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OVA04「GATT ロリ・カイザー彼の地にて、斯く戦えり」その4



「じゃあ、自己紹介してもらおうか。」


アジトにいる盗賊達を集めた前でカシラが言う。

俺達は前もって打合せていた通りの『盗賊パーティーとしての偽名』で名乗る。


「俺がパーティーのリーダー、アルフォートだ。よろしく頼む。」

「私はシルベーヌと申します。」

「オイラ、ルーベラっていうっす!」

「余はルマンドじゃ。よしなにな。」

「…ホワイトロリータ。」


盗賊のカシラは俺達の自己紹介を聞いて、


「ふむ、理由は分からねぇが、何だか低価格なワリに美味そうな名前だな。」


おぉ、分かるか。美味いんだよな。 そんなコトはどうでも良いか。


「で、アルフォート。お前さん達は偽造硬貨を買いに来たのか?」

「それもある。だが本題は別だ。とびっきりのネタを持って来てやった。」

「ネタ?」

「アンタら組織の存命に関わるコトだよ。」

「はぁ?」


さぁ、ここからだ。


「アンタらの偽造硬貨、冒険者ギルドに勘付かれてるぜ。」

「!? ほ、本当か!?」

「カシラ!騙されちゃいけねぇ!あの偽造硬貨がバレるワケ無ぇ!!」

「そうだそうだ!デタラメなネタでカネふんだくろうとか、大概にしやがれ!」


思った通り、簡単に信じちゃくれないか。 だが、こちらにはプリスたんがいるんだよ。

俺はプリス…じゃ無かった、シルベーヌを前に出して、そこから先の説明を譲る。


「私は偽造貨幣を見破るコトの出来る能力を持っています。」

「何だと!?…アンタ、シルベーヌとか言ったな。それは間違い無いのか?」

「試してご覧になりますか?」


余裕綽々で微笑むプリスたん。意外と女優の才能、あるんじゃない?




カシラは手下に大量の100円玉を用意させ、テーブルの上に全て表になるように置いた。


「一旦混じっちまうと俺達も区別が付かねぇからな。ココで作ったニセモノには裏に印を付けといた。」

「なる程、裏返さずに全て選り分けて見ろ、というコトですね。…それでは、」


プリス…いや、シルベーヌの目が緑色に光る。 

そして結果は言わずもがな。

百発百中を目の当たりにして、言葉も出ない盗賊達。


「恐れいったぜ…。アルフォート、アンタのメンバーはスゲェな…。」

「問題はココからだ。冒険者ギルドにも同様の能力を持つ魔術師が雇われたんだ。」

「察したぜ。その魔術師が偽造硬貨に気付き、ギルドに自分を売り込みに来やがったんだな?」

「あぁ。ただ、シルベーヌ程の能力じゃ無いから、完全にバレるまでにはまだ時間が掛かるだろうけどな。」


勿論、この話は俺のでっち上げだ。ギルドにバレてるのは事実だけどね。

でもシルベーヌの能力を見てしまえば、もう連中は俺の話を無条件に信じてしまうだろう。


「納得した。で、どうすりゃ良い?」

「簡単なコトじゃ。お主らが偽造硬貨を作っているトコロを見たいのじゃ。」

「何!?」

「このルマンドは機械や魔道具のプロでね。見破れる硬貨の『欠点』を指摘してやろうって親切心さ。」

「むぅ…。」


ルマンド@デヴィルラが魔道具にも詳しいのは本当だ。まぁ、機械に関してはそれ程でも無いが。


自分達の最高機密となる偽造硬貨の製作現場を見せろと言われて、困惑するカシラ。

だが、シルベーヌの能力を見せられ出鼻を挫かれた連中は、『有り得ないコトじゃ無い』と

俺達のハッタリもアッサリ鵜呑みにしてしまう。


「アルフォートさんよ、他言無用だぞ。」

「分かってるって。俺達だってその偽造硬貨が流通出来なくなるのは痛手だしな。

取引にちょっと色を着けてくれれば『WIN-WIN』だよ。」

「ちっ、抜け目の無い野郎だ。…こっち来な。」


俺達はアジトの奥へと案内される。

さて、ここまでは計画通り。


この先が問題だ。偽造する機械なり魔道具なりを確認して、どうすべきか。

一番理想的なのは、鹵獲ろかくして冒険者ギルドに引き渡すコトだろう。だが、連中だって抵抗ぐらいはする。

最悪、バラバラに破壊しなければならないかも知れない。


と言うか…、戦闘になったら、この敵だらけのアジト内で十分な戦いが出来るだろうか?

いやね、ウチのパーティーの実力からしたら、負けるコトは無いと思うんだ。

だが、アジトの中にはそういう戦いの時のために、沢山のトラップや抜け穴があるハズで、

その場所を知らない俺達が、初見で不利なのは確かだろうからなぁ…。




奥の部屋の前でカシラはゴツイ鍵を出し、扉を開ける。


「さぁ、ココだぜ。」


部屋に入った俺達は驚いた。

ソコには、広い部屋の3分の1を占領している大きな『機械』があった。

プリス達はその『機械』の大きさと異様さに驚いていたが、俺はその『機械』そのものに驚いた。


金属のパネルで覆われ、同じく金属のフレームで構成された本体。

精密なレンズを持ったパーツは、上下左右自由に動くアームに取り付けられている。

そしてその横には、金属の枠に囲まれた冷蔵庫並の大きさの透明な箱があり、

やはり自在に動くアームの付いた台とノズルがある。


間違い無い。……コレは、3Dスキャナーと、3Dプリンターだ!!


ようやく全て繋がったぞ!

コレが魔導都市から盗み出された『巨大な箱』の正体だ!!

魔導都市の連中は、俺の元いた世界からこんなモノまで転送させていたんだ!!


あの巨大な魔導巨人をサルページしてから短期間で修復出来たのも、これで部品をバンバン複製してたからだろう。

そしてこの組織は魔導都市の壊滅後にコレを盗み出し、今までに無い精度の偽造100円玉を作ったってワケか!!


俺はデヴィルラ…ルマンドに耳打ちして事の顛末を簡単に説明した。

ルマンドは一瞬、すごく驚いた顔をしたが、周りにいるアジトの連中に不審がられない様、

すぐに表情を戻し、努めて冷静を装った。


「成る程のう。主の世界の道具であったか…。全く、こんなモノを見るのも初めてじゃ。」

「ただ、どうやって動かしてるのかが俺にも分からないんだよな。

こっちの世界じゃ電気…、この機械を動かす動力源が構築されていないハズだから…。」


俺の言葉を証明する様に、3Dスキャナーと3Dプリンターのコンセントケーブルは使われるコト無く、

俺のもといた世界で梱包された時のまま、ビニールテープで纏められて本体からぶら下がってる。


デヴィルラが俺にささやく。


「それなのじゃが、見たトコロ、コレは改造を受けて魔道具化しておるな。」

「魔道具に?」

「このアジトの連中風情にそこまでの魔導の知識や技術は無かろうから、恐らくは魔導都市で改造されたのじゃ。」


よく見れば、スキャナーとプリンターのフレームやアームに細かい魔法文字が書き込まれている。

これでコイツは電力では無く、この世界で最も普遍的な魔力をエネルギーにして動かせる様になったワケか。


「どうだ?何か分かったかい?」


カシラが俺達に聞いて来た。俺とルマンドは小声で相談する。


「主よ、如何にする?」

「取り敢えず時間を稼ごう。適当なコト言っても、知識の無いコイツらなら騙せると思う。

まずはハッタリを効かせて、流れの主導権を握ろう。」

「あい、分かった。」


俺とデヴィルラはカシラの方へ向き直り、自信たっぷりにアドリブで言ってやる。


「あぁ、分かったよ。問題点はやっぱり思った通りだった。」

「―と、言うと?」

「調整が疎かになっておるな。魔導都市で作られてから時間が経っておるので、色々と狂いが出てきておる。

これは細かい修正が必要じゃろうな。」

「なっ…!? どうして魔導都市から盗って来たコトを!?」

「蛇の道は蛇。俺達はプロだからな。」

「参ったな…。アルフォート、本当にアンタらは凄ぇよ。

俺達は、何で今までアンタらみたいな凄腕の名前を知らなかったんだろうな…。」

「まぁ、何じゃ。我々はそうそう表には出て来ない様にしておったからのう。」


魔導都市から盗み出したコトまで見破ったとあれば、俺達の言葉は更に真実味を増しただろう。

これで何とかスキを見て、このスキャナーとプリンターをどうにかしないと。

理想的なのは、鹵獲して冒険者ギルドにこの偽造硬貨事件の証拠品として届けるコトだ。

ただ、ここにいる連中が黙ってこのデカブツを渡してくれるとも思えない。最悪の場合、破壊も考えておかないとな。


その時、この部屋の扉を開けて誰かが入ってきた。


「おぉ!カシラ、ここにいましたか!わたしのともだち!」


げ!!!!!!!!! 

俺の鎧のニセモノを売ってた、あのインチキ商人じゃねーか!!!!

コイツらの仲間だったのかよ!!!!


「おう、戻ったか。どうだった?今日の調子は。」

「おぉ、きょうはさっぱりです。ひどいおきゃくさんがきてからうれなくなって、わたしまいってしまいます。」


ヤヴァイ!! これはヒジョーーーーーにヤヴァイ!!

俺達は一様に商人に背を向け、この場の空気と化そうと必死に努力する。

が、その空気を読めないカシラが上機嫌でこっちに向かってやって来て、俺の肩をムンズ!と掴む。


「アルフォート、紹介するぜ!俺達の仲間の悪徳商人だ。」

「ア、ソッスカ。…ア、ドモドモ。」


振り返るコトは出来ない。失礼ながら、手を振るだけでこの場の挨拶に代えさせていただきます。

心臓バクバク。 脂汗ダラダラ。 脚ガクガク。


「おぉ!カシラのともだちなら、あなたもわたしのともだち!」


ニコニコしてこっち来んじゃねーよ!! 来るなったら!! 

お願い!!来ないで!! 私に構わずあっち行って!!


「ん?…あなた、どこかで…?」


俺の顔をのぞき込むな!! イヤッ!!見ないで!!


「あぁっ!!あなた、ろり・かいざー!!!!」

「何だって!? ―おい!アルフォート!どういうコトだ!?」


くぅうううう~~~~っ!!もはやここまで!!

俺達は一斉に盗賊の衣装を脱ぎ捨てて、通常の姿に戻る。


「低価格の割に美味そうな名は仮の姿!!お察しの通り、俺はロリ・カイザー。冒険者さ!!」

「騙したな!!」

「偽造硬貨を作って人を騙していたヤツに言われたく無いね!」

「経済や貿易を脅かす行為を、許すワケには行きません!」


俺達は3Dスキャナーと3Dプリンターの前に立ちはだかる。


「みんな!!『機械』(コイツ)を奪取するぞ!!」

「はい!」

「りょーかいっす!」

「あい、分かった!」

「…かしこまっ。」


ドカドカと部屋に雪崩れ込んで来る手下達。…数十人はいるな。

カシラは俺達に騙されたコトも手伝い、怒髪天を突く様な形相だ。


「よくも一杯食わせやがったな!!お前ぇら、やっちまえ!!」

「オオーーーーーーーーーーッッ!!!」




たちまち幕を開ける大混戦!!


「デヴィルラ!済まないが、火と雷の魔法は使わないでくれ!『機械』(コイツ)を壊したく無い!」

「心得ておる!!」


洞窟ダンジョンと同じで、ココでデヴィルラの最上級魔法が炸裂したらアジトが崩壊して全員生き埋めだ。

雷系魔法もスキャナーやプリンターにスパークでもしたら一大事。

ハンデが厳しいが、ココは出来得る限り証拠品ゲットにコダワリたい。


「うしろにまわれないのが、きついっすねー!」

「…マスター、人数が減らない。殺しちゃダメ?」

「ギリギリまで我慢してくれ。犯人から供述を聞き出せなくなるとギルドも困る。」


パトルとマーシャが前衛になって手下達をブチのめしているが、予想以上に手間取っている。

背後に守らなければならない『機械』があって、この場から動けないのが相当に不利になっている。

閉鎖空間というコトもあるし、連中の本拠とあって部屋のあちこちに武器が隠されていて

敵の装備を予想しての戦略が立て難いのも原因だ。


「殺さぬ様、加減するというのは存外難しいモノじゃのう。」


デヴィルラのボヤく通り、それじゃあ魔法で一網打尽…というワケにも、これまた行かない。

広い部屋ではあるが、モンスターの巣食うダンジョンと比べたら箱の中にいる様なモンだ。

魔法の威力が強過ぎると、部屋中炎に包まれてオーブン状態になってしまう。

しかも対人で最も有効な炎系と雷系が使えない。つまりは氷弾と石弾がメインとなるのだが、

相手がそこそこの鎧や盾を持っていると、一撃では倒せず粘られてしまう。


いくさでは『殺す方が簡単』だと言いますが、こういうコトなんですね。」


死んだ者はもう戦えない。だが、戦意ある者は怪我程度では怯まずに戦い続ける。

人数の少ないコチラとしては相手の数を確実に減らす、―つまり、殺してしまった方が楽になる。

だが、ギルドに引き渡す前提だとそれが出来ない。それに、この世界の冒険者稼業として当たり前でも

甘いと言われようとも、やっぱりプリス達に人殺しはなるべくさせたく無い。 こりゃツライなぁ…。


カシラだけ残せば良いって気もするんだが、それは最後の選択だ。


「うぉおりゃあああーーーっ!!」

「!?」


ふいに連中の1人が死角の隠し扉から出て来た!!


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