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道に咲く華  作者: おの はるか
私は博愛の道に夢を見る
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学園騒乱編 決戦の始まり

「犯人はアルヴァさんと思われます」


 防音の結界が張られた中でソルトは言った。


「アルヴァさんって、生徒会の?」


 シャルは戸惑いつつ確認し、ソルトはそれに応じる。


「そうだ。それなら俺の【悪意感知】に引っかからない。俺のは人間の悪意しか感じ取れないからな。彼女みたいな人工物の悪意は感じ取れない」

「アルヴァだと?! しかし、それならクルルシアが感じ取れなかったのはどういうことだ。彼女の【伝達】魔法は意思を持つ者が相手ならば発動するはずだ。アルヴァのように、ゴーレムであろうと意思思考がある限り……」

「それについてですがクル姉は最初、アルヴァさんと通じなかったそうです」

「何だって!? それはどういうことだ。聞いていないぞ!」

「聞いてないのは恐らくクル姉が言うことを忘れていたか、そういうものだと考えていたのでしょう。そしてこっからは俺の推測ですが、彼女はゴーレムではないのでは?」

「それはどういうことです? 彼女の体が生身ではないことは間違いありませんよ」


 ソフィアもアルヴァがゴーレムでないというソルトの発言に困惑する。だが、ソルトは慌てずに、説明していく。


「そこについてですが誰かが遠隔操作をしている可能性はないでしょうか? それならば意思思考を持つ相手がクル姉の【伝達】魔法の範囲外にいたとすれば納得できます。もっとも、その場合は操作主が物凄い距離をクル姉から離れていることが最低条件になりますが」


「そんな距離で人形を操れる人なんているわけが……」

「いや、いる」


 ソフィアの言葉を遮ってレイが断言する。


「冒険者のギルドにいたはずだ。人形使いの冒険者が。名前は確かマドルガータ・ジオイア」


 その時だった。


「失礼……します」


 突如部屋の扉が開き、一人の少女が現れる。ぼそぼそとした声だったが不思議とはっきりと聞き取れた声だった。


「防音結界は?!」

「誰だ!?」


 突然の乱入者に身構える四人。しかし少女は攻撃する様子も見せずに静かに続ける。


「結界なんて……私の前では……いえ……それよりも邪魔を……しないでいただけたら……いいんです……二人の夢なんです」


「邪魔だと?」


 不思議な雰囲気に飲まれる四人。ソルトが聞き返す。


「そう……魔王様を……復活させる邪魔を……」


 その瞬間、少女の手が怪しく光る。ソルトとシャルは即座に攻撃魔法と判断し魔法障壁を張る。だが、


「残念……これ……攻撃じゃない。神届物(ギフト)希望は(ホープ・イズ・)世界の(アトジエンド・)果てに(オブ・ザ・ワールド)】」


 次の瞬間、部屋全体が結界に包まれた。


〇〇〇


「不味い!! やられた!」

「結界かよ!」


 瞬時に状況を理解する四人。外の音が消え、外界から隔絶されたことを理解し、攻撃魔法だと思っていたソルトは突っ込む。


「学長、不味い、というのはどういうことですか」


 そんな中、シャルはレイの発言に違和感を覚えた。不味い、と言う言葉から閉じ込められたこと以外にも何かあるのかと考える。レイはしまった、と言う顔をしながらも答える。


「仕方ないか……君達、【勇者殺し】の犯人の目的は知っているかね」

「魔王を復活させることですよね? 父がよく異世界勇者様と話していました」


 答えたのはソフィアだ。


「そうだ。そしてその魔王復活のために必要な手順は知っているかね?」

「いえ……そこまでは……」

「単純だ。今、分割されて封印されている魔王の体を集めればいい」

「それが今の状況に関係あるんですか?」

「ああ、どうやら相手側の準備が揃ってしまったらしい。私が外界から隔絶されたのがいい証拠だ」

「どういうことですか」


 ソルトが問いただす。


「私は神届物(ギフト)の力の一部を使って、学園のある場所を守っている。だが、現在、その守りはなくなったと言っても良いだろう」

「ある場所?」


「学園の地下遺跡だ。そこに魔王の右腕が封印されていている」


〇〇〇


「学園の地下に?!」

「ああ、そうだ。もっとも、今はそこに力を使っているせいでかなり神届物の力が制限されてしまっているがな。【占い】が一人あたり、一か月に一度しか使えないのはそのためだ」


「では、この結界はまさか!」


 だんだん事情を理解したソフィア。レイが続ける。


「ああ、魔王の右腕を奪取するため、私の力を封じたのだろう」

「それなら、この結界の破壊は急いだ方がいいのでは?」

「ソフィア、落ち着きなさい。仮に【勇者殺し】が【神業師】マドルガータであるならば、この結界を張った先ほどの少女は同じクランに所属する【結界姫】ミネルヴァ・アルトリアのものだ。そう簡単には」

「解析終わりました!」


 さっきまでずっと黙っていたシャルが声をあげる。


「な!? 早すぎる! 相手は結界のスペシャリストだぞ」

「シャル! やってくれると思ってたぞ」

「ソルト! あの側面を!」

「分かった!」


 謎の連携を見せる二人。二人はソフィアを守りつつ迷宮を攻略すること三週間。互いの得意不得意はほぼ把握しているのであった。

 返事をしてからソルトは得物である剣を抜き、魔力で覆う。


「奥義【骨断】」


 結界は破られた。


〇〇〇


 カツカツと階段を降りる音がする。一人の少女が階段をひたすら下り続ける。

 しかし、その少女が暫く地下に潜ったところで結界に阻まれる。


「ふむ……こればっかりはミネルヴァ待ちですかね」


 その言葉の直後、行く手を阻んでいた結界が消える。


「あら、仕事が早いですね。流石です。しかし、クルルシアに会いません……。ここにいるものと思っていましたが……」

『ふぁ?! 寝てたよ! マドルガータちゃん来てたの?!』

「無視しても良さそうですね……」


 その声に反応したのか通路の脇道から声が上がり、クルルシアが顔を出す。

 だがマドルガータはそのまま結界の向こうに進む。その進路を遮るようにクルルシアが後ろから回り込んだ。


『ちょっと待ったー! 無視しないでよ! 私のこと知ってるでしょ!』

「いえ、初対面です」


 取り合わずにクルルシアの横を進もうとする少女。


『そんなこと言わないでよ! アルちゃんを操作してたのはきみでしょ? それなら初対面でも何でもないじゃないか』


 その言葉にようやくマドルガータは立ち止まる。


「そういえば、あなたでしたね? 私の最高傑作に【アルちゃん】などという渾名をつけたのは」

『あれ? 気に入らなかった?』

「彼女には【アルヴァ】という名前があったんです!」

『ありゃりゃ、怒っちゃった』


 マドルガータは地面に両手を添え、幾重もの魔法陣を浮かべる。そこから現れる何十人もの人形。


 学園の地下深く、そこで誰にも知られること無く、SS冒険者同士の戦いが始まったのであった。


 だが、それは魔王の右腕を巡って、という始まりではなかった。


〇〇〇


「おい! そこの者! 止まれ!」

「私?」

「そうだ、お前だ。そのまま動くな。動けば敵対行為として即刻捕縛する!」


 場所は王宮の五門あるうちの二つ目の門前、一人の少女が門に手をかけ、開けようとしたところを二人の門番に止められた。

 一つ目の門までは建国祭が近いこともあり、観光も含めて今は一般人に解放されているのだが二つ目の門以降ではそうではない。


「やっぱり王国軍は緩いね……。こんなところにソーちゃんを置いとくなんて出来ないよ」

「貴様、何を言っている。大人しくもと来た道を」

「対象、目の前の門番、命令【黙って大人しくしていろ】」

「ぐはっ!」

「な、なんだ! これ、は!」


「大丈夫、大人しくしてたら命は取らないから」

「き、貴様! 何者だ」


「【デーモンイーター】団員ナンバー三、アンデルセン・アールツハイト。本名プレア・ダンス。魔王の左腕を頂きに参上」



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