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OVA05「この蕎麦らしい世界に祝福を!」その1

●本筋に絡まない内容なのでお蔵入りさせてたネタです。

●勿体無いので再構成して掲載します。

●DVDやブルーレイに特典として収録されてる未放映回みたいなモンです。(笑)

●時系列としては『1クールで終わる異世界冒険』の後になります。

●サブタイトルは、私の大好きな異世界モノの作品のパロディとしました。

※内容にはパロディ元の作品は一切関係しません。単なる言葉遊びと捉えて下さい。


今日も今日とて、俺達は手身近なクエストをこなして報酬金をもらい、日々の糧とする。

何か特別な目的が無い限りは、冒険者の日常とはそんなモノである。


そんな俺達が今日、冒険者ギルドの掲示板で目にしたクエストは『薬草採取』。

うん、いかにも冒険者のお仕事ってカンジだ。


俺は、実はモンスター退治よりも、こういった採取系クエストの方が好きである。

メンバー全員ピクニック気分で行けるし、この世界のまだ知らないコトを見聞き出来るのも楽しい。

それに、戦闘だとプリス達4人にほとんど任せっ切りなので、ちょっと男としてのプライドが…ね。(汗)


だが、この『薬草採取』クエストはちょっと…否、色々と怪しい。


「ケインさん、おかしくないですか?コレ…。」

「うん。ツッコミどころ満載だな。」


俺達は、その『薬草採取』クエストの張り紙、依頼書を眺めて口々に言う。


「薬草を取りに行くだけだと言うのに、依頼レベルが高過ぎるのう。」

「余程、危険な場所なのでしょうか?」

「それに、いらいぬしのなまえがないっす。」

「…やたら報酬金が良いのも怪しい。」


他の冒険者達も、このクエストの怪しいオーラに何となく気付いているのか、誰も手を出そうとしない。

俺達も、張り紙をただただ眺めるだけだ。

―と、ギルド内の喧騒に混ざって、周りからヒソヒソと何か話し声が聞こえて来る。


「おい、アレ、受けると思うか?」

「受けるね。ロリ・カイザーなら受ける。」

「アイツなら、きっとやるに違いねぇ。」


ちょ、何話してんの!?君達は!?

俺がこのクエスト受けるかどうか、それで盛り上がってんのか!?


「ロリ・カイザーはあぁいう未知に挑むタイプなんだよ。俺なら判る。」

「そうそう。あえて危険に飛び込む、そういうヤツだよね。」


待て待て待て!!勝手に俺のコトをお前らのイメージで決め付けるな!!


「受けるぞ。ありゃ。」

「フッ、彼なら期待に応えてくれますよ。このボクが99%…いえ、100%保証します。(メガネクイッ)」


そんなお笑い芸人の『押すなよ?絶対押すなよ?』みたいなフリはヤメろ!!

―ってか、メガネ君!?いたのかワレェ!!久し振りだな!!


ヤバイ!周りの連中、全員が俺のこと見ている!!すっごい見ている!!

おいコラ!!そこの2人!!俺が受けるかどうかで賭けしてるんじゃねぇぞ!!絶対受けんからな!!


俺は周りを一切無視して、その場を離れようと歩き出す。

すると、周囲からどよめきが起こった。


「えぇ~~~~~~~~~~!!!!」

「何でぇ~~~~~~~~~~?」

「うっそぉお~~~~~~~~!!」


思わず固まる俺。


「ちょっとぉ~~、あり得ないわよぉ~~~!!」

「信じてたのになぁ~~~~。」


いやいやいやいや!!何が『あり得ない』んだよ!?第一、お前は俺の何を『信じていた』んだよ!?

背中に受けるとてつもないプレッシャー。俺はそれを振り切る様に、更に1歩踏み出す。


「「「「「「あぁあああ~~~~~~!!!」」」」」」


その途端、無念そうな声がギルド内に響く。さっきよりも重いプレッシャーが勝手にのしかかって来る。

駄目だ!コイツラにはハッキリ『受けない』と言ってやらないと!

そう思って俺は振り返る。 だが、これは悪手だった。


「おぉ!!戻って来るぞ!!」

「やっぱり思ってた通りの男だ!!」


しまった…!! 自分からドツボにはまった!!俺の馬鹿!!


―と、そこにギルド員がパタパタと駆け付けて来た。ラッキー!!この馬鹿騒ぎをどうにかしてくれ!!


「皆さん、お静かに!!」


そうそう、言ってやれ!言ってやれ!


「そんなに騒がなくても、ロリ・カイザー様はこのクエストを受けて下さいます!!」


そうそう、俺はこのクエス…何ぃ!?


ギルド員は『薬草採取』のクエストの依頼書を丁寧に外すと、


「ロリ・カイザー様、周りが騒ぐとクエストを受け難いだろうとのお気持ちを察せず、誠に申し訳ありませんでした。」


そう言って、頭を深々と下げて俺に依頼書を手渡したのである。

そして俺は…、依頼書を受け取っちゃったのである…。




「全くもって、主は優柔不断じゃのう。」

「スミマセン…。」

「ま、まぁ、ああやって誰かを標的にしてからかうのは、ギルドではよくある光景ですから…。」

「そうなんだ!?」

「主も魔導都市での一件以来、巷でも注目されておるからのう。ま、有名税というヤツじゃな。」


俺達は街の片隅を歩いている。

依頼主も書かれいない依頼書だが、あの後にギルド員から唯一、住所だけを教えられたのである。

ギルドの許可が無ければ依頼書は貼り出せない。だから犯罪者とかヤバイ相手では無い…とは思うのだが。


「―ここっすか。」

「住所の通りだとそうだな。…でも、本当にココで良いのか?」

「…蕎麦屋。」


街からやや離れた、少し寂れた静かな通り。そこには一件の蕎麦屋があった。


俺がこっちの世界に来た頃は、何か一品に特化した食堂というのは存在しなかった。

ラーメンもカレーも牛丼も『大衆食堂』の一メニューであり、ラーメン屋、カレー屋、牛丼屋という専門店が無かったのだ。


ところが、俺がこの世界に来て1年もしない内に次々に専門店が生まれ、食の細分化が起きた。

原因は判らないが、もしかしたら俺がいるコトで、こうしてる今も世界の因果律が変わり続けているのかも知れない。

そう、以前食べたカツ丼屋もその1つだろう。


それを思い出した俺達の脳裏に、あの『世界で二番目にまずい店』のトラウマが蘇る。


「あ、主よ…。この店は、だ、大丈夫かのう?」

「み、店は綺麗だし、良い匂いもして来るし、大丈夫じゃないかな…?」

「でも、『あのお店』も、そうだったじゃないですか?」

「「「「「………。」」」」」


俺達は店の前で立ち尽くす。

そして無言のまま互いに顔を見合わせ頷くと、クルリときびすを返す。


「帰ろう。」

「それが良いですね。」

「今日、我々はココに来なかった。よいな?」

「オイラ、なにもみなかったっす。」

「…記憶にございません。」


無責任と言いたければ言ってくれ。生命より大切なモノなどありはしない。

それ程までに、あの『世界で二番目にまずい店』のカツ丼は、俺達の心に深い傷を負わせたのだ。

君子危うきに近寄らず。


そうして帰ろうと歩み出した刹那、ガラッ!と、蕎麦屋の戸が開いた。

しまった!遅かったか!! 開いたのに『しまった』とはコレ如何に!!


「あのー、もしかしてぇ、冒険者ギルドから来られた方ですかぁ?」


俺達が恐々と振り返ったソコには、人の良さそうな美しい女性がいた。


「こ、この店の人ですか?」

「はいー。お待ちしてましたぁ。中にどうぞぉ。」


その春の日差しの様なユルーい声に調子を狂わされた俺達は、何となくの流れで店に入ってしまうのだった…。




結論から言うと、この店は極々フツーの蕎麦屋だった。

若い夫婦で店を出そうと決意したものの、若い2人が用意出来る資金では、街の中央通りは土地代が高くて無理。

それで、裏手に入ったこの寂しい通りでの出店、となったらしい。


だが味は確かな様で、リピーターも増えて来て人気も上々。何とかやって行けてるそうだ。

さて、それじゃあ本題だ。俺はご夫婦に質問する。


「ギルドに出した『薬草採取』のクエストについて、聞かせてくれませんか?」

「はい。実は…薬草というのはワサビのコトなんです。」


あぁ、成る程。蕎麦屋にはワサビが付き物だからなぁ。

でもワサビなら街でも売ってたけど、それじゃ駄目なのかな?


「今、店で出回っている大半のワサビは本当のワサビではありません。アレは『ウマダイコン』という別の植物です。」


物知りプリスたんが、そこに補足してくれる。


「本当のワサビはすごく希少で高価ですからね。ですからみんな、香りが似ていて安価なウマダイコンを使っているんです。

でも、本物のワサビの辛味やその鮮烈さは、ウマダイコンとは天と地。比較にならないと聞きます。」

「そうなんですぅ。ウチのお蕎麦は10割蕎麦なのでぇ、ウマダイコンでは物足りないんですぅ。」


うーん。この世界でも、ワサビ事情は俺の元いた世界と似た様なモンなんだな…。

大抵はホースラディッシュというヤツが、チューブや添え付けのワサビとして売られていたもんな。


「これから夏を迎えれば、温かい蕎麦からモリやザルへと客の注文が移って行きます。

それまでに何としてでもちゃんとしたワサビを手に入れて、美味しい蕎麦をお客にお出ししたいのです。」


あの殺人的にマズかったカツ丼の店主もそうだったが、みんな素材に対する熱意が凄いよなぁ。

いや、あのカツ丼は間違ったベクトルの熱意だったけど…。(汗)


「ふむ。概要は理解出来た。しかし、何故ゆえ依頼内容をボヤかし、依頼主の名も載せなかったのじゃ?」


そう。問題はソコですわ。お陰で怪しさ満点の依頼書になって、冒険者達が寄り付かなかったんだから。


「それは、ギルド長のご配慮です。」

「ギルド長の!?」

「実は、『上質のワサビが自生している山を見付けた』という話を、知り合いの寿司屋から聞きまして。

2人でその山に採りに行こうかと思いましたが、野獣やモンスターも出て危険だと判りました。

そこで冒険者に依頼しようとギルドに赴いたトコロ、何と、ギルド長がウチの出前の常連さんだったのです。」


世間は狭いからなぁ。ギルド長は蕎麦食いだったのか。


「そうしたらぁ、ギルド長が『コレは場所を公表してしまうと、乱獲される恐れがある』と仰ってぇ。

そこでぇ、『薬草採取』という名目にしてもらってぇ、ウチの店の名前も伏せたんですぅ。」

「成る程のう。蕎麦屋と判れば、『薬草』がワサビであろうコトは容易に予想が付くからのう。

報酬金がやたら高いのも、これで納得がいったわ。ワサビの採取地についての口止め料というワケじゃな。」

「ギルド長は『信頼のおける者に依頼をするから任せて欲しい』と言ってました。それで待っていましたら…、

いやぁ、まさかロリ・カイザーさんに受けてもらえるとは。コレならひと安心です。」


そこまで聞くと、プリスたんがポン!と手を叩いた。


「分かりました!ここまでお膳立てされていた、というコトですね!」

「えっ!?どーゆーことっすか?」

「ギルド員がわざわざやって来て、窓口も通さずケインさんに直接、依頼書を手渡したコトです。

恐らくギルド長は、最初からケインさんにこの依頼を受けさせるツモリだったのだと思われます。」

「…マスター。ここまで来ると偶然ではない……もはや『必然』。」


ななな、何だってーーーー!?それは本当かキバヤシ!?


「多分、他の冒険者が依頼を受けようとしても、あれこれ理由を付けて断わっていたのかも知れません。」

「ソコまでやるか!?そんな面倒な手順踏まなくたって、直接呼び出して依頼すりゃ良いじゃないか!?」

「いえ、それだと最初からワケありのクエストだとバレてしまいます。この街の噂は広がるのが早いですから。」


そうか。俺が『ギルドの窓口で依頼を受けていない』のに、理由も無しに留守が続いたら、そう勘ぐられるか。

で、尾行でもされたら、目出度く一発でワサビの自生地がバレてしまう。

でも、この怪しさ爆発の依頼なら、周りからは『俺が貧乏クジを引いた』としか見えないもんな。

それが証拠に、冒険者連中は俺が依頼を受けるかどうかで、あれだけ面白がってたからな。クソッ!


「実は、詳細を載せなかったのには、もう1つ理由がありまして…。」

「まだ何かあるのか。」

「そのワサビの自生地の近くにぃ、『大賢者』にまつわる森があるらしいんですぅ。」

「大賢者?」


はて?そんな森、今まで聞いたコトが無いぞ?

と、ソコに


「本当ですか!?大賢者様のお話!…あれってお伽話では無かったんですね!!」


うおっ!猛然とプリスたんが食い付いて来た!!


「何?そんなに有名な人なの?」

「はい。この世界では誰でも知ってる偉人のお一人です。今では童話やお伽話としてしか残っていませんが、

大昔におられた大賢者様が、それ1つで世界を変えてしまう様な武器を作ってしまったお話です。」

「魔導巨人の前にも、そんな物騒なモノがあったのか…。」

「ですが、大賢者様は誰かに悪用されるコトを危惧し、この世界のどこかにその武器を隠したというコトです。」

「へぇー。で、それってどんな武器だったの?」

「それが…、お伽話なので、伝える人や本でまちまちでして。剣だったり、盾だったり、魔法書だったり。」


うん、お伽話あるある。

滅茶苦茶メジャーな『桃太郎』の話だって、地方で色んなバージョンがあるって聞くもんな。

桃太郎が女の子だったり、キビ団子がアワやヒエの団子だったり、お供が猿蟹合戦のメンバーだったり。


「と言うか、大賢者そのものが実在しておったのが驚きじゃ。」

「オイラ、ずーっと、おはなしのなかだけのひとかっておもってたっす。」

「…エルフの国にも来たコトあるとか、聞いた。」

「今でも大賢者様のお墓がどこにあるか?で、学者達が大陸の東と西の間で言い争っていますからね。」


邪馬台国の卑弥呼か!!(汗)

あー、で、何で大賢者にまつわる場所だと詳細が載せられないんだ?


「遺跡とかを荒らされたく無いんだと思いますね。」

「冒険者の中には、信仰心など持ち合わせておらぬ遺跡荒らしの様な輩も多いからのう。」

「そうか…。まぁ、その点、ウチには僧侶のプリスがいるから……ハッ!!

待てよ!?ひょっとして、そこまで込み込みでウチのパーティーに受けさせたのか!?」

「かもしれないっすねー。」

「…計画通り。」


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