよ』と言ってる様なモノだからな。
そこで軍資金自体をモンスター化させ、自分の警護は自分でやらせようとしたってワケだ。
ホラ、ゲームなんかだとやたら経験値が莫大だったり、獲得金額の大きいモンスターがいるじゃん?
あれはゲームを単調にしない様にと、実入りの良いサービスをプログラムしているんだけどさ。
この異世界という『現実』でそんなモンスターがいるとは思わなかったから、最初その存在を聞いた時は驚いた。
で、大戦中、魔族の宝物庫まで敵が来た時にオウゴンゴーレムは戦闘態勢に入り、
敵の兵士と宝物庫の壁を破るほど激しい戦闘を繰り広げた末、そのまま行方が判らなくなったらしい。
そして、それから現在までの何百年間、冒険者達の間で徳川埋蔵金みたいに
『今度こそ見付かった』と『やっぱ違ってたわ』を繰り返してきたそうだ。
だから、こうしてプリスが目を爛々と光らせて語っても、一同は今イチ高揚感に欠けている。
「プリスよ、その情報は確かなのか?毎度毎度『ツチノコスネークがいた!』並の眉唾モノのネタでは堪らぬぞ?」
「今回は高い確証が得られています。『目撃して戦ったが、敵わずに撤退して来た』とのコトですので。」
「その冒険者が見間違えたり、嘘を付いてる可能性は?」
「上位ランクの人でしたから見間違いはまず無いかと。狂言も自分の評判を落とすだけですから考え難いです。」
となると、コレは本当にホントですかな!?
本物が遂に出現か?とあって、手の平を返した様に沸き上がってくる高揚感。
「これはきたいできそーっすねー!」
「…ハンターチャンス。」
グッと握った拳に金色のハンマーでも持ちそうなテンションのマーシャ。パトルもやる気満々だ。
これは一攫千金とは言っても、ゴールドラッシュとは違う。誰にでもチャンスがあるワケでは無い。
相手は軍資金(自分)を守る最上級モンスターだ。滅茶苦茶高い攻撃力と防御力を有している。
これに挑めるのは、冒険者の中でも上位ランカーのみだろう。
その点、ウチのパーティーは武器攻撃、格闘戦、魔法攻撃、回復役、とハイスペックが揃っている。
十分チャンスはあると思う。
ここは一狩りイキますか!
かくして俺達は、オウゴンゴーレム目撃現場に向かったのだった。
そして見事にエンカウント。戦闘継続中という次第。
オウゴンゴーレムの動きが目に見えて鈍ってきた。もうそろそろか。
「うおりゃあああーーーーっす!」
「…ちぇりおー!」
パトルの剣の一撃が頭部に決まり、マーシャ渾身の拳が腹に突き刺さる!!
グラリと倒れ込む黄金の巨体。クリティカルの光と共に、身体に大きな亀裂が走り、
バッコォオオオーーーーーン!!!
オウゴンゴーレムは粉々に散り、光の粒と消えた!
…つーか、『ちぇりお』って。(汗)
俺の元いた世界の文化を時々みんなに話し聞かせていたのだが、予想以上に浸透が早い。
いや、それよりも、やったよ!やりましたよ!見事オウゴンゴーレム討伐ですよ!!
………ん? 何だ、コレ?
オウゴンゴーレムの消えた後に転がる鉱石。黒く鈍い銀色をした塊を見て、俺は言葉を失う。
あれ?黄金じゃ無いの? あ、小指の先ほどの金が落ちてた。
え? 何? コレだけ……?
みんなも俺のそばに駆け寄って来て、一様に訝しげな表情を並べている。マーシャは無表情だけど。
と、デヴィルラが「あー…、」と低い声で前置きをして喋り始めた。
「主よ。遺憾ながら、コレはオウゴンゴーレムでは無い。―『メッキゴーレム』じゃ…。」
「!?メッキゴーレム!?」
「鋼鉄製の『クロガネゴーレム』に金メッキを施したダミー、…つまりは偽物じゃ。」
「な……、」
俺は二の句が継げない。余りのショック故に。
「そんなモンスターがいるのですか?」
「軍資金そのものであるオウゴンゴーレムを守るための、二重、三重の措置じゃな。
誰しもこうしてハズレを引き続ければ、気力が削がれて本物を探す気にならなくなるであろう?」
「たしかに…がっくりきたっす…。」
「…最初に言って欲しかった。…疲れた。」
「すまぬのう。されど、仕方無いのじゃ。いまだオウゴンゴーレムを倒した者がおらぬ故、
こういうダミーとの見分け方もさっぱり判らぬままなのが実情じゃ。
そもそも、このメッキゴーレムですら滅多に出くわさぬレアモンスターだしのう…。」
ヒドイわ。こんなのってアリなの?
まさか、ギルドに入った目撃情報って、このメッキゴーレムのコトだったのか?
「ソコは何とも言えぬのう。そうであったとも思えるし、違うとも思える。」
「どっちなんすか?」
「あー…、コレはエクスキューズでは無く、あくまでオピニオンとして述べるオブジェクトであるが、
元々メッキゴーレムがオウゴンゴーレムのダミーであると仮定したオケーションに、
本物が近辺に隠遁しておるという可能性が無いとディシジョンするには、些か時期尚早であるという意見も
多少ながら散見されると、ナレッジとしてやぶさかながら言わざるを得ない。」
流石は魔界の王女。ビジネス用語とお役所言葉で煙に巻きに来た。
「え?デヴィルラ、なにをいったんすか?」
「…日本語でOK。」
「とどのつまり、『分からない』と言うコトですね。」
しかし、その煙に巻く戦法も、かしこさMAXのプリスには通用しない様で、
「デヴィルラ。自信が無いのなら、ハッキリそうだと言って下さい。」
「ぅう……、余も希望的観測は持ちたいのじゃ。ホレ、見よ。あの主の落胆振りを。
この状況で『そんなものは ない』とか、無碍に言えぬわ。」
傍から見ると、今の俺は相当にガックリ来てるらしい。いや、正直ガックリだけどさ。
「でもー、ほんものがいるなら、どこにいるっすかー?」
「…こういう他人を平気で身代わりにする様なクズの陰キャは、暗い部屋に引きこもってボッチしてるハズ。」
「マーシャちゃん!? 君、言うコトにトゲあり過ぎないかね!?」
「あ、いや、主よ。案外とマーシャの言うコト、的を射ているやも知れぬぞ。」
「え?そうなのか?」
「確かに、ダミーを外に出して、自分はダンジョンの奥にいれば安全ですよね。」
―となると、どこかにオウゴンゴーレムがヒッキーしてるダンジョンがあるっていうコトか?
「ギルドの地図によれば、この周辺にはダンジョンはありませんが…。」
「やっぱ、ないっすか?」
「うーむ、未発見というコトもあり得るのう。―となれば、かなり巧妙に隠されてるのか…。」
「…はい、マスター。」
マーシャが質問とばかりに手を上げる。
「どうした?マーシャ。」
「…メッキゴーレムが倒されていなくなった。ダミーが無いとダンジョンを探されるから、オウゴンゴーレムは困る。」
「うん。まぁ、そうだな。」
「…だったら、もう一度メッキゴーレムを出して来るハズ。」
「ん?…あぁ!そうか!!」
そのメッキゴーレムはどこから出て来る? 当然、オウゴンゴーレムが隠れているダンジョンからの可能性が高いだろう。
つまり、メッキゴーレムが出て来た場所を突き止めれば、ソコがダンジョンの入口かも知れないってコトだ!!
「うぉおおおおおーーー!!偉いぞ―!マーシャーーー!!」
思わずマーシャの脇を抱えて持ち上げ、クルクル回る俺。そしてドヤ顔(無表情)で回るマーシャ。
この子はいつもはボーっとしていて言葉数も少ないが、時に誰よりも切れ味の良い意見を出す。
周りが見落としてる点や、想定外のコトにも突っ込んで考えるタイプ。
理論派のプリスやデヴィルラとは正反対で、足りない部分を補い合ってるカンジだ。
「うぬぬ、そこに気付くとは…。こやつは思わぬ伏兵じゃ。油断ならぬわ、羨ましい…。」
「そうですよね、羨まし…あ、いえ、それよりもです。どうやってメッキゴーレムの出て来る場所を見付けます?」
「それはオイラのでばんっす!でてきたら、けはいがわかるっすよ!」
そして野生の勘のパトル。ウチのパーティーは何かと非常にバランスが良い。
それから待つこと数時間。パトルの耳がピクン!と動く。
「きたっす!」
「間違い無いか?」
「あしおとがおなじっす! こっちっす!」
パトルを先頭に進む俺達。しばらくすると俺にも鈍い足音が聞こえて来た。
見れば、その先に金色の巨体がゆっくり歩いて来る。
「コイツが本物のオウゴンゴーレムというコトは?」
「もんすたーはみんなあしおとがちがうっす。こいつは、さっきのめっきごーれむとおなじあしおとっす。」
だったら今回、コイツとの戦闘は無しだ。目的はあくまでダンジョンの入口。俺達は隠れてやり過ごす。
「主よ、余もマーシャに負けてはおれぬ。少し点数稼ぎをさせてもらって良いかの?」
「何するつもりだ?デヴィルラ。」
「余が斥候に出よう。モンスターは魔族には攻め向かって来ぬからのう。」
そう言うとデヴィルラは岩陰から飛び出し、メッキゴーレムに向かって走って行った。
「『せっこう』って、ほねがおれたとき、つかうやつっすか?」
「パトル、それは石膏な。」
「斥候は偵察…、敵の様子を探って来るコトですよ。」
モンスターは魔族が自分達の数の少なさを補うために作り出した兵器。
だから魔族を攻撃するコトは無い。勿論、攻撃されたら防衛のために反撃はするのだが。
メッキゴーレムの足音が大きくなり、隠れている俺達のすぐそばを通り過ぎ、やがて足音は小さく遠くなって行く。
「主ー!こっちじゃー!」
遥か向こうでデヴィルラの声がする。
俺達はメッキゴーレムを完全にやり過ごしたのを確認して、デヴィルラの元へと向かった。
「ほれ、ヤツの足跡じゃ。」
デヴィルラの指差す地面には、大きな四角い凹み。
コレを逆に辿っていけば、ダンジョンが見付かるかも知れない。
ここからは時間との勝負だ。のんびりしてると他のモンスターが来て踏み荒らし、この足跡を消してしまう。
連中はそうするコトで、巧妙に自分達の居場所を判らなくさせているのだ。
「よし!みんな、行くぞ!!」
それから歩くコトしばし。付いた先は、こんもりとした台地。小山だった。
「ここでメッキゴーレムの足跡が途絶えてますね。」
「じゃあ、この辺りにダンジョンの入口が? …って、どこにも穴とか無いなぁ…。」
見渡してみても、周囲は木々ばかりだ。
デヴィルラがそのこんもりとした小山の前で、腰に手を当て仁王立ちして言う。
「ふふん。主よ。『神々の住まう場所』に行った時のコトを覚えておるか?」
「ん?あぁ、勿論だよ。迷いの森を抜けないと入れなかったんだよな。」
「左様。あの森にはエルフが幻覚魔法を掛けており、どれだけ歩いても元の場所に戻ってしまう。」
そこまで聞くと、プリスがポンと手を叩いた。
「あ!もしかして、ココにも幻覚魔法が掛かっているというコトですか!?」
「正解じゃ。」
そう言うとデヴィルラは手を小山に向かって伸ばし、魔力を放った。
そして、どんどん魔力を増やして行く。すると徐々に周囲の景色がトラッキングノイズの様にブレ出した。
さらにデヴィルラが魔力を叩き込むと、激しい光が明滅して次の瞬間、景色がユラリと歪み出し消えていく。
「うおー!こーゆーしかけだったっすかー!!」
「…これじゃデヴィルラ並の魔力を持ってないと、誰もココに気付けない。」
膨大な魔力を誇るデヴィルラが、本気で魔力を注ぎ込まないと解除出来ないレベルの幻覚魔法。
これはつまり、それだけ高度な術師がこの魔法を掛けた証拠であり、そんな魔法を使ってまで隠したいモノがあったというコトだ。
「どうやらビンゴの様じゃの。」
俺達の目の前には、石で組まれた入り口がポッカリと口を開いていた。
恐る恐る、慎重に入り口に近付く。プリスが入り口の周りを調べていたが、やおら振り返りニッコリ笑うと、
「凄いです!ケインさん!!やはりこのダンジョン、未調査の新発見です!!」
―と、興奮気味に言った。




