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OVA04「GATT ロリ・カイザー彼の地にて、斯く戦えり」その5



ドゴオッ!!


「グフッ!」


俺は後れを取ってしまい、棍棒の一撃で弾き飛ばされてしまった。


カラン!


何か落ちた音がした。俺がぶつかったせいで、3Dプリンターから何か外れたらしい。

俺はとっさにそれが何なのかも確認もせず拾って、ポケットにねじ込んだ。

『魔道具は元の形を維持していなければ使えなくなる』

バザーでプリスやデヴィルラに、そう聞いたコトを思い出したのだ。


「きゃあっ!!」


今度はプリスの悲鳴だ!!

顔を上げると、プリスがカシラに後ろ手に取られ捕まってしまっている。


「そこまでだぜ!!」


戦闘が静まる。

あらかた手下達はパトル達がノックダウンさせたみたいだが、まだ数人残っていた。

俺もヨロヨロと起き上がる。


イヤな対峙が続く。

パトルもマーシャも、いつでも飛び込んで行ける体制を取ってはいるが、

相手のカシラも盗賊とは言え、剣においてもかなりの手練の様で、決定的なスキを見せない。


「ケインさん、私に構わず…」

「うるせぇ!黙ってろ!!」


カシラはプリスの喉元に、乱戦で中程で折れてしまった剣の刃を押し当てる。


「へへ、『女子供を人質にするのは卑怯』とは言わせねぇぞ?

テメエらも冒険者なんだろうからな。覚悟ぐらいは出来てるよなぁ?」


ムカつく正論吐きやがって。

あぁ、そうだとも。この世界じゃ性別年齢、関係無しに誰でも冒険者になれる。

但し、どんな危険も、死さえも自己責任だ。分かってるよ。分かってるって…クソッ。


「―プリスを放せ。俺が身代わりになる。」

「ソイツは出来ねぇ相談だ。」

「じゃあ、何がしたい?」

「俺と決闘してもらおうか。」

「何!?」


気付かれたか。俺がリーダーでありながら、この5人の中で最低戦力だってコトが…。

そりゃ成人男子だから、腕力だけならプリスやデヴィルラよりはるかに上だが、

魔法が全く使えない、剣術も体術もヘボいコトを加味したら、俺が一番弱いもんな。

乱戦の最中でも、俺達5人の様子をそれぞれシッカリ観察してたってワケか…。


「それと、だ。」

「?」

「そっちの獣人族の持ってる剣を貸してもらおうか。」

「え!?オイラのっすか!?」


パトルは『最強装備シリーズ』の剣を思わず抱きかかえる。…そんなにイヤか。気持ちは分かるけど。


「俺の剣はこの通りポッキリ逝っちまったからな。そいつの剣はかなり良さそうじゃねぇか。」 

「いやっすよ!!おまえなんかにやらないっす!!」

「慌てんなよ。もらうとは言って無ぇ。『貸せ』って言ったろ?」


カシラはチラッと3Dスキャンを見る。…そういうコトか。

パトルの剣を複製しようって魂胆だな、コイツ。


「分かった。パトル、貸してやれ。プリスの安全には代えられない。」

「うぅ…、ボスがそういうなら…。」


パトルはすっごく渋々と、カシラに『最強装備シリーズ』の剣を渡した。

うん、あの顔、運動会で嫌いな男子とフォークダンスで手を繋ぐ時の女子の顔だわ。(汗)


カシラはパトルから取った剣を3Dスキャナーの台に置いた。

カメラが動き出し、剣をスキャニングして行く。

その間にカシラは横の3Dプリンターへと移動し、素材となる金属を選び出す。


今そこに置かれているのは、赤い金属と銀色の金属。…多分、銅とニッケルだな。それと粘土。

現行の100円硬貨は銀色をしているが、アレには銀は使われていない。銅とニッケルの合金の白銅製だ。

あの粘土が中身のカサ増し用だろう。冒険者ギルドで偽造100円玉を斬ったが、それと同じだ。

セトモノで硬貨本体を作って、白銅で硬貨外側の『モナカの皮』を被せているワケか。


「良い剣だからな。オリハルコンとミスリルで作ってやるか。」


カシラは素材鉱石を置いてある棚から、オリハルコンとミスリルの塊を持ち出す。

こうしてる間もプリスは人質のままだ。


ただ、3Dプリンターはこのままでは使えない。さっき、何か部品が落ちた時に俺が拾っているからな。

ヤツがそれに気付いたら、その部品と引き換えにプリスを開放してもらう。

それが今の俺に出来る精一杯の算段だ。


―の、ハズだった。 が、


「か、カシラ!それじゃ使えねえ!ロリ・カイザーの野郎、何か部品を隠してますぜ!俺は見たんだ!」


うわ、馬鹿野郎!俺の切り札バラしやがって!!

ヘバッてる手下の1人が、息も絶え絶えにいらんコト言いやがった!!


カシラはおもむろに俺の方を見て言う。


「成る程、不思議と余裕コイてたのはそういうコトだったのかい。やっぱ油断ならねぇヤツだぜ。

ほれ、持ってるモノを出しな。下手なマネなんかせず、ゆっくりとな。」


クソッ!ここまでか…。

俺はゆっくりポケットに手を入れ、あの時とっさに拾った部品を取り出す。

そしてその部品を見たのだが…、


「ん!? これは…!?」


USBメモリだ!!しかも2.0!!


「(勝った!!)」


俺は心のなかで、幸運の女神様に感謝した。いや、この世界ではあのロリ神様か。兎に角、これなら勝つる!!

そしてそのUSBメモリをカシラに差し出し、手渡す。


「コイツか。…えーと、ドコにくっついていたっけな?…おい、教えろ!」

「その横にある箱の下側に、平たい四角の穴が幾つか開いてるだろ?ソコの一番右さ。」

「おう、ココか…。」


カシラはメモリを差込口ポートに差し込もうとする。 が、


「ん?何だこりゃ?…入らねぇぞ?」

「裏返しじゃないのか?」

「表裏があるのか。じゃあ、これなら…、」


USBメモリを裏返して再びポートに差し込もうとする。 が!!


「ん?…んんん!?やっぱり入らねぇ!?どうなってんだ!?」


思わずUSBメモリを自分の目の前に持って行き、ワケが分らんとばかりに呻くカシラ。

フッと、プリスを捕らえている手が緩んだ。 今だ!!!


「うぉおおおおおおりゃああああああーーーーーーっ!!」


バッカーーーーーーンン!!!!


こうなるコトを予期して突撃体制の準備をしていた俺は、一気に懐に飛び込んで

油断しまくっていたカシラのアゴに全力のアッパーを叩き込む!!


「ぐふぅううううぁあああーーーーっっ!!」


もんどり打って倒れるカシラの巨体!!

その瞬間を逃すコト無く、パトルとマーシャが放たれた矢の様に飛び出す!!




―後は呆気無いモノだった。

カシラがやられたのを見た手下達は、途端に意気消沈。

ここまでの乱戦でパトル達に痛め付けられてたコトもあり、アッサリと陥落した。


あ、ちなみに、俺のアッパーはカシラを転ばせただけ。ボコったのはパトルとマーシャだ。

カシラのアゴが頑丈過ぎて、俺の手の方が傷んでしまった。(汗)


てなワケで、これにて偽造硬貨の組織は壊滅。

連中はお縄となり、牢屋送りとなるコトだろう。




「さて、『機械コイツ』はどーしようかね。」


俺は3Dスキャナーと3Dプリンターを前にして腕を組んでいた。

まさか、こんなモノがこっちの世界に入って来るとは思っても見なかったからなぁ…。


「偽造する魔道具なんか、無い方が良いのでは?」


プリスたんのご意見、ごもっともです。…でもねぇ。


「いや、コレ、本来はそういう悪いコトをするための道具じゃ無いんだ。

手作業じゃ難しい細工を可能にしたり、美術品の複製を作って本物を盗難から守ったり、

サイズのピッタリ合った義手や義足を作れたり、世のため人のためになる道具なんだよ。」

「ふむ、使い手の良心次第、というコトじゃな。それは世界が変われど同じじゃのう。」

「じゃあ、また、かみさまのところにもっていくっすか?」


俺をこの世界に転移させた転送機は、『神々の住まう場所』に置かせてもらっている。

アレはどう使っても危険なモノだからな。


「その手もあるけど…、コレは上手く使えば、この世界の利益にもなると思うんだよね。」

「でしたら、冒険者ギルドに置いておくのはどうでしょうか?

そして、何か必要に迫られて使う時はケインさん監督の下、というコトで。」

「えぇ!?俺が責任者!?」

「仕方あるまい。主が一番『機械コイツ』に詳しいのじゃからのう。」

「ケインさんなら、決して悪事には使わせないでしょうし。」


そんなに信用されちゃうと困っちゃうなぁ…。まぁ、今は取り敢えずそういうカンジで対処してみるか。


「話は変わるが、主よ。」

「ん?」

「あの時、盗賊のカシラが何やらモタ付いておったコトで、主が起死回生の一発を打てたワケじゃが、

一体、あれは何があったのじゃ?」

「あぁ、コレか?」


俺はUSBメモリを取って、デヴィルラに見せた。


「そう、ソレじゃ。見たトコロ、そんなに複雑そうなシロモノにも思えぬのじゃが…。」

「ま、やってみな。」


デヴィルラにUSBメモリを手渡して、ポートに差し込む様に促す。


「ふむ…ここに差し込めば良いのじゃな。…ここに…ぬ?入らぬ…。」


俺はニヤニヤしながらその様子を眺める。


「裏返しにしてみな。」

「こ、こうか?…これで…ぬぬ!? 何故じゃ!?どっちにしても入らぬぞ!?」

「もう一回、元に戻してゆっくり入れてみな。」

「いや、主よ。戻したトコロで、その向きでは入らなかったのじゃ……入った…。」


狐につままれた様なデヴィルラの顔。周りのプリス達も以下同文。


「主よ…これは、どういうコトじゃ?」

「上手く説明出来無いんだけど、『そういうモノ』なんだ。」

「魔法、ですか?…あ、でもケインさんの世界には魔法は存在しないんでしたよね?」

「ふしぎっすねー。」

「俺の元いた世界じゃ、七不思議の1つになってるからな。」

「…なにそれ、コワイ。」


どういうワケか、本当に不思議だもんな。USBメモリは。(苦笑)




アジトに飼われていたスパイ用の伝書鳩を使い、連絡を受けた街の公安部隊がやって来て偽造組織の連中を縄と鎖で縛っていく。

俺達の横を、捕縛され連行されて行くカシラと手下達。


カシラは俺の顔を見てため息混じりに口を開いた。


「アンタにゃ負けたぜ。…敵じゃ無けりゃ、お前さんと美味い酒が飲めてたかもな。」

「残念だが、俺は男と飲む趣味は無い。」

「フッ、流石は幼女趣味のロリ・カイザーだ…。」


コイツ、もう1発殴ってやろうかしら。

そこにプリスが、今回の事件においての『最大の謎』をカシラに質問した。


「ところで、なぜ100円玉だったのですか?500円玉、いいえ、1万円札でも良かったのでは?」


それだ。

カシラはニヤッと笑って、さも当然の様にこう答えた。


「そんなデカイ金を偽造すんのは、怖いだろうが。」


連行されて行く盗賊達を見ながら、俺達は呆気に取られていた。


「何ともまぁ…、大きな罪を抱えるコトへの怖さですか…。」

「悪に徹し切れぬ、小悪党的な発想じゃのう。」

「なんだか、にくめないっすね。」

「…マスター、マーシャ1つ覚えた。」


俺はマーシャに聞く。


「何を覚えたんだい?」

「…お金は、おっかねぇ。」


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