近づく別れ
学校に行くことも無くなって、マリーはアメリカに戻るための準備を、私は学校に入る前の準備をするために時間を費やすばかりで、毎日していたメールも途切れていた。
ある日、いつものように支度をしていると、着信があった。それは、随分と聴き慣れた歌。…マリーが好きな、恋愛の歌。
「…も、もしもし…?マリー…?」
「私以外にこのケータイを使う人はいないわよ?久しぶり、知華。」
笑いながら話す彼女の声に、私は泣きそうになってしまった。
それを悟られないように、私は話を続けた。
「いきなりどうしたの?最近連絡なかったから忙しいのかと思ってたけど…。」
「うん、確かに忙しかったんだけど、今支度が終わったところなの。…それと、アメリカに戻る日が決まったから、連絡しようと思って。」
「…っ。そう…だよね、もう少しで帰っちゃうんだったよね…。」
考えないようにしていたこと。改めて彼女の口から聞くと、苦しくなった。
「うん…。…知華、見送りに来てくれたりする…?」
「…いいの?」
「もちろん。だって、私と知華は、親友…でしょう?」
親友。
その台詞を聞いた瞬間、我慢していた涙が溢れてきた。
マリーの声も少し震えていた。
2人を縛る、親友という言葉。別れてしばらく経っているし、同性の私達は一般的な恋人にはなれない。そんなことは分かっていた。そのはずなのに。
「…うん、親友 だもんね、見送りするのは当然だもんね…っ」
「…そうね、だから、知華が見送りに来てくれたら私、アメリカでも頑張るから…。……私が乗る飛行機は、1週間後の土曜日、20時発の便だから。…じゃあ、いきなりごめんね、知華…。」
そう言ってマリーは電話を切った。
電話が切れた後も私はしばらく泣いていた。