OVA04「GATT ロリ・カイザー彼の地にて、斯く戦えり」その3
「うっひゃー!ボス!アレみるっす!!」
「うん?どうした、パト…うぉおおお!?」
突然パトルが何かを見付けて素っ頓狂な声を上げた。
何だ?と思って指差す先を見た俺は、そのパトルよりも変な声が出てしまった。
いや、だって、コレはちょっと…、
『ロリ・カイザーが使用した鎧一式(本物)特価150万円!!』
武器屋の出店の一角に、俺が魔導都市の決戦で装備していた鎧と兜、剣と盾がマネキンに着せられて立っていた!
勿論、コレはニセモノだ。俺が着けていた本物はあの決戦で消滅していて、この世にはもう存在しない。
レプリカとか再現品とかならハナシも分かるが、思いっ切り全力で『本物』と貼り出してある。
俺達が唖然としていると、店の主人がやって来て媚び媚びの声で語り出した。
「おお!わたしのともだち!おまちしておりました!うっているものをみますか?」
ヤバイ。絶対コレは危ない店だ。有名ゲームのセリフと一字一句変わらない。(汗)
プリスたんが恐る恐る店主に聞く。
「えっと、このロリ・カイザーの鎧なんですけど、」
「おお!おめがたかい!150まんえんですが、おかいになりますよね?」
〈はい〉 〈いいえ〉
『いいえ』に決まってるわ!馬鹿野郎!!
そこにデヴィルラがワザとらしく切り込む。
「店主よ、コレは本物か?」
「もちろんです!みてください!このようじょのれりーふ!ろり・かいざーはようじょずき!」
殴るぞ!テメェ!! 確かに俺はロリコンだけどさ、ハッキリ言うなや!!
「しかしのう、魔導巨人との戦いが終わった時、ロリ・カイザーは装備を一切着けておらなかったのを
周りにいた多くの冒険者が見ておったと聞くが? これはどういうコトかのう?」
「おお おきゃくさんかいものじょうず。わたし、まいってしまいます。」
まだ続けるか、コイツ。
「ろり・かいざーはろりこんしんし。よろいについたようじょのれりーふをきずつけないため、
じぶんからそうびをはずして、おともをしていたわたしにあずけたのです。」
「(よくもまぁ、いけしゃあしゃあとデマカセが次から次へ出て来るモノじゃ…。)」
デヴィルラが小声で、店主の嘘の連発に半ば感心した様に呟く。
ここはいっちょ、俺も参戦しますかね。
「うーん…。―いや、よく見ると細部が色々違うな。」
「な、なにをおっしゃいますか。わたしのともだち!」
「まず剣だ。ここのレリーフの子、ポニテじゃ無くツインテだったハズだ。
ツインテの髪が螺旋状に伸びて、刀身の先までしっかり刻まれていた。」
「ぎくっ!!」
「それに盾の子はパンツまでレリーフされていない。この子には『はいてない』処理がされていたぞ。」
「ぎくぎくっ!!」
「決定的なのは鎧の胸のレリーフだ。これ、全く別人だろ。ご本人からクレーム来るぞ。」
「ぎくぎくぎくっっっっ!!!!」
胸には、あの幼女神様の正面顔がレリーフとして彫られていたからな。
あの戦いの最中、鎧も兜も剣も盾も、全部『消滅の光』に当たって消えてしまったが、
レリーフの中で微笑んでいた幼女達は、今でも誰一人欠けるコト無く俺の網膜に焼き付いている。
真のロリコンパワーなめんじゃねーぞ。
「どうしてそんなことしっていますか?…も、もしかして、あなたは!?」
「こんなニセモノ売ってると、神様の罰が当たるぞ。」
「おお、あなたひどいひと!わたしにくびつれといいますか?」
「勝手に吊ってろ!!」
俺達は店主の悲痛な声に取り合うコトもせず、その店を離れた。
「おどろいたっすねー!ボスのよろいまであるなんてー。」
「似ても似つかないニセモノだったけどな。」
「本物が現存しないから、言い張れば通るとでも思っているのでしょうか。」
「不愉快じゃ。100円玉の件が終えたら、次はあやつをどうにかせんとならぬな…。」
「…あの残り少ない髪の毛、全部むしる。」
マーシャちゃん!それは人道的にどうかと思うよ!?(汗)
色々な店を調べている間に、俺達はバザー会場の奥まで来ていた。
それでもまだ魔導都市から盗まれた大きな箱は見当たらない。
「ちょっと甘く見てたなぁ。こりゃ端から順序良く見て行って終わるかなぁ…。」
俺が出店の多さに圧倒されていると、1人の男が俺の肩にドン!と当たって来た。
「おっとゴメンよ。」
そう言って男は通り過ぎようとする。
そこにマーシャがドン!とその男にぶつかる。
「あたっ!気を付けろぃ!」
男は小走りで雑踏の中に消えて行った。先にぶつかったお前の方が気を付けろよ…。
「大丈夫だったか?マーシャ。」
「…うん。はい、マスター。」
そう言ってマーシャが俺に渡したのは、…え?俺の財布!? ええっ!?
「…さっきの男、スリだった。」
「何だって!?」
雑踏を見ても、男の姿はもう見えない。
「…でも、マーシャの目は騙せない。スリ返した。」
「うぉおお!!ありがとう!マーシャ!!」
俺はマーシャの頭をこれでもかと撫でた。 ドヤ顔(無表情)でVサインのマーシャ。
「やはり盗賊が多いだけあって物騒ですね。」
「あぁ、これからはもっと注意しよう。」
「…あれ?」
「どうした、マーシャ?」
マーシャは懐からもう1つの小袋を出す。
「なんっすか?ソレ。」
「…多分、さっきの男の財布。勢い余って一緒に取ったかも。」
「おいおい、それじゃこっちが犯罪者になっちゃうぞ!?」
そこにプリスが毅然として言う。
「いくら相手がスリとは言え、盗みはいけません。」
「そうだよなぁ。見付けて返してやりたいが…。」
「まだ遠くには行ってないと思いま……え?」
急にプリスの喋りのトーンが落ちた。彼女は男の財布である小袋を凝視している。
「どうしたのじゃ?プリスよ。」
「そんな…まさか…。」
プリスは口に手をやり、何か信じられないという表情。見れば、彼女の目が緑色に光っている。
そして、衝撃のひと言。
「この袋の中身、全部、偽造100円玉です!!」
「何じゃと!?」
「本当か!?」
慌てて袋の紐を解き、手の平にザラザラと出して見る。
―果たして、それは100円玉ばかりだった。
俺の目には本物か偽物かの区別は付かないけど、プリスが言うなら確実だ。
「これって、つまり、」
「あのスリの男、偽造組織の関係者であろうな。そうでなければ、偽造硬貨だけを大量に持ち歩くハズが無いわ。」
「『犬も歩けば』か。手掛かりが向こうから舞い込んで来てくれたな。」
「じゃあ、あのおとこをさがすっす!」
「あぁ、その必要は無いぞ、パトル。」
「ほえ?」
じきにあの男は、この偽造100円玉を無くしたコトに気付くだろう。
そうなれば、自分の歩いたルートを逆に辿りながら探し回ってココに戻って来るに違い無い。
―と言ってるうちに、ほうら来た。
ようし、飛んで火に入る何とやらだ。…その前にひと細工しておくか。
「ええい、ドコに落としたって言うんだ、チキショウ…。」
「よう、探してるのはコレか?」
俺はニヤニヤしながら、偽造100円玉の入った小袋を見せる。 驚くスリの男。
「おっ、お前はさっきの…!?ど、どういうコトだ!?」
「人目に付かないトコロに行こうか。アンタもその方が良いだろ?」
「……。」
男は黙って頷く。 俺達は人気の無い路地に入った。男は目を泳がせながら俺に言う。
「分からねぇ…。何でお前がソレを持ってるんだ?」
「アンタ、俺の財布をスッただろ?だから俺もスリ返したんだよ。」
俺は自分の財布も出して男に見せる。 男は思わず懐を探り、スッた財布が無いコトを確認し愕然とする。
本当は俺がスッたんじゃなくて、マーシャが電光石火の早技でやったコトなんだが、
ココは俺の箔を付けるための演出に使わせてもらおう。
「参ったな…、スリなら誰にも負けねぇって自信があったんだが、上には上がいるってか…。」
今、この男の中では、俺はスリの達人に見えているだろうな。『手を出しちゃいけない相手だった』とね。
さて、ここからが本番だ。
「まぁ、そういうコトだ。それより、この小袋を俺に売ってくれないか?」
「え?」
「100円玉が100枚入ってるよな?だから、そうだな…5000円でどうだ?『原価』よりは良い値だろ?」
「!! てっ、テメェ…!!」
男は「100円玉が100枚なら1万円だろうが!」とは言わない。 いや、言えない。
コレは『俺は偽造硬貨だと判っているぞ』という意味で言われたのだ、と気付いたからだ。
と同時に『俺はこんな精度の高い偽造を見破れるんだぞ』という格の違いを見せる脅しでもある。
これで交渉のイニシアチブは、100%こっちに渡ったってワケだ。
「そ、ソレはこれから仕事に使うんだよ。無いと困る。返してくれねぇか?」
「仕事ねぇ…。同業者のよしみで返してやっても良いが、俺もコイツが入用だったんでね。
―それじゃ、こういうのはどうだ?」
「?」
「この小袋を返してやる代わりに、この100円玉の入手先を教えろ。」
「……分かったよ。お前さんにゃ勝てねぇ。」
俺はスリの男から、偽造組織のアジトを聞き出した。
「アジトで合言葉と俺っちの名前を出せば、通してくれるハズさ。」と言うので、
その合言葉も教えてもらい、いよいよ偽造組織のアジトに乗り込むコトに。
あ、そうそう。ヤツに返した小袋の中身は、事前に全部本物の100円玉に換えておいた。
これ以上の被害を出してはいけないしね。この偽造100円玉は、後でギルドに届けておこう。
スリの男から聞き出した場所に向かう、怪しげな男と幼女4人。
今の俺達の姿は、誰がドコからどう見ても『盗賊のパーティー』としか思われないだろう。
俺達がロリ・カイザー御一行だとバレないように、事前にバザーで盗賊っぽい古着を買っておいたのだ。
「プリスって、意外とこういう『ちょいワル』な格好も似合うんだな。」
「ケインさんに褒められるのは嬉しいですが、僧侶の身としては複雑な気持ちです…。」
「余もこんな野暮ったい服を着るとは思わなんだわ。これもまた初めてのコトじゃ。」
「パトルとマーシャが似合ってるのが、何気にアレだな…。」
ワイルドな獣人族と、90年間アウトドアだったエルフだもんな。(汗)
「にあってるっすか?てへへ~♪」と頭を掻くパトルと、頬に手を当て「ぽっ♥」とか言うマーシャ。
いや、褒めて無いぞ。 褒めてないんだからな。 ソコんトコ頼むぞ。
「それにしてものう。魔導都市から持ち出された箱はどうなったのじゃろうな?」
「あー、ソレは俺も気にはなっていた。」
「私達を西のバザーの町まで導くためのヒントだったのかも知れませんね。結果論的ですが…。」
「まぁ、俺達の目的はあくまで偽造硬貨の方だしな。」
盗み出された箱に関しては、しかるべきトコロに報告しとけば良いか。
そうして会話しながら歩いていると、地味でいかにも目立たない洞窟が見えて来た。
「お、アレがアジトの入口か。よし!みんな、打ち合わせた通りに行くぞ。」
「はい!」
「りょーかいっす!」
「あい、分かった。」
「…いえっさー。」
入口でスリの男の名前を出し、合言葉を言う。
あのスリの男はこの裏世界ではスリで有名で、いつもこの組織から偽造硬貨を買っていた『お得意さん』だった様で、
その紹介とあってか、スンナリと通してくれた。
そして組織のカシラとお目通り。
あの男とのスリ合戦のコトを告げると、盗賊としての実力を認めてくれて客人扱いの待遇となった。




