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道に咲く華  作者: おの はるか
俺は英雄の道を志す
25/174

幕間

―ーソルト達が王都に到達する一週間前のこと―ー


「なに?! また勇者が死んだだと?! まことか!」

「はっ! 間違いありません。結界が解けたと同時に家の中に突入しましたがミナ様とその警護に当たっていた騎士の遺体だけが残っておりました。しかしながら他の証拠となるものは念入りに消されており誰がやったのかは……」


 シャルトラッハ王国、その王室で第三代国王が連絡を受けていた。内容は四十年前に召喚された勇者がまた一人が殺されたと言うこと。かなり警戒した警護をしていたにも関わらず、である。


 王の横に控えていた男が聞く。


「何か結界に特徴はありましたか?」

「は、はい、このような模様が……」


 そう言って紙にカ描かれた【Ⅲ】という模様を見せる。それを見た男の表情は硬い。


「これは……」

「お主はこの模様の意味を知っておるか?」


 王が男に聞く。


「これは私達が元いた世界で使っていた記号の一つですね。意味、というほどでもないですが数字の三を表しております」

「今度は三か……」


 それきり考え込む王。傍にいた男は使いに帰って良いことを伝える。


「王よ。もうお気づきかとは思いますが……」


「分かっておる。この勇者殺しが転生人によるものだと言うのであろう?」

「はい」

「しかし転生人はいずれの場合も意味不明なほどの戦闘力、或いは常識はずれな神届技(ギフト)を持っておる。どうしたものか……」

「しかしそれは我々転移者も同じはずです。なぜ誰も倒せないのか……」


 神届技(ギフト)と言うのはその名の通り神から直接与えられる技能、魔法のことである。転生者や転移者に与えられるそれはいずれも破格の性能を持ち普通の魔物と戦えばまず負けることはない。

 しかし現に転移者が次々と殺されており、それが余計に混乱を招く。当然数人が殺されたときから勇者達は複数で行動していたのだが【勇者殺し】の事件の中には勇者5人が同時に殺される事件もあったのだ。

 王と男の顔が暗いものとなる。


 その時だった。暗い顔の二人の前に魔術師風の男が音もなく空間転移魔術で現れる。彼は意気揚々とハイテンションで王に話しかける。


「王よ! ついに異世界勇者召喚の儀式の準備が終わりましたぞ! 何卒許可を! 私めに名誉ある大役を命じ下さい!」


 それは朗報と呼べるだろう。何しろ減ってしまった異世界人の補充、すなわち戦力の補充ができるということなのだから。

 しかし、やはり四十年前に召喚された勇者を殺す者に対する対策としてまた新たに異世界人を召喚するのは王も男も気が引けた。


「しかしな、四十年前の勇者が勝てない相手を倒す相手を召喚できるのか?」


 そう、一番重要なのはここである。もし勝てる者が召喚されるのならば王と男は決断することができる。申し訳ないとは思うが彼らが何よりも考えなければならないのは国の維持繁栄である。

 だが流石に確証もなければその決断をすることはできない。

 そんな王の心配を知ってから知らずか魔法使いはハイテンションに告げる。


「安心して下さい! 王よ! 私は先ほど異世界転移門を通じて向こうの世界を覗いてみましたが実に素晴らしいものでした。魔法がないにもかかわらず彼らは実に深い理解を示しております。恐らく二十年前、四十年前の勇者よりもより強力な勇者達となることは間違いありません」

「ほう、そうか」


 その報告を受けて王は感心を示す。傍に控えた男も同じである。


「そうです! どうですか王よ! 是非私めにお任せ下さい」

「分かった。そこまで言うならそちに任せよう。ただししっかりと教育するのじゃぞ」

「はい、勿論でございます」


 こうして再び二十年に一度の異世界勇者召喚が決定したのだった。


〇〇〇


 そして現在、


「おい、ここはどこなんだ!」

「ちょっと! どうゆうことよ!」

「い、異世界か! もしかして異世界なのか!」

「ちょっと勇! うるさいから落ち着いて」


 転移の魔法陣の上に召喚されたのは40人の若き男女。そして魔法使い達は彼らの持つ濃い魔力に狂喜し、騎士達はその身体能力の高さに目を開く。


「よく来てくれた。若き勇者諸君よ。突然で悪いがそなたらにお願いがあるのだ」

「突然呼び出しておいてなんですか! 僕たちはただの学生です。特別な力もなければあなたの言葉に従う必要もありません」


 毅然とした態度で学級委員も務めていた生徒が反論する。しかし王は話を続けた。


「ああ、分かっておる。勿論お主達に強制するつもりはない。だが一つ言わせて貰うがお主たちは魔王にすら立ち向かえる力を有しているはずだ。そしてその上でのお願いだ。むろん、断る場合も衣食住だけは保証しよう。ここから出て行くのも好きにしてくれて構わん。だから話だけでも聞いてくれぬか?」


「まあ、話だけなら」


 その言葉を受けて王の側近が説明を始める。


「まずお主達に与えられた神届技を確認して欲しい。今から水晶を配るのでそこに魔力を込めるのだ」

「す、すみません、魔力を込めるというのはどうすれば……」


 これには魔法使いの男が答える。


「体の内側に流れがあることを想像して下さい。この世界での魔法というのは想像を現実世界に投影することの同義です。想像したものに強く念を込めれば形を作ることができます」


「や、やった、なんか出たぞ!」

「こ、これが魔法なの?」

「お、俺聖騎士だって!」

「私は賢者よ!」


 教えた途端ちらほらと驚きの声が上がる。王はこそっと側近の男に告げる。


「やはり四十年前や二十年前の勇者達に比べると断然違うな」

「そうですね。魔法使いの言ったことは正しそうです」


 そして、彼らの興奮が冷めてきた頃を見計らって再び声を掛ける。


「では我々の話を聞いていただきたい。現在我々は戦争の最中なのだ。どうか憎き魔族を倒すために力を貸してはくれないか?」

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