2人だけの時間
「ねぇ、うちに寄っていかない?マリーの泣き顔見られたくないもん。」
「…ふふ、相変わらずね。…じゃあ、久しぶりにお邪魔するわ。」
しばらく抱き合っていた私達は下校時刻になったため校舎から出た。目を真っ赤にしたマリーが可愛くて離したくない気持ちもあって、帰りにうちに寄って行くのを提案した。
帰り道をいつものように手を繋いで 商店街を抜け、河川敷をゆっくりと歩く。
この時を忘れないように、しっかりと心に刻み込んで、永遠の宝物にする。2人で過ごした3年間を思い浮かべながら家に向かった。
「マリー、上がって。散らかってるけど…。」
「知華の家はいつも綺麗じゃない。全然気にならないわ。」
「ふふ、ありがと。あたしの部屋に行ってて、お茶か何か持って行くから。」
「ありがとう。じゃあ、先に行ってるわ。」
何回も繰り返したこのやりとり。もうこのやりとりもなくなってしまうんだ、と思って、また辛くなって…泣きそうになるのを我慢して、急いで2人分のお茶を持って行った。
「いつもありがとう。…知華の部屋に来たの、いつぶりかしら。最近呼んでくれなくてさみしかったわ。」
「お互いバタバタしてたでしょ。家も散らかってたし…呼べなかったんだもん。」
少し拗ねたように言うマリーに 慌てて答えた。言い訳がましくなってしまったけど、マリーは笑って許してくれた。
日が暮れるまでたわいのないことで笑ったり、ゲームで遊んだり、楽しい時間を過ごした。
「ねぇ、いきなりだけど泊まっていかない?その…もう少し一緒にいたいの。着替えは私の物貸すから…お願い。」
「しょうがないわね…特別だからね?」
「マリー、ありがとう!」
2人だけで過ごせる最後の時間…1分1秒でも長くいたかった。
いつもは断られてしまうお願いも、今日は受け入れてくれた。それだけで、とても幸せな気持ちになれた。