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OVA01「異世界は島ーと本とともに。」その2

かくして俺達は、神様直々の依頼を受けて、『元凶の地』の魔導都市に行くコトに。

あの魔導巨人との決戦で魔導都市は壊滅。今は公安部隊と信頼のおけるギルドを中心に、再開発計画が進められている。

と言っても、その道のりは遠く険しく。まずは区画整理のための、壊れた建物を撤去している最中だそうだ。


以前にも行ったコトがある場所とは言え、荷馬車でも片道3日の行程だ。

日も落ちて、俺達は見晴らしの良い場所でキャンプの用意をする。


食事をしながら、あれやこれやと他愛ない話に花が咲く。

そんな中で、俺は素朴な疑問をみんなにぶつけてみた。


「あのさ、あの『行けない島』へは、空からでも行けないのかな?」


海にはイカクラーケンとタコテンタクルスがいる。なら、空路はどうか?という疑問だ。

デヴィルラが答える。


「渡り鳥ならいざ知らず、我々では無理であろうな。」

「あ、いや、ホラ、俺達が飛ぶとかじゃ無くてさ…、」

「主の言わんとしたいコトは分かっておる。西の関所にいる、余のメイドを使おうというのじゃろう?」


そう、ソレ。

神殿に飛んで行ったみたいに、今回もスイーッと行けないモンかね?


「『行けない島』までの距離があり過ぎる。途中で羽を休める場所が無いのじゃ。

 あの巨体で飛ぶと、どうしても休憩が必須でな。」

「そっか。…そう言えば、神殿へ飛んでもらった時も、1回休憩を入れたっけ。

 アレって俺達のためだけじゃ無かったんだな。悠々と飛んでいたから平気なモノかと思い込んでたよ。」


見た目がもうハーピーで、変身したら巨鳥で、空の覇者でござい!ってイメージが先行しちゃってたな。

デヴィルラの近衛を務めていたとは言え、うら若き女性なんだから無理させちゃイカンよなぁ。

あぁ、俺ってそういう思いやりが出来ないから駄目なのよね…。


「ならさ、空を飛ぶ乗り物とか、魔法とかは無いの?」


俺はぶっちゃけ過ぎかとも思ったが、かなり根本的なコトを聞いてみた。

その質問にプリスたんが答える。


「残念ですが、空を飛ぶ乗り物は、まだこの世界にはありませんね。…ケインさんの世界にはあったのですか?」

「あぁ。普通にお金を払えば誰でも乗れる。こっちで言えば、寄り合い馬車くらいに普及してたよ。

 スゴイのになると、あの月まで行けるヤツまであった。…ソレには特別に訓練した人じゃないと駄目だけど。」

「ふぇええ、おつきさままでいけるっすかー!」

「…月は出ているか。」


夜空に浮かぶ月を指差しての俺の話に、パトルとマーシャは月を見上げて感嘆の声を出す。(うち1名、無表情)


「それは…、本当に凄いですね。」

「まぁ、そのお陰で『遠くまで出張して日帰りさせられる』みたいな悲劇もあるんだけどな。」

せわしないですねぇ…。心にゆとりが無くなりそうです。」

「―で、魔法の方だけど、」

「ソレは余の専門分野じゃな。余から話そう。」


空を飛ぶ魔法について、デヴィルラがプリスからバトンタッチして語り出す。


「結論から言えば、飛行魔法はある。」

「あるんだ!」


思わず身を乗り出す俺。だが、その瞬間に『あるコト』に気が付く。


「あ…、でも、ここまで言い出さなかったってコトは、もしかして…?」

「左様。主の察した通り、実用的では無いのじゃ。」


ホウキで空を飛ぶとか魔法の基礎みたいなカンジだけど、この世界じゃ違うのか。


「そんなに難しい魔法なのか?…あれ?でも、デヴィルラは魔導巨人と戦った時、宙に浮いてたよね?」

「うむ。―これじゃろう?」


そう言ってデヴィルラは無属性の波動を放出させた。彼女の身体がスウッと浮かび上がる。


「おぉー!ういてるっすー!!」

「そうそう、コレコレ!何だ、浮く魔法、出来るんじゃないか!」


着地して、一呼吸置くデヴィルラ。そして説明を入れる。


「これは魔導対戦よりも遥か昔からある浮遊法じゃ。無属性の波動を地面に向けて放射し、その反発力で浮いておる。

 つまり、それ以上でもそれ以下でも無いのじゃ。」

「ん?どういうコト?」


そこにプリスたんが補足してくれる。


「無属性の魔法は炎や水に具現化する前の状態ですから、物体に対する力が弱いんです。

 熟練した魔法使いでも、自分1人浮かせるのがやっとだと聞きます。」

「プリスの言う通りじゃ。余の膨大な魔力でも、安全的確に制御しつつ浮かせるには、

 もう1人か2人がいいトコロじゃな。それに短時間しか持たぬしのう。」

「つまり…、効率が悪い?」

「左様。然るに、魔法として考え出されはしたものの、実用には全く向かぬのじゃ。」


成る程なぁ。…あ、待てよ。無属性じゃ無ければもっと強い力が出せるんじゃないか?


「誰しもがそう考える。そして、誰しもが失敗し思い知るのじゃ。」

「やっぱ、駄目なんですか。デヴィルラ先生。」

「ただ浮いて飛ぶだけならば、炎を出しても水でも風でも良い。事実、コロシアムで合体モンスターと戦った際に、

 パトルやマーシャを宙高く舞い上げたのは、風の魔法だったしのう。」

「そうだったな。…アレでも良い気がするんだけどなぁ。」

「いいえ。『空を飛ぶ』とは、空中で自在に、自分の意志で動けなくては意味がありません。

 あの風魔法の使い方は『飛ぶ』では無くて『跳ぶ』だけなのです。」


あぁ、フライとジャンプの違いか。


「無属性の波動は先程見せた様に身体全体から出せる。然るに、空中でも全方向への制御が効く唯一の方法なのじゃ。

 これを炎や水へと具現化すると、その威力は飛ばす一方向に指定されてしまう。

 加えて周りにおる者は、炎や水を噴き付けられてしまっては堪ったモノでは無いからのう。」


うーむ、魔法と言えど、何でも出来るってワケじゃ無いんだなぁ…。

と言うか、もしかしてこの世界の魔法って、まだ発展段階なのか…?


「空を飛べる魔法とかあれば、あの『行けない島』にも行けるかなぁ?って思ったんだけどな。」

「うむむ…、済まぬ、主よ。余の不甲斐なさを許して欲しい…。」


あ、デヴィルラがマジで凹んだ。(汗)

最上級攻撃魔法の全てを使える彼女に取っては、魔法で出来ないコトがあるっていうのが

著しく自分のプライドを傷付けるみたいだ。


「いやいや、デヴィルラのせい何かじゃ無いって!気にして無いよ!!」

「誠か? 主は、幼女には分別無く優しいからのう…。」

「うぐっ、そのセリフはちょっと効く!」


そのやりとりを見て、クスクスと笑い出すプリスたん。


「あ、すみません。でも、そこがケインさんの良いトコロです。」

「そうっす!ボスはオイラにも、みんなにもやさしいボスっす!」

「…ロリコンという名の紳士。」


マーシャちゃん、フォローになってないよ?それ。(汗)


「むぅ、主への名誉挽回に『空を飛ぶ魔法』を本気で考えてみるかのう…。」


デヴィルラが何かをつぶやき、密かな決心をした様だった。




ーそれから2日後。


「くぁー、のどかわいたっすー。」

「頑張りましょう…。魔導都市に着けば…。」

「恨めしや…。こういう時に限って、雲ひとつ無い晴天と来ておる…。」

「余り喋らない方が良い。体力が減るぞ…。」

「いや、何か喋っておらぬと…気を失いそうじゃ…。」


俺達は喉の渇きに耐えながら、荒野をひたすらに歩いていた。

理由は今朝のコトだ。

襲ってきたモンスター達との戦闘中、その1匹が見境なしに暴れ回り、あろうコトか荷馬車に突っ込んだのだ。

荷馬車は木っ端微塵。積んであった水が全てパーになってしまったという次第。


馬は逃げてしまい、仕方無く徒歩で魔導都市に向かうコトに。

この地点は町も村も川も無い。止まっていたら野垂れ死にするだけだ。


荷馬車に積んでいだ水を水筒に補給しようと思っていた直前にモンスターが襲って来たので、

水筒の水も残りは少なかった。みんなで分けあったがすぐに底をついた。


不幸中の幸い、それ以降モンスターとはエンカウントしていない。

だが、この『ド』の付くピーカンの中の強行軍は…とても…キツイ…。


「な、なぁ、デヴィルラ…。魔法で水、出せるんだろ…?」

「ん?…あぁ、そうであったな…、主が異世界から来たのならば…知らぬのも無理はない…かのう。」


俺の背中でデヴィルラが弱々しく答える。

俺は成人男子だから、まだ基本体力で何とかなるが、デヴィルラは体力的には普通の幼女並なのである。

むしろ、HPで言えばプリスよりも低く、パーティーで一番下だ。

そういうワケで、グロッキーとなったデヴィルラを、俺はおんぶしているのだ。


「ケインさん…、魔法の水では…喉の渇きは癒せ…ないんです。」

「そうなの…?」


プリスたんもかなり辛そうだ。俺もみんなも熱中症になる直前ってカンジだ。


「そう…ですね、粘土を思い浮かべて下さい。それで本物そっくりのリンゴを作って、色も塗ったとします。」

「り、りんごっすか!?どこにあるっす?」

「…パトルが相当ヤバイ件について…。」


パトルもマーシャに肩を借りて、ようやく歩いてるといったカンジだ。


「さて、問題です。ケインさんは、そのリンゴ…食べられると思いますか?」

「いや、どんなに本物そっくりでも…粘土だろ?それじゃあ、食べられない…だろ?」

「正解じゃ。主よ、それが…魔法なのじゃ…。」

「異世界から来た俺にも…分かりやすく、頼む。」


デヴィルラをおぶり直して、俺は歩き続ける。


「魔法は、魔力…つまり、マナを粘土の様にして、炎や水の『カタチ』を…作っているのです。」

「えっと…、つまり、炎や水の様に見えても、それはマナであるコトに変わりない…と?」

「左様。術者のイメージで、マナが炎や水の様に…振舞っているだけなのじゃ…。」

「ですから…、魔法の氷は、溶けずに消えてしまいます。水が凍ったモノでは…無いからです。」

「じゃあ、魔法で出した水を飲んでも…、」

「体内で…マナに戻るだけじゃ。水分の補給には…ならぬ。魔力補給にはなるがのう…。」


荒野を歩きながらの、『初心者のための魔法基本講座』が続く。


そうだよなぁ。魔法で出した水が使えるのなら、神殿へ行く時も、あんなに悩むコトは無かったハズだ。

チクショウ…、もう汗も出なくなったぞ…。手が痺れて来た…。


「ふあっ!!」


突如パトルが大声を上げた。


「ま、まどーとしがみえたっす!!」

「本当か!?」

「こんな状況じゃからのう…、蜃気楼ではあるまいの…?」

「ここでそんな糞フラグ、ヤメてくれ。」

「…間違い無い。見えた。」


マーシャも遥か先を指差す。

そこには確かに魔導都市の外壁が見えた。 助かった…。




ゴクゴクゴク……

さっきから、みんな合わせてどれだけの水を飲んだだろうか。まだ飲めるぞ。


ここは魔導都市の入口、検問所。

やっとの思いで辿り着き、衛兵さんに井戸から水を汲んできてもらい、みんなで喉を潤しているトコロだ。


「いやー、助かりました。気力も使い果たして、もう動けなかったですからねぇ。」

「いえいえ、あの道中をよく水無しでここまで来れたモノです。無事で何よりでした。」


衛兵さんには、何度この検問所と井戸を往復してもらったか分からない。

みんな、砂漠のラクダみたいな勢いで飲んでたからなぁ…。

特撮ヒーローに水をエネルギー源とするヤツがいたけど、アレ、あながち間違っていないな。

やっぱ、水って大切だよ。ウン。


「うぅー。ちょっと、といれ、いってくるっす。」

「…パトルだけを1人で行かせはしない。」


パトル、マーシャ、いくら何でも飲み過ぎだ。


「デヴィルラ、大丈夫か?」

「うむ。お陰でだいぶ良ぅなった…。余りの苛酷な行程ゆえ、主の背中の感触を堪能するという

 千載一遇の機会をほとんど覚えておらず満喫出来なんだ。全くもって無念じゃ…。」

「そういう言葉が出て来る様なら、大丈夫そうですね。」


プリスたんのデヴィルラに掛ける言葉が、何故か井戸水の様に冷たい。(汗)


「主よ。本来なら主に奉仕せねばならぬこの身だと言うのに、逆にすっかり主の枷となってしまった。

 こんな余を、役立たずな奴隷だと嘲笑ってくれても構わぬ。」

「気にすんなって。」

「いや、飛行魔法の件といい、この数日で主に対する余の株は下がりっ放しじゃ。

 何としてでもこの失態を償わなければ、余の気が収まらぬ…。」


王族だからか、生来の気性か、デヴィルラはプライドが高いからなぁ。他人にも自分にも厳しい。


魔導都市の調査は明日にして、取り敢えず一晩、俺達は疲れた身体を休めるコトにした。

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