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道に咲く華  作者: おの はるか
我、正義の道を執行す
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過去・勇者編 リナの語り

「貴様が……魔王だと!?」


 問いながらユウヤは腰の剣に手を伸ばす。そして、その瞬間体が固まった。


「ユウヤ?! 【解除(ディスペル)】!」


 突然動きの止まったユウヤにセナが視線を走らせる。【金縛り】の魔法が使われていると判断したセナは解呪の魔法を唱える……が、


「小娘よ、その程度で私の呪いは解けませんよ」


 席に着いていたショートヘアの赤髪を持つ赤目の女性がセナに言う。その口元からは長い八重歯がのぞく。


「きゅ、吸血鬼?!」


 その風貌からセナはそう判断。今度はセナの方が【天使の断罪】をその女性に向かって放とうとするが、


 カプリ、という可愛らしい音と共にセナの首もとに激痛が走る。


「え?」


 みるみるうちに体中の力が抜けて、ついには自重すら支えられなくなったセナは床に倒れる。その視界に映ったのは一匹の蜘蛛。


「これで大人しくなりましたか?」


 声のする方を見ると、八角形の机の一辺、白髪白装の女性が座っていた。だが、やはり人ではない。目の数は八つもあり背中にも蜘蛛の脚が幾つか生えている。


「ぎゃーはっはっは! まじかよこいつら! この状況でまだ抵抗するのかよ!」

「ガリドルア、少し落ち着きなさい。彼らに洗脳の魔法がかかっているのだから仕方ないことよ」


 魔王と名乗った女性が真っ黒な怪物に注意する。


「さて、まずは洗脳から解いていくべきだが……リナ、頼めるか」

「承知しました。魔王様」


 その時になってようやくユウヤ達は城から逃げたリナがこの場所にいることに気付く。


「リ、リナ?!なんでお前がここに!」

「詳しいことは後で話す。とりあえず今は」


 リナは三人に手を向け、


「おやすみなさい」


 三人は再び意識を失った。


〇〇〇


「あれ……もしかして私のお母さん……?」

「その隣に座っているのはシャルさんのお父さんじゃ……」

「魔王の腹心ってのは前にシャルから聞いたけど両親ともにだったのか」

「けけ! 似てるじゃねえか」


〇〇〇


「起きなさい」


 水を頭にかぶせられた感触でユウヤは目を覚ます。


「うわ!?」


 場所は再び牢と思われる洞窟の中。だが、先ほどと違うのはユウヤの手足は全て鉄鎖につながれ、自由に動けないという点である。

 そんなユウヤを目の前から見つめるのはリナ。手には大きな魔法陣、恐らくそこから魔法でユウヤに水をぶつけたのだろう。


「リナ……お前、一体何をしているんだ」


 混乱が収まったのか、ユウヤはリナに問う。だが、帰ってきたのは怒りの声だった。


「何をしているか? 言っておくけどあなたたちこそ何をしているの?」

「え? 俺たちは魔王を倒して……」

「あなた……本気で言ってるの……ってそっか。皆洗脳されてたものね」

「洗脳?」


 物騒な言葉にユウヤは戸惑う。


「じゃあ、聞くけど魔王のことどう思ってる?」

「世界の敵だ!」

「何で?」

「なんでってそれは……」


 だが、そこでユウヤの声は止まる。理由が出てこない。考えても、考えても自分が何故魔王を世界の敵などと評したのかがわからない。


「うん、そういうこと。私達異世界勇者は【洗脳】の魔法で魔王や魔族を敵と判断させられていた。私はもらったジョブが【叡智者】だったからその洗脳があっても状況をおかしいと考えることができたけどね」


 そういってリナは床に腰を下ろす。しばらく居座るつもりらしい。


「だ、だけど、魔王が悪い奴ってのは本当じゃないのか! 魔族が悪さしているという話はたくさん聞いてきたぞ」

「それも誤解だ。さて、まずは何から話そうか」


 目を閉じ、腕組をしながら考え始めるリナ。

 そして目を開くと、


「うん、まずは魔王の目的からかな。彼女の目的は世界平和、人と魔族の争いをなくすことさ」


「は?!」


 あまりの衝撃にユウヤは面食らう。リナは続ける。まくしたてる。


〇〇〇


「言っておくが魔王様が本気で人族を滅ぼそうとしたら多分一週間もかからない。一国一国に彼女の最大の攻撃魔法でも打ち込めば話は済む」


「先代の魔王は人族を憎んでいたから戦争をしていたそうだが、彼は数十年前に今の魔王様に滅ぼされた」


「代替わりをしてから、彼女はいろいろと動いたそうだ。人と魔族の戦いを止めるためにね」


「しかし、どういうわけか、いくらこちら側が停戦や講和を持ちかけても王国連は全く取り合わない」


「いや、それどころか、こちらの使者はほとんど帰ってくることはなかった」


「現状としては手詰まりだね。人側の要求が全く分からない。交渉ができればいいのだがそれすらさせてもらえない状況だ」


「そうそう、君たちが龍に連れ去られたと思っている少女はこちらの方で保護している、といってもここにはいないけどね。孤児や捨て子なら何人か私の経営する孤児院でも保護しているが彼女は例外すぎた」


「話を戻そう。現状、魔王側は人族に、すなわち王国連に対して幾度となく休戦、講和、停戦を持ちかけたが全て無視されている状況だ。理由は複数考えられているけれど一番厄介極まりないのは次のやつだ」


「人側に魔王と戦うことを目的とした集団、それも権力だけじゃなくて戦力も持ち合わせている可能性のある集団」


「最初は過去に召喚された勇者の可能性も考えられた。だが、どうもおかしかった。彼等全員を日夜見張ってもそれらしい動きは一切なされていない」


「よって答えは一つ。転移者でなく、なおかつ魔族を敵視し、それなりの戦闘力を持つ、そんな集団がいる」


「できればどうにかしたい。だが、その存在が全く掴めない以上打倒も難しい」


「まあ、こちらの状況はそんなところか……そうそう、今回のように洗脳された勇者達を正常な状態に戻そう、という試みも始まったばかりだ。おめでとう、君達はその第一被験者だ」


〇〇〇


「そ、そんな……」


 突然詰め込まれた情報量に、そして常識が一瞬で覆ったことにユウヤは狼狽する。悪意も感知できない。だが、深呼吸をして心を落ち着けると口を開く。


「リナ、俺は何をすればいい?」

「うん、ユウヤならそう言ってくれると思っていたよ」


 満足げな笑みを浮かべ、リナはそれに答える。


「君達には勇者パーティーの説得にあたって欲しい。一昨年召喚された勇者の中では君達が一番強いだろう。この城まで連れ帰ってくれると助かる」



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