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道に咲く華  作者: おの はるか
我、正義の道を執行す
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過去・勇者編 ユウヤという名の勇者

「王歴八十三年、七の月、一日」


 エーデの声が響くと同時にソルトたちの目の前に見たこともない景色が広がり始める。


「ここは?」


 シャルが呟く。


 目の前に広がったのは煌びやかな一室。最奥の大きな椅子に男が座りそれを取り囲むように騎士の服装をした男たちが後ろに控えている。


 彼らの視線の先にあるのは同じ服装に身を包んだ少年少女。


「エーデの能力は遺品の持ち主と関係あるものを見る能力だ。だからこれは母様に関係ある記憶ってことだ」


 ソルトが答える。


 その時椅子に座っていた男が声を上げた。


「異世界からやってきた少年少女よ。私はシャルトラッハ王国三代目国王だ。此度、魔王を倒すために貴様らは選ばれた。その名誉を誇りに思うがいい」


 国王が発した言葉の内容に子供たちは動揺する。


「選ばれたってどういうことですか! 説明してください!」


 生徒の中から一人の少年が前に出る。


「そのままである。諸君らはこのシャルトラッハ王国を守護するためにこの国に召喚されたのだ。勿論衣食住はこちらで準備させよう。ほしいものがあれば何でも言うがよい。好きなだけ……」


「そういうことを言ってるんじゃありません! ここはどこですか? 守るって何からですか!」


 少年が口にすると後ろに控えていた子供たちも一斉に騒ぎ立てる。このままではらちが明かないと考えた国王はある名前を口にする。


「エイスケ! エイスケはいるか!」


「はい、こちらに」


 玉座の間の扉が開かれ、一人の壮年が部屋に入ってくる。突然の新たな男の登場に子供たちは戸惑い、一瞬の静寂が訪れる。


 その隙を見逃さずにエイスケと呼ばれた男は言葉をはさむ。


「諸君、突然のことで混乱も激しいと思うがとりあえず、ごはんにしないか」


 子供たちは顔を見合わせながらも頷くのであった。


〇〇〇


「というわけだ。今この国は魔王、さらには魔族の侵攻による脅威にさらされている。私達二十年前に召喚された異世界勇者が前線で戦っているとはいえ苦しい状況だった。そこで国王様は再び異世界召喚を行い、戦力を増やそうとしたわけだ。どうだ、協力してくれないか」


 エイスケと名乗った男が状況を簡単に説明する。その説明が進むたびに人族がどれだけ危険な状況にあるのかを説明され、困惑するのであった。


「し、しかしエイスケさん。俺たちは普通の学生です。そんな戦いで役に立てるとは……」

「いや、それは違う。君たちには力が与えられているはずだ。それを今から見てもらう」


 そういって少年少女全員に水晶玉を持たせるエイスケ。すると手に持った子供が声を上げ始める。


「うお! 剣豪? なんだこれ!」

「う、占い師?」

「お、俺は忍者って出たぞ」


「そう、それが君たちに与えられた力だ。この世界に住む住人に比べて圧倒的な力をふるうことができるだろう。どうかその力をこの国の人のために使っていただきたい」


「わかりました……俺たちで良ければ戦わせていただきます!」


 その答えを言ったのは先ほど国王に異議を申した少年。


「ありがとう。ほかのみんなもそれでいいのかな?」


 エイスケが確認する。彼を見つめる顔はいずれも決意を宿し、こくりとうなずいた。


「ありがとう。信じていたぞ。では今日は各自与えられた部屋で休んでくれ」


 そういってエイスケは席を立つ。子供たちもご飯をため終わるとそれぞれ騎士に案内されていくのであった。


〇〇〇


「これは……どうやら二十年前の異世界勇者の召喚の様子みたいだな」

「俺様の記憶が正しければそんなかにお兄様のお姉さまのお母様がいるんだったか」


 ソルトが状況を分析し、ジギタリスも感想を述べる。


「王歴八十三年、七の月、八日」


 そしてエーデの言葉を合図に視界は移り変わり、今度は狭い一室に。中にいたのは三人の男女。


「ユウヤ、本当に協力するの?」

「あ、そのつもりだよ。俺たちにしかできないみたいだからな。俺たちがやらなきゃならない」

「私は反対だね。怪しすぎる。細かい被害も聞いてないし……何より情報が少なすぎる」

「リナ……お前が賢いのは認めるけどさ……それでも非情すぎないか」

「何を言っているの? 私は判断を保留にしただけよ!」

「二人とも落ち着いて! 今は喧嘩してる場合じゃないよ!」

「セナ……」


 椅子に座り口喧嘩する男女二人に、それをなだめる少女が一人。


「言いたいことはこれだけよ。私は逃げるからね」


 そういって一人の少女が窓に手をかける。手に持っているのはカーテンをつなぎ合わせたロープ状のもの。窓から逃げるつもりらしい。

 そして数舜のうちに窓から地上に降りていく。


「ユウヤ、止めなくていいの?」

「リナだぜ……止めても無駄だ。俺たちにできるのはまた会えることを祈るくらいだな」


 その時部屋の世がノックされる。


「失礼します。リナ様、セナ様、ユウヤ様はいらっしゃるでしょうか? 訓練の時間となりましたのでお呼びに参りました」


 その声に気まずそうに少女が少年の方を見る。


「あ、ジャンさんも来ちゃった……どうするの、お兄ちゃん、リナ、行っちゃったこと言う?」

「隠してもすぐばれるからね……言ってしまおう。どうぞ。入ってきていいですよ」


 その言葉を受けて一人の青年が部屋に入ってくる。


「あれ? リナ様はどちらに……?」

「あいつは……逃げましたね……」

「へ? 逃げた!?」


 その言葉に愕然とする青年。


「すみません、ジャンさん。彼女、一度決めてしまうと突っ走ってしまいまして」

「それは……なんとも……今すぐ王宮の方で捜索の願いを出しましょうか?」


 ジャンと呼ばれた青年は驚きながらもユウヤと呼ばれた少年に尋ねる。


「いえ、大丈夫です。彼女なら生きていけるので」

「たしか【智慧者】のジョブでしたよね。ここで鍛えれば【大司教】や【神託者】になれたでしょうに」

「もともと彼女は団体行動が苦手ですからね……仕方ありません。僕たちだけでも立派な勇者パーティーの一つとして頑張っていく所存ですので……」


〇〇〇


「なあ、さっきの……」

「そうだね。リナ母様だった。かなり若いけど」

「あれが孤児院のリナさん?」

「そうだぜ! 間違いないぜ! あれがリナ母様だ」

「それにもう一人の女の人……母様か?」


〇〇〇

「王歴八十四年、一の月、十三日」


 再び場面が変わる。訓練場か何かだろうか。剣を持った複数人が互いに戦闘を行っていた。


「えい! やあ!」

「その調子です!」


 先ほどの少年が刃を潰した金属剣で騎士に切りかかる。


「しかしユウヤ様。身体強化無しで私と張り合えるようになるとは……さすがは勇者様ですな」


 その言葉には素直な尊敬の気持ちが込められていた。声の主はジャンだ。

 ユウヤも言葉を返す。


「ジャンさんのおかげですよ。俺がここまで強くなれたのは」


 言葉をかけあいながらも二人の男はひたすら剣をふるいながら舞う。


 そしてその横ではローブに身を包んだ男が少女と魔法を撃ちっていた。


「さあ! まだまだ速度を上げますよ! ついてこれますか?」

「はい! いけます!」


 少女がそう言うとさらに魔法を打ち合うスピードが上がる。


「流石【魔法使い】のジョブですな! いやはや、私をすでに超えているとは」

「いえ、エイスケさんのジョブが【魔法使い】じゃないんですから仕方ありませんよ」


 そういうと息一つ乱れていない少女。そこにジャンが鎧を脱いで声をかける。


「皆さん強くなりましたな。ほかのパーティーと比べて人数少なかったので不安でしたがこれなら問題ないでしょう。私たちも一週間後、王都を出て魔王、ひいては魔族の討伐に向かいましょう!」


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