学校とギルド編 試験申し込み
「なあ、ところであのチェリシュっていう人何者なんだ? 俺が部屋に入った瞬間に匂いでクル姉の縁者ってばれたぞ」
門を入ってからソルトとクルルシアとりあえず学校を目指すことにしたのであった。申し込みが今日までしか受け付けていないため、今から行かないと試験すら受けさせてもらえなくなってしまうのだ。
しかしまだ慌てるような時間でもないためこうして雑談しながら王都の街並みを観光しながら目的地を目指している。活気もあり多くの出店が開かれている中を二人は食べ歩きをしながら学園に向かう。
『チェリシュちゃん? 確かSSSランククランの子だよ。【悪魔喰い】っていう名前のクラン』
クランというのは冒険者同士によるチームのことである。規模は様々であり二人のところもあれば何百人もいるところもある。
「デーモン? やけに物騒な名前だな。有名なクランなのか?」
『有名か無名かって聞かれると有名かな。何しろSSSクランなんて7個しかないし、クランの構成メンバーは職業ともどもギルドの掲示板に載るからね』
「そうなのか。ちなみにチェリシュさんの職業名は?」
ギルドの掲示板に載っているのなら聞いてもいいだろうと考えたソルト。どうやらその考えは間違ってはいなかったらしくクルルシアは普通に答えてくれる。
『聖治癒師、だね』
「聖治癒師?」
『簡単に言えばヒーラー、荒事はほかのメンバーの担当らしくてね。でも回復だけじゃなくてどうやら彼女は【支援】魔法や【妨害】魔法にもかなり適性があるらしいね。一昨年も魔物の大発生が……ああ、安心していいよ。10年前ほどじゃない。とりあえず大発生があったんだけどその時は彼女がいたおかげで死者が0だったという記録があるよ』
「0? 少数精鋭で行ったのか? さすがにそうでもなきゃカバーしきれ……」
『王国兵士15000人、これがその時の人数だよ』
「は?」
『彼女は支援魔法、回復魔法、妨害魔法含めて全力で王国軍を手助けして彼らを無敵の軍隊にしてあげたそうだよ。その功績がたたえられて今SSランク冒険者に認定されているんだよ
「どれだけの魔力を持ってるんだ……」
魔法というものは当然使えばそれだけ術者の魔力を消費する。クルルシアの【伝達】魔法だって効果範囲、かける人数、そして時間が大きく、長くなるほど消費魔力も上がる。
当然千人を越える軍に魔法をかけ続けるなど普通の魔法使いではまず不可能。しかも回復魔法は消費が大きい魔法に分類されるのでなおさらだ。
『ちなみに言っておくけど彼女だけじゃなくってSランク以上の冒険者って大抵頭おかしいからね。喧嘩とか売っちゃだめだよ。ソルトでも手に負えないのが何人かいるから』
「あの、おれ、一応【勇者】だぜ……このスキル持ってても負けるのかよ」
『私に二週間前に負けたのはどこの子だったかな~』
「ぐっ」
何も言えなくなるソルトだった。
〇〇〇
その後しばらく歩くとようやく町の中央に位置する学校なる機関の建物の門の前にたどり着く。
門前故、学園全体を見渡すことはできないがそれでもちらほらと歴史を感じさせる建物が立っている。
「すげ~、ここで申し込みをするってことであってるよな?」
『そうだね。入ってひたすらまっすぐ歩いていけば受付があってそこに橙色の髪をした女の人がいるからその人に聞けばいいよ』
「あれ? クル姉はどっかいくのか?」
『私は生徒会長と学長に帰ってきましたっていう報告をしに行くんだ。ほんとは伝達魔法でとっとと終わらせたいんだけどこの前それをやったら生徒会長にかなり怒られてね……』
「そっか…」
なんでも生徒会長に変なこだわりがあったらしい。まあ、直接報告しろというのも至極まっとうな話ではあるのだが……
『そういうことでソルト! またね』
そう言って校舎のほうへと飛んでいったクルルシアであった。
〇〇〇
「ええと……この道をまっすぐってクル姉は言ったよな」
クルルシアから教えられた通りまっすぐ道を突き進むソルト。どうやらなかなか学園も広いらしくたどり着くのにもかなり時間を食うらしい。
そして歩き始めて(途中から走ったが)十数分後、ようやく目的の場所と思われる場所へとついた。
即席のテントが立っておりそこに役員なのかクルルシアが言ったとおりの橙色の髪の女性が椅子に座って待っていた。
年齢は恐らくクルルシアと同じぐらい、しかし身長は恐らく180センチを超えているように思われ、座っていても見る人に威圧感を感じさせる。
しかし威圧感を感じたからといって話しかけなければ申し込みもできないのでソルトは意を決して話しかける。
「あの。学園の入試申し込みはこちらでいいでしょうか?」
するときちんと返事がかえってくる。
「ほう……威圧を通り抜けましたカ……ハイ、問題ありまセン。私が受付の担当アルヴァ・リベルタ・ソーレ、デス。こちらをどうゾ」
どこか片言な感じのしゃべり方だが先程ほどまでの威圧感は声に含まれてはいない。ソルトは手渡された書類を受け取りながらそんなことを考える。
「そちらの空欄に必要事項をお書きくだサイ。字が読めない場合は呼んでくダサイ。また書けない事情がある場合は空欄で構イマセン」
見ると姓名から始まり家の出自、これまでの経歴を書くようになっている。
そしてその書類をかける分だけ埋め終わったのち再び橙色の女性アルヴァに書類を返す。
「ふむ……クルルシアの弟ですか……また一波乱来そうなものです……」
「ん? なにか言いましたか?」
何か小声が聞こえた気がするがアルヴァはごまかす。
「あ、いえ、なんでもありまセン。これで受験申込受領いたしまシタ。では明日時間までにきてクダサイ」
「はい、ありがとうござ……」
そう言ってお礼をしようとソルトが口を開いたときだった。
「おいおいおい!! 待った待った。アルヴァちゃ~ん? なんで僕の許可も取らずに平民を入れようとしてるのさ~」
しかしソルトが最後にお礼を言おうとしたときだった。どこから現れたのか、一人の男が取り巻きを二人ほど連れてアルヴァとソルトの間に割り込む。
「これはこれはジャック殿、どうかされましタカ?」
「どうかしましたか? じゃねえよ! この学園は伝統を重んじる学校なんだ! 見ず知らずの人でも受けれるようにするなんて間違っている! これは何度も言っただろう!」
「はあ、面倒クサイ。入学者を選ぶ際には貴族と平民を区別しないというのは選挙でもきちんと決めましたヨネ? 邪魔するようであればあなたを排除しまスガ?」
「ふん、これだから野蛮な冒険者は! 学園内の学生同士の私闘は禁じられているのだぞ?」
「あなた相手なら私闘など起こりませんガ……そして話を逸らスナ」
だんだん物騒になる会話にソルトはついていけていない。しかしこの話の中心にいる自分が話しかけないと何も進まないという考えを思いついて会話に参戦する。
「あの、どうして俺は受けちゃいけないんでしょうか?」
するとジャックという男ではなく取り巻きが説明する。
「なに、簡単なことだ。この学校は伝統を重んじている。どこの馬の骨かもわからん輩に入学されては困るのだ」
「でもさっき選挙で決まったとか言ってましたよね? あれってそういう出自とかを気にしないという意味なのでは?」
「それはそれ、これはこれだ」
話が通じないタイプのようだった。
ソルトはこれ以上の話をすることをあきらめアルヴァと突然現れた男のほうを見る。どうやら口論は続いているようだ。
そしてその飛び火は当然ソルトにも及ぶ。
「おい、平民! さっさと辞退するがよい!」
これは面倒になりそうだなとソルトが考えた時だった。
『ねえ、私の弟に何か用かな?』
すさまじい怒気と殺気が込められた念があたりにまき散らされた。
目安です。どうぞ( ・∀・)つ
SS級冒険者→人外
S級冒険者→超一流
A級冒険者→一流
B級冒険者→中級
C級冒険者→一人前
D級冒険者→半人前
SSSクラン→人外の集まり
SSクラン→超一流として認められてる
Sクラン→一流が多く集まる
Aクラン→中級扱い。クラン指名の依頼を受けやすくなる
Bクラン→一人前、信用が出来始める
Cクラン→新人扱いのクラン
ギルドは冒険者がお世話になるところ




