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道に咲く華  作者: おの はるか
俺は英雄の道を志す
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迷宮編 接敵

 翌日の昼、ソルトとシャルは準備を整えて、待ち合わせ場所で待っていた。王都の観光名所の一つである大きな噴水である。服装はソルトの方はリナが作ってくれた冒険者用の服で黒を基調とした動きやすい服装だ。

 一方シャルの方は赤髪を後ろに一纏め、服装も黒と白で済ませている。


 そんな彼らだったが既に集合時間を過ぎているにもかかわらず転移者二人は現れないので待ちぼうけを食らっている。


「なあ、アイツら何してるんだ?」

「私に聞かないでよ。知るわけ無いでしょ」


 そして、しばらく経ってようやくリュウヤの方が姿を見せる。


「遅れてすまない。ダイが見当たらなかったんだ。こっちにはまだ来てないかな?」

「来てないわよ。貴方たち同じ部屋でしょう?いつからいないのよ」

「昨日から帰ってきてないんだ。夜遊ぶような奴ではないし……」

「ふむ……気になるな。今日の迷宮はなしにするか」


 実際そんなに行きたくないソルト。リュウヤも残念そうに同意する。


「そうだね。仕方ない。四人で行かなくては意味もないからね……」


 その時ようやくダイが姿を現す。リュウヤが声を掛ける。

  

「ダイ! 遅かったじゃないか。心配したんだぞ」

「わりいわりい、ちょっと試してみたくてな!」

「試す?」

「続きは馬車の中で話そうぜ。俺のせいで待たせてるんだろう?」


 かなり雰囲気が変わったダイ。そのことに疑問を持ちながらもソルト達は馬車へと足を進めるのだった。


〇〇〇


「で? あんたまさか、その得体の知れない爺さんから貰った指輪を装着したの?」

「お、おう。そうだぜ」


 迷宮へ向かう馬車の中でシャルの驚いた声が響き渡る。現在ソルトが馬車の御者をしており、中にいるのはシャルとリュウヤ、そしてダイの三人である。


「あんまり騒ぐなよ。魔物がよってきたら面倒だからな」


 ソルトが注意する。街道は魔物よけの石で出来ているらしいがそれでも騒げば寄ってくる。王都から近いので強い魔物はいないが遭遇するたびに戦うのも面倒だ。


「わ、悪かったわ……それで、その指輪を見せて貰えるかしら」

「おいおい、そう言って自分が装着しようって魂胆だろう? 残念ながら沢山はないし、これ一度嵌めちまうと取れなくてな」

「は?」

「ほれっ、リュウヤ。お前の分だ」

「あ、ありがとう……シャルちゃんの分はないのかい?」

「ああ、ないね」

「お前ら~、今から一緒に迷宮潜るのに喧嘩するなよ~」


 ソルトが釘を刺す。ギスギスした中で迷宮なんて絶対嫌なソルトである。


 そうこうしているとシャルが馬車から出てソルトの御者席の隣に座る。


「お前、俺のこと嫌いだと思ってたんだが」

「アイツらよりはマシよ。それにもう慣れたわ」

「そっか」

「あれ、呪い道具よ」

「あれ?」

「さっきの指輪のこと。精神汚染とかそういう段階ではないわ。魂を削り取ってくるような代物よ」

「なんだって?!」

「どっから貰ってきたのか知らないけど触ることすら避けたいわね」


 その言葉にソルトも黙る。しばらく経ってようやく口を開く。


「………嫌な予感がするのは俺だけか?」

「奇遇ね。私もよ」


〇〇〇


 しかし、二人の予想に反して、迷宮に着いてからは怖いほど順調に進み下層へと潜っていく。


「ハアッ!」

「セイッ!」


 ソルトが動くまでもなくダイとリュウヤが出てくる魔物を駆逐する。

 ダイに関しては持っている盾でゴーレムの魔物ですら殴り、砕く。


「ハハハ! 弱い弱い!」

「ホントだな! この指輪スゴいぞ! 力がドンドン溢れてくる!」


その後ろで遅れながらソルトとシャルがついて行く。正確にいうと遅れながらではなく、距離をとりながらだが。


「なあ、帰っちゃダメか?」

「一応最後までは見ておきたいわね。この先同じ事が起こった時の対策にもなるだろうし」


 しかし、事態は動く。段々と二人の行動が緩慢になり、ついには行動が完全に止まる。


「ん? どうしたんだ?」

「あー、もうダメね。治ることはなさそう」


 目に魔法陣を浮かべながらそう判断するシャル。【鑑定】などの相手の状態を見る魔法を使っているのだろう。

 止まった二人の体がピクリと動く。そしてブツブツと言葉を発し始める。


『魔王、殺す、魔族、殺す、魔物、殺す』

『コロコロスコロコロコロス』


「なんだろう。言ってることは良いことなのに悪役にしか聞こえねえ」

「あなた、倒せる?」

「まあ、あの程度ならいけると思う」

「そう、じゃあ、襲いかかってきたらよろしくね。手助けはするわ」

「分かった、よろしく頼む」


 軽く打ち合わせをして戦闘態勢に入るソルトとシャル。昨日のうちに互いの実力もある程度教えあっているのでスムーズなものである。しかし、そうしている間にも狂気は加速していく。


『『コロスコロスコロスーーー!?』』


 しかし、一際叫んだ後急に無言になる。そして、


『『ふう、成功かのう。やはり異世界人、それも【剣聖】の称号持ちともなると格が違うのう。クックック』』

「なにあれ」

「いや、俺に聞かれても……」


 突然老人のような話し方になった二人に戸惑いよりも気持ちの悪さで一歩距離を置くソルトとシャル。


『『ん? そこに居るのは……ほうほう。これはまた面白い組み合わせだのう。小僧も小娘も良いものをもっておる』』


 二人に気づいたのか距離を詰めてくる何か。


『『その体もわしにくれないかのう。うまく使ってやるぞ』』


 そして瞬く間に距離を詰めてきた。


〇〇〇


「逃げるぞ!」

「逃げるわよ!」


 乗っ取られたと思われる二人が駆け出す前にソルトとシャルは既に踵を返し逃走を決意する。二人が逃げたのは勝てないと思ったからではない。得体が知れなかったからだ。先程までは間違いなくリュウヤの魔力、ダイの魔力だったものが今では見る影も無いほど変質していたのだ。


「くそっ! なんなんだよ! 人間の魔力か?!」

「魔族でもないわよ! 何か次元が違うものを感じる!」


 マッピングしてきた道を正確に辿って地上の入り口を目指す二人。しかし、


『クックック。甘いぞ!』

「そんな!」

「おい! それは反則だろう!」


 乗っ取られた二人のうちダイの方が下から地面を突き破って出て来たのだ。

 普通、迷宮の壁は瘴気が濃く、穴を開けても人は通れない。だが、そんな常識を無視して目の前の大男の体を乗っ取った存在は道をふさぐ。


『フォールオブシールド』


 何かの魔法なのだろう。次の瞬間にはソルト達が辿るべき道いっぱいに壁が形成される。


『『クックック、これで逃げ場はないぞ』』


 そうしているうちにリュウヤの方も追いついてきた。挟み撃ちになり非常に不味い状況となるソルト達。


「なあ、そっち任せていいか?」

「そっちこそ、一人頼めるかしら」

「わかった。【剣聖】は俺が受け持つ」

「なら私は【重盾戦士】ね」


 背中合わせになりながら受け持ちを決める。それが終わると向こうから話しかけてきた。


『『相談は終わったかね? では名乗らせて貰おう。【ガタバナートスの14柱】傲慢の使徒ドグライト・バッケルセルト。その体、私が有効に活用して見せよう』』

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