命日
6月17日
今日も変わりない1日が始まる
と言っても今日は日曜日だからゴロゴロしてテレビを見るだけ
休日は何もやることがなくて暇だ
そう思いながらリビングの窓を開ける
ああ、スーッと入ってくる風が気持ちいい
その気持ちよさに目を閉じて風に吹かれていると、何やら美味しそうな匂いが漂ってきた
「さ、そろそろお昼だよ。箸出しな」
もうそんな時間か
休日のお昼は母の手抜き料理だ
そんなこと声に出したら追い出されかねないな
母と俺の箸をテーブル並べて料理を待つ
しばらくするとお皿に盛られた納豆炒飯が出てきた
おっ、今日は俺の好物だ ラッキー
いただきます と手を合わせてスプーンにすくった炒飯を口に運ぶ
このネバネバが堪らないんだよなぁ
「あ、健太
そういえば今日は春香ちゃんの命日じゃなかったのかい?」
春香…?
…………そっか もう命日なのか
最近は就職したばかりで忙しかったから全く頭になかった
確か今年は春香が亡くなってから10年だったはず
もう10年経つのか
あの時からもう…
「他の友達は元気かい?
昔はいっつも4人で遊んでたじゃないの」
…絵里と直哉のことか
そういえば2人にもう随分と会ってない
「どうなんだろうね
最近は会ってないから分からないや」
最後に会ったのは絵里が高校入学祝いをした時
それから2年は会ってない
連絡先は知っているが、わざわざ連絡をするような事もなかった
春香が亡くなったから疎遠になった訳ではなく、俺が中学生になり部活で忙しくなって中々遊べなくなってしまった
それを機に少しずつ離れていき、今では連絡先は知っているが会うことはなくなってしまっていた
そっか…あれから10年か
1度くらい春香に会いに行ってみようかな
もしかしたら絵里と直哉にも会えるかもしれない
そんな気がする
保証はないけど、会えるような気がした
「ごめん、ちょっと急用思い出したからラップかけて置いといて」
そう言って立ち上がると階段を駆け上がった
タンスから服を引っ張り出して腕を通す
鞄に財布と携帯を詰めて家を飛び出した
近くにある花屋まで来ると、俺は迷わずひまわりを買った
春香の好きなひまわりを
仏壇にあげるような花ではないが、春香の1番好きな花を渡したかったから
ラッピングはせず紙に包んでもらい、そそくさと店を後にした
ーーこの辺りまで来るのは久しぶりだな
景観はほとんど変わっていなくて迷うことなくこれた
この道は4人で競争して走り回ったりした
いつも直哉が1番で歳上の俺が負け
思い出のある小さな道だ
突き当たりを曲がれば春香の家
…引っ越したりしてなきゃいいけど