学園騒乱編 兆し
迷宮から帰って一週間ほど経った日のこと。怪我も治り、学校に行き始めたソルトとシャルだったが問題が発生した。
「なあ、シャル。こいつら一体何だったんだ?」
「私が知るわけないじゃない」
彼らの足下に転がるのは五人の生徒。
学校の中庭で二人きりで昼食を食べているときだった。授業で習ったことを試してみながらご飯を食べていると、突然五年の少年達が「決闘だ」と怒鳴りながら襲いかかってきたのだ。
勿論瞬殺した(殺してはいない)ソルト達だったが、何故襲われたのかも分からずにただただ混乱しているのであった。
「ま、いっか。昼飯とっとと片づけようぜ」
「そうね」
もともと細かいことは気にしない二人。混乱が収まると五人の少年は放置したまま再び昼ご飯に戻るのであった。
そして放課後、ソルト達は学長室に呼び出された。
〇〇〇
「ああ、ごめんね。どうやら君たち賞金首扱いされているらしいね」
「賞金首?」
場所は学長室、レイから説明を受ける二人組。聞き返したのはソルト。
「ああ、毎年あるんだが、一部の中途半端に強い奴が考えるんだよ。【俺たちは強い、だけど今の自分の学年では勝てない、それは運がなかったからだ、ほかの学年に挑めば勝てる!】ってね。そしてこういうのは大抵二年生に多いね」
「それで、B級の迷宮で倒れた私達なら勝てると踏んで襲ってきたわけですか?」
イライラした様子でシャルが確認をとる。
「まあ、行ってしまえばそういうことだね。悪かった。私から謝らせてもらおう」
「先生、それって学園の風紀的に大丈夫なんですか?」
ソルトが尋ねる。上級生が下級生を襲うなどあっていいこととは思えない。
「ああ、そこは大丈夫だ。一応監視はしているから下級生が怪我をしそうな場合はこちらで介入している」
その言葉に違和感を覚えるソルトとシャル。
「先生? それってつまり」
「ああ、君たちなら特に怪我などしないと思って放置しておいた」
「おいまて!」
ついつい敬語を忘れレイに突っ込むソルト。だが、レイは気にした様子もなくどこ吹く風だ。
「いや、私に責められる覚えはないよ。あらかじめ私たちはきちんとそういう上級生がいることも伝えている。安全面の責任は果たしているつもりだ」
「説明? そんなのなかったですよ!」
「したよ。入学式の当日に」
「うぐ」
「ぎくり」
暗に入学式の比をさぼったことを指摘され何も言えなくなる二人だった。
「うむ、納得してくれたようで何よりだ。そしてだ、今日君たちを呼び出したのはこれとは何の関係もない」
「関係なかったんですか?」
「あれ? てっきりぼこぼこにしたことをとがめられるかと」
「とがめられるかも、と思うくらいなら最初からやめなさい。それよりもこの書類だ」
そういって例が二人に差し出したのは手紙だった。
「なんです? これ」
「依頼だ。入ってきてくれたまえ」
「ハッ! 失礼します」
現れたのは騎士の男。
「えっと……誰です?」
ソルトが多少の軽快を抱きながらも尋ねる。
「王宮近衛騎士三番隊隊長ロルフと申します。この度はお呼びしたのは私です」
「俺たちを?」
「どうしてです?」
ソルトもシャルも疑問しか湧かない。王宮などと関わった記憶は全くないのだから当然だろう。
「君たちの実力を高く評価した国王様からの依頼です。断ってもいいという国王の言葉もありますが」
「断ってもいい? 国王からの依頼を?」
疑問に思うシャルとソルトだったが騎士の言葉は続く。
「お二人の実力を見込んで学園内に潜む【勇者殺し】を探してほしいのです」
「なんで俺たちが? ほかにも強い人ならたくさん」
パット考えるだけでもクルルシアが思い浮かぶソルト。相手の心が読み取れる彼女なら適任と考えたのだが、
「だめです。今年入学した生徒以外はもれなく【勇者殺し】の嫌疑がかかっておりますので」
それをきいた瞬間、一瞬だけソルトの表情に怒りが浮かぶ、すぐに抑えたソルトだったが続く言葉は冷たいものだった。
「断る。シャルもそれでいいな?」
「ええ、いいわ。私勇者あんまり好きじゃないし」
「むむむ、仕方ありませんな。難易度が高いだけに無理強いはできませんからね……。わかりました。お二人の返答は国王様にお伝えさせていただきます」
「はい、すみませんね」
それを最後に騎士は部屋から出ていく。
「ふむ、断ったか。まあいい。これで今日君たちを呼び出した理由はおしまいだ」
「はい、わかりました。失礼します」
ぶっきらぼうに挨拶をすませ部屋から出ていくソルト。シャルも慌ててレイに挨拶をしてからそるとを追いかける。
「ちょっと、なんでそんなに怒ってるのよ」
騎士との会話途中から期限が悪くなったソルト。シャルはその原因を訪ねるが、
「あいつらクル姉を疑いやがった」
姉思いな弟であった。




