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第三王国に伝わる神物語  作者: ねこまんま
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壊れた世界で生きる騎士

第三王国騎士団所属、エド・カルマンは王都を目指して馬を走らせていた。彼の左隣にはエドと同じく馬に跨り、騎士団の軽装備を身に着けているメイラ・ネイワールが左腕の負傷を辛そうに見ている。


「エド!王都に早く戻らなきゃっていうのはわかるけど....傷、大丈夫?]と彼女は彼の左腕に刻まれた刀傷を見て呟く。

「そうはいっても事がことだ。急いで王都に戻って団長に報告しないと、俺の傷はその後でも大丈夫だからな。なに、ほんの掠り傷さ、お前が心配するほど重傷じゃないよ」


そういって優しく微笑んで見せるが、それがかえってメイラの心を揺さぶる。不甲斐なさ、力不足を呪い、肩まで伸ばした軽く内巻きの桃色の髪を風に揺られた少女は苦悶の表情を浮かべる。自分のせいなのだ、彼がこうして傷を追っているのは。自分の技量が足りなかったせいでエドは私を庇って....その事がメイラには苦痛だった。自分に力があれば、最愛の人が傷を追うこともなかったのだから。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


遺跡探査を命じられたのは前日の昼だった。ちょうど昼食を食べ終わったエドとメイラに、騎士団第七騎士

ルイス・フロイトが声を掛けてきた。


「お食事中の所悪いが....っと、食べ終わったところか、なら改めてイチャイチャしている所悪いが仕事だぜ、後輩共」


「どうぞお気遣い無く、それで仕事っていうのは?また『悪魔』が出たんですか?」


問い掛けるエドに首を横に振り、さあな。といった様子で両手を軽く挙げる。


「詳しい話は後で聞きな、が、団長様からお前ら二人への任務だ。俺はお前らを呼び出しにきただけだ」


団長が俺たち二人に?それを聞いた瞬間驚きの余り飲みかけていた水が気管に入り激しく咳き込む。それから同じく驚いた顔のメイラと睨めっこして、ルイスに向き直った。



「なんだって団長は俺たちに?団長直々の任務ならアンタや他の七騎士が受けるはずだろ?」


疑問を口にして二人はルイスに問い掛ける。そんな反応は予想していた。とでも言うように少々腹立たしい微笑を浮かべて


「まあまっ、とりあえず落ち着けって。お前らの疑問も尤もだ、確かに普段なら俺たち七騎士が....もとい超絶カッコイイ俺が引き受けてたんだが、あいにくと今は別の任務で忙しくてな。他の七騎士もそんな感じで手が空いてないんだよ。とはいっても団長直々の任務だからな、どうにか俺の代わりに行かせられる奴がいないもんかと考えて頭に浮かんだのがお前らだったってわけだ」


「いやいやそれで何で俺たちが思い浮かぶんだよ、客観的に見ても俺たちは優秀とは言えないぞ、精精普通の一般騎士ってところだ。七騎士には遠く及ばな....」


「そう自分たちを卑下すんなって、俺みたいな超カッコイイ騎士には劣るがお前らも並みの騎士の中じゃ上の方だぜ。そうだな....中の上ってところか?それにそれなりに長い付き合いだからな、お前らならまあ大丈夫だろうと思って使命したんだ。おっと....そろそろ時間が押してきてるな、俺もこう見えて忙しい身なんでな。それじゃあ、あとは頼んだぜ。」


そう言い残したかと思えば、こちらが質問する前に走り去ってしまった。まったく、あんな30代後半になっても軽口が一向に減らない奴が騎士団最強の七騎士の一人だというのは今でも信じたくは無い事実だ。

とはいえ幼少期から彼に剣術を教え込まれた身としては、彼の強さを身体で知っているので否定はできない。だが信じたくはない。


「~~っああ仕方ねえ、とりあえず団長の所に話を聞きに行くか。メイラ、行こう。」


ええそうね、と彼女が返事をして二人は食堂を出て団長の下へと向かう。



食堂から歩いて数分、同じ建物内なので団長室に着くのにそれ程時間は掛からない。エドは扉の前で身嗜みを整えると、ノックして扉の向こうにいるであろう団長に挨拶した。


「お忙しい所失礼致します、ルイス・フロイト第七騎士より推薦されましたエド・カルマン。メイラ・ネイワールです。」


一瞬の沈黙の後


「入れ」


「失礼します」


短く返された言葉を聞きエドとメイラは団長室に入った。












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