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ファンタジーな世界だけどラブコメしません?  作者: 夢愛
第一章 パラレルワールド
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異世界にて

 晴天に一つ、巨大な渦巻き型の雲が出現した事にも気付かなかった俺は目を覚ますと視線の先に居るものに正直驚いた。


 俺の布団の中で、俺の上で藍髪の女が熟睡していたのだ。とても気持ち良さそうに。


 彼女は先日モトニスと共に異世界から迷い込んでしまったらしい女性だ。癖っ毛がやはり目立つが、それよりも整った顔が目立つ。

 そして今は夏だ。何故よりによって毛布を掛けて寝ている? しかも俺が座るとお前の頬は危ない場所に乗ってしまうぞ。


 とにかく暑い。


「ん……もう朝?」


「お前……!」


 彼女は服を着ていなかった。いや、ブラジャーは着けていたぞ、ちゃんとな。

 大した胸も存在しないんだがな。

 因みに下はと言うと、見なかった事にするのが当然良いだろう。彼女の為と、俺の為だ。


 寝ぼけたままの彼女に服を着るよう促していると、何やら視線を感じた。ただの視線じゃない、これは──噛み殺す様な殺気にも取れる。


 明日波だった。


 鍵の閉まったドアから俺達を睨みつけ、今にでも鎖を噛み千切って俺達を食い殺すんじゃないだろうか。

 そう考えると、幼馴染みがただの猛獣に見えてきた。バレたらそれこそ殺されるだろうな。

 よし、黙っておこう。


「あ、明日波おはよう。よく眠れた?」


「いえ、あまり良くは寝れなかったかもね」


 怒ってる様にも見える明日波の形相はまさに鬼だった。これは何やら恐ろしい目に遭わされるのではないだろうか。

 まあ怖くはないんだが。


 それにしても、普段はすぐ寝付ける明日波が寝れなかったとは驚いたもんだ。


 あ、そう言えば何でこの藍髪の方が俺の部屋で寝ていたかと言うと、昨日帰ったら既に親は寝ていて余った部屋がたったの二つだったのでジャンケンをさせたところ、モトニスが明日波の部屋で彼女、エリス・フェザーウォールは俺の部屋で寝る事になったのだ。


 だが、いくら狭くても同じ布団に入る事はなかっただろうに。


「いい加減離れたらどうなんですかエリスさん!?」


 何やら顔をダルマの様に紅くし、身体を震わせている幼馴染み。

 そしてそれを嘲笑うかの様に……いや、とにかく馬鹿にした様に笑うエリス。

 何なんだか良く分からないな。


 それにしてもエリスみたいなクールな顔付きをした女性が微笑むとこんなにも愛らしいのか。

 いや、微笑むと言うよりは涙目で笑ってるんだが。

 愛らしいよりは腹立つな、これ。


「ごめんごめん。そう言えばモトニスは? 朝から列車でも修理しに行ったのかな?」


「いえ、寝てます」


「寝てるのか」


「うん」


 モトニスはうちに来てから殆ど何もしていない。本当にただの居候と化していた。

 早く汽車を直して異世界に連れて行ってはくれないだろうか。

 異世界がどんな場所なのかとても気になるんだ。


 俺はとりあえずエリスを降ろし、洗面所へと向かう。


「何だ起きてたのか」


「それは俺の台詞だな」


 洗面所にはモトニスが居て、何処から持って来たのか赤い歯ブラシを使用している。

 誰のだそれ。


 うちの住人の物ではないと確認した俺も彼女の隣で歯を磨く。因みに俺のは緑色だ。


 歯を磨いていると、背後からふと視線を感じた。

 感じたが、歯を磨き終えるまでは振り向く事もしなかった。

 目の前に鏡が有るので誰が居るのかなんてすぐに分かる事なんだけどな。


「事情は聞いたけど、変な気起こしちゃダメよ」


「安心しろ。絶対に起こさない」


 背後から俺を見つめていたのは母で、自分と父以外は全て女だから変な気を起こすなと言う。

 心配しなくても母に手を出す事は無いし、明日波も含め他の女達にも手を出す事は一切無い。

 俺はラノベに出て来る女の子しか好かないからな。


 何故か知らんが、洗面所まで駆けて来た明日波に跳び蹴りを食らわされた──一体どうしたと言うのか。

 訊いても反応は無かった。訳が分からん。


 それを見て転げ回って大笑するモトニスも訳が分からん。

 女共は現在狂ってしまっているのだろうか? だとしたら母よ、朗報だぞ。

 俺は絶対にこいつらに手を出す事が無くなった。


「さて、汽車直しに掛かりますか!」


 モトニスが立ち上がり言うと、明日波は中指を立て、俺は両手を高く上げ、エリスは頷いた。

 ……ん? どうした明日波。



 ──モトニスとエリスが汽車の修理を始めて早くも1時間が経ったが、一向に直る気配が無いらしい。

 何かパーツが無くなっている訳でもないが、とにかく直りそうにないらしい。

 これは異世界に行けないどころかモトニス達が元の世界に戻れないパターンか? それはとても困る。


 そう言えば母に何と説明したんだろう、こいつら。


「ダメだ、これじゃ日が暮れる」


「どんだけ直らないのよ、まだ朝よ?」


「バカだな小娘よ。故障が直りそうにない物が1日ごときで直ると思うの?」


「誰が小娘よ!」


 んん、どうにもこの二人と明日波は相性が悪いらしい。見る限り喧嘩をするじゃないか。

 圧倒的に明日波が言い負かされている気もするが。

 だとしたら幼馴染みよ、哀れだぞやめておけ。


「よし、俺も手伝おう。何をすればいい」


 中々終わりそうにないので、結局は俺も手伝う事にした。もし直った時これで恩返しとして連れて行ってもらえるかも知れない。


「流石だね喜音、頼りになるぅ〜」


「わざとらしいんだけど!?」


 気づいたんだが、いつの間にか明日波はタメ口になっているみたいだ。

 昨日会った時はまだ敬語だった──いや、ついさっき部屋に来た時も敬語だった筈だ。

 これが慣れなら良いんだが、嫌っているとしたら異世界への切符が千切られそうだな。まずい。


 エリスの指示通りレバーを引いてみたい掃除をしてみたり物を積んでみたりしたが特に何も起こらない。


「うむ、これは時間がかかりそうだ」


「いや、雑用やらされてるだけだから」


 雑用か、確かに連れて行ってもらうならやるべき事だが、汽車を直すのには確かに必要無いな。

 俺とした事が間に受けてしまっていた。


「ちゃんとしたやれる事は無いのか?」


「有るかも無いかも」


「どっちだ」


「アルカナナイカナ」


「…………」


 エリスはモトニスよりかなり真面目な性格かと思っていたらそうでもなかったらしい。

 途轍もなく簡単にあしらわれている気がする。

 俺に出来る事が無い、とでも言うように。


 明日波が買って来てくれた缶ジュースを飲みながら、俺は溜息を吐き路地の段差に腰を掛ける。


「あんたの事だからどうせ、連れて行ってもらえるとでも思ってたんでしょ」


 俺は小さく頷き、缶の中の闇を見つめる。

 幼馴染みはお見通しだったらしい。


「無理よ、あいつらは簡単に付き合ってくれるあんたを利用しようとしてるだけなんだから。信用なんてしちゃダメなんだから」


「そうか……」


 信用してはダメ、か。確かにあの二人が俺達を異世界に連れて行ってくれるとは考えにくくなって来た。

 連れて行って欲しいなら手伝ってもらうのが手っ取り早い筈だし、何より弱みを握る方が役に立つ筈だ。

 その気が無いと取れる。


 異世界行きの切符はシュレッダーにかけられてしまった──。



 作業が始まって5時間、俺達は数分前に昼飯を食べ終え、再び作業にかかる。

 だが俺は先程までのやる気が全て削がれてしまい、集中力も何も無くなってしまった。


 異世界へ行けないのなら、この作業は俺にとって不利益なもの。やる気など湧いてくる訳が無い。


「さて、そろそろ大丈夫かも知れないね」


「そうか」


 エリスがレバーを引きながら笑顔で言うが、俺は殆ど興味も失くし壁に寄り掛かる。


 モトニスも乗車し、メーターなどを確認。そして頷いた。


「やっと帰るのね、しかも1日で終わってるし。さっさと行きなさいよ」


「何言ってるの? 君達も来るだろう? 私達の世界」


 エリスが首を傾げ、眼を丸くして言う。

 その言葉に俺も明日波も耳を疑い、彼女達の乗る汽車を見つめた。


 エリスは扉を開き手招きをする。


「さあ行こう! 異世界への切符は君達の手の中に有る。それだけで乗車OKだよ!」


「嘘でしょ……!?」


「本当か!?」


 切り刻まれた切符は再生し、俺は本当に異世界へ行く事が可能となった。

 こんな事が本当に有るとは思えず、今までの記憶を全て辿り、夢ではない事を確認した。

 何度も確かめた。


 勿論夢じゃない、こいつらも本物だ。異世界の住人だ。

 そして俺達はこれから異世界へ向かえるんだ──。


 俺は明日波の手を握り、汽車へと駆け乗った。


「目的地は──知らね。私達の世界!! 出発、進行ーーー!!」


 モトニスの雑なアナウンスと同時に汽車は宙に浮き、車体を光が囲んで行く。

 目立たない田舎町に一つ輝きを放つ汽車は、上空へ駆け上がって行く。


「すっご……」


 明日波は驚いているよりは怯えている様に見えるが、まだ椅子に座れている分落ち着いている。

 対する俺は興奮して窓にがっついていて、まるで大人気ない。


 エリスの注意で椅子や手すりに掴まった俺達の視線の先には、何色も混ざり合った様な異様な空中トンネルが入り込んだ。


「行くよ!」


 あのトンネルを抜ければ、とうとう──。




 ──トンネルを通っている間はほんの一瞬で、気がつけば光が消えて汽車は上陸していた。

 線路は必要無いのか、見当たらない。


 辺り一帯草原で、一つの家だけが視界へ入った。

 少し離れた場所には、木が囲む様に生い茂っている。


「ここが私達の世界の一部で、あの家は私達が暮らしている場所。ようこそ、マリフ・ゴートへ」


「マリフ・ゴート……」


 マリフゴートとは、この土地の名前で二人はそう呼んでいるらしい。

 にしても、ダンジョンとか変な建物とかを期待していたんだが、草原とはな。

 もしかしたらこの世界での秘境的な場所かも知れん。


 エリスは真っ先に家へ入って行ったが、俺達はモトニスに待つように言われた。

 もう一人の住人に訳を話すらしい。


 もう一人の住人は、男性なんだろうか? それとも二人同様女性なのだろうか。


「お待たせ、彼女がレイビア・モストアニーアだ」


「んだ? こいつらが助けてくれたっつー奴らか」


 中から出て来たのは女性だが口調の荒い者で、明日波と酷似した色の髪が膝裏まで伸びている。

 性格とは真逆に、髪は清潔で跳ねてる部分も存在していない。


 肩には栗を咥えたリスが乗っていて、その瞳は潤いをもちとても癒される。


「俺は喜音、こっちは明日波だ。よろしく頼む」


「げえ、男居やがんのな……」


「レイビア男嫌いだもんねー」


 ほう、ならなるべく俺は関わらない方が良いんだろうか。いや俺も性格的に仲良く出来る気はしないが。

 明日波も縮こまっているしな。


 ん? エリスが汽車を覗いているんだが……そして不吉な予感がする。


「あ、また故障してる。完全に直った訳じゃないのに早速使ったからだね」


「嘘でしょ!?」


「壊したのかよおめーら」


 ああ、明日波が本当に気絶しそうだ。

 嫌がっていたのに無理矢理連れて来てしまって悪かった、俺が来たいが為に。

 俺は穏やかならこの世界にいつまでも居る自信は有るけどな。明日波は違うだろうが。


 モトニスとエリスがレイビアによって説教されている中、俺は明日波に謝罪をしていた。

 この世界に無理矢理連れて来てしまった事の。


「良いわよ、別に。私だってあんたの事が、心配、だし」


「すまない、絶対に危険な時は守るからな」


「うん」


 意外にも明日波は怒っていなかった。

 だが、元の世界から離れ暫く帰れない事が判明した為か、小さな肩は小刻みに震えている。

 本当にすまない事をしてしまった。絶対に守り抜かなければ。


「なあ、お前らって魔法使えんの?」


「魔法?」


 説教を終えたレイビアが問いかけて来たが、勿論俺達が魔法などを使える訳がない。

 そしてこの世界は魔法使いが居る事が容易に分かった。

 異世界魔法系ファンタジーか、それも良いかも知れん。


 俺達が首を振ると、モトニスが間に割って入った。


「一つくらい使える筈だよ? 喜音達の世界とここは色々違うからね。魔法が使えれば私ので即汽車直せてたし」


「因みにモトニスの魔法は何だ?」


「知らね」


「…………」


 モトニスは自身の魔法の仕組みは分からないが、物を直す事が出来るのは確からしい。

 エリスによると『ホスピタル係』らしい。

 医療係と言ってやった方が良いと思うんだが、まあ気にしていなさそうだから別に良いか。


 それにしても俺達もこの世界なら魔法が使えるのか……どんなものなのか気になるな、凄く。


「念じてみ? あの岩目掛けてぶっ壊れろってさ」


「なるほど、分かったやってみよう」


 先程までは無かった筈の岩に身体を向け、手を前に伸ばし念じてみる。

 『何か出ろ』と。


 直後、左側から放たれた炎により岩が破壊された。


「やった! 出来たこれ簡単ね!」


「明日波……どうやった?」


「普通に」


 普通に念じていても、強く念じていても全く何かが出る気配が無いのだが。

 これはもしかして俺は才能が無いと言うやつではないだろうか? いや、そんな筈はない。元の世界では成績優秀で文武両道だった俺が無才能な訳がない!


 ──やはり出ない。

 そもそも俺は明日波の様な炎とかそっち系統の魔法なのだろうか? モトニスみたいな医療系ではないのか? なるべく前者が良いんだが……。


 俺が気を緩めると、身体をに電気が走るのを感じた。

 強くない電流で、痺れた様にも感じはしなかった。とにかく電気が走ったのだ。


「おっ!」


 電気らしきものが右掌から放出された──1メートル程だけ。

 何だこれは。もしかして本当……


「才能無ぇなお前」


 らしいな、認めよう。

 逆にもう既に炎を使いこなし焚き火を始めた明日波は才能有り過ぎではないだろうか? 何故数分でコントロール出来ているんだ。

 お願いしますやり方のコツを教えてくれ。


 その後暫くレイビアにコツなどを教えてもらったが、1時間経っても出来なかった。

 因みに他三人は焚き火で焼いた芋を食べている。この世界食べ物は変わらないっぽいな。少し安心した。


「ふふ、初めてあんたに勝った気分よ。とても気持ちが良いわ!」


「性格悪いぞ」


 出来ない幼馴染みを嘲笑う幼馴染み。これは凄く酷いと思わないだろうか。

 あ、俺はこいつらの事を容量が足りない脳だと示したじゃないか。自業自得でもあるな。


 少しくらい芋を分けてくれ、腹が減って仕方がない。



「この世界は現在、お前らの世界と一部が融合されてるみたいだ」


「「!?」」


 急過ぎるカミングアウトに俺と明日波はスープを吹き出してしまった。申し訳ない。

 だが、夜飯の間に言うか? ああ、普通か。


 レイビアとエリスは頷いているが、モトニスはこの二人より理解力が無いのか首を傾げている。


「時空が歪んでな、『傷』が出来てるんだ。そこからお前らの世界の一部が入り込んで混ざった。だから今回モトニス達がお前らの世界に入り込んだんだ」


「なるほど」


 分かりやすいようで分かりにくい気がするのは俺だけだろうか? そして男嫌いな割には頻繁に話してくるなレイビアは。

 時空が歪むなんてどうやって知り得るんだ? まずそこから想像するのが難しいんだが。

 そしてそこに出来た傷とは何だ? 何の傷でどんなものなんだ?


 俺も明日波も良く分かっていないが、俺はラノベを良く読むので多少は理解していた。

 本を読むのと現実で遭遇するのじゃ全く違う、というのが身にしみて分かった。


 そして先程からレモンを搾っているモトニスの手元から放たれる液体が目にしみる。

 凄く痛いんだが、どれだけ下手なら俺の方へ飛んでくる? いや、逆に俺の方にしか来ないからコントロールが良いのだろうか。

 とにかくやめろ。


「それが、どうしたのよ」


「いや、それがどうしたと言える小規模な事じゃないぞ明日波」


「ああ、間違いなく大規模な事だ」


「ああ! なるほどやっと理解した『アテモテ』の事ね!」


 モトニスの言うアテモテとは一体なんだろうか、と訊いたら時空の歪みにそう名付けたと返って来た。

 この世界で時空の歪みをそう呼ぶのか、それとも単に思いついただけなのかはそこそこ気になる所だ。


「アテモテから出て来る異物が居てな、人間に襲いかかってくる。奴らをモトニスは『アテテテ』と呼んでいる」


「なるほど、バッドネーミングセンスだな」


 聞いた感じで理解したが、アテモテもアテテテもどう考えてもモトニスが適当に付けたものだな。

 逆に意味があるとは思えない、少しも。


 しかし、人間を襲って来る異物か……つまりは生物でもあるという事だろうか。


「それでな、そいつらが出て来る度にアテモテが広がっちまうんだ。いつかこの世界とお前らの世界はぶつかって消滅しちまう」


「嘘でしょ!? 話の規模大きくない!?」


「だからそう言っただろう……」


 相変わらずの幼馴染みに溜息を零したが、呆れてばかりはいられない。

 恐らくこの後、楽しむ余地などない最悪なシナリオが待ち受けているだろうからな。


「だからそいつらを倒すのを、手伝って欲しいんだ」


 ──ほらな、最悪なシナリオだろう?

 ここに来れたのは嬉しい、街も探索してみたいものだがまず襲いかかって来る生物が居る。

 そして時空の歪みと傷が在る。


 魔法が存在する。それだけで落ち着いた生活は出来ないのが目に見えて分かるのだ。


 戦わなければ帰る事が出来ないパターンだ。

 そして帰ったとしても助からないパターンだろう、やるしかないのだ。


「どうすればその傷を閉ざす事が出来る?」


「アテテテから出る欠片を集めて放り投げる」


 モトニスの説明は驚愕する程に大雑把なものだった。

 異物を倒して出て来た何らかの欠片……恐らく時空の傷の欠片だろうが、それを集めてどこに放り投げるのだろうか。

 もしかして時空の傷だろうか? それで修復出来るのだろうか。


 まあ何が何でも帰る為生き残る為にはそれらをやってのけるしか無いのだろう。


 ふっ、日常を過ごす事は出来なそうだな。

 しかも魔法も容易に使えない俺に何が出来ると言うのだろうか。


「帰る為なら、仕方ないわよねぇ……」


 明日波も呆れた様に承諾してしまった為、これにて全てが決定してしまった。


 俺達五人は時空の歪みに出来た傷、アテモテから出て強襲して来る異物アテテテを倒し出た欠片を集め、恐らくアテモテへ放り投げる。

 こんな呆れる程意味の分からない設定の中、俺は緊張で寝付けなかった。


 ──因みに他の四人は有り得ない程の速度で眠りについた。












ナンテコッタ

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