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道に咲く華 作者:おの はるか

我、正義の道を執行す

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戦いの狼煙編 第二戦・極限の追跡者

「確かに……あいつらなんでこの家から転移しなかったんだ……まさか」

 ジギタリスとエーデルワイスが部屋から出ていった後、家に残されたソルトはその答えを思いつく。

「わが身を清めよ。光魔法【滅毒】」

 その瞬間、視界が一新される。無自覚の中で白い靄が見えていた彼の視界に明瞭な色が戻り、彼の気配探知も正確に働き始める。

「くっ……まさかジギのやつ、麻痺毒に神経毒まで」
「ソルト? どうしたの?」

 ソルトに声をかけるシャルだったがその目はうつろだ。彼は自分にかけた魔法をシャルにもかける。

「かふっ! こ、これって?」
「ジギのやつ、俺が悪意を含まなければ警戒しないのを利用して毒を盛りやがった」
「な、何のために?!」
「異世界勇者らしき気配が近くからするな……。多分これを一人で片付けようとしたんだろ」

 そう断じるとソルトはいつの間にか床に落としていた刀を拾い上げながら近くの気配を確認する。

「さて、ジギもエーデも帰ったか。それに……ああ、これはもうだめだな」
「な、なにがあったの?」
「多分ジギの毒を食らったんだろう。異世界勇者達の気配がどんどん薄れていってる。死ぬのは時間の問題だな」
「た、助ける?」
「無理だ。ジギの毒はジギしか治せない。神届物(ギフト)とかなら何とか可能性(・・・)があるっていうくらいだ。それに……」
「それに?」
「今はそれどころじゃない。シャル。逃げる準備をしとけ」

 ざりっざりっと足音が近づいてくる。

「結界を抜けていたのは異世界勇者だけじゃない」

 足音が止まる、そして玄関の前に立っていたのは……

「やっほー。久しぶり。ソーちゃん」

 一時期は自分が探していた(プレア)であった。そして今はその逆の立場である。

〇〇〇

「お姉ちゃん。久しぶりだな」
「そうだね。王都の時からもう二か月くらい?」

 もとは黒色だが、今ではすっかり白く染まった髪を弄りながらプレアガ家に入ってくる。

「懐かしいね……何年ぶりだろう。この家に帰ってくるの。十年ぶりかな」

 ほんわかとした空気のを放ちながらプレアは部屋に入ってくる。壊れた棚や椅子に視線を飛ばしながら一歩一歩を踏みしめるようにソルトたちに近づいていく。

「プレアさん、止まってください。思い出話しに来たわけじゃないでしょう」

 近づいてくるプレアをシャルは魔法陣を浮かべて牽制する。

「ふふ、ばれちゃった? でも、要件なら二人が一番よく分かってるんじゃないかな? 【魔王の右足】、それと聖剣を私たちに頂戴」
「なんでだ。俺の母親だからか?」
「そうだよ。私のお母さんは死んだけどソーちゃんのお母さんはまだ希望がある。その希望が残っている限りは彼女に、君を合わせたい」
「そうか……」
「ソ、ソルト?!」

 シャルがソルトが同意したのかと思い、焦る。
 ソルトはプレアの心から悪意を感じていない。そして彼女はクルルシアの【伝達】魔法対策の腕輪も付けていない。このことから彼はプレアが嘘をついていないと判断する。

 そしてとくに反論してこなかったことを肯定と受け取ったプレアはまた一歩踏み出そうとして、

「止まれ!」

 ソルトの大声に全身を身を強張らせた。

「ソ、ソーちゃん?」

 プレアが少しおびえたように尋ねる。

「お姉ちゃんの気持ちはわかった。というか俺のためにずっと動いてくれてたのも知ってる。たくさんの人を巻き込んだのも納得はできないけど理解はできる」
「な、なら」
「でもそれなら! なんでほかのやつらは危険を冒してまでお姉ちゃんに協力してるんだ! その考えに賛同してるって言うのか?」
「!」

 シャルもその言葉にハッとする。そして、

「説得失敗。作戦二に移行」

 家の壁が玄関以外の三方向から破壊され、

「【悪魔喰い(デーモンイーター)】団員ナンバー二、サクラス・トール。参る」

 ソルトとシャルの後ろの壁からは一人の青年が、

「【悪魔喰い(デーモンイーター)】団員ナンバー四、アクア・パーラ。見参」

 二人の右からは双剣の猫耳少女が、

「【悪魔喰い(デーモンイーター)】団員ナンバー七、チェリシュ・ディベルテンテ。作戦開始」

 左からは黒衣の少女が、

 三人が一斉にとびかかってきた。

〇〇〇

「シャル! 逃げろ!」

 三人が現れた直後、ソルトは素早く判断。その指示を受けて彼女は全身を蝙蝠に変え、二階の割れた窓から逃げる。

「パターン三!」

 アクアが耳で蝙蝠の位置を音響定位しながらほかの【悪魔喰い】に指示を飛ばす。一瞬のうちに一組の男女が家から飛び出ていき、家は再び三人になった。

「くそ!」

 シャルが追われたにも関わらず、ソルトは動けない。なぜなら目の前にも二人、元SS級冒険者がいるから。

「行かせないわよ。ソルト君」

 十四歳という小さな少女の体のどこからそんな気迫が出せるのかチェリシュの纏うのは強者の空気だ。刀を握る手が汗で湿るのを感じながらソルトは尋ねる。

「パターン三って何のことだ」

 即座にアクアがシャルを追いかけていたことに疑問を抱くソルト。

「簡単よ。もともと予測してた一つだっただけ。二人がここに残ればこの場所に聖剣も右足もあるだろうし、二人揃って逃げたのであれば他の場所に保管されている。そしてシャルちゃんだけが逃げた場合」

 言葉を切るチェリシュ。

「シャルちゃんの体の中に保管されている。どう? 当たっているかしら? まあ、番外一つでソルト君だけが逃げるっていうパターンもあったけど」

「ちっ!」

 刀に手をかけ、シャルの飛んでいった方向に駆けるソルト。

「凍れ、渦巻け! その冷気を身に焼き付けろ! 【空凍絶壁】」

 プレアの詠唱。ソルトの進む先を遮るように出来上がる氷の壁。そして追撃は続く。

神届物(ギフト)幽霊武器(ファントムウェポン)不殺(ころさず)の弓】!」

 チェリシュの放った半透明の矢が分裂、幾筋もの槍となって退路をふさがれたソルトに襲い掛かる。

「当たる……もんか!」

 雨あられと追加されていく矢の雨をソルトは器用な身のこなしで躱していく。

「なっ?!」
「!? チェリシュ!」

 プレアが警告するが、その時すでにソルトはチェリシュの目前まで迫り、刀の峰で突き飛ばす。

「くっ!」
「【爆滅死蝶】!」

 一瞬反応が遅れたプレアだが、即座に無詠唱で数十羽に及ぶ蝶を生み出す。それらはソルトの周囲を囲み、

「爆!」

 爆ぜる。一撃一撃は重くないが爆発に伴う閃光がソルトの目を焼き尽くす。

「ぐっ!」

 呻くソルト。そしてその一瞬の隙をつき、突き飛ばされたチェリシュの攻撃が降りかかる。

神届物(ギフト)【幽霊武器・殺さずの槍】!」

 その投槍の速度は軽く音速を超え、ソルトの腹を貫通した。

〇〇〇

「ちょっと!! なんで迷わずに私を追いかけてきてるの!?」 

 家から出ると蝙蝠と化した体を元に戻し、【身体強化】にて戦線を離脱するべく逃走を開始する。二人きりの時に誰かに襲われたときはもとからこうすると二人の間で決めていた。だが、

「待って!! 本当になんであの二人引っかからないの?!」

 いくら【幻覚】の魔法や【誘導】、【変化】の魔法を使っても必ず追跡者である二人はシャルの通った通路を突き止め、そして確実に距離を詰めてくる。

 シャルだけなら逃げやすい、というソルトと考えた作戦が根底から覆されそうとしているのであった。

〇〇〇

「サクラス、確実に捕まえるわよ」
「分かってるよ。じゃないといつになっても終わらねえ」
「そうね。【悪魔の目】、発動」
「【悪魔の耳】、発動」

 家から出た瞬間、追跡者アクアとサクラスは自身のもつ能力を開放。アクアの目が怪し気に光り、サクラスという男の耳には魔力が集まる。

 確実にプレアを捕獲するためだ。

「サクラス! 三十メートル前に罠!」

 空中や地面に仕掛けた攻撃魔法はアクアが【目】で見て躱し、

「アクア、三時の方向、ほかは全て幻覚だ。足音が軽い」

 シャルが作り出した偽物は即座に看破される。

「見えた! 神届物【疾風怒濤(シュトルム・ウント・ドラング)】」
「な?!」

 そしてアクアはシャルが見えると爆発的に速度を挙げて彼女の前に回り込む。

「追いかけっこはおしまいだな」

 後ろからはサクラスが追い付いた。

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