夜の散歩
「…マリー、起きてる?」
「起きてるわよ。眠れないの?そういう私も眠れないのだけど。」
「そうなんだね。…じゃあ、少し出かけない?」
どうしても目が冴えてしまっていた私は、マリーを誘って外へ出た。
近くの公園に行こうかと思ったけど、ふと思いついて、学校の近くに行くことにした。
「どうして学校なの?」
「ん…少し、ね。」
「中には入れないけど、それでもいいの?」
「うん、多分外からでも十分だと思うんだ。」
「うん…?いいけど、寒いから早く帰りましょ。」
「ふふ、寒さに弱いのは相変わらずだね。」
そんな話をしながら、手を繋いで学校へ向かった。
夜の学校は昼間と少し雰囲気が違って、とても静かだった。
私は目的の場所を見つけて立ち止まり、マリーを呼んだ。
「ここ…知華と初めて会った場所よね。」
「覚えててくれたんだね、嬉しいな。…入学式の時、この桜の木の下で迷ってたマリーを見つけたんだったよね。」
「あの時は日本語があまり上手くなかったし…。」
「そうだね…懐かしいな、もう3年も経つんだ。」
そう言って、私は大きな桜の木を見上げた。
風に吹かれて舞う桜の花びらの中で輝く金色の髪がとても綺麗で、あの時私は思わず声を掛けてしまったんだ。