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道に咲く華  作者: おの はるか
私は約束の道を果たし往く
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幕間二

「やあ! 初めましてこんにちわ」

「な!? だ、誰ですか」

「よくぞ聞いてくれた! 私は君たちのいう異世界の神だ」

「は……?」


 これがプレアとなる少女と神の初の出会いであった。


〇〇〇


「つまり、私は死んだのですね?」

「そうだね。でもその死に方にちょっと問題があったからこうして呼んでいる訳だ」


 荘厳な部屋で十代後半の二人の少女が問答する。あっさりと自分の死を受け入れた彼女はしかし、不思議そうに質問する。


「そうですか……でも一体何が問題なのかわからないのですが。だって私は弟をかばって(・・・・・)死んだだけですよ。自分なりに後悔もしていませんし」

「ん~、まあその事件こそが問題だったのだけれどね……。あれは本来地球の歴史にあってはならないことだったんだ。事件そのものがね」

「どういうことです」

「そのままだよ。君が入院していた病院はテロリストが来るようなところではなかったし、そんな運命もなかった」

「確かに私も、『どうして?』とはなりましたね……でも、運命でないというのならばどうして『病院にテロリストがやってくる』なんていう事件が起こったんです?」


 神の少女は申し訳なさそうに口を開く。


「これは私の責任でもあるんだが……私の世界の中で地球世界に干渉した輩があらわれたんだ。兄の世界が……ああ、これが君たちの地球世界ね」

「なんでそんなことをするんですか?」

「うーん、恐らく私たち兄妹から神格を奪おうとしているんじゃないかな。もともと私の補佐をしていた準神なんだけど、思いあがったようだ」

「神格を奪う?」

「ああ。世界の管理権とでも言おうか。やつはそれを奪おうとしてきている。当然そんなことされたらとんでもないことになるし、そいつが考えた神格を奪う方法がみみっちくてね」

「みみっちい……」

「私の世界から兄の世界の人間を洗脳するとか何考えてくれてるんだ…………」

「は、はあ」


 ブツブツと呟く神、しかし話を聞いている少女がついて行けていないことに気付いたのか、神を名乗る少女はコホンと咳払いを一つして向き直る。


「失礼、話がずれた。とりあえず私が君に伝えたいのは、お詫びとして、こちらには君を転生させる準備があるということだ。勿論やって貰いたいことがあるというのも事実だが最初のうちは楽しんでくれれば良い」

「やって貰いたいこと?」

「そう、君には今回の事件の元凶を何とかして欲しい。勿論何かしらの能力はあげるし、見返りもあげよう。仲間もつける。一人でやらせるようなことはしない」

「あの……聞きにくいんですけどもし、私がやらなかったらどうするんですか?」

「その時は他のメンバーだけで行って貰うことになるね。それに君は地球の弟がまた何かに巻き込まれたら、と考えはしないのかい」

「!!」


 少女がつばを飲む。考えていなかったのだろう。その様子を見て神は続ける。


「まあ、そういうことだ。脅すようなことを言って申し訳ない。ただ、私達も本体を押さえつけるので精一杯だ。そいつの手足となる者には君たちのように人を送り込んで対処してもらうしかない」

「分かりました。引き受けます」


 今度は二つ返事で引き受けた少女。その様子に神は満足する。


「助かる。では今から君には転生して貰うがその前に説明だな」

「お願いします」

「今から君に行って貰うのは私の世界、名前は特に決めていないが……まあ、これからは分かりやすくアナザーとでもしておこう」

「アナザー……」


「君がいた世界との違いは次にあげるものだ。

一つ、その世界には魔法がある。

二つ、人はジョブと呼ばれる称号を得る。

三つ、人はそれに伴うスキルを手に入れる。

四つ、そのジョブは進化させることが出来る。

五つ、いろんな種族がいるし、魔物という化け物達もいる」

「ちょ、ちょっとまって下さい、ゆ、ゆっくりお願いします。もともと勉強が得意でないので……」


 申し訳なさそうに告げる少女。


「ああ、すまないね。まずは魔法についてかな?」

「お願いします」

「アナザーにおいて人は皆魔力を持っている。言ってしまえば精神的な体力だね」

「ふむふむ」

「そして魔法の中にも属性があってね。火、水、土、雷、風これらは五竦みのじゃんけんみたいな関係になっている。そしてそれに加えて光魔法と闇魔法だ。この二つは相性関係ないね。まあ、魔法の詳細は転生してから確かめてくれ。教えてくれる人はいるようにしておく」

「それはありがとうございます」


「次にジョブかな? ジョブというのは称号のようなものだ。端的にその人物が何をやっているか、どういう人柄か分かる」

「人柄も分かるのですか」

「分かることもある、という感じかな。例えばだけど。まあ、進化することを除けば地球の仕事みたいなもので考えてくれて問題はないかな」

「進化ですか」

「ああ、特に変わるものはないけどね。さっきも言った使えるスキルがパワーアップするだけだ。これがなかなか馬鹿に出来ないのだけれど……」

「なるほど……では、魔物は?」

「それはもっと簡単だ。君たちの世界のゲームに出てくるモンスターをイメージしてくれたら良い。なにせアナザーの魔物をアイデアとして使ったのが君たちの世界のモンスターだからね」

「そうだったんですか」


 納得したように相づちを打つ少女。


「では最後にプレゼントだ。まず一つ目に記憶固定。どんな洗脳をかけられようとも自我を失わず、記憶を留め続けることができる代物だ。二つ目はアナザーで神届物(ギフト)と呼ばれるものだ」

「二つ目の神届物というのはどんなものです?」

「私が君に渡す餞別だね。どんな力でもいいよ。君が決めてくれて良い。でも強すぎると狙われたりするから気を付けてね」

「じゃあ、こんなのは出来ますか?」

「ふむ、聞いてみようじゃないか」


〇〇〇


「ふむ、そういうものか」

「ダメですか?」

「いや、許容範囲だろう。だが、ノーリスクなのは最初の一回だけだし、大量に魔力を使うけれどね。それと1回使えば24時間置かないと使えないようにしておく。神届物(ギフト)名はそうだね……【一生のお願い】ならぬ【一日のお願い】とでもしようか」

「分かりました」

「さて、もう質問はないかな? まあ、合ったらいつかまた会うときに言っておくれ」

「あ、あります!」

「な、なんだい?」


 真剣な面持ちで神を見る少女。その姿に一瞬、神は気圧される。


「弟はいますか?」


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