迷い
「…マリー…?」
私は廊下に立ち尽くしていた。まさか、こんなところで、こんな時に会うなんて思っていなかった。てっきり、まだ向こうにいるものだと思っていたから。
「……知華。」
マリーは少し青くなりながら呟いて、逃げようとした。
「待って!マリー…!」
私達に背を向けた時、マリーが泣いているような気がして、私はどうしても気になってしまった。でも、加奈が隣にいる今、マリーを追うことはどうしてもできなかった。
ここに連れてきてくれたのは加奈で、一緒にこの旅行を楽しもうとしているのは加奈だから、放っておくなんて出来るはずがなかった。
下を向いて唇を噛んでいると、加奈が呟いた。
「知華、行きなよ。マリーちゃん、泣いてたでしょ?追いかけてあげないと。」
「でも…加奈が「マリーちゃんの胸元見たでしょ?知華と同じ指輪、してたじゃない。まだ忘れてなくて、大事に思っててくれてるかもしれないじゃん。あたしは後でいいから、行ってきなよ。」
「……加奈、ありがとう。…ごめんね。」
背中を押してくれた加奈に感謝しつつもどうしても謝らずにはいられなかった。
私とは目を合わせてくれなかったから。辛そうな顔をしていたから。
でも、せっかくくれた機会を無駄にしないように、振り向かないでマリーを追いかけた。
間に合いますように。
そう強く思いながら必死に追いかけた。




