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OVA05「この蕎麦らしい世界に祝福を!」その3



その小屋で一晩を過ごした次の日。

俺達は爺やさんに案内されて、そのワサビが自生する清流に向かった。

―が、そこに広がっている光景を見て、爺やさんが渋そうな表情をした理由が判った。


モンスターがいる。しかも最上級モンスターの『カブトビートル』と『クワガタスタッグ』。

かなりデカイ。身体が乗用車くらいのヤツだ。もうまるっきり昆虫王者ですよ。ムシ◯ングですよ。(汗)


「あの2匹め等がここ最近、あの辺りを縄張りにしているので御座います。」

「成る程。こりゃ厄介だ。」

「如何にする、主よ?余と爺やで行って採取して来るか?」


デヴィルラが俺に進言する。

確かに、モンスターは魔族には攻撃して来ないから、それが手っ取り早い方法ではある。

しかし、この森に魔族以外の人が入って来た時の危険性を考えると、このまま放置するのも考えモノだ。


「でもボス、これならだれもワサビをとれないっすよ?」

「…秘密を守るには良いかも。」


あー、そういう考えもあるなぁー。このモンスターを番犬代わりにしておけば、ワサビの乱獲は防げるよな。

どうしようか。ここはプリスたんの意見を聞いてみよう。


「―倒すべきだと思います。」

「やっぱり、人的被害が気になる?」

「はい。それもありますが、モンスターは生物では無いので、自然に溶け込んだ活動をしません。

放置しておくと好き勝手に踏み荒らして、森の環境が壊されてしまいます。」

「う、そうなるとワサビも生えなくなっちゃうってコトか。それはマズイ。」




さて、そうと決まれば、モンスター退治だ!!


「では参ろう。爺、お主はここで待っておれ。主と我々の強さを見せてくれよう。」

「畏まりました。」


俺達はカブトビートルとクワガタスタッグの前に躍り出て挑発する。

ここで暴れられると、ワサビが滅茶苦茶になるからな。俺達を追い掛けさせて場所を移さないと。


「デヴィルラとマーシャは組んでカブトビートルを!!パトルは俺とクワガタスタッグの相手だ!!」


2匹は勢いを付けてこっちに突進して来た!!

角を振り回して突進して来たり、巨大な大アゴで大木も真っ二つにしたり、油断が出来ない相手だ。

本当、マジで『ガンガンスマッシュ』とか『スーパーダンガン』とか使って来そうな勢いだな。(汗)


俺の元いた世界でも、カブトムシとクワガタムシは最強昆虫のトップ2だ。人気も高いがパワーも高い。

このモンスター達も甲虫の特徴らしく、強固な身体がこちらの攻撃をことごとく無効化する。


「うむむ、森の中でさえ無ければ、最上級の炎系魔法で焼き尽くしてくれるのに…!」

「…硬過ぎ。手が痛くなって来た。」


デヴィルラもマーシャも、戦い難そうだ。


パトルは最強装備シリーズをシザースに換装して戦っている。

クワガタスタッグの大アゴと真正面から組み合っていて、どちらも一歩も引かない見事ながっぷり四ツだ。

動きが止まっている今がチャンス!!そう思って俺が突っ込もうとした時、


「うわわっ!!」


突如、茂みの中から別のモンスターが数匹ブワッ!!と乱入して来た!!これは…、


「ケインさん!『スズメバチワスプ』です!!猛毒を持ってます!気を付けて下さい!!」


くっそ!俺の元いた世界じゃ最も危険な昆虫と呼ばれたスズメバチ。そのモンスターか!?

コイツも、一抱えもありそうな巨大なモンスターで、スキを見ては執拗に針で刺そうと攻撃して来る。

神聖魔法で解毒の出来るプリスが一緒に戦ってくれているのが救いだが、コレで俺達は足止め状態。

パトルが孤立してしまった。これはマズイぞ…。


「ケインさん!伏せて下さい!!」


プリスがスズメバチワスプに向けて魔法を飛ばす。だが、何の変化も無い。


「睡眠魔法に耐性がある!?」


どうやらプリスが放った魔法は、相手を眠らせる魔法らしい。

以前から、モンスターは生物じゃないので睡眠を摂る必要も無く、このテの魔法は効かないんじゃ?と思ってたのだが、

実はこの魔法は「行動機能を停止させる」モノらしく、動物にもモンスターにも等しく使えるらしい。


が、やはり強いモンスターほど『耐性」というヤツはある様で、コイツも睡眠魔法は無効らしいな。

このまま長期戦は不利だ。思い切った攻め方をしなくては。

俺はデヴィルラに言う。


「デヴィルラ!多少周りが焼けても構わない!!炎系の上級魔法で反撃だ!!」

「あい、分かった!!」


待ってましたとばかりにデヴィルラは指をポキポキ鳴らし、上級の火炎魔法を連続して放つ。

火炎はカブトビートルの横っ腹に直撃し、そのままヤツの巨体をふっ飛ばし大木に激突させた!

しかし致命的ダメージには程遠く、地面の草は大きく焼けてしまい、もうもうと煙が巻き上がってしまった。


その煙の中から、スズメバチワスプが何匹も俺に向かって飛び掛って来る!!


この野郎!『蜂は煙が苦手で、気絶したりする』って、TVバラエティの蜂退治ニュースで言ってたのに!!

やっぱり、コイツらモンスターは生物じゃ無いから、虫の特徴を弱点として受け継いではいないのか。


そこに一陣の旋風!!プリスの風魔法だ。スズメバチワスプは一瞬煽られてひるむが、すぐ体制を立て直そうとする。

なかなか向こうのペースから抜け出せないパーティーの状況に焦るプリス。


「風魔法も牽制にしかならない…。どうしたら良いの…。」


その時、ふとプリスは気付く。背中に携えた大賢者の遺産に。




戦闘は膠着状態。カブトビートルにデヴィルラの放つ火球が当たり続けているが、大角でほとんど弾かれている。。

パトルはクワガタスタッグをシザースで押さえ、一進一退の押し合いだ。チョキとチョキじゃ勝負が付かんのも道理か。

そう言う俺は、スズメバチワスプの攻撃をかわすので手一杯。


また一匹のスズメバチワスプが針を突き出して、俺に突撃して来た!思わず身構える俺!

だが、そこに!!


ビシィッッ!!


甲高い音と共に、スズメバチワスプの胸に白色に光る矢が刺さった!!

―これって!?


それは、プリスがあの大賢者の遺産『魔弓』で放った矢だった!!

矢が当たったスズメバチワスプは、悶絶して地面に墜落する。しめた!!


俺はすかさずそこに剣を突き立てる。数度の攻撃でスズメバチワスプは光と消え、鉱石に戻った。


「大丈夫ですか、ケインさん!?」

「あ、あぁ。助かったよ。…今のは?プリスは風以外の攻撃魔法、使えなかったハズじゃ?」

「はい。今のは退魔の神聖魔法です。」


退魔!?あの、俺がプリスと初めて出会って、クズスライムが出てきた時にそれを消し去った魔法か!!

あれってレベルの高いモンスターには効きにくい魔法だよなぁ…?


「はい。ですから『矢』にして、魔法を直接モンスターの体内に流し込んだのです。

強引な方法ですが、これなら上級モンスター相手でも退魔の効果が出ると思ったんです。」


おぉ!!何という発想!!

プリスたんは次々に退魔の矢をモンスターに放って行く。少し時間が掛かるが『狙う』効果もあって、どの矢も必中だ。

カブトビートルもクワガタスタッグも、矢が当たった途端に攻撃を忘れて悶絶し出す。

余りの苦しさか、カブトビートルは自ら横転してもがいている。


「今だ!!マーシャ!ひっくり返ったヤツの腹を狙え!!多分、そこは硬くないハズだ!!」

「…あいあいさー。」


ジャンプ一閃。上空からマーシャ渾身の拳が、カブトビートルの腹部に突き刺さる!!

そこを中心にヒビが八方に入り、


ズッガァアアーーーーン!!


カブトビートルは光となって爆発四散。そして鉱石がボトボトと落ちて来る。

よし、イケる!!


「パトル!!そのまま捻ってひっくり返せ!!」

「りょーかいっす!!ぅおおおおおおおおーーーーーーーっっっ!!!」


クワガタスタッグの巨大なアゴと組み合ったシザースをグルリと捻じり、そのまま一気に回転させる!!

さしものクワガタスタッグも退魔の矢を受けた身体では力が入らず、ズドーン!と仰向けになる!!


「終いじゃ!!」


デヴィルラの放った氷の槍が上から降り注ぎ、クワガタスタッグを蜂の巣にしていく。

そして、その上からパトルがシザースでトドメの一撃!!


ドッゴォオオオーーーーン!!


これで2匹目!!

動きが鈍り、攻撃も忘れて藻掻いている残りのスズメバチワスプはもう敵では無い。俺の剣の腕でも全滅させられたのだから。


「ふぅー、終わったな。」

「ケインさん!お見事でした!!」

「いやいや、プリスの咄嗟の機転のお陰だよ。―そっちは火事にはならずに済みそう?」

「心配はいらぬ。水魔法で鎮火したわ。」

「…やっぱりマスターは最高。キスして。」


マーシャちゃんは相変わらずですなぁ。

そこにデヴィルラが入って来て、プリスにペコリと頭を下げる。


「プリスよ、済まなんだ。余の思慮が浅かったわ。魔弓に斯様な使い方があるとはのう。」

「そうだなぁ。どんなモノでも工夫次第で、使い道は拓けるんだな。」

「いえ、そんな…。」


テレテレのプリスたんは可愛いなぁ。




モンスターも退治して、俺達は無事に目的のワサビを採取出来た。勿論、使う分だけしか採りません。

さらに、爺やさんにこの山のワサビを管理してもらえるコトにもなった。


「本当にソレで良いんですか?」

「大賢者の遺産を守る必要も無くなりましたから、老いぼれには調度良いお役目で御座いましょう。」


ギルドからの正式な採取依頼以外は、『なるべく穏便に』追い返してくれるそうだ。


「それでは爺やも達者でな。」

「姫様もご創建であります様。ロリ・カイザー様、ご友人の皆様、何卒、姫様をよろしくお願い致します。」


帰路に着くデヴィルラの顔は、ちょっとホームシックにでもなったかの様で、どこか寂しそうでもあった。

俺は独り事の様に呟く。


「あー、またワサビ採取のクエストがあったら、受けてみようか?」


それを聞いたデヴィルラの顔が、花が咲いた様にほころぶ。


「そうじゃな!!」




そして蕎麦屋にワサビを届けた俺達は、店の若夫婦に丁寧なお礼を言われ、みんなで蕎麦のご馳走に預かった。

早速、すりおろされたワサビがパトルの特盛り蕎麦に付いて来る。


「ちょわーーーーー!!!きたきたきた!!つーーーんときたっすーーー!!」

「獣人族は鼻も良いからのう。さぞかし効くであろうなぁ。」

「でも、おいしーっすーーーー!!」


笑いに包まれる店内。

冒険者やってると痛い思いもするし苦労も多いけど、時々思う。こういう日常って良いモンだなぁ、って。




後日、冒険者ギルドに行くと、また依頼主不明のクエストが掲示板に貼られていた。


『急募!!大鮫捕獲!!なるべく皮のキメ細かいモノ希望!!』


俺達はそれを見るなりピンと来た。


「ケインさん、コレって…、」

「あぁ、多分そういうコト…だな。」

「また、あのおそばやさんっすねー…。」

「サメ退治となると、つまりは…、」

「…ワサビのおろし器用。」


まこと、職人のコダワリには、どこまでも限りが無い様である。(苦笑)



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