表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
道に咲く華  作者: おの はるか
私は、知恵の道に何を見る
97/174

知恵の使徒編 とある村の少女

新章【私は、知恵の道に何をみる】始まります

 ラディン。名字はない。荒くれ者から冒険者、冒険者からから開拓者に転身した父に名字はない。


 年は十五歳。シャルトラッハ王国の近郊の村に生まれ、村で育ち、村で死ぬ。


 そのはずだった。


〇〇〇


「はあっ! はあっ! なんで、なんでオークがこんな村の近くに!?」


 いつもと同じように、毒草や薬草の載った植物図鑑を片手に村の近くを探検しているときだった。


 しゃがみ込み、一本一本の植物を精査していると突然後ろからうなり声が聞こえたのだ。


 ぱっと振り向くと数体のオーク。一般的な冒険者なら複数人で協力しなければならない程危険だ。

 村の近くにいていい魔物ではない。


 そして彼ら(?)は私を見つめていた。口からはよだれが垂れ落ち、舌もだらしなく出している。


(食べる気だ!)


 本能的にそう感じた。全力で私は駆ける。


 冗談じゃない! 私はまだ、こんなところで死にたくはない!


 だが、相手は人間の上位種のようなもの。元からそんなに開いていなかった距離はみるみるうちに縮まっていく。


 そしてついに、一匹のオークの拳が私を捕らえた。


「きゃっ!」


 碌に訓練もしていない私では受け流すことも受け身をとることもできず近くの気にぶつかるまで転がされた。それによって距離ができたのは幸運か……。


 だが、距離ができたところで結末は変わらない。私が村を抜け出して森の中にいることは誰にも言っていない。



 つまり、助けは来ない。いや、来たとしても村の中にオークを相手にできる実力者などいない。

 しけし、それでも思わずにいられなかった。


(助けて! 誰か!)


 そして、彼らは来てくれた。


〇〇〇


 オークが近づいてくる。だが、私の後ろは木に遮られていて逃げることは叶わない。


 ついにオークが私の目の前で立ち止まり、棍棒を振り上げる。あんなもので叩かれたら一撃で死んでしまうだろう。


 振り下ろされる棍棒、私は恐怖のあまり目を逸らす。


 だが、


 ガキィンと金属と棍棒がぶつかる音がしたかと思うといつになっても棍棒の衝撃はやってこない。


 恐る恐る目を開けると目の前には銀髪の少年。村の少年ではない。彼らならばオークの棍棒を受けとめることなんて……。


 少年はちらっと私の方を振り返ると、


「君、そこから動かないでね。ちょっと危ないから」

「えっ?」


 私が戸惑うことをよそに、少年はオーク達に相対する。しかし、少年の装備はあまり豪華ではない。一撃でも食らえば彼は


「風よ、輪刃となって敵を切り裂け【転風(ころびかぜ)】」


 魔法で、一撃で、オークの小隊は全滅させられた。


〇〇〇


「さ、先ほどは助けていただきありがとうございました」

「いやいや、君が無事でよかった」


 助けてくれた少年は私とそんなに年は変わらないようだった。棍棒を弾いた刀を腰に戻すと私の怪我を見てくれる。


『お、無事に終わったようで何より』


 そして彼がが私の介抱をしているとまた別の少女が木の向こう側から現れる。


「クル姉遅かったな。何かあったのか?」


 姉弟だろうか? いや、それにしては髪の色が違いすぎる……。何か事情があるのだろうか? 気になる……。

 だが、次の瞬間、そんなことを気にしていられなくなった。


『ちょっとね。戦闘ならオーク五体程度ソルトの負担にはならないと思ったし、ほっとけないこともあったから』

「ほっとけないこと?」

『いやいやそんな大事じゃないよ。近くにオークの巣ができてたから潰してきただけだよ』


「「オークの巣?!」」


 そんなものが本当にあったら村は滅んで……いや、違う、目の前の少女はそれを一人で潰したと言った。


 これが私、ラディンとソルト・ファミーユ、及びクルルシア・パレード・ファミーユの出会いであった。


〇〇〇


 彼らを私の家に泊めた。私はどうして彼らがあんなにも強いのかを知りたかった。


 だが、ソルトさんに聞いても訓練をしているだけ、としか帰ってこない。


 その返事に納得していないことをかぎ取ったのか、彼は自分の生い立ちを話し始めた。


 両親が殺され、姉とも生き別れ、その姉と再会するためにひたすら自身を鍛えたらしい。

 ちなみに、クルルシアさんに聞いたら誤魔化された。


 彼らが王都に向けて再び旅立ったあとも私は彼のことが忘れられなかった。


 どうやったら、私も彼らについて行けるくらい強くなれるのだろうか……。


 布団の中で考える日々が続いた。


 そしてある日、声が聞こえた。


『力が欲しいのですね』


 私の意識は暗転し……

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ