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OVA04「GATT ロリ・カイザー彼の地にて、斯く戦えり」その2


そうしてギルドから正式な依頼の下、俺達は偽造硬貨を作ってる組織を探すべく、

まずは、プリスの夢に出て来た魔導巨人と戦った場所である魔導都市に赴いた。


いや、初めはちょっと迷ったんだよ。魔導巨人がサルベージされた中内海にも行くべきかどうか?で。

でも、プリスの夢では魔導巨人は『立って』いたらしい。それに俺達は魔導都市でしかあのデカブツを見てないからな。

まぁ、ハズレたらまた探せば良いだけのコトだし。


あの戦いが終わって今、魔導都市は『誰でも魔法の研究が出来る』オープンで真っ当な施設へと改装が続いている。

あちこちで荷物の整理や、建物の改築をしている最中だ。

俺達は元研究所の奥、俺をこの世界へと呼んだ転送機があった場所へとやって来た。

ココで以前に隠し扉を見付けて、所長が俺の世界から本やロボット玩具なんかを転送させてたコトが判明している。


「おや、これはロリ・カイザー様。何かご用事ですか?」


この地区担当の現場主任が、汗を拭きながら朗らかに言う。

みんな、その呼び方ヤメて欲しいんだけど。神様が付けちゃったコトで全国的に広まっちゃったからなぁ…。(泣)


「あ、いえ、魔導巨人はアレからどうなったのかなぁ?って。」

「魔導巨人ですか?白い粉末になってからずっと、あそこに山となったままですよ。」


現場主任の指差す方向には白い小山が見える。分かっちゃいたけど、原形を留めていない。

うーん、魔導巨人自体がヒントじゃ無かったのかなぁ?

―と、現場主任が近付いて俺に耳打ちをした。


「アレですか?やはり先月の事件、ロリ・カイザー様の耳にも入っていましたか?」


え?何それ?何か事件あったのか?

―待てよ? 先月って、硬貨を偽造してバラ撒く時間と考えたらピッタリじゃないか!?

これが偽造組織の情報なのか!?


俺は現場主任にクルリと背を向け、4人を集めてコッソリ今の話をした。するとプリスが、


「ここは知ってるフリをして聞き出した方が良いですね。」

「うーん、俺、いきなりは自信無いなぁ…。」

「分かりました。私がやってみます。」


ウチのパーティーの知恵袋、プリスたんがカマを掛けに前に出る。


「はい。実は私達もその件で来たのです。」

「やはりそうでしたか。厳重に口止めされていましたが、人の口に戸は立てられないですねぇ。」


うーん、今ひとつ誘導に乗っかってくれない。もっと曖昧ながらも突き詰めた風のセリフじゃないと駄目か?

俺の目を見たプリスたんは、俺の言いたいことを理解したとばかりに小さく頷き、会話を続けた。


「そうなんです。お分かりの様に、今回の一件は決して小さい『モノ』では無いでしょうから。」

「―仰る通りです。あんな大きなモノ、どうやって運び出したのか…。」


ようし!掛かった!『コト』って言ったら、事件だけを扱う言い方になる。

『モノ』という大きな括りで表現したのは正解だった!ここが日本語の便利なトコロだ!流石プリスたん!!


「大きいとは聞いていましたが、実際はどの位の大きさだったんでしょう?」

「小型の荷車が1台、丸々入る…その位ありましたね。」

「あぁ、私達が入手した情報と合ってますね。」


プリスたんがチラッと俺を見る。よし、任せろ。


「プリス、ちょっと良いか?」

「あ、はい。―すみません、一旦失礼します。」


現場主任にペコリとお辞儀をして、俺のトコロに小走りで戻って来るプリスたん。

うーん、この以心伝心が気持ち良い!!


「話の輪郭が見えて来ました。どうやら先月、ここから何かが盗まれた。それはかなり大きくて簡単には持てない大きさ。

さらに『丸々入る』という表現を使ってるコトから、中身が見えない『箱』だったと思われます。

そして内緒話にも関わらず中のモノの描写に一切触れないのは、現場主任も中身が何だったのか見ていないからでしょうか。」


あれだけの会話からここまで引き出せるとは、やっぱりプリスたんは頭脳明晰だな。


「しかし…、となると、あの現場主任からコレ以上の詳細を聞き出すのは難しいのう。」

「『はこ』のなかみがわかんないのは、もやもやするっすねー。」

「うーん、あの様子だと、どこに運ばれたかも知らないだろうしな。…手詰まりかなぁ?」

「現場主任は『箱がどうやって運び出されたか分からない』と言っていました。ココです。」

「ドコじゃ?」

「それだけ大きなモノであれば、運び出した時に都市の入口で必ずチェックを受けたハズです。

『分からない』というコトは、チェックを受けていない。巨大な箱を気付かれずに外に盗み出せた…。

即ち、入口以外から運び出す手段を持っていた。これは十中八九プロの盗賊の犯行です。」


おぉ!プリスたん、冴えてるぅ!

デヴィルラが「まったく…、『ドコじゃ?』とボケたら『ほら、そこの足元に』と、ボケ返すのが礼儀じゃろう?」とか

小声でブツブツ言ってるが、ここはスルーさせてもらおう。


入口の係員がグルという可能性も無いな。

他にも多くの作業員がいただろうから、『入口を通す』という行為自体が人目に付く。


「問題はその箱の中身が何なのか、そしてどこに運ばれたか、だな…。」

「盗品の運命は2つに1つじゃ。自分のモノとするか、あるいは他人に売るか、であろうな。」

「…マスター、取り敢えず、南に行ってみる。」

「南?…あ、そうか、ここから北には町も村も、川さえ無いんだったな。アジトを構えても暮らせないか。」


この先は長いUターンコースの果てに『最強装備シリーズ』を取りに行った神殿があるだけ。

どこにも水と食料が補給出来るポイントが無い。

だとすれば、探すのは南。それも大荷物を抱えているのだから、いきなり長距離を運ぼうとはしないだろう。


そこまで聞くと、今日は頭の回転が神懸かってるプリスたんが、ポン!と手を叩いた。


「読めました。盗品の行方はココです。」


地図を拡げて指し示したのは、西の関所から更に西に行ったトコロにある村。


挿絵(By みてみん)


「え!?ココ?」

「はい。人の多い中央都市には迂闊に持って行けないでしょうから。」

「でも、ここって『せきしょ』をとおらないといけないっすよ?」

「ですから、海路です。」


ズバリと言うプリスたん。


「成る程!それならば入口のチェックを受けず、西の関所も通らないで済むのう!

この村には港が無いので普通は陸路しか使えないトコロじゃが、蛇の道は蛇。盗賊ならではの秘密の経路があろうからのう。」

「それと、この村では定期的にバザーが開かれるそうです。」

「バザー?」

「はい。『掘り出し物が時々出る』と西の大陸では有名らしいのですが、

もしかすると、それは色々とこうした盗品が出回っていたからなのかも知れません。」

「きな臭いのう。」


俺の元いた世界のバザーと言えば、学校や教会の慈善事業目的で、要らないモノを持ち寄って売るコトだけど、

こっちの世界では盗品とか贋作とか、そういういかがわしい物品が飛び交ってるんだろうかねぇ。


「よし!決まったな! 次の目的地は、」

「…バザールでござーる。」



俺達は魔導都市から盗まれた荷物を追って、西の関所の先の村へ。

西の関所には、魔族が冒険者に『ふるい』を掛けるための門番をしている。

未熟な冒険者が迂闊にこちらの北の大陸に来ない様、そこから先に進めるかどうかの力量を試しているのだ。


普通なら通過するのに戦闘したり、色々面倒が起きるのだが、

ココにいるのは以前、神殿に行くのにお世話になったメイドさんハーピー。

こっちには魔族の王女であるデヴィルラもいるので、何の問題も無く通過出来た。


それどころか、


「この関所に来る者達には、盗賊やトレジャーハンターが多いのです。

盗品や密輸品の運び屋として動いているのでしょう。皆様、どうかお気を付け下さい。」


―と、情報までくれた。




そしていよいよ西の町、バザーへとやって来たのである。

そんなに大きくない町だというのに、中央都市の市場にも負けない人混みと活気。


「ふえぇー!ひとがいーっぱいっすねー!」

「獣人族、魔族、ドワーフ…。エルフ以外の種族はみんないるみたいですね。」

「こういう場所では種族など関係無い。カネとモノを持っている者が正義じゃ。」


デヴィルラの言う通りだ。カネ自体は人種差別しないからな。

しかし、見たコトのない変わったモノが沢山あるなぁ。何に使うんだろうね?


「これはどれも魔道具ですよ。誰でも魔法が使えるようにしたモノです。もちろん、制限はありますが。」

「へぇ~。コレを使えば、魔力の無い俺でも魔法使いになれるのか。」


余計なコトだが、俺はネットミームで言うトコロの『魔法使い』になるツモリは無い。

30歳になる前に、必ずやヤリ遂げてみせる。…多分。

とそこにデヴィルラの声。


「主よ。希望を打ち砕く様で済まぬが…、」

「何!?俺、駄目なの!?30歳まで卒業出来ないの!?」


思わず俺は声を上げてしまった。虚を突かれてビックリ顔の幼女4人。


「―な、何の話をしておるか分からぬが…、ここらに並んでいる魔道具は、正直オススメ出来ぬぞ。」

「え、そうなのか?」

「良くて中級、ほとんどが低級の品ばかりじゃ。数回使えば壊れるのがオチであろうな。」


よかった。俺のコトじゃ無くて、魔道具のコトだったのか…。

それにしても何だそりゃ。その100均で買ったハズレ商品みたいなヤツ!


「魔道具はモノに魔法のことわりを封じ込めた道具じゃ。難しい話はさておき、

魔道具として完成した状態から著しく『外れる』と、魔道具はその効力を失う。つまり壊れるのじゃ。」

「えーっと、…まだちょっと分からないな。」


地球という魔法の無い異世界から来た俺には、いささか難しい内容だ。

それを察してか、プリスたんが説明してくれる。


「そうですね…、例えばマッチがありますよね。マッチを擦って1回火を着けます。

火を消して、そのマッチ棒をもう一度擦っても火は着きませんよね。」

「うん。―あ、以前と違う形になっちゃったから、ってコト?」

「そうです。何回か使えば、モノは自然にキズが付いたり擦り減ったりします。魔道具も同じです。

内含された魔力を使い切ったり、通常の使用に耐えられないまでに傷付いたりすると、

それが『元と違う』と判断されて使えなくなる。そこで壊れるのです。」

「キズ1つで使えなくなるのか!?」

「そこが高級・中級・低級の差に関わって来るトコロじゃな。質が低いほど込められた魔力も少なく壊れやすい。

即ち、大きなキズ1つで駄目になる。質の高い魔道具ならヒビ程度でも壊れたとは認知されぬ。」

「高級品なら、魔力を自分で込め直すコトも出来ます。一部が取れてしまっても、くっつければまた使える様になるモノもありますからね。」


あー、ゲームのアイテムでも『耐久度』とかあるよなぁ。

確かにああいうのも基本、質が悪いほどすぐ壊れる。あんなカンジなのか。

安物は基本、使い捨て。高級品なら直し直し長く使える。そう考えると納得だ。


そうして陳列された魔道具を感慨深く眺めていると、


「うっひゃー!ボス!アレみるっす!!」


突然パトルの声が。 何があった!?

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