差し出された手
駅に着いた私達は、そこで解散することにした。私とマリーは同じ方向だったから一緒に帰れるけど、加奈は反対方向だったからそこで解散する方がいいだろうと考えたからだ。
「加奈、ありがとね!また学校でね〜!」
「ううん、こちらこそ!じゃあね〜!」
「加奈さん、ありがとう!」
「こちらこそ♪あっ、メールするね!」
反対方向に歩いていく加奈に手を振って 見えなくなった頃に、私達も家に向かって歩き始めた。
「…ねぇ、マリー?」
「なぁに?」
「こうして歩くの、久しぶりだね。」
「…えぇ。随分前のように思えてしまうわ。まだそんなに経っていないのに。」
「そうだね…何だかあっという間に過ぎていった気もするよ。」
2人きりで歩くのは凄く久しぶりで、なんだか高校生に戻った気がした。
手を繋ぎながらゆっくりと歩いていると、マリーがアメリカに戻る前、私達が付き合っていた頃に戻ったみたいで…。
マリーにそう言うと、また付き合っているじゃない 今も変わらないわ。と笑った。
少し歩いていると、マリーが呟いた。
「…ねぇ、高校の桜の木を見に行ってみない?」
「え?桜の時期は過ぎちゃったけど、それでもよかったら。」
「行きましょう。何だか寄りたくなってしまったの。」
不思議に思いながら歩いていく。今はもう葉も落ちてしまって、蕾も無かったはずだったけど。
そう考えながら隣を歩くマリーを見ていると、彼女が急に立ち止まった。
「どうしたの?」
「もう着いたわよ。ねぇ、この木こんなに大きかったかしら。ほとんど覚えていないわ。」
「わぁ、ほんとだ…。最近通らなかったからあまり覚えてなかったけど、こうして見ると大きいね。」
色々考えていたから 気付かないうちに学校に着いていたようだった。
フェンスの外から見上げる桜の木は思っていたより太く高くそびえ立っていた。
「ねぇ、知華?」
「なぁに、マリー?」
「…あのね、提案があって…。」
「なにかあるの?早く言ってよ。」
どこか言いにくそうに呟くマリーはいつもと違うようで。
催促すると、決心したように真っ直ぐ私の目を見つめて、手を差し出した。
「…一緒に同じ時を同じ場所で過ごしてください。朝から夜まで、ずっと知華といたい。もう二度と離れたくない。」
「…マリー?」
「もう会えなくなるのなんて耐えられないの。周りと違っていい。私は知華がいい。…私と結婚して。日本では難しいならどこに行ってもいい。もし周りに認められなくても、それでもいいの。帰ってきてすぐで受け入れられないかもしれないけれど…。」
「…ううん、そんな、嬉しいよ…。ありがとう…私こそ、ずっと一緒にいたい。もう離したくない…!」
思いがけないマリーからの言葉。
私は、この先ずっとマリーと歩いていきたいと思った。ずっとずっと、彼女の隣で生きていきたいと心から思った。
一度離ればなれになってしまった私達だけど、こうして巡り会えたのは奇跡でもなく偶然でもなく、きっと運命だから。
差し出された手を引き寄せ、私達は抱きしめあった。緊張していたのか マリーの手は冷たく強張っていたけど、どこか安心するような暖かさがあった。




