表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
九魔戦記  作者: 奈倉 紀
2/2

罪の名

Basil(バジル)Walker(ウォーカー)



 そもそも自分の名前など忘れるはずがないのだ。

 だって自分の名前だから。

 だからノートに書き記されたその名前も全くピンとこなかった。


「これが…俺の名前…?」


「そのようじゃが、ぬしはこのノートも、カバンの中身も、記された名前も、記憶にないんじゃな?」


「……あぁ」


 小さなクマのぬいぐるみは微動だにすることもなく、じっと大鎌の男の肩に乗ったままそう言った。


「もういい、俺はこのまま街へ出る。」


 名前などなんでもいい。どうせ行くあてなどないのだ、名前も境遇も“そういうこと”にしておいて、旅の続きをしようと思った。


「そうだ、その前に、お前達の名を聞いておこう。ここで出会ったのも何かの縁かもしれないしな」


「ふむ、そうじゃな。あと、今日はもうここから動かんほうが良い。夜になると魔物が出るからの」


 そう言うと同時に、大鎌の男が俺を近くの小屋へ入るよう促す。


「あぁ、わかったよ。今日は休ませてもらおう」




 招き入れられたのはボロ小屋だった。ボロ小屋と言っても、腐敗した周囲の建物に比べればむしろ綺麗なほうだ。


「ところで、こちらはまだ名乗っていなかったな。私はアリア。アリア・アダムスだ。そしてこの無口なのが」


「……アイデン・グレイ」


 無口な大鎌の男は名乗りながら背負っていた棺をドカっと何も無いスペースに置いた。

 この中には何が入っているのだろうか。死体…?それとも。


「棺が気になるようじゃの」


 俺の好奇心を察知してか、クスクスと笑いながら彼女は言った。

 そして昼間にみたあの黒い影がぬいぐるみから伸び、棺の蓋をギィ、と開いた。


「…!!」


「どうじゃ、驚いただろう?」


 そこには柔らかそうなブロンドの髪を立てば床に付いてしまいそうな程伸ばした、人形の様な8、9歳くらいの少女が横たわっていた。


「な……」


「こっちが本体じゃ」


 くすくすと笑う様子は年相応の表情だったが、やはり口調とのギャップに違和感を感じてしまう。


「さっきの黒い影といい、その姿といい、お前は一体…」


「本当に何も知らぬのか?この世界の事も、この国が今戦争中である事も。」


「はぁ!?戦争!?」


 ありえない、こんな御時世に戦争だなんて。

この間まで平和に……


 ………?


 この間…?



「ん?どうかしたか?まぁいい、どの道ぬしは記憶が曖昧なんじゃろう?この際全部説明してやろう」





 今から約五百万年前、この世界には三つの存在が出現した。


 一つは人間。彼らは俗に『ヒューマ』と呼ばれ、何の異能も持たない存在。

 二つ目は天使。彼らは俗に『アンジュ』と呼ばれ、背中に白い翼を持つ。その数は限られており、世界に7しか存在しない。


 そして三つ目は悪魔。彼らは俗に『バフォメット』と呼ばれ、彼らだけは決まった形をしていない。

 罪を抱え死んだ人間に取り憑き、異能を与えることが出来るが、代償を要し、悪魔の器となった人間は器となった瞬間から時間が止まり永遠に老いることはないという。

 悪魔の存在数は8とされているが、その詳細は不明である。


 その三つの存在は互いが互いを牽制しバランスが保たれていた。




 しかし約三千年前、その均衡が崩れ出したのだ。


主人公

Basil(バジル)Walker(ウォーカー)


年寄り口調の幼女

アリア(Aria)·アダムス(Adams)


大鎌の無口な男

アイデン(Aiden)·グレイ(Gray)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ