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道に咲く華  作者: おの はるか
我、正義の道を執行す
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異世界勇者編 少女の正体

「なんだこれ」

「お、おいしそ~」

「俺、こんなうまそうなもんみたことねえよ」

「な、なんでこんなところにハンバーグが……」


 質素な部屋、その中央に鎮座するのは似つかわしくないほど豪勢な肉料理だった。ハンバーグをはじめ異世界勇者になじみの深い料理もいくつかある。


「それおいしそうでしょ~。ちっちゃいころにお兄ちゃんが作ってくれたんだ。あ、でも新鮮なお肉じゃなくてごめんね。一回干したやつをまた水魔法で水分与えたりしたから味はちょっと落ちてるかも」


 ニコニコと笑顔を浮かべながら厨房から出てくる青髪の少女。


 現在少年たちは出迎えた少女にご馳走を作ってもらっていたのであった。

 クルルシアだけは席にはつかずご馳走に目を向けながらも少女に対して警戒を解かずに質問する。


『ねえ、いろいろと聞きたいことがあるのだけれど』

「クルルシアさん! あとでいいじゃないですか! 早く食べましょうよ」


 腹をすかせたのか、それとも慣れぬ空旅で疲れたのかダイが椅子に座りクルルシアの返事を待つ。他の三人の少年もすでに椅子に座り料理から目を離さない。


 遮られたクルルシアは少しいらだったようにしながらも、少年たちにだけ【伝達】魔法を発動する。


『君たちは先に食べてていいから少し邪魔しないでおくれ。どうしても確認しなければならないことがある』

「よし、いただきます!」

「お。おいダイ、いいのかよ」

「いいじゃねえか、クルルシアさんも許可は出したし、そもそもトーナさんが良いって言ったんだぜ」


 そう言うやダイは木製のナイフとフォークでハンバーグを切り出す。ちなみにナイフやフォークは昔にこの世界に来た地球人によって既に広がっている。

 また、トーナというのはこの家でクルルシア達を迎え入れた青髪少女の名前だ。自己紹介も早々に切り上げ、疲れた様子をくみ取ったのか少年たちを椅子に座らせご馳走を作り出したのであった。


「お肉はおいしいからね~、どんどん食べるといいよ」


 そう言ってどんどん皿を運んでくる青髪少女トーナ。

 クルルシアは今度は邪魔されないように少女だけに【伝達】魔法で接触を図る。


『ねえ、この村や近辺でなにがあったの? あなた以外に村人が見つからないし、人のいる気配もないのだけれど』

「ああー、それね……言わなきゃダメ?」


 なにか都合が悪いのか、それとも言いづらいことなのか、頭を掻きながらクルルシアから顔をそむける少女。


『うん、言ってもらう。これでも私は国から正式な任務を負ってこの村に寄らせてもらった』


 実際にはそんな指令は出ていないが答えを引き出すためクルルシアは嘘をつく。

 普通ならこの時点で心を読み取り一気に答えも知れるのだがなぜかこの少女の心は変わらず『お肉お肉』という感情しか伝わってこないためだ。


「……じゃった」

『ん? 今なんて……』

「大雨でご飯が全部ダメになっちゃって……死んじゃった。みんなみんな。ごはんがなくて、食べられなくて」

『何だって?!』


 突然の少女の告白。クルルシアもその答えは予想していなかったのか目を丸くする。だが、驚いたのは彼女だけではない。食事中だった四人もその重い事実に困惑する。


 だが、少年たちの中でも【名探偵】のジョブを持っているカイトだけは違和感を覚える。


「あの……お話し中すみません。村の人が飢饉でお亡くなりになったのですよね?」

「うん、そうだよ」

「ではあなたは一体どうして生きているんですか?」


 その言葉に少女の動きは止まる。その目に怪しく狂気を孕ませながら少年たちの方を向いて答える。


「なにって? お肉をたべたからだよ?」


 その言葉に違和感をさらに強めるカイト。


「肉があるのに……ほかの皆さんは食べなかったんですか?」


 ここに肉が山のようにあるのだから「飢饉で死んだ」という証言がどうしても納得いかないのだろう。少女トーナの返答を待つが、


「うん、そうなんだよ。私がせっかく準備しても誰も食べてくれなかったんだ」


 少女が悲しそうに答える。カイト以外の三人も食事の手を止め、同情的な目線を送る。


『悲しいことを思い出させてしまったようですまない。大体の事情はまた後で聞かせえてもらうことになるかもしれないがあとこれだけは今聞かせてくれ』

「大丈夫だよ。悲しいけど私がお肉を独り占めでき」

『兵がいたはずだ。彼らはどうした』


 少女の言葉を遮りクルルシアは問う。何故か戦闘姿勢をとりながら。


「え? 兵? あの体がおっきな人たちかな?」

『そうだ。飢饉などとなればすぐに行動は起こせなくても王都に連絡ぐらいは……』

「クルルシアさん? どうしたんですか?」


 そこまで言ってクルルシアの念話が止まる。リュウヤが不思議そうにクルルシアの顔を眺めるがそこにあったのは戸惑いの色だった。

 トーナも不思議そうにクルルシアに目線を送る。


「何が聞きたいの?」

『……トーナさん、あなた、肉を食べて生き残ったっていったわね……。どっから取ってきたの?』

「どっからって? 普通にだよ?」

『そう、なら質問を変える。この肉は何の肉?』


 机に広げられ、今まさに少年たちが食べていた肉を指さし、クルルシアは確信に満ちた声で少女に問う。


 そしてカイトもクルルシアと同じ結論にたどり着いたのか顔を青くする。


 そして残虐で血みどろな回答が返された。


「何の肉って? 普通に人のお肉だよ?」


 クルルシアの頭に少女の『お肉お肉』という言葉が響き続ける。その視線は少年たちに向けられていた。


〇〇〇


「お、おえええええええ」


 何を食べているか気づいたカイトが口の中に残っていたものを吐き出す。続いてほかの三人も。


「ああ!! なんてことを!! せっかく貴重な傷んでない部分を使ったのに!」


 少女が慌てて少年たちに近づこうとするがクルルシアがそれを止める。


『近づくな』

「な、なんで?! お肉が大きくならないじゃない!」


 ぶっ飛んだ発言を続ける彼女にクルルシアは確信する。この子は普通ではない、と。

 そして同時に少年たちに指令を出す。


『君たち! 下がっていろよ!』

「逃げちゃダメ! 神届物ギフト【我、……】」

『雷龍魔法【黒雷反槍】』


 少女が何かを唱え終わる前にクルルシアの手から黒い稲妻を帯びた槍が射出される。高速で、しかも至近距離から発射されたそれを少女は躱せず、直接腹に食らう。


 そして家の壁まで吹き飛ばされるが依然、クルルシアの作った槍の雷は消えず、さらなる圧力を少女に与え続け、ついには壁を突き破って夜空に打ち上げられる。

 

 だが、クルルシアの攻撃はそこで終わらない。空に打ち上げられた少女に更なる追い打ちをかける。


『雷龍魔法【雲雷豪雨】!


 光り輝く雷の球を右手に持ち、それを少女に向かってかざす。

 すると幾筋もの雷が少女に向かって走る。


 そして少女が家に戻ってくることはなかった。


〇〇〇


『全員! 急いでこの村から離れるよ』

「は、はい」


 先程のショックから立ち直れないのか少年達は頼りない足取りで家の外を目指す。


『皆、急いで。かなり遠くに吹き飛ばしたけれどもし彼女が【暴食の使徒】ならあれくらいじゃ死んでくれない!』

「暴食……? 七つの大罪ですか……?」


 気持ち悪そうにしながらカイトが辛うじて反応する。


『あれ? この情報も知らされてないのか……まあいい。そこはいつか教えるよ。ジャヌ! 貴方は孤児院に行ってこの村の状況を伝えて』

「了解した」


 クルルシアが指令を出した直後、彼女の影から現れる黄色の龍。翼を広げクルルシアの命令通り孤児院の方向に飛んでいく。


「あの……もう龍には乗らないんですか?」


 ユウが不思議そうに聞く。


『ああ、乗らない。それどころじゃない。今はこの現状を伝えるのが先だ。ここに使徒がいたということは……いや、待て……まさか自然に生まれたのか……そうなると……』

「あの……クルルシアさん?」

『ああ、すまない、少し考え事を。さて皆、龍に乗らないといったが……』

「言ったが?」

『今度は私に乗ってもらおう。このまま王都に直行だ。勿論変なところを触ったらその瞬間叩き落すけどね』


〇〇〇


「あいたたたたた……。ここはどこだろ……。お肉あるかな……」


 数刻後、クルルシアから遠く離れた場所で少女は目を覚ます。


 目の前には魔物の群れ。空から降ってきた彼女を珍し気に眺めているのはゴブリンやオーク。いや、眺めていたというよりあっけにとられていたという方が正しいだろう。


 そしてその一瞬の隙がいけなかった。少女は目の前の生物をその狂気を孕んだ目で「お肉の塊」と認識する。


 血の晩餐が始まった。


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